パーソルキャリアが全国の小中学校に向けて無償で提供している「“はたらく”を考えるワークショップ」。2019年より開始した同ワークショップの累計実施回数が2025年7月現在で1,000回を超えるなど、着実に広がりを見せています。
児童生徒だけでなく、教師や親からも支持を集める「“はたらく”を考えるワークショップ」とは、どのような取り組みなのか。パーソルホールディングスでは、同ワークショップを通して何を伝え、どんな未来を描いているのか。
「“はたらく”を考えるワークショップ」の発起人であり、パーソルホールディングス FR推進室 室長を務める竜田遼氏に伺いました。
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竜田遼/パーソルホールディングス FR推進室 室長。インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社後、キャリアアドバイザーとして個人の転職支援を行う。2018年10月より戦略人事、組織・人材開発に軸足を移し、並行して「“はたらく”を考えるワークショップ」を立ち上げ。2021年6月に、小・中学校向け キャリア教育プログラム 「“はたらく”を考えるワークショップ」を推進するキャリア教育推進グループを立ち上げ。2025年4月より現職。
全国の小中学校に無償で提供! 生きる力を育む唯一無二のワークショップ
――「“はたらく”を考えるワークショップ」とは、どのような取り組みなのでしょうか。
全国の小中学校に無償で提供しているワークショップです。FR推進室を兼務、またはオリジナルのファシリテートトレーニングを積んだメンバーが講師を務め、子どもたちが自ら主体的に判断しキャリアを形成していくための「生きる力」を養う授業を行っています。
対象としているのは、小学4年生から中学3年生までです。ワークショップは学校単位で、学年全体を対象に行っており、いくつかのパッケージを用意しています。たとえば、“はたらく”ということに対してポジティブな目を向けることに重点を置き、未来の自分について考えはじめる際に知っておいてほしいポイントを、1回の授業の中に凝縮した「動機づけプログラム」や、パーソルキャリアが運営する求人情報・転職サイト「doda」のキャリアアドバイザーの仕事を体験できる「職場体験プログラム」など。各プログラムを学校側の要望に合わせて組み合わせることもできます。
大きな特徴は、実施している9割以上のプログラムはオンライン開催ではなく、講師を務める社員が必ず現地の学校に足を運ぶことです。子ども達向けワークショップで多いのが、学校に教材を提供するだけで、実際にワークショップを行うのは先生であるというパターンなのですが、私たちは必ず社員を講師として派遣し、実際に子どもたちと対話をしながら、一緒にワークショップを創っています。また、プログラムの設計はすべてFR推進室が行いますし、講師を務めるメンバーのトレーニングも、講師を担当する社員が主体的に行っています。そうやって、ワークショップのクオリティを保つことにこだわっています。
嫌々はたらく大人の姿が子どもに悪影響を及ぼす。そんな“負の再生産”を止めたい
――近年はキャリア教育に力を入れる小中学校も増えています。
「“はたらく”を考えるワークショップ」は、対外的にはキャリア教育という言葉で打ち出しています。それは外から見たときに、どうしてもキャリア教育として認識されることが多いから。でも、受けていただくとわかるのですが、実は「“はたらく”を考えるワークショップ」は、世間的にイメージされているキャリア教育とはぜんぜん違うものなんです。
一般的なキャリア教育は仕事について調べたり、職業体験をしたり、工場見学をしたりすることが多いのですが、私たちのワークショップでは「はたらくとは何か」という本質的な問いからスタートします。お金を稼ぐための仕事というだけでなく、やりがいや大変さについても認識の枠を広げることができますし、社会で必要な能力やスタンスを形成する目的もあります。キャリアに閉じた教育ではなく“生きる力を育む教育”なんです。やっていることは、将来世代の人材育成に近いと考えています。
――なぜ子どもたちに「はたらくとは何か」を考えてほしいと思うようになったのでしょうか。
私がキャリアアドバイザーとして勤務していた時に感じたことなのですが、自分にとっての「はたらく意味」が明確である人は、転職した先の会社でも生き生きとはたらいているケースがほとんどでした。逆に「はたらく」ことに対して思い入れが少なく、自分のはたらく価値観より条件や地位、環境などを強く重視するは転職してもうまくいかないことが多い印象です。では、社会でどちらがより一般的かというと、圧倒的に後者なんです。
――どうして、そのような状況が続いているのでしょう。
仕事の目的や意義が薄れ、仕事に対してネガティブな印象を持つ大人を見て育った子どもたちが、「はたらくって楽しそう」と思えるわけはありません。やがてその子どもたちも、はたらく大人になり仕事の意義や目的を見出せなかったり、持てなかったりする。いわば、負の再生産が起きてしまっているのだと思います。
このサイクルをどこかで止めたい。そんな想いで始めたのが、「“はたらく”を考えるワークショップ」なのです。
ワークショップに参加した子どもや先生からうれしいメッセージも
――「“はたらく”を考えるワークショップ」で印象に残っていることはありますか。
ワークショップでは、「自分が得意なことを磨いて、価値提供をする」というメッセージを子どもたちに伝えています。苦手を克服することも必要かもしれませんが、それよりも強みを伸ばすことが、将来の仕事や自分らしくはたらくことにつながると考えているからです。
ワークショップに参加した生徒にも、同じことで悩んでいる子がいました。「得意な科目と苦手な科目があって、親には苦手な科目をがんばるように言われる。一方で得意な科目については見てもらえない」のだと。その子は、それが原因で「自分はダメな子だ」と思い込んでしまっていたんです。でも、「“はたらく”を考えるワークショップ」を通して、「得意なことをがんばっていいんだ」と気づけたとのことで、プログラム終了後にうれしい感想を長文で送ってくれました。そういうことがあると、本当にワークショップをやっていて良かったと思いますね。
――たしかに、子どもだけでなく大人も気づきが得られそうですね。
そうですね。実はワークショップを見た先生から、「自分が受けたかった」という感想をいただくことが多いんです(笑)。また、子どもたちが帰宅して保護者に「“はたらく”を考えるワークショップ」のことを話してくれるらしく、保護者会でもワークショップの話題が出ることがあるそうです。
おかげさまでリピートが多く、同じ学校で毎年開催することもあります。そうすると、兄弟そろってワークショップを受けてくれたケースもけっこう出てくるんです。学校に行くと、上級生が私たちのことを覚えてくれていて、下級生に「『“はたらく”を考えるワークショップ』は楽しいからおすすめだよ」と言ってくれたりします。これは本当にうれしいですね。
将来の夢を聞かれて、「職業」ではなく「成したいこと」で答える世界をつくりたい
――パーソルグループでは、はたらくことを通して、その人自身が感じる幸せや満足感を“はたらくWell‐being” と定義しているそうですね。竜田さんは、“はたらく”を考えるワークショップがどのように“はたらくWell‐being”につながっていくとお考えですか。
“はたらくWell‐being”の土台になっているのは、自己効力感や自己肯定感(※1)であり、それらが培われるのは幼少期が鍵となると考えています。その意味で、「“はたらく”を考えるワークショップ」を通して幸せにはたらく自分の姿を想像してもらうことは、将来の“はたらくWell‐being”につながると考えています。
※1 自己効力感:目標を達成するための能力を自分が持っていると認識する感覚のこと。自己肯定感:自分の価値や存在意義を肯定する感覚のこと。
――“はたらく”を考えるワークショップもそうですが、子どもたちが「はたらく幸せ」を得るために大人としてできることは何でしょうか。
大人が背中を見せてあげることが重要だと思います。子どもはスポンジのようにあらゆる物事を吸収して成長します。普段接している大人の姿が、子どもに大きな影響を与えているのです。
それから、子どもを大人として扱うことも大事です。あれこれ指示を与えるのではなく、大人として自由に選ばせる。それにより、子どもたちは自律的に考え、行動する力を身に着けていきます。その過程で、子どもが良くない行動をとったなら、それは大人として話を聞いて、一緒に考えれいいのです。
――将来、子どもたちにはどのような「はたらく」を目指してほしいですか?
将来の夢を聞かれたときに、「なりたい職業」ではなく、「成したいこと」を答えられるようになってほしいですね。
多くの子どもは将来の夢を聞かれると、「パイロット」みたいに、職業名を答えるんですよ。そこで「なぜパイロットになりたいの?」と聞かれると、それ以上答えられなくて会話が止まってしまう。それは、パイロットになることそのものが目的になってしまっているからなんです。
でも、はたらく幸せは、むしろ仕事に就いたその先にこそあるものです。「パイロットになりたい」ではなく、「パイロットになって何を成したいのか」が大事なんです。もしかしたら、「世界中を飛び回りたい」かもしれないし、「お客さんに安全に旅行してほしい」かもしれないですよね。すると、仮にパイロットになれなかったとしても、成したいことを叶える別の道も見えてくるはずです。一気に将来の世界が広がるんです。
――そこまで考えられる人は、大人でもそう多くはありませんよね。
はい。だからこそ、私は“はたらく”を考えるワークショップを通して、将来の夢を聞かれたとき、「職業」ではなく「目的や価値観」で答えられる世界をつくりたいのです。それが私の“将来の夢”なんです。
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全国の小中学校に無償で提供している「“はたらく”を考えるワークショップ」。その背景には、プログラム開発者である竜田氏の強い想いがありました。ワークショップの累計開催回数が1,000回を突破するなど、その想いは着実に全国に広がりを見せているようです。
小・中学生に「生きる力」を学んでほしい、将来は“はたらくWell‐being”を実現してほしいと考える先生方は、「“はたらく”を考えるワークショップ」を検討してみてはいかがでしょうか。
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