健康経営優良法人「ホワイト500」に認定されるだけでなく、2025年3月には「健康経営銘柄」に初選定されたカシオ計算機株式会社(以下、カシオ)。健康経営に取り組む企業が増えるなか、いち早く社員の健康に目を向け、多角的な施策を実施してきました。

しかし健康経営銘柄選定の背景を伺うと、カシオの健康経営推進チームからは「特別な秘策があったわけではない」と意外な返答が。では、どういった部分が評価につながったのでしょうか。本記事ではカシオが健康経営銘柄に選定されるまでの経緯や、具体的な取り組みを紹介します。

  • 左から人事部業務グループ グループマネージャー 佐藤さん/人事業務グループ 健康経営推進チームメンバー(医療職)岡野さん/人事部業務グループリーダー 健康経営推進チームリーダー 千葉さん

    左から人事部業務グループ グループマネージャー 佐藤さん/人事業務グループ 健康経営推進チームメンバー(医療職)岡野さん/人事部業務グループリーダー 健康経営推進チームリーダー 千葉さん

トップダウンで始まった健康経営

---「ホワイト500」のなかでもとくに優秀な50社のみが選ばれる「健康経営銘柄」。カシオの初選定を知ったとき、どのようなお気持ちでしたか?

佐藤さん 選定の第一報をいただいたときには、「本当かな?」と驚きました。ですが健康経営に取り組む企業が増えているなかで当社を選んでいただけたので、本当に嬉しかったです。

千葉さん 健康経営銘柄選定によって、私たち健康経営推進チームの活動も社内でも高く評価され、社長賞をいただきました。

岡野さん 商品を売るだけでなく人的資本投資も大切にしている会社だからこそ、評価につながったと感じています。

---カシオが健康経営を重視するに至った経緯を教えてください。

佐藤さん 当社は企業価値向上をめざし、人的資本経営に重きを置いています。その一環として、2021年に健康経営推進チームを社内に発足し、2022年に「CASIO健康基本方針(※)」を制定しました。従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる職場にしようと、力を入れるようになったんです。

※私たちは、一人ひとりが安心して生き生きと働き、仕事を通じて最大のパフォーマンスを発揮できる職場環境を目指します。そのために、一人ひとりが主体的に考え、健康意識の高い行動に努めます。

岡野さん 健康経営に力を入れるというトップからのメッセージ発信は、医療職としてもありがたいと思います。

千葉さん それまでも社員の健康が大切だという意識は組織内にありました。ただ、改めて明言してもらえたことで、一人ひとりの健康への意識が一段階上がったと思います。

施策の“つながり”を可視化した「戦略マップ」

---健康経営銘柄選定に至るまで、どういった取り組みに注力したか教えてください。

佐藤さん 当社では健康経営のためにさまざまな施策を行ってきましたが、なかには単発になっていたものもありました。効果測定や改善点の洗い出しなど、PDCAサイクルが回せていなかったんです。ですからひとつひとつのセミナーや施策を見直し、「戦略マップ」として体系立てました。

千葉さん 最終的に達成したい目標は、「CASIO健康基本方針」の実現です。これにたどり着くためには何を行えばいいのか、細分化した目標とそれに付随する施策を考えていきました。

---細分化した目標とはどのような内容なのでしょうか?

千葉さん アブセンティーズム(傷病等で会社を欠席している人数)の減少、プレゼンティーズム(パフォーマンス不完全勤務者率)の減少、そしてワークエンゲージメント(仕事へのやりがいや満足度)の向上です。

佐藤さん 戦略マップがあることで、単にセミナーなどを開催するのではなく、次に結びつけるためにはどうしたらいいかを意識するようになりました。

岡野さん 社員の関心度や満足度もだんだん高まってきましたよね。誰に向けて行うのが効果的か、社員が求める内容は何かなど、施策一つひとつを見直しました。

佐藤さん たとえば当社の開発拠点・羽村技術センターで実施していた、睡眠に関するセミナーです。このセミナーはもともと羽村でしかやっていなかったものの、「社員全員に必要な内容だよね」と見直しました。今は全社員向けに開催しており、とても好評です。

セミナー参加率や男性育休取得率が向上! 健康経営に貢献した成果

---戦略マップのおかげで、健康経営に関する施策の全貌を俯瞰できるようになったのですね。

千葉さん 力を入れなければいけない領域を見出し、ピンポイントで施策を強化しやすくなりました。女性の健康課題に対するセミナーの開催もそのひとつです。

岡野さん 女性の健康課題に関しては継続的に取り組んできたものの、セミナー参加率が伸び悩んでいた時期がありました。そこでセミナーの内容などを見直した結果、参加率が大きく向上しました。この点は、健康経営銘柄選定時にも高く評価されています。

---セミナー参加率はどのくらい伸びたのでしょうか?

岡野さん セミナーは「女性向け」「管理職向け」「全従業員向け」に分けて実施しています。それぞれの参加率は、2023年は女性向けが28.7%、管理職向けが38.6%、全従業員向けが27.8%でした。一方2024年は女性向けが29.3%、管理職向けが68.4%、全従業員向けが70.8%です。

---管理職と全従業員向けのセミナー参加率が、とくに伸びていますね!

千葉さん 一律で同じセミナーをするのではなく、ターゲットごとにテーマやシナリオを変えたのも工夫のひとつです。

佐藤さん 最初のうちは、どうすれば女性の健康の大切さをわかってもらえるのかと我々も悩んでいて。何度か開催するうちに、女性の健康と労働生産性の関係を理解してもらうことが重要だと気づきました。そのため管理職向けセミナーでは、部下の健康管理もマネジメントのひとつと位置づけて伝えています。単に女性の健康課題を教えるのではなく、それが仕事のパフォーマンスをどう左右するのかを知ってもらえる内容にしました。

岡野さん 内容も毎年少しずつ変えており、社員の困りごとや関心をセミナーに反映させてきました。たとえば社内でメインとなる年齢層や、悩みに合わせたテーマです。今は40代の女性社員が多いので、PMS(月経前症候群)に関するセミナーを計画しています。

---睡眠や女性の健康など、テーマを身近に感じられるセミナーが多いですね。セミナーというと堅苦しいイメージがあったので驚きました。

千葉さん 堅苦しくないように配慮しつつ、仕事のパフォーマンス向上という目的に結びつく内容にしています。睡眠のセミナーでも、寝る前に何をしたら質が高まるかなどを伝えました。

佐藤さん 今まできちんと習う機会がなかった内容だと思うので、改めて聞くと発見がたくさんあるはずです。たとえ小さな悩みであってもパフォーマンスを存分に発揮できない原因になるのであれば、対策のための施策が必要だと考えています。

---セミナー以外には、どのような施策を実施していますか?

千葉さん たくさんありますが、健康経営銘柄選定では男性の育児休業取得率の向上も評価されました。当社では2030年までに男性の育休取得率を100%にすることをめざしており、今は70%以上が取得しています。取得期間も平均1カ月以上です。

---なぜ男性の育休取得に力を入れたのでしょうか。

千葉さん 男性の育休取得は、制度としては前からありました。しかし取得率を向上するには、それを受け入れる社内風土の醸成などが必要です。ここ数年で、男性の育休取得がようやく当たり前になってきました。

---育休取得が当たり前、といった雰囲気づくりのために取り組んだことはありますか?

千葉さん 会社から取得を促すのはもちろん、育児休業に関するハンドブックを全社員に配布しました。出産や育児に対してどのような制度があり、会社はどう対処するのかなどの内容を周知しています。

佐藤さん ハンドブックには女性社員からのコメントも載せました。夫婦ともに当社で働く女性社員の声なのですが、「人生で二度と味わえないような貴重な時期に、夫が育児休業を取ってくれてよかった」と言ってくれて。男性にとっても女性にとってもメリットがある制度なのだと伝えています。

岡野さん おかげで会社全体が、性別にとらわれず仕事と生活の両立を支援する、といった風土になり、社内では育休取得に賛同する雰囲気が高まりましたし、健康経営銘柄などで対外的にも評価してもらえました。社員としても「ここまで人を大切にしてくれる会社で働けているんだ」と知る機会になったと思います。

千葉さん 実はずいぶん前は本当に男性の育休取得率が低かったです。しかし今はマネジメント層に入る方の多くが育休経験者になり、「育休は当たり前」という考えが浸透しました。長年の積み重ねの成果です。

一人ひとりの健康に寄り添えるように

---施策を展開するにあたって、社員の声を取り入れる機会はありますか?

佐藤さん 健康経営推進チームの施策に関しては、すべて事後アンケートを実施しています。

岡野さん 社員によるディスカッションの機会も年に数回設けています。こちらから提示したテーマに対して、みなさんの考えを聞く貴重な場です。

千葉さん たとえばインフルエンザの予防接種に関しては、ディスカッションでの意見がとても参考になりました。昨今は外部の医療機関でも予防接種ができるので、社内接種の必要性が薄れたと人事部では考えていたんです。しかしディスカッションで、社内接種があると助かると感じている社員が多いと分かり、その意見を反映させて社内接種の継続を決めました。

---健康経営を推進するなかで、どのようなことを重視していますか。

佐藤さん 地道に続けることです。実は健康経営銘柄に選定されたことを機に、情報交換やお声がけをいただく機会が増えました。昨年度に比べ順位が大きく上昇したこともあり「急成長できた秘訣は?」と聞かれるときも多いのですが、正直に言って、飛び抜けた秘策はなくて、健康経営は一朝一夕にできるものではありません。地道に続けた実力が、順位の上昇につながったと思います。

岡野さん 時間をかけて長い目で社員の健康を支える、という姿勢は施策にも反映されていますよね。当社では通常40歳以上の社員を対象に行う特定保健指導を、35歳から始めています。病気になってから治療を始めるよりも、若いうちから取り組んだほうが生活習慣の軌道修正がしやすいからです。

---健康経営に関する今後の展望を教えてください。

佐藤さん 健康経営銘柄に選定されたことで、社会的な責任も一層強まると自覚しています。地域社会やステークホルダーに対しても健康経営の重要性を発信し、貢献していきたいです。また、社員一人ひとりの健康維持・増進にさらに目を向けていきます。社員が健康でないと会社は活性化しません。今後も健康経営をマネジメントの一環に位置づけ、企業価値を高めていきたいです。

千葉さん たとえば社員一人ひとりに必要なアドバイスを、より届けられるようになればと思っています。インターネットを見れば健康情報はいくらでも調べられる時代ですが、信ぴょう性を判断するのは難しいです。だからこそ会社から正しい情報を発信していきたいと思います。

佐藤さん 活用できそうなデータのひとつがPHR(Personal Health Record)です。当社では社員がウェブで自身の健康診断の結果を確認できるので、関連情報をプラスして届けられたらと考えています。データを見た社員の健康意識が高まり、行動を変えようと思えるような仕組みを作りたいです。

岡野さん 生活習慣病予防のために、食事と運動に関する取り組みも強化したいです。社員が何を求めているのかきちんと把握し、具体的なアプローチに落とし込んでいきます。また、マネジメントと健康経営の関係を意識できるような情報も、継続的に届けたいです。

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企業のパフォーマンス向上に欠かせない、社員の健康。その重要性をカシオ全体が理解し、具体的な施策に落とし込んできた成果が、「健康経営銘柄」として評価されました。しかし銘柄の取得はゴールではなく、新たなスタート。これからもカシオは一歩先を見据えた健康経営をめざし、施策を充実させていくでしょう。健康経営の先陣を切る企業のひとつとして、今後も目が離せません。

[PR]提供:カシオ計算機株式会社