「一度きりの購入のはずが定期購入になっていた」「解約方法がわからない」──そんな経験はありませんか?こうしたユーザーを惑わせたり、ユーザーの不注意に付け込んだりして誘導するWebデザインは「ダークパターン」と呼ばれています。

一般社団法人 ダークパターン対策協会は、ダークパターンを用いる不誠実なWebサイトからユーザーを守り、インターネットの健全な発展に寄与するために『NDD(Non-Deceptive Design)認定制度』をスタートしました。この制度は、誠実な設計を行うWebサイトに「NDD認定マーク」を付与し、消費者が安心して利用できる環境づくりを支援しています。本記事では、実際に認定を受けたフォーラムエイトの伊藤裕二代表にインタビューし、認定取得の背景や具体的な取り組みを聞き、ユーザーにどのような影響があるのかを考えます。

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ダークパターンではないWebサイトを見極めるためのNDD認定制度

ダークパターンにはさまざまな類型があります。例えば一度だけ購入するつもりの決済が定期購入したことになっている「隠された定期購入」や、申し込んだサービスの解約手順や解約のためにアクセスする場所がわかりにくい「解約が困難」は、目にしたことのある人も多いパターンでしょう。

このほかにも、残り時間が少ないように見せかけてユーザーを焦らせる「偽りの緊急性」、価格やサービス内容の比較を困難にしてユーザーに安易な選択を誘導する「比較の阻止」、コンテンツに見せかけて広告を仕込む「隠された広告」など、有名なECサイトやWebサービスでもしばしば目にするパターンが少なくありません。

ダークパターンは運営者に悪意がある場合だけでなく不注意が原因の場合もあり、現行法で必ずしも個別に規制されていないグレーな領域を含みます。ダークパターンによる被害を防ぐためには、ダークパターンが故意か不注意かにかかわらず、そのような設計を見抜いて避けられるよう、ユーザーに対してそのWebサイトが誠実な設計かどうか判断する手段がなければなりません。それがNDD認定制度です。

ダークパターン対策協会はWebサイトの運営者の申告により、対象サイトがダークパターンではないことを審査し、合格したWebサイトにはNDD認定マークを付与しています。NDD認定を取得したWebサイトは認定範囲を示すアイコンと組み合わせて認定マークの表示が可能です。認定範囲は、クッキーバナー、購入前の最終確認画面、組織的対策の3種類です。

この認定マークは協会のデータベースと連動し、マークをクリックすることで詳細な認定情報を確認可能です。このため、NDD認定を受けていない悪意のあるWebサイトが他サイトで表示されている認定マークの画像をダウンロードし、無断で自分のWebサイトに表示していたとしても、ユーザーはすぐに真贋を見分けやすくなります。

ユーザーに安心感を与えるNDD認定ですが、認定を取得して認定マークを掲示するWebサイトが増えることが重要です。実際に認定を取得した企業の事例から企業側のメリットを見ていきましょう。

ユーザーに安心感を与えるWebサイトにするためにできるだけ早く取得
株式会社フォーラムエイト

1987年の創業以来、土木建築設計用ソフトウェア・技術を開発・提供するITベンダー。長年培った技術を基盤に、現在は主力パッケージ製品へのAI機能の組み込みを推進し、業務の効率化を実現しています。また、VR(仮想現実)を活用した都市計画や防災訓練の高度なシミュレーションソリューションも提供し、国内のみならず海外企業のDXを牽引しています。

伊藤裕二 代表取締役社長

フォーラムエイトの創業メンバーの一人。2003年10月より代表取締役社長に就任。一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会の理事・副会長や、一般社団法人 IT社会推進政治連盟理事・副会長、(一財)VR推進協議会の理事長などを務めています。

――最初にNDD認定を取得しようと決めた背景について、NDD認定のことを知った経緯や申請を決断した理由など教えてください。

伊藤氏:NDD認定取得の申請を決めたのは私です。8月にSNSで収集している情報の中にNDD認定のニュースがあって知りました。当社のWebサイト運営でユーザーに安心感を与えられるものであれば、できるだけ早く取得したほうが良いと考えました。詳しく検討するように部下に指示し、主催が信頼できる団体であることや、予想される工数、必要になる費用などを確認してゴーサインを出しました。そのあとの実際の作業は部下が行って私は進捗のたびに報告を受けた形です。

当社は1990年代のインターネットが普及し始めた頃から自社のホームページを制作し、それ以来インターネットを事業に活用して来ました。自社製品を販売するWebサイトもあり、今日までの間にさまざまな認定制度に申請して認められてきました。

当社は事業にプラスになる認定はISOも含めて積極的に取得しています。社内でいちから開発して同様の基準を満たすよりも、標準化されている規定に合わせたほうが担当部署の負担が小さくて済み、社外に対する広告効果も得られるからです。

また、当社はNFT(Non-Fungible Token)を利用する認証サービス「まじもんF8NFTS」を提供しています。NFTはブロックチェーンによる分散システムを利用してデジタルデータの真贋や所有権を保証する仕組みで、当社が運営する「フォーラムエイト ラリージャパン」の物販などにも利用しています。現在これをSNSのニュース発信者の真偽の保証に展開しようと取り組んでおり、NDD認定はこのための情報収集の中で得たニュースだったのです。

――NFTのサービスのために情報を収集している中で、NDD認定制度について知って有用と判断したのですね?

伊藤氏:はい。いま会社として一番敏感になっている分野なのです。WebサイトであれSNSであれ、コンテンツを発信するときに信頼できる情報かどうかを保証することは、今後絶対に必要になってくると考えています。

当社だけで似たような仕組みを作ることも不可能ではありませんが、それでは思わぬ盲点もあるでしょうし、コストの問題などもあります。NDD認定は一企業が運営するものではなく、複数の企業が参画する一般社団法人が運営している点も良いと評価しました。

――審査に向けて、組織面や技術面で準備や対応が必要になりましたか? また、その過程で気付いた課題はありましたか?

小屋氏:審査に向けた具体的な作業に関しては、担当した技術・広報マネージャの私と、技術部門の舘脇から説明します。組織的な部分と技術的な部分の両方で対応が必要でした。組織的な部分では文章の作成も必要で、私が書きましたが、一定の時間は費やしました。

  • 東京本社技術・広報マネージャ 小屋晋吾氏

    東京本社技術・広報マネージャ 小屋晋吾氏

舘脇氏:技術的な点では、Webサイトの更新が必要になりましたが、困難に感じることは特にありませんでした。購入ページで、購入前の承認チェックボックスなどを補完しましたが、そうした作業にはあまり時間はかかっていません。それでも自社のWebサイトがユーザー目線に完全に寄り添った形になっていなかったことに気付けた点は大きいと感じています。

  • UC-1 開発第1Group サイバーセキュリティチーム主事補 舘脇 望氏

    UC-1 開発第1Group サイバーセキュリティチーム主事補 舘脇 望氏

小屋氏:当社のWebサイトには製品を販売するECサイトのようなページが幾つかあるのですが、ページによって表示の仕方が統一されていないといったことがあったのです。

舘脇氏:従来のWebサイトでは、そのページだけを見るとサブスクリプションだと気付かずに注文する可能性がありました。実際にそうしたクレームは受けていませんが、今後そうしたクレームが出る可能性はかなり減ったと実感していますし、お客様に安心して使ってもらえると思います。

小屋氏:「使いやすい誠実なWebサイトにしよう」と社内でなんとなく意思統一されていましたが、明文化されたガイドラインがあることで具体的な作業に落とし込めました。今後の社内の取り組みにも役立つと思います。

  • NDD認定実装画面

    NDD認定実装画面

  • NDD認定実装画面

    NDD認定実装画面

――NDD認定を取得したことを踏まえ、消費者に向けてメッセージをいただければと思います。

伊藤氏:消費者を惑わして誘導しても違法でなければ問題ないと思って運営しているWebサイトは少なくありません。これらは問題があるのだと企業もユーザーも気が付く必要があります。当社はユーザーが間違いやすいというだけで企業に問題があると考えており、今後はその考え方が主流になっていくと思っています。

企業側の努力で世の中をクリアにしていくと言っても、一企業だけでできることではありません。できるだけ多くの企業がNDD認定制度に参加して広めていく必要があります。ユーザーも問題のあるWebサイトを見分けてこうあるべきだと声を上げてほしいです。そうして少しずつ良い世の中になっていけばと思います。

――ありがとうございます。

ユーザーが安心して利用できるインターネットを目指して

ユーザーの意思を尊重する信頼できる設計のWebサイトが増えることは、ユーザーの利益そのものです。一方、ユーザーの意思を無視して、知らず知らずのうちに選択を誘導するダークパターンは、何の対策もないからこそ広まってきたと言えます。NDD認定マークは「ユーザーの選択を大切にするWebサイト」のサインであり、ユーザーが「誠実な企業を応援する手段」でもあります。

伊藤氏が指摘したように、NDD認定制度の実効性を高めるには、賛同する企業が増えて多くのユーザーが認知することが重要です。そしてユーザーに対して誠実な設計のWebサイトは、ユーザーの応援がなければダークパターンに対してどうしても不利になります。正直者が馬鹿を見ない社会を作るためにも、NDD認定マークが普及して消費者被害を減らし、未来のインターネットが安心できるものになることが期待されます。

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[PR]提供:一般社団法人 ダークパターン対策協会