G-SHOCKなどの有名製品で知られるカシオ計算機(以降、カシオ)ですが、実は教育分野にも力を入れているのを知っていますか? 国内ではオールインワンのICT学習アプリ「ClassPad.net」を展開し、海外では国や地域ごとの数学教育の実情に合わせ、関数電卓を軸とした教育支援を行っています。
今回は教員として働いたのち、カシオに中途入社したお二人にインタビュー。ハードとソフトの両輪で学校教育に貢献するカシオならではの取り組みと、変化を受け入れ成長していく企業文化に迫ります。
-

左から営業本部 国内営業統轄部 PRグループ 高沢氏・営業本部 教育統轄部 戦略企画部 GAKUHAN戦略室 石川氏
---まず、お二人の部署とお仕事内容について教えてください。
石川氏:前職では中高一貫校で数学を教え、カシオには2023年4月に入社しました。私が所属するGAKUHAN戦略室では、主に海外向けに関数電卓を使った数学教育事業を展開。全体のプロジェクトを組み立てるチームと教材を作るチームが協力して事業を進めており、私は教材チームでバングラデシュ地域を担当しています。同国の政情不安が続くなどの事情もあり、プロジェクトはようやく始動した段階です。
高沢氏:私は2024年4月の入社で、今年4月に部署が変わりました。石川さんと同じく、前職は教員で英語を担当。もともと「ClassPad.net」の開発部だったのですが、現在は国内営業統轄部です。ただ、業務内容はあまり変わっていません。教員時代も学校内のICT周りを担当していたので、その経験や視点を生かして、ClassPad.net開発部へのフィードバックや、営業担当者が先生に提案する際のアドバイス、現場の先生へのICT活用の提案などを行っています。
---お二人とも元教員というご経歴を生かしてカシオに中途入社し、プロダクトに関わっておられるのですね。
---まず、高沢さんが携わっている「ClassPad.net」について教えてください。
高沢氏:ClassPad.netは、ICT教育を効果的にサポートするオールインワンのICT学習アプリです。デジタルノート、オンライン辞書、数学ツールなど、さまざまな機能を搭載しています。カシオは長年、関数電卓や電子辞書を提供してきましたが、それらのハードの強みを統合し、アプリケーション化したのがClassPad.netです。もちろん生徒だけではなく、先生の業務を支援する機能も併せて備わっています。
---さまざまな機能がひとつのプラットフォームで使用できる点は便利ですね。
高沢氏:学校現場ではすでにさまざまなICTツールが導入されていますが、ツールごとの使い分けやパスワード管理に苦労される先生も少なくありません。授業を始めようとしたら、生徒たちから「ログインできません」といった声が上がるのは日常茶飯事です。ClassPad.netに必要な機能を統合することで、そうした負担を軽減できます。
---先生方からの評判はいかがですか。
高沢氏:特に評判が良いのはオンライン辞書機能ですね。最近は生成AIが普及していますが、そんな中でも自分で考える力を身につけさせるために電子辞書の活用を重視している先生も多くいらっしゃいます。また、課題を配布したり、回収したりする機能もよく使われてますね。板書の手間が減り、同じ内容の授業を複数クラスで行う際の効率化にもつながっています。
---教育現場のICT化において、ClassPad.netはどのような改革をもたらしているのでしょうか。
高沢氏:極端な話、「黒板があって先生と生徒がいれば授業はできる」わけで、だからこそICTを従来の授業にどう取り入れればいいか悩んでいる先生も少なくありません。ClassPad.netなら、これひとつで授業を始められ完結できます。その意味で、ICT教育の足がかりになるアプリだと思いますね。また、ClassPad.netを導入することで生徒自身が自分の考えを形にしたり、自主的に考えたりする時間が増えますし、先生も板書する時間が減ることで、より生徒に向き合えるようになるのではないかと思います。
---今後のClassPad.netの展望を教えてください。
高沢氏:私たちのステートメントは「Boost your curiosity」です。先生や生徒など学びに関わる人すべてに、最高の体験を提供することを目指しています。今後はClassPad.netの基本機能の磨き込みに加え、AI活用も検討中です。たとえば、日本語を英語に機械翻訳するだけでは学びを奪う可能性もありますよね。どのような形でAIを組み込めば、より豊かな学びを実現できるかを見極めていきます。
---続いて石川さん。海外向けの数学教育事業の主力製品について教えてください。
石川氏:日本向けの最新関数電卓は「fx-JP900CW」です。海外にも同じ外観のモデルを展開していますが、細部が異なります。カラー展開といった見た目の違いだけではなく、機能が国ごとに異なる専用機を展開しています。
-

左側が汎用機、右側が日本向けのモデル
専用機は、言語対応だけではなく各国の教育カリキュラムや試験制度等に合わせて機能をカスタマイズしています。たとえば、フランスの中学課程にはプログラミング学習が追加されたため、同国向けの製品はミントグリーンのカラーで、ビジュアルプログラミングができる機能を搭載しているんです。
---各国で機能をカスタマイズしているというのはユニークですね。現地から要望があるのでしょうか。
石川氏:そうですね。たとえば、とある国からは「ある数を計算する機能がほしい」という要望を受けました。日本人にとっては暗算で解けるような数であっても、国によっては関数電卓でささっと計算して、その計算結果を用いた次のステップに集中させることの方が重要と考える場合があるからです。数学教育の方針は国により異なるため、ニーズに合わせた機能を搭載し専用モデルとして展開しているのです。
---関数電卓の展開を通じたGAKUHAN活動の内容について教えてください。
石川氏:当社では、関数電卓の展開を通じて、世界各国の教育現場をサポートするGAKUHAN活動を1990年代から行ってきました。その中で私が従事している活動内容としては、各国のカリキュラムや教科書を分析し、それに基づいて教材を作成。その後、現地の教員に対する研修を実施し、学校での実践を通じて関数電卓の導入・販売につなげます。また、教育省への面会を通じて、私たちの活動に対する賛同を得たり、教育省から教師たちに関数電卓の利用を推奨してもらうことを目指しています。
たとえば昨年11月には、バングラデシュで6校を対象に関数電卓の実機貸し出しと教材提供、教員研修を実施。先生方は日本の模擬授業のスタイルに慣れていませんでしたが、自分なりにアレンジして授業を行ってくれました。生徒たちも非常に学習意欲が高く、関数電卓を使った授業を楽しんでいましたね。受け身の授業から、生徒たちが試行錯誤しながら考える授業へと変化が生まれた手応えがあり、うれしかったです。
---GAKUHAN活動はビジネス的な側面だけでなく、教育支援の側面もあるのですね。
石川氏:はい。ビジネスだけが目的ではありません。当社は「教育のカシオ」というイメージも大切にしています。ひとつの国での成功事例が他国に広がり、「うちでもやりたい」という声につながることを期待しています。また、数学は世界共通の分野だと思われがちですが、国によって記号やニュアンスが少し異なることもあります。各国の先生方と交流しながら、そうした違いも踏まえて、関数電卓を活用した数学教育の在り方を考えていくのが楽しいですね。
---教材作成において、前職の経験はどのように生かされていますか。
石川氏:私は私立の中高一貫校で中学・高校の授業を担当し、情報の教員免許も持っています。こうした経験は関数電卓を使う授業で活用する教材の作成にも大いに生きていますね。たとえばバングラデシュ版の教材には、生徒が詰まったときにどのような言葉をかけると良いか、という指導上のヒントも記載しました。これは現場経験なしには難しい工夫だと思います。
---今後のGAKUHAN事業の展望を教えてください。
石川氏:私が教員を志した背景には、理系を志す女子を育てたいという思いがあります。関数電卓というツールがあれば、数学が苦手な生徒でも理系を目指しやすくなるはずです。また、最近は各国でSTEM教育(※)が注目されています。私も理系教育者としての経験を生かしてSTEM教育に取り組んでいきたいです。世界的に理数離れが進んでしまっているのですが、「数学は楽しい」ということを伝えていきたいですね。
その文脈で、「Women Do Science」という取り組みも別の部署で進めています。関数電卓のカバーに著名な女性科学者のイラストを印刷し、ユーザーに科学分野における女性の活躍を紹介することで、同分野の男女格差解消を支援する取り組みです。
※科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4つの分野を統合的に学ぶ教育
カシオの「Women Do Science」の取り組みについての詳細はこちら
---元教員からカシオに中途入社されたというユニークな経歴をお持ちのお二人ですが、カシオはどのような会社でしょうか。
高沢氏:グローバル企業なので、より広いスケールで教育に携われます。学校では深く生徒たちに関わることができるのですが、対象はどうしても限られてしまいます。その点カシオは日本全体、さらには世界中の教育に関われる可能性がある点が魅力ですね。また、働き方も柔軟です。たとえば、朝早く来て夜早く帰ることができるフレックス制度やその日のスケジュールに最適な場所で働くことが可能なシェアオフィス制度などが充実しています。これらの制度を活用して、私の場合は仕事終わりに趣味の一環で心身を鍛えられるブラジリアン柔術に打ち込んでいますが、自分のライフスタイルに合わせて働くことが可能です。
石川氏:私は学生時代から、海外で教育に携わりたいと考えていました。そんな中で、カシオの求人を見つけ、「海外における数学教育」というキーワードに惹かれて、ここなら海外における理系教育の発展に貢献できると思い入社しました。海外に現地人の協力教師というネットワークを持っていることがカシオの強みで、数学教育に情熱を注いでいる者同士で活動を盛り上げていく過程に魅力を感じます。また、働き方は高沢さんがおっしゃるようにフレキシブルで、家族の用事に合わせることもできて助かります。
---最後に、カシオの教育事業の展望を教えてください。
高沢氏:ClassPad.netについては、まず国内ユーザーの体験向上を徹底していきたいと思っています。ただ、私はもともと英語教員だったこともあり、石川さんと同様、海外の教育に携わりたいという気持ちを持っています。カシオの強みはグローバルに事業を展開していることなので、個人的には、教育のICT化がグローバルに進展する中でClassPad.netも世界中の教室で活用されるといいなと思っています。
石川氏:引き続き、世界的な理数離れの課題解決に向けて取り組みます。数学教員で培った経験と関数電卓を上手に活用しながら、「数学は実はこんなに面白いものだよ」ということを伝えていきたいです。
***
国内向けのClassPad.netと海外向けの関数電卓事業を通じて、教育事業に取り組むカシオ。元教員である高沢氏と石川氏は、現場経験を生かして、使いやすい製品開発と効果的な教育支援に挑んでいます。ClassPad.netは先生・生徒の双方にとって使いやすいソリューションを提供し、海外向け関数電卓事業では各国の教育カリキュラムに合わせた専用モデルと教材を展開しています。
根底にあるのは、教育に向き合う真摯な姿勢と、変化を受け入れて進化するカシオの理念。教育のニーズが変化する中で、同社の取り組みはこれからも現場を支え続けていくことでしょう。
[PR]提供:カシオ計算機株式会社





