個人用はもとより、オフィス用から製造・小売業・医療用途まで幅広いシーンで活用されているエプソンPC。「壊れにくい」、「長く使える」と評価され、POSや受付端末、デジタルサイネージ、装置組み込み用端末などの安定稼働が求められる分野でも数多く採用されていることをご存知でしょうか? その“品質の高さ”は製品化前の作り込みや、徹底した品質管理によって実現されています。
前回は製造工場に潜入してその秘密を探りましたが、今回は品質管理の視点から“日本品質”を支える現場のこだわりに迫ります。エプソンダイレクトの提携工場に潜入!安定した品質を支える、最新テクノロジーと気遣い
国内メーカーならではのユーザーに寄り添った品質管理体制
もともとは個人向けPCをメインに展開していたエプソンダイレクトですが、現在は法人向けが出荷台数の8割近くを占めていると言います。とくに最近は世の中のダウンサイジングの流れもあり、店舗で使われるPOSや受付、製造現場の作業支援、サイネージ、装置組み込み用など、特定業務用途向けPCのニーズが増えているとのこと。当然、それらの用途には高い品質が求められます。
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エプソンダイレクトとして一定の品質基準はあるのですが、それをクリアしているから大丈夫と一概に言えないのが難しいところですね。たとえばオフィス業務で使う場合と、製造現場やサイネージで使う場合とでは求められる品質も変わってきます。そのため、どのようなワークフローで、どういう使われ方をするのか、トラブルの際はどんな問題が起きているのかということをしっかりと把握することが重要になってきます |
そう語るのは、エプソンダイレクトのCS品質管理部の部長を務める原田寿郎氏です。原田氏は同部署で製品の出荷前および出荷後の品質管理と、ユーザーのアフターサポートを取りまとめる役目を担っています。
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とくに難しいのが、全体で見ると安定した品質でも特定の案件だけでトラブルが頻発するケース。私たちが想定していない使われ方をしていて稀に問題が発生してしまうことがあります |
実際、過去には飲食店で従業員の勤怠管理をするためにタブレットを24時間連続稼働していたケースもあったそうです。
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汎用PCは専用機と違ってそのような長時間稼働を前提に作られていませんから、部品が想定以上に劣化して故障につながってしまうことに。それを“仕様だから”で片付けるのではなく、どうすればお客様のニーズに沿うことができるのか、万が一不具合が生じたときにどう対応すべきなのか、ということを考えながら品質を上げる努力を行っています |
具体的には、営業とともに技術系のメンバーもさまざまなクライアントのところに直接足を運んでヒアリングをしながら、PCの使われ方の把握やリスク分析、評価基準の見直しなどを徹底して行っていく。ハードウェア的にリスクをカバーするのが難しい部分は、ファームウェアのアップデートなどで問題が出にくくなるように対策したり、有寿命部品保守サービスなどのサポート面でカバーしたりする。一部のクライアントとは製品のローンチ前にも話をして、そこで得た知見を製品開発や企画にフィードバックしたり、品質試験の項目に反映したりするなどの活動をしているそうです。
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ただ、製品として世の中に出すには、たとえ品質が改善できたとしても万が一故障したときに簡単に対応できない特殊な修理が必要だと困ってしまいますよね。逆に発生頻度は少なくても絶対解決しないと出荷できないような課題もある。そういったお客様への影響や課題の喫緊度なども踏まえて改善策の妥当性を厳しくジャッジしながら、より良い品質のため、技術部門と連携して調整を行っています |
このようにクライアントの細かな要望や影響に配慮しながら課題を解決し、ダウンタイムを極力減らして業務を止めないような“品質”を実現できているのは、エプソンダイレクトが国内に拠点を持っていることも大きいと言います。
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製品によっては、一部のパーツを海外拠点で生産する場合もありますが、それを組み上げてクライアントに届けるまでは国内の提携工場で行っています。最終的にお客様にお届けするまでの間に海外と国内で品質を二度チェックできることと、国内のお客様の使用環境に合わせて柔軟に対応できることが、私たちの強みだと言えます |
そうした国内メーカーならではの“お客様に寄り添う”サービスのひとつに、キッティングBTOサービスがあります。
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PCを大量導入するときなどに1台1台セットアップするのは大変ですよね。法人のお客様の場合、現場ですぐに使える状態で納品してほしいというご要望も多いので、私たちが業務用アプリケーションのインストールや各種設定を代行する『キッティングBTOサービス』も提供しています。これも国内拠点があるからこそ、できるサービスと言えるかもしれません |
エプソンダイレクトの“品質”を実現する緻密な評価プロセス
クライアントのニーズに沿って製品の品質を改善していくうえで大きな役割を果たすのが、実際の製品評価を行う「評価チーム」です。エプソンダイレクトでは新製品の企画が立ち上がったあとに、大きく3つのステージに分けてPCの品質評価を行っています。
一つ目が初期サンプルを用いて機能の評価を行うステージで、製品仕様に基づいた設計検証をはじめとする評価を一通り実施します。 次が、そのフィードバックを反映したより詳細な評価を行い、ハードウェア、ソフトウェアをそれぞれしっかり作り込み、量産できるレベルにしていくステージです。この段階になるとサンプル数も増え、機能以外にも耐久性や信頼性、安全性などに対する評価を実施します。 3つ目が量産直前の最終評価のステージ。詳細評価までのステップでのフィードバックを反映したハードウェアとソフトウェアで評価します。量産前の最終チェックの段階です。 最終評価までのステップで品質確認を行った結果をレビュー、問題なければ量産へ移行することになり、次に国内の生産拠点において量産前の試運転(パイロットラン)を行います。そのレビューを経てCS品質管理部のゴーサインが出ると、いよいよ本格的な量産、出荷がスタートします。![]() |
各ステージでは、私たち評価チームがさまざまな検査を行い、都度フィードバックして改善しながら品質を高めていきます。企画が始まってからサンプルステージ、パイロットランなど製品によっては1年以上、評価項目はハードウェア評価だけでおよそ100項目に及びます |
そう語るのは、エプソンダイレクト 技術部 企画開発グループの今藤達也氏。今藤氏は入社30年以上のベテランスタッフとして、評価チームを取りまとめる役目を担っています。
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上述のおよそ100項目の具体的な評価内容は、実際に組み上げた製品が仕様で定めている環境での起動試験、各機能が正常に動作するか、耐環境性能や耐久性を確認する高負荷動作試験、UEFIのデバッグなどを行うUEFI評価などがあります。評価項目によってはすぐに終わるものもある一方で、一つの項目で1~2週間かかるものも。ちなみにUEFI評価は上述の100項目のひとつですが、この評価だけで200項目程度ありますので、項目によっていろいろですね |
今藤氏とともに製品の評価にあたっているチームメンバーの下枝充氏は「起動試験や高負荷動作試験は、一つひとつの時間はそれほどかからないのですが、BTOで選択できる主な構成ごとに行うので、製品によっては10パターン以上の組み合わせでテストすることも。そのため、ひとつの評価項目だけで1~2週間かかってしまうものも多々ありますね」と、その苦労を語ってくれました。
過酷な耐久試験に裏打ちされた“長く使える”品質
もっとも、特定業務用途のように通常のPCとは異なる使い方がされる場面では、緻密に評価を行っても想定外のトラブルが起こることはあります。しかし先述の通り、それを“仕様だから”で片付けるのではなく、どうすればお客様のニーズに沿うことができるのか、万が一不具合が生じたときにどう対応すべきなのか、ということを考えながら品質を上げる努力を行うのが「そのビジネスにずっと寄り添う。」を掲げるエプソンダイレクトだからこその醍醐味といえるでしょう。
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過去にはノイズが原因で、POS向けのタブレット端末のタッチパネルがうまく動作しないことがありました。ノイズ耐性については国際規格が制定されており、当然その端末も規格に沿った試験はクリアしていたのですが、特定業務用途のお客様の環境ではそれがカバーしきれなかったのです |
今藤氏によると、その原因は店舗の自動ドアの開閉や換気扇の稼働をきっかけとして生じる電源線を介した、あるいは放射によるノイズと思われる事例にあったそうです。もちろん、このような課題解決の過程で得られた知見はエプソンダイレクト独自の評価項目に盛り込んで標準化し、同じようなトラブルが起きないよう対策をとっていると言います。
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一例を挙げると、タブレット製品はPOSやセルフレジの用途を想定していますのでドッキングユニットやキャッシュドロアなど実際に店舗で使われるようなPOS端末を組み、お客様が使う状況を可能な限りシミュレーションして評価しています。そのほか、実際の店舗ではPOSを使用する店員が固定されていないケースがあると思いますので、使用者による個人差を考えて、力任せにドロアを開閉したり、硬貨が入っていることを想定しておもりをつけて試し、そのように使われてもタブレットとドッキングユニットの接続が絶たれることがないことも確認してます |
ほかにも、画面を1センチ角ほどのマスで区切りすべてのマスをタッチして正常に反応するかなどの検査も、過去の経験を踏まえて評価項目に取り入れたそうです。
実際にその検査を実演してくれた評価チームの石井蓮氏は、「飲食店では濡れた手でタッチ操作するケースも多いですから、画面に水を垂らした状態でマスをタッチして、指が触れた部分以外が反応してしまう『ゴーストタッチ』が起こらないかの検査も行います」と語ってくれました。 ちなみに、下枝氏によると基準はクリアしていても動作に違和感を抱くケースもあるとのこと。たとえば起動試験で、評価基準の回数を超えて起動した際に挙動がおかしくなったり、あえて基準以上の温度に設定してバッテリーテストをしたときに充電が仕様通り停止することを確認する中で、その挙動が他の個体と違うことから設計的に正しくないことを発見したり。そうした数値化しにくい“気づき”や、試験基準を超えた“意地悪”な検査が設計不良の発見につながるケースもあるそうです。![]() |
冬にドアノブなどに触れた際に静電気がバチッと流れることがありますが、そうしたESD(静電気放電)が原因でモニタに不具合が起きることもあります。そこで装置を使って耐性をチェックするのですが、お客様によっては厳しい条件を求める場合があるので、国際規格に基づいて社内基準としている試験電圧よりもかなり高い電圧を印加することも |
こうした過去の経験やクライアントからのフィードバックをもとにした試験や、基準を超えた過酷な耐久試験によって、一度あったトラブルの再発は高い水準で抑えられているとのこと。エプソンPCの「壊れにくい」、「長く使える」というユーザーからの評価は、こうした現場のこだわりに支えられていることが分かります。
「安心して使い続けられる」実際のユーザーの声
ここでは、実際にエプソンPCを導入して業務に使用しているユーザーのリアルな声をいくつか紹介していきましょう。
株式会社堀場製作所
製造現場の計測装置への組み込み用としてエプソンPCを30年近く継続採用している株式会社堀場製作所の場合、サービス拠点の多さや保守サービスの手厚さなどが、その理由だと言います。![]() |
装置を24時間ずっとお使いいただいている現場だと、装置が故障すればラインが止まってしまいます。そのため、それがたとえどんなに遠隔地の工場であっても迅速に対応できなければなりません。そこで、しっかりと保守対応をしてくれ、細かなオーダーにも応えてくれる小回りの利く国内メーカーが必要だと考えました |
また、製品の信頼性や産業用PCと比較した際の価格的メリットも魅力的なポイントだとのこと。
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壊れにくい点や価格面ももちろん評価しています。モデルチェンジのタイミングを当社の希望通りに調整してもらえるところも嬉しいです。1年に何度も基本仕様を変更して顧客に動作確認を求められると、現場での検証に毎回時間を取られて困ってしまいますから。エプソンダイレクトは同じ仕様を安定して納めてくれるので助かっています |
お客様に寄り添う品質管理&評価体制で信頼と安全をサポート
個人向けやオフィス用だけでなく、特定業務用途向けPCでも存在感を高めているエプソンダイレクト。その理由は、徹底した品質管理や評価体制などによって確かな品質が実現されているからだと言えます。
ハードウェアだけでもおよそ100項目に及ぶきめ細かな評価や、初期評価、詳細評価、最終評価の各ステップを通じて繰り返し行われるデバッグとフィードバック、実際の使用状況に近い環境でのシミュレーション、BTOで選択可能な主要構成ごとに行われる起動試験、想定を超えた過酷な条件下での高負荷動作試験やESD試験など、エプソンダイレクトの高い品質の背後には、品質管理や評価に携わるメンバーのこだわりや真摯な取り組みが見られます。
実際に現場に導入して問題がないか、事前に無料で検証用機材を借りられる「無料貸し出しプログラム」や、PC導入時のセットアップを代行する「キッティングBTO」などのサービスが充実しているのも魅力的なポイント。安心して長期間PCを使い続けたいユーザーは、一度同社の製品をチェックしてみてはいかがでしょうか。