[取材先]株式会社タカシン(青森県)
本記事は2025年11月時点の情報を基に作成しています。
私たちの生活に欠かせないスマートフォンやパソコン。これらの電子機器に搭載される半導体や電子部品は、需要が急速に拡大するとともに、製品の高度化・小型化が進んでいます。そのため製造現場には品質・納期・コストのすべてに柔軟に対応できる体制が求められており、メーカーの製造を支えるEMS(電子機器製造受託)の役割もいっそう高度化しています。
青森県平川市に本社を置く株式会社タカシンは、1979年の創業以来、EMS事業や成形・金型・金属加工を行う電子精密機器の総合企業です。組み立て一本の事業から、部品製造も含んだ一気通貫体制へと進化し、近年では医療機器や自動車部品の製造、自社製品の開発にも取り組んでいます。品質と効率性を両立させる技術力と組織づくりについて、同社代表取締役 社長 船水 貴之氏に、オリックス 青森支店の前田 健太郎と営業推進役の野呂 守正が伺いました。
現場発の改善が競争力を生む。タカシン流“技術力の育て方”
……はじめに、貴社の歴史と事業概要について教えてください。
船水氏:当社は1979年に、機械製品の組立工場として創業しました。大手電機メーカー数社から、小型テープレコーダーやカメラなどの組み立て作業を受注し、2000年代初頭までは組み立て事業を中心に展開していました。
転機となったのは2005年頃。取引先から部品本体の製造依頼があり、プラスチックの射出成形機を貸与されたのを機に、射出成形に必要な金型を自社で設計・製作するようになりました。金型製作は高度な加工技術と設備が求められるため、内製できる企業は限られています。当社はその難易度の高い工程に挑み、金型製作から成形、部品の製造、組立までの全工程を社内で完結できる体制を整えました。
この一気通貫体制により競争力の基盤を築き、これを土台として、現在では組み立てを軸としたEMS事業、成形・金型・金属加工事業の2本柱で事業展開しています。
……現在、医療・自動車関連製品の生産まで事業領域を拡大されています。こうした新分野への進出には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
船水氏:2008年のリーマンショックを受けて、景気変動に左右されない安定した事業部門を確立したいと、医療および自動車関連製品の製造受託に乗り出しました。参入にあたって、「EN ISO13485:2016」(医療機器・体外診断用医薬品)や「IATF 16949:2016」(自動車産業)といった国際規格を取得し、品質管理体制を強化しました。近年では、内視鏡手術に使われる処置具や車載用コネクタなど、医療・自動車関連製品の製造受託の売上が拡大しており、当社の成長を後押しする事業へと育っています。
……どちらも非常に高い品質が求められそうです。
船水氏:おっしゃるとおり、どちらも人命に関わる製品であるため、取引先からの品質要求や検査はかなり厳しく、同時にコストメリットも求められます。そのため当社では品質と効率性を両立するために、2か月に1回、9拠点の従業員が集まり、工程短縮などのノウハウを共有する「改善発表会」を行っています。
この取り組みは15年以上続けており、こうした地道な積み重ねにより当社の根幹である技術力が鍛えられてきました。現在では技術者自らによる設備や工程の改善提案が日常的に行われています。
社員が自律的に動ける組織へ。先代の理念を進化させた組織戦略
……2025年8月に創業者であり、お父さまである船水 清吾会長がご逝去されました。清吾会長はどのような経営者だったのでしょうか?
船水氏:父は、強いリーダーシップで組織をけん引する一方で、各部署や従業員一人ひとりのことをよく見ており、各所に細やかな指示を出していました。多くを語る人ではありませんでしたが、日々の仕事ぶりを通じて、判断の基準や従業員への向き合い方など、経営者としての在り方を背中で教えてくれたように思います。
その父から「従業員一人ひとりを大切にする姿勢」を受け継ぎつつ、私はなるべく現場の意見を尊重し、各部署が自律的に機能する組織を目指しています。働く人の価値観が多様化する中、経営者が自分の価値観を一方的に示すのではなく、現場の声に耳を傾け、従業員と共に働きやすい会社をつくっていきます。

従業員の7割を女性が占め、ライフイベントを経ても働き続けられる環境整備に努めている。1時間単位の有休やリフレッシュ休暇、アニバーサリー休暇など、家族と過ごす時間を確保できる制度を導入。男女ともに育休取得率は100%。
また2021年に父から社長を引き継いだ際に会社のロゴを刷新し、2025年にはMVV(Mission、Vision、Value)を策定しました。事業領域が広がるなかで、社員が同じ方向を向き、判断に迷ったときに立ち返る「共通の軸」を持つ必要性を強く感じていたのです。
……働きやすい会社を目指し、現場の仕組みもアップデートされていると伺いました。
船水氏:働きやすい環境を整えるには、作業負荷やミスが生じやすい現場そのものを見直すことが欠かせません。当社ではその一環として、日々の整理整頓や清掃を徹底し、工場内を常に整った状態に保つようにしています。初めて来社されたお客さまからも「工場がとてもきれいですね」と驚かれることが多いのですが、こうした環境づくりは従業員の安全や心理的な働きやすさにもつながります。
そのうえで現在注力しているのが「製造作業の簡略化」です。少子高齢化や地方の過疎化により人材確保が難しくなる中、限られた人材で事業を成長させるためには、テクノロジーを活用した効率化が不可欠です。例えば、AIが組み立て順にパーツをライトアップして案内する仕組みがあれば、経験の浅いスタッフでもミスが減り、作業効率も大きく向上します。
また、業務効率化の一環で、数年前にDX推進の専門部署として総務部から情報システム管理部を独立させ、独自の生産管理システムを構築しました。多様な製造プロセスの情報を一元管理し、分析を行いながらワークフローを最適化しています。市販の製造管理システムの導入も検討しましたが、自社の業務に合わせて、システム構築した方が使い勝手がよく、最近では勤怠管理システムも内製化し、従業員からも使いやすいと好評です。
ただしDXやAIを活用した業務効率化が進み、テクノロジーの役割が拡大しても、最終的に人の判断が求められる領域は必ず残ります。だからこそ、そうした領域でおもしろさやこだわり、やりがいを見いだせるような働き方やワークフローを整えていきたいです。人とテクノロジーが両輪となって成長できる組織をつくり、青森で一番働きがいのある会社を目指していきます。
自社製品でブランド確立へ。社員の主体性を軸に持続的成長を追求
……最後に今後の目標について教えてください。
船水氏:まずは当社の中核事業であるEMSをさらに強化していきます。設備投資やライン増設による生産体制の拡充に加え、自動化や人材育成を進めることで、受注拡大や高度化するお客さまのニーズに迅速かつ柔軟に対応できる供給体制を整えます。
そのうえで、新たな柱として自社製品の拡充にも注力していきます。当社では、医療用機器の自社ブランド製品を開発していますが、今後は医療以外の分野にも挑戦していく予定です。当社の中核事業であるEMSは受託という性質上、景気変動の影響を受けやすいため、安定した収益基盤を築く必要があります。
これまで培ってきた「技術力」と「社員の自主性」を生かし、皆さんの生活や仕事をより快適にするものづくりを進めていきます。「タカシン」という名前をより多くの方に知っていただくためにも、「名刺」となる自社製品をさらに充実させていきたいですね。
<取材を終えて>
オリックス株式会社 青森支店 前田 健太郎・営業推進役 野呂 守正
タカシンの「技術力」と「自主性」を軸にした成長の歩みを取材し、先代の思いを受け継ぎながら、現場の声を大切にする組織づくりや、多様な人材が活躍しやすい環境整備を行っている姿に強く感銘を受けました。今後も、タカシンの挑戦と発展を全力でサポートしていきます。
関連コンテンツ
■株式会社タカシン
■酪農発の技術で、半導体産業を支えるニッチトップへ。オリオン機械が貫く顧客起点のものづくり
■燕三条の技をつなぎ、使い手の声に応え続けた50年。下村企販のものづくり
■プチプチ®だけじゃない! 気泡緩衝材の枠を超える川上産業の事業展開に迫る
■自動化への課題を“楽しんで解く”富山の技術者集団。彼らが追及する「飽くなき探究心」とは
[PR]提供:オリックスグループ









