イースタン・リーグで腕を磨くスワローズ期待の星を紹介する新連載『2軍燕たちの挑戦録』。第1回は、入団3年目のパワーヒッター澤井廉外野手(25歳、左投左打)にスポットを当てる。
「村上宗隆の後継者」との呼び声が高い澤井のこれまでと現在。そして今後の課題とは─。
目標は全打席ホームラン!
野球を始めたのは小学校入学前、少年時代から将来を期待される存在だった。愛知県のクラブチーム「知多東浦シニア」を経て中京大学附属中京高校に進学、1年の秋から外野手としてレギュラーに定着する。以降、チームの主力打者となり2年の夏には甲子園出場を果たし、高校通算本塁打数は31。
卒業後は中京大学に進学。1年の春からベンチ入りし、この頃から本格的に肉体改造に取り組むようになる。プロ野球選手になり活躍するための準備だった。
食生活を見直し、トレーニングで筋力を強化。これにより体重も80キロほどから100キロ近くまで大幅アップ、パワーが増し打球の飛距離も伸びた。3年時にはサヨナラ本塁打を2本放つなどの大活躍で「愛知大学野球・春季リーグ」での優勝に貢献、MVPにも選出されている。プロ球団のスカウトからも熱い視線を注がれるようになり、2022年秋、ドラフト3位指名を受けスワローズに入団した。
プロ入り前に澤井は、こう口にしている。 「自分の目標は全打席ホームランです!」
1年目に「イースタン本塁打王」に
プロ1年目は順調に成長を遂げていた。
1軍での出場は16試合(打率.156、打点1)ながら、イースタン・リーグでの活躍が目を引く。まず3月23日、埼玉・戸田球場での読売ジャイアンツ戦で観る者の度肝を抜いた。「6-9」で迎えた5回裏二死満塁の場面で、澤井はインサイド寄りのストレートをフルスイング。打球はライト後方へ消えていった。2軍の試合とはいえ、プロ初本塁打が逆転のグランドスラム。大器であることを印象づける一撃だった。ルーキーシーズンは18ホーマーを放ち本塁打王となり、優秀選手にも選ばれている。2年目の1軍での活躍が期待できる結果を残したと言えよう。
しかしシーズン後、秋の「フェニックスリーグ」で、まさかのアクシデントに見舞われる。守備の場面でチームメイトの長岡秀樹と交錯し倒れ、右膝を負傷。救急搬送され宮崎市内の病院で手術を受けた。そのため2年目のシーズンは出遅れる。リハビリ、練習を経て5月に2軍の試合で復帰、8月27日に1軍昇格。すると11日後の9月8日の阪神タイガース戦で3回に西勇輝から1軍初アーチとなる3ランを放った。
「自分のストロングポイントはインパクトの強さ」
日頃から澤井はそう話しているが、それを証明するライトスタンドへの破壊力のある一撃だった。一振りで試合を決めることができるのは、大いなる魅力。だが打率1割台と確実性に乏しく、2年目も1軍定着は果たせなかった。
プロ2本目を放つも6月に1軍登録抹消
澤井の持ち味は豪快なフルスイング。ジャストミートできた時の打球の飛距離には目を見張るものがある。よってチーム首脳陣からの期待も大きい。
「今年の目標はレギュラーに定着すること」
怪我が癒えた澤井は、そう話していたが開幕ベンチ入りならず。それでも5月27日に1軍昇格、いきなりスタメン出場した。翌日からは4試合連続安打、6月5日、ベルーナドームでの西武ライオンズ戦ではプロ2本目となるホームランを放ちチームの勝利に貢献。だが、その後は思うような活躍ができず、6月13日に1軍登録を抹消された。依然、「未完の大器」。現在は再びイースタン・リーグの試合に出場し試行錯誤を繰り返している。
求められる「選球眼」と「配球の読み」
澤井の、これまでの成績は以下の通りだ。
〈1軍〉 | ||||
---|---|---|---|---|
年 | 試合数 | 打率 | 本塁打 | 三振 |
2023 | 16 | .156 | 0 | 11 |
2024 | 12 | .160 | 1 | 12 |
2025 | 12 | .189 | 1 | 13 |
〈2軍〉 | ||||
---|---|---|---|---|
年 | 試合数 | 打率 | 本塁打 | 三振 |
2023 | 90 | .262 | 18 | 76 |
2024 | 55 | .273 | 7 | 34 |
2025 | 47 | .229 | 5 | 44 |
見てわかる通り、一発の魅力はあるが三振数も多い。これは長距離砲の特徴でもある。
では今後、澤井が1軍に定着するために求められることは何か?フルスイングを抑え、バットコントロールを心掛けることではないだろう。それでは澤井の魅力が消えてしまう。強靭な肉体から繰り出されるフルスイングこそが彼の持ち味でありファンが期待するところだ。今後、得るべきは「選球眼」と「配球の読み」ではなかろうか。
お手本にすべき選手が身近にいる。村上宗隆だ。これまでに3度、本塁打王に輝きチームの主軸であり続けてきた村上も三振数は多い。と同時に四球を得ることにも長けている。昨年までの7シーズンで4度、リーグ最多四球を記録、通算出塁率.395を誇っている。経験を通して「選球眼」と「配球の読み」、そして「タイミングの取り方」は養える。これらを体得した時にアベレージ、四球数も上昇、澤井はスワローズの主軸に座ることができるのではないか。
豪快なスイング、美しい放物線を描く弾球、華麗なバットフリップ(バット投げ)─。絵になる男、澤井廉が神宮球場を熱くさせてくれる日を楽しみに待ちたい。
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