スーパーに並ぶ食料品や日用品、住まいを建てるための資材、工場へ届けられる原料など、私たちの生活に欠かせない物資がどのようにして運ばれてきているのか、皆さんは知っていますか?

実は、日本の物流の4割を占めるのは海上輸送。つまり、身近なものの多くは“海の道”で運ばれているのです。しかし今、この重要なインフラを担う船員の高齢化と人手不足が進んでいます。そこで注目されているのが、国が設置する船員育成の専門機関・JMETS(独立行政法人海技教育機構)の存在です。

今回は、全国の内航船員を育てるJMETSに属する国立宮古海上技術短期大学校(以下、宮古海技短大)を取材!訓練や授業が行われる現場に潜入し、日本の内航を支えるプロフェッショナルをどのように育成しているのか、その実態を取材しました。

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次世代の育成に特化した宮古海技短大

宮古海技短大は、日本の国内物流の4割を担う内航海運業界において、次世代の育成に特化した教育機関です。こちらの学校の最大の特徴は、船員の国家資格である四級海技士(航海)と内燃機関四級海技士(機関)の免許を、在学中の2年間で取得できるところ。

※ 内航船(国内を航海する船)の船長や機関長になるための国家資格

また、船員になるための教育機関の多くが航海士か機関士のどちらか一方の専門に特化している中、宮古海技短大ではその両方の免許を取ることができます。さらに、1学年1クラス45名の少人数制を採用することで、一人ひとりへの手厚い指導が実現しています。

ここからは、そんな宮古海技短大の授業・実習の様子や校内施設を見ていきましょう!

どんなことを学べる?宮古海技短大の授業・実習を見学!

  • 案内してくださったのは、学生課の毛利航さん(左)と、教務課長の鬼塚伊織さん(右)

    案内してくださったのは、学生課の毛利航さん(左)と、教務課長の鬼塚伊織さん(右)

●座学

宮古海技短大の授業は1日8時間制で、午前と午後にそれぞれ4時間ずつ。1学年時には、岩手県宮古市にある校舎で、座学と実習で船員になるための基本的な知識と技術を学びます。

座学の内容は、航海計器や航法といった操船に関することから、船舶運航に関する法律、エンジンを扱うための船用機関や電気電子工学、救命に関する知識など、多岐にわたります。四級海技士の養成施設のため、筆記試験で免除される範囲を全て網羅できるよう、広範な知識を教えているそうです。

●航海科標本室

次に向かったのは、「レーダARPA(アルパ)シミュレータ」の実習訓練。ARPAとは、自動衝突予防援助装置のこと。レーダで障害物や他の船との距離や方位を測定し、衝突の危険を回避します。

この実習では、船長役・操舵役・計器当番役などを割り振って、船を動かします。大画面で、臨場感抜群!四級海技士の免許を取るうえで必要不可欠なのはもちろんですが、学生たちにも人気のカリキュラムだそう。

●機関科標本室

「機関シミュレータ」というソフトを使って、エンジンのトラブルシューティングを行います。画面上で操作をしながら、エンジンの各部が互いにどのように作用しているかを学ぶことができます。

●甲板技業室

ここでは、船での業務に欠かせないロープワーク等を学びます。

壁には20種類ほどのロープがずらり。学生たちは様々なロープの材質・特徴を学び、基本的な結び方や編み込み方から始め、ロープ同士を確実につなぎ合わせる技術まで身につけていきます。実習では、繰り返し手を動かしながら「船乗りの手の感覚」を自分のものにしていきます。

●機関実習室

機関実習室では、実際のエンジンを用いて分解や復旧の実技を行います。部品の構造を理解し、再び正確に組み立てることで、トラブルが起きた際の対応力を養います。座学では得られない、現場で通用する力を磨く場となっています。

●練習船 「月山」

学校から1kmほどの港に停泊しているのが、練習船「月山」です。同校では、1年生の段階から、練習船を使っての海上実習も行われています。有事を想定し、ライフジャケットを装着して船上から海に飛び込む訓練などもあり、船員として働いていくうえで必要な心構えについて身をもって体験できるそうです。

この他にも、さまざまな座学・訓練カリキュラムが用意されています。それにしても驚いたのは、2年間という短い期間で本当に多くの内容を学べるということ。

「当校では、航海士と機関士の両方の免許取得を目指すため、非常に密度の高いカリキュラムを提供しています。だからこそ、一人ひとりがしっかりと知識と技術を身につけられるよう、1クラス45人の少人数編成できめ細やかなサポートができるようにしているんです。そうして若く優秀な船員を育成し、彼らが長く業界で活躍できる基盤を築くことが私たちの使命です」と、鬼塚さんは力を込めました。