毎月の給与明細に記載されている『社会保険料』。その一つである健康保険が、どのように私たちの日常を支えているか知っていますか?今回は、健康保険制度の基本や課題、そして今私たちができることについて解説します。それでは、さっそく問題です。

【答え】
A 4
B 高齢者の保険料
C 現役世代の負担
D 税金

【解説】
2022年度の医療費総額は約47兆円、そのうち4割の約18兆円が75歳以上の高齢者の医療費です。高齢者医療は、税金と現役世代によって支えられています。
出典:厚生労働省「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」

【参照元】総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位・死亡中位仮定)

国民の約6人に1人が75歳以上となる2025年。現役世代の社会保険料の負担増が、メディアでもたびたび報道されています。働く人の医療と健康を支える健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(以下、健保連)では、おとなのみなさんに医療や健康保険制度について関心を持ってもらおうと、1月20日の読売新聞朝刊、日本経済新聞朝刊で『おとなが解く社会問題』として、テスト形式のユニークな広告を掲出しました。

この記事では、健保連副会長(安田日本興亜健康保険組合理事長)の米川孝さんに、今回の取り組みの経緯や健康保険制度のしくみ、これから私たちができることについて、お話を伺います。

正直“きびしい”健康保険制度の懐事情

──今回の取り組みの経緯を教えてください。

米川さん「今の健康保険制度のしくみや課題を身近なテーマとして、多くの方に認識していただきたかったからです。まずは、将来を担う次世代の方を含めてみなさんに現状を知っていただき、声を聞いたうえで、これからの健康保険制度の改正や立案に繋げるべきではないかと。広告を掲出するタイミングも意識して、大学入学共通テスト(旧センター試験)翌日に設定しました。例年、センター試験翌日は出題された問題と解答が新聞に掲載されるのですが、同じ機会にテスト形式での新聞広告を出すことで、みなさんの関心を寄せるチャンスだと考えたのです」

──今の健康保険制度の懸念点は、どこにあるのでしょうか?

米川さん「一番の懸念は医療費の増加が加速することです。国内の高齢者層が増えてピークに達するのは2040年頃だとされていますが、そこに向けて医療費の増加が加速すると予想されています。2020年度の国民医療費は45兆円でしたが、健保連の試算では、2040年には70兆円を超える見込みです。

【参照元】令和4年10月「医療保険制度の将来構想のための調査研究Ⅱ」(健保連)、「令和4(2022)年度国民医療費の概況」(厚生労働省)

“失われた30年”ともいわれていますが、日本は経済的な成長が止まった状態のまま、医療費は右肩上がりで伸びています。経済成長に比例して医療費も増えていくならいいのですが、経済成長率の伸びとのアンバランスな状態が続いてしまっていることが問題の根源だと思います」

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医療費のしくみや健康保険制度は、みんなの課題

──これから、解決しなければならない課題を教えてください。

米川さん「医療費の伸びをできるだけ緩やかにとどめ、あわせて現役世代に偏った負担をできるだけ緩やかにするために、全世代で支え合う制度への転換が必要だと思います。保険財政が悪化すると、健診や人間ドックなど健康サポートの事業が不足し、結果的に将来の医療費が増えてしまう可能性があります。

未来へ向けて安心できる健康保険制度を維持するには、医療費増加のカーブを緩やかにすることが必要なのです。そのためには、一人ひとりの“健康を維持する努力”が大切です。現役世代の方には、『自分たちの生活や健康に直結する課題』と思っていただきたいですね」

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おしえて!「健康保険組合」の役割とは?

健康保険組合には3つの役割があります。

① 被保険者と家族の医療費等の支払い
病気や怪我をした場合、医療費の一部(原則3割)を自己負担し、残りは加入している健康保険組合が保険料から支払います。その他、出産・休職・死亡などの際の給付金の支払い支援も行っています。

② 被保険者と家族の健康面への支援
健診やがん検診をはじめとする疾病予防や、健康教室やウォーキングといった健康関連イベントを実施するなど健康づくりのサポートをしています。

③ 高齢者医療への支援
被保険者の保険料からの拠出金を通じ、全国の高齢者の医療を支えています。

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健康保険制度を繋げるために。今、できること

健康保険制度を持続させるために、いま私たちは何ができるのでしょうか? 米川さんにさらに伺いました。

① 医療費のしくみ、国民皆保険制度の現状を知ろう
「日本は国民皆保険制度といい、誰もが安心して医療を受けられる制度です。この基盤を未来へ繋げていくために、今の状況を理解し、全世代で支え合う制度への改革を進めなくてはいけません。まずは、みなさんにこの現状を理解していただきたいと思います」

② 健診や健康サポート事業を活用して健康づくりを
「健康を維持するための取り組みを意識しましょう。各健康保険組合では、健診・生活習慣病予防のための特定健診・がん検診などを実施し、結果に応じて医師による重症化予防や、保健指導など専門家によるサポートへと繋げています。

また、健康づくりのイベントや各種アプリの活用、健康保険組合によっては保養所や運動施設を持っているところもあります。加入している組合のサポートを確認し、積極的に利用していただきたいですね」

③ セルフメディケーションを意識して、ご自身で体調管理を
「セルフメディケーションとは、『自分自身の健康に責任を持ち、軽い不調は自分で対処する』という考え方です。日常生活では、運動・睡眠・食事のバランスを意識し、体調を管理する習慣を心がけていただきたいと思います。

また、セルフメディケーションを意識することで軽い体調不良やケガの場合、すぐに病院にかかるのではなく、ドラッグストア等で薬剤師のアドバイスを受けながら市販薬を上手に利用する習慣につながってくれると思います。 医療機関を受診すると、時間もかかりますし、医薬品以外の費用もかかります。時間と医療費の節約という観点でもおすすめです。

一人ひとりの心がけにより、診療や処方薬を受ける機会が減少し、それが積み重なると、医療費の増加が抑えられ、健康保険制度の持続可能に繋がります」

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健康管理は、次世代の社会へのバトン

最後に、米川さんよりメッセージをいただきました。

「大切なのは、“医療費の増加はしようがない”という理解ではなく、“将来の医療費は抑えられる”と認識し、それぞれができることで一歩踏み出すことだと思います。自分の健康は、家族や子どもたち、そして次世代に繋がる大切なもの。一人ひとりのウェルビーイングを考えていただき、健康寿命を延ばしていきましょう」(米川さん)

今後、健保連では、国民の医療費や健康を支えていくための取り組みを充実させていくそう。様々な世代の意見を取り入れて政策提言もまとめていくとのことなので、まずは健康保険制度に関心をもち、自分の健康にも気遣っていきたいですね。

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米川孝さん
健康保険組合連合会副会長(安田日本興亜健康保険組合理事長)
健康保険組合連合会(通称:健保連)は、1943年に設立された健康保険法に基づく公法人。全国に1379ある健保組合(令和6年4月1日現在)の代表として、健保組合の発展と持続可能な健康保険制度の実現を目指して活動している。被保険者とその家族を合わせると、全国民のおよそ4分の1に当たる約2800万人が加入している。

撮影協力:安田日本興亜健康保険組合オフィス

[PR]提供:健康保険組合連合会