G-SHOCK初号機、通称「オリジン」のフォルムを受け継いだ人気シリーズ「5600」。そのデザインを約1/10サイズで精巧に再現した「“G-SHOCK nano” DWN-5600」が2025年11月8日(土)に発売された。
指輪サイズながら、耐衝撃構造や20気圧防水などG-SHOCKの名に恥じぬ性能を持つ本製品の開発背景やこだわりについて、商品企画を担当されたカシオ計算機株式会社(以下、カシオ) 時計事業部の小島一泰氏にお話をうかがった。
指輪サイズであっても、20気圧防水は譲れない
―「G-SHOCK nano」の特長について、簡単に教えてください。
小島氏「ひと言でいえば、指輪サイズのG-SHOCKです。2024年12月に発売したカシオリングウオッチという製品(※)」に比べて、対衝撃性と防水性能が大きく向上しています。リングウオッチは3気圧と日常生活防水だったものが、G-SHOCK nanoでは20気圧防水を実現しました」 ※現在は生産終了
―G-SHOCKを名乗るにふさわしい性能があるということですね。
小島氏「そうです。G-SHOCKを名乗る以上、やはりその基準は譲れないポイントでした。耐衝撃も含めて開発して何とか実現ができましたが、想像以上に苦労の連続でした」
―このサイズで「5600」を再現するにあたり、どのような点に苦労されましたか?
小島氏「やはり20気圧防水です。最初は、前述のリングウオッチ(ステンレス外装)を樹脂モデル化するというスタンスでのスタートでした。しかし、リングウオッチと樹脂モデルでは電池交換時のアプローチの仕方が大きく異なるので苦労しました。
リングウオッチは、リング形状で裏ぶたはなく、風防のガラスを特殊な器具で外してダイアル側正面からアプローチするという、一般的なスマートウォッチなどと同様の仕組みを採用。風防を特殊なテープで固定することで、3気圧防水は可能にしました。
ですが、当初から目指していたのは(G-SHOCK規格の)20気圧防水の再現です。しかし、リングウオッチと同じ構造では20気圧防水には耐えられません。通常のG-SHOCKのガラス(風防)は、パッキンというゴムやシリコンのパーツで止めて、ガラスとベゼルにテンションをかけることで、水が入らないようになっています。そのパッキンをG-SHOCK nanoのサイズで再現できるのか、電池をどのようにして配置し、交換できるようにするのか、そもそもガラスの設計をどうするのかなど、かなり悩みました。
―G-SHOCK nanoは、普通のG-SHOCKのほぼ1/10ぐらいのサイズですよね。それでも、そのパッキン構造を再現できたのですか?
小島氏「とにかく小さいこともあり、最初はできませんでした……。そこで、社内で近年確立した、ガラスの周囲に接着剤を塗布してガラスを接着する技術を使ってみることにしました。G-SHOCK nanoは、接着剤を塗布する幅が極めて狭いので難航しましたが、何回も調整して20気圧防水を実現させ、電池交換も可能となりました」
常識を覆す挑戦
―なかに入っている超小型デジタルモジュールは、今までの技術の延長上で実現できたのですか?
小島氏「構成自体は、今までのものと同じです。ただ、技術的には最新の技術になっています。たとえば、液晶の板厚(いたあつ)です。モジュールにはシルバーの液晶が組み込まれており、普通のG-SHOCKなどでは0.4mmのガラス板を2枚貼り付けて製造されています。しかし、G-SHOCK nanoでは、ガラス板の厚みをそれぞれ0.15mmまで削り、なかに液晶液を封入して通電させました」
―薄くすると、衝撃に弱くなりませんか? 割れやすくなりそうですが。
小島氏「私たちもそれが不安でしたが、サイズが格段に小さくなったことで、ガラスの応力(外的な圧力への抵抗力)が強くなることがわかりました。そのため、超小型の液晶が可能になり、モジュールを飛躍的に小さく、薄くできる見通しが付いたんです」
―時計のサイズが1/10になっても、時刻の見やすさは確保しないといけないので数字の大きさを1/10にはできませんよね。液晶の時刻(数字)表示に関してはどのようにしたのですか?
小島氏「セグメントは液晶の幅で決まるのですが、ここには細かい電子配線が入っていて、超小型液晶ではこの配線数が少なくなります。つまり、表示できるものが少なくなるのですね。そのため、文字の大きさはこのくらいという基準があり、それ以下では文字が潰れたり、セグメントが細くなりすぎてしまったりするので不可能といわれてきました。
ところが今回挑戦してみたら、それより小さくできてしまったんです(笑)。常識とされているものより、技術スタッフの小型化に挑戦するマインドのほうが強かったんですね。
これらの実験や試作は、配線と蒸着のパターン数多く作るなど、ある程度の費用が必要で、開発予算を確保しなければなりません。その点でも、技術スタッフの熱意が上層部に伝わって、それならやってみようかとなりました。完成品を見たときには、多くの社員が『今までの常識だった設計とまるで違う』、と驚いていましたね」
―最初に拝見したとき、カシオの技術アピールだと思いました。カシオの高密度搭載技術はここまでできる、を見せることをテーマにした参考出品だと思ったんです。でもお話をうかがって、そうではないことがよくわかりました。
小島氏「いくつもの研究と実験を繰り返したのは事実です。が、それは決して技術自慢のスペシャルモデルではなく、ほかの製品と同じように、根底にはお客さまに長く楽しんでいただきたいという想いがあります。
G-SHOCK nanoというサブネームを付けたのも、話題作りの一過性のものではなく、しっかりと将来を見据えたシリーズにしたいという決意の表れです。今後の展開にも、ぜひご期待ください」
指輪サイズという極小フォーマットに、G-SHOCKらしさを余すことなく凝縮した「G-SHOCK nano」。その挑戦の裏側には、1/10サイズでも妥協しない、常識に挑み続けるカシオの技術と情熱が息づいている。これまでにない“極小の相棒”として、今後の展開にも注目したい。
[PR]提供:カシオ計算機株式会社



















