日本物産株式会社では、過去5年間にわたり男性育児休業取得率100%を継続しています。平均育業期間は100日以上、管理職でも半年以上の育業経験者が生まれるなど、育業制度が積極的に活用されています。今回は制度の運用を担当し、自身も育業を二度経験した経営総務部 総務課 副長 市岡 幸恵さんにその背景を伺いました。
多様な事業を支える「人を大切にする土台」
―貴社の事業内容と、ご担当業務について教えてください。
経営総務部 総務課 副長 市岡 幸恵さん(以下、市岡):当社は第一生命グループを中心に、セールスプロモーショングッズの企画・製造や贈答品販売、石油製品・空調機器販売、旅行業、保険代理業務など幅広い事業を展開しています。私は現在、経営総務部で給与・社会保険・福利厚生制度、そして育児休業制度に関する業務を担当しています。
―男性育業の現況と推進し始めた背景を教えてください。
市岡:社員の約7割が女性なので、もともと育業する女性社員は多くいました。ただ一方で共働きが増える中、「女性のためだけの制度として受け取られていないだろうか」という問題意識も感じていました。2022年の法律改正もきっかけの一つではありますが、それ以前からの取組と「社員の価値観の変化」が大きな後押しとなり、直近5か年では男女ともに育業取得率100%を達成しています。
また、最近の若い世代ほど、家庭と仕事をセットで、自分のライフプランを考える傾向があると感じています。「キャリアを続けたいけれど、家族との時間も大切にしたい」という声を組織として受け止め、制度面から支えていく必要があると考えました。
制度を「迷わず使える」まで形にする
―具体的にはいつ頃から、どのような制度整備を始めたのでしょうか?
市岡:まず着手したのが「制度を整理し、誰でも迷わず利用できる状態にすること」でした。そのため、2021年頃から育業の手引きを作成し、制度の種類、申請手続き、スケジュール、給与や給付金のタイミングなどを可視化しました。
―運用面での工夫はありますか?
市岡:そうですね。制度説明だけだと「読み物」で終わってしまうので、育業予定者とその上司、制度担当が三者で行う制度面談を設けました。そこで、いつからいつまで育業するかだけではなく、引継ぎのタイミングや復帰後の働き方まで一緒に考えます。この面談で、「短期で育業するつもりだったけど、もっと長くして良いんですね」と安心して期間を伸ばす社員もいました。
―相談窓口もあると伺いました。設置された理由を教えてください。
市岡:育業中は会社と距離ができる分、「聞きたいことが聞けない」「相談先がわからない」という悩みが出てきます。私は経験者なので、それがどれだけ不安か痛いほど分かっていました。
そこでチャットツールで育業中の社員と会社とがつながれるグループを作り、「聞ける相手がいる安心感」を提供しました。
実際に届く質問は、
「給付金の通知が届いたけど、このあとどうすればいいですか?」
「子供が病気で復帰時期を変更したい」
など、ちょっと聞きたいけどメールだと言いづらい内容が多いです。導入後は相談件数が増え、「聞けないまま困るケース」がほとんどなくなりました。
身近な先輩パパのリアルな声から更なる気運の醸成へ
―社内で座談会も実施されたとか。
市岡:育業は制度説明だけでは理解しきれないですし、人が動くのは「制度」ではなく「経験談」がある時です。そこで、社内報の企画で育業当事者を集めた育業座談会を実施しました。
座談会では、制度ではなく「本音」が語られます。子供が小さい時にやっておいた方が良い事、どのタイミングが一番大変だったかなど、夜泣きで睡眠不足になったと具体的なエピソードが出てきます。また、育業中のことだけではなく、復帰直後の焦りや不安もリアルな経験談として出てきます。
こういった話が聞けることで、参加者からは「情報共有ができてよかった」、読者である社員からは「不安が薄れた」という声が多かったです。
―育業を推進することによってどのような変化がありましたか?
市岡:社内で育業制度を活用するのがあたり前という雰囲気になりました。また、採用面接で「男性でも育業できますか?」と質問されることが増え、採用の面でもプラスに働いています。
―最後に、今後目指す姿を教えてください。
市岡:スタート地点は「育業できる会社」でした。でも今目指しているのは「育業しても特別視されない会社」です。
そのため、育業する社員だけでなく、支える側の社員にも負担が偏らないよう、バックアップ制度の充実に取り組んでいます。こうした取組を通じて、安心して育業でき、送り出せる職場環境を整え、社員一人ひとりが自分らしいキャリアや働き方を考えるきっかけにつなげていきます。
また、今後は育業に限らず、介護休業や療養休暇など、さまざまなライフイベントを支える制度の充実も図っていきたいと考えています。
—ありがとうございました。
育業とは

東京都が2022年に公募し、選定した育児休業の愛称です。
東京都では育児を「休み」ではなく「大切な仕事」と捉え、育業を社会全体で応援する気運醸成に取り組んでいます。
HP:https://kodomo-smile.metro.tokyo.lg.jp/ikugyo
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