子どもが「自分で考え、学ぶ力」を育むには、どんな教育が必要なのでしょうか──。
私たちの社会が大きく変わるなかで、教育もまた、変化の真っ只中にあります。これからの時代にますます求められるのは、正解を早く出す力ではなく、自ら問いを立て、考え、行動していく「主体性」です。 それを育むためには、学びの仕組みだけでなく、それを支える“人”の関わり方も、大きな鍵を握っています。
今回は、主体性を育む教育改革を実践してきた工藤勇一先生と、AI型教材「キュビナ」を開発するCOMPASSの木川俊哉さん・青木瞳子さんに、これからの教育のあり方と、その変革を担う“新たな担い手”の可能性について話を伺いました。
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工藤勇一先生
東京都教育委員会など教育行政に関わった後、千代田区立麹町中学校の校長に就任。子どもの主体性を重視した自由な学校改革を進めるなかで、COMPASSが開発した「キュビナ」を導入。現在は、元サッカー日本代表の岡田武史監督が学園長を務める「FC今治高等学校 里山校」など多数の教育機関に関わるほか、全国で講演活動を行う。TBS系日曜劇場「御上先生」(2025年1月)の学校教育監修。 |
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株式会社COMPASS取締役
CLO(チーフ・ラーニングエクスペリエンス・オフィサー) 木川俊哉さん 慶応義塾大学環境情報学部卒業。個別指導塾を共同経営するなかで、教育の魅力を知る。教育現場におけるテクノロジーの可能性を感じ、2014年にCOMPASSへ参画。現在は、COMPASSの理念をプロダクトやサービスに転換する部署を統括。 |
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株式会社COMPASS 未来教育コーディネーター
青木瞳子さん 大学時代から児童福祉を専攻し教育に興味を持つ。大学卒業後、福利厚生の企業に勤めた後、COMPASSに就職。ビジネス推進ユニット セールス&サクセス部を経て、今年4月より「理想の学び」を追求する部署である未来教育室所属に。 |
「主体性」が育ちにくい - 現場が直面する課題とこれからの教育
――これからの社会では、子どもたちにどのような力が求められるとお考えですか?
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かつての高度経済成長期、日本は大量生産・大量消費のモデルで経済を拡大してきました。そのなかで求められたのは、上からの指示に従順に従い、素早く正確に作業をこなす力でした。教育もそれに対応する形で、「正解を早く出す力」や「言われたことをきちんとこなす力」を育てる方向に最適化されていったのです。 しかし、今はもうそういう時代ではありません。社会は成熟し、人口も減少し、みんなが同じことをやっても価値が生まれない。むしろ、価格競争に引き込まれるだけです。これからは、1人ひとりが自分で課題を見つけ、自分の頭で考え、解決策を探っていく力が求められる時代です。 |
――そうした力を育てるために、教育現場にはどのような課題があるとお考えですか?
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自分で考え、行動する力を育てるには、何より「主体性」が必要です。主体性とは、誰かに言われて動くのではなく、自分で意思を持って決め、動く力のことです。 本来、学校はその主体性を育む場であるべきなのですが、「正解を早く出す力」や「言われたことをきちんとこなす力」を重視する教育では、授業や宿題を教師があらかじめ用意し、子どもたちはそれを効率よく“こなす”ことに徹するようになっていきました。これでは、主体性はなかなか育ちません。 教育とは本来、「与えられるのを待つ」ものではなく、「自ら学び取っていく」ものです。だからこそ、教師の役割も“教える人”から“学びを支える人”へとシフトしていく必要がある。私はそう考えています。 |
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教育現場でも、先生方が1人ひとりの子どもに向き合いながら、時代の変化に対応しようと努力されているのを感じます。その一方で、現実には時間や体制の制約があり、どうしても従来の授業スタイルに頼らざるを得ない場面も多いのが実情です。そうしたなかでも、私たちがご一緒している先生方のなかには、ICTを活用したり、外部と連携したりと、主体性を育む新しい教育のスタイルを実践する方が増えてきており、変化の兆しを感じています。 |
あえて「教えない」「強制しない」学校改革がもたらした変化とは
――教育のパラダイムが大きく変わろうとしているなかで、工藤先生はそれに先駆けて、学校現場で改革を実践されてきました。具体的に、どのような取り組みをされていたのでしょうか?
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私が麹町中学校の校長に就任したとき、教育のあり方を根本から見直すことにしました。その改革の一つとして取り入れたのが、COMPASSが開発したAI型教材「キュビナ」を活用した授業です。もともとキュビナのことは知っていて、これは主体性を育む教育に使えるかもしれないと考えていたんです。 |
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はい。キュビナは、子ども1人ひとりに最適な問題を提供するAIを搭載した教材です。なかでも重要なのは、子どもが問題を間違えたとき、単に正解を教えたり、同じ問題を繰り返し出題するのではなく、自分の弱点に気づき、それを乗り越えるプロセスを“支える”という考え方です。 AIが学習履歴を分析し、つまずきの原因に応じた問題を提示することで、子どもが自ら理解を深められるよう設計されています。まさに、工藤先生が目指されていた「子どもの主体性を育む教育」と重なる部分が多く、ぜひ麹町中学校で実践させていただきたいとお願いしました。 |
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実際に導入する際、私は「キュビナを単なる復習ツールとして使っていてはもったいない」と教員たちに伝えました。すると彼らはじっくり考えた上で、「もう教えるのをやめようと思います」と言ったんです。これからの授業は、先生が一方的に教えるのではなく、生徒が自ら学び取る場へと変えていく。その学びを支える手段の一つとしてキュビナを活用するということでした。 もちろん、キュビナを使って学んでいても、分からないことは出てきます。そんなときには、先生に質問したり、インターネットやYouTubeで調べたり、クラスメイト同士で一緒に考えたりと、自分に合った方法で解決していく。そのような新しい授業スタイルを、COMPASSの皆さんにも教室に入ってもらい、現場の教員と一緒に手探りで形にしていったんです。 |
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最初は、子どもたちも戸惑っていましたよね。先生は「こうしたら学べるよ」と学び方を伝えるだけで、それ以上は教えない。子どもたちが自分の意思で動き出すのを信じて、見守りながら待ちました。勉強しない子がいても、「やりなさい」と強制しない。周囲の邪魔をしなければ、勉強しないことも自由とする。そんな前提のもとで、子どもたちの主体性を引き出そうとしたんです。3ヵ月ほど経つと、徐々にそれぞれが自分なりの学び方を見つけていったのを覚えています。 |
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そうですね。なかには、最長で7ヵ月間まったく勉強しなかった子もいました。でも、ある日突然、自分の意志でキュビナに取り組みはじめて、そこから1ヵ月で学年の学習範囲をすべて終えたんです。自分で「やろう」と思えた瞬間に、これほどまでの力を発揮できるという事実は、主体性の持つ力を如実に示していると思います。 |
“新しい視点を持つ人”が、今の教育を変える力になる
――主体性を育む教育のあり方が見えてきました。こうした変化を現場で支えていくには、どうすればよいのでしょうか?
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そうですね。どれだけテクノロジーが進化しても、教育の中心にいるのは、やはり“人”です。だからこそ、その担い手こそが、これからの教育を形づくる鍵になると考えています。 主体性を育む教育では、子どもが「自ら問いを立て、考え、行動していく」姿勢が何より大切です。そして、そうした力は、大人が「こうしなさい」と一方的に導く関わり方ではなかなか育ちません。だからこそ、これからの教育には、これまでの枠組みややり方に固執することなく、1人ひとりの子どもと丁寧に向き合い、「今この子にとって最適な関わりは何か?」を常に探り続ける柔軟さが、大人の側に求められていると感じます。 そう考えると、たとえば学生時代に学校の枠組みに違和感を抱いた人や、画一的なルールに息苦しさを感じたことのある人は、今の教育にとって貴重な視点をもたらしてくれる存在かもしれません。そういった人たちは、「これまでのやり方が絶対的な解ではない」という感覚を、経験として持っているからです。 そういった多様な考えを持った人たちが教育の場に加わることで、これまで現場を支えてきた先生方の知見や経験と、新しい視点や柔軟な発想が重なり合い、子ども1人ひとりの違いや可能性に丁寧に目を向けながら、これまでにない新しい教育の形を共に創っていけるのではないかと考えています。 |
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私も、「視点の多様性」はこれからの教育に欠かせないものだと感じています。私自身、まったくの異業種からこの教育業界に飛び込んできました。最初は正直、不安もありましたが、実際に子どもたちや先生と関わるなかで、異業種で培ってきた考え方や経験が思いがけず役立つ場面がたくさんあったんです。 もちろん、教育の現場にはこれまで積み重ねられてきた知見や実践があり、そこから学ぶことは本当に多いと感じています。大切なのは、そうした蓄積に対して新しい視点や柔軟な発想が交わることで、新しい価値が生まれることだと思うんです。 |
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本当にその通りだと思います。教育にはこれまでの実践から得られた大切な知見がたくさんあります。ただ、それを守るだけでは変化のスピードに追いつけない場面もある。だからこそ、異なる背景や経験を持つ人たちが集まり、それぞれの立場から「子どもの学び」について一緒に考えていくことが大切なんだと思います。 そうすることで、教育はより多様で、これからの社会により適した新たな形へと進化し続けていけるのではないかと思います。 |
“多様な担い手”が支える、これからの教育の形
――これまで教育に関わってこなかった人の力も、現場では大きな可能性を持っていると分かりました。最後に教育に向き合う仕事に携わることで得られる経験ややりがいについて教えてください。
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本来、教育の現場というのはゼロベースから自由に創造できる、ものすごくおもしろい場所なんです。でもいつの間にか、決まったマニュアルに沿って「どうすれば正解の教育ができるか」といったことに縛られるようになってしまった。だからこそ私は、教育の仕事はもっと創造的で探究的な営みだということを、改めて伝えたいんです。 たとえば「どうしたら子どもが育つか」「どんな言葉をかければいいか」「どんな環境を整えるとよいか」といったことを本気で考えて実践していくと、実は1番成長するのは自分自身なんですよ。子どものコンピテンシー(資質・能力)を育てようとすると、自分のなかの課題や力もどんどん見えてくるんです。 例を挙げると、人とのトラブルや対立が苦手な子がいたとしますよね。そうしたときに、「対立は悪いことではなくて、上位概念を見つけて合意形成すれば乗り越えられる」というような、パブリック・リレーションズ(PR)の考え方を伝える。でもそれって、自分自身ができていなかったりもするんですよ。子どもに伝えることで、むしろ大人がそれを学び直すことになる。 つまり、教育に関わるというのは、自分自身の生き方や考え方まで変えてくれるような仕事なんです。何か専門知識をどこかで“習ってから”でないと関われない世界ではなくて、現場そのものに答えがあって、そこから自分たちの力で新しいものを生み出していける。そんな仕事だということを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思いますね。 |
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たしかに私自身も教育業界に入ってまだ4年目ですが、この世界に飛び込んでから自分自身の変化を実感しています。 先生方と一緒に主体性を育む教育を考えるなかで、自分自身の働き方やスタンスを見直すようになりました。自分で考え、動き、試行錯誤する。そんな姿勢を子どもに求めるからこそ、自分もまたその姿勢を問い直すようになったのだと思います。 工藤先生がおっしゃるように、教育業界は今、大きな転換期を迎えています。だからこそ、何が子どもたちにとってよいのかを模索し続けるプロセスそのものが、自分の成長にもつながる。教育は、自分自身の主体性を育みながら、子どもとともに未来を考えていける仕事だと実感しています。 |
主体的に学ぶ子どもたちと、それを支える多様な大人たちへ
教育が大きな転換点を迎えている今、求められているのは、子どもたちの可能性を信じ、自ら学びを創っていく力を育てようとする姿勢、そしてそれを支える多様な大人たちの関わりです。
決まった“正解”がない時代だからこそ、現場で問い続け、挑戦し続ける人の存在が、これからの教育を形づくっていく——そのことが、今回の対話から強く伝わってきました。
今回紹介したCOMPASSでは、AI型教材「キュビナ」を通じて、こうした“子どもが自分で学ぶ教育”を実現する現場づくりを進めています。教育の未来を支える仕事に興味を持った方は、ぜひCOMPASS採用サイトもご確認ください。
[PR]提供:株式会社COMPASS











