コロナ禍をきっかけに、新しい働き方として取り入れられてきたテレワーク。今では多数の企業で定着し、テレワークを希望する方も多いのではないでしょうか。そんなテレワークの導入・活用を進め、優れた取組を実施している企業に与えられる「テレワークトップランナー2024 総務大臣賞」。株式会社キャスターも同賞を受賞した企業のひとつです。
本記事では、そんな株式会社キャスターのテレワークに関する具体的な取り組みについて、コーポレート本部パートナー・勝見彩乃さんにお話を聞きました。

  • 株式会社キャスター コーポレート本部パートナー 勝見彩乃さん

総務省主催「テレワークトップランナー2024 総務大臣賞」とは?


テレワークの普及促進に向け、総務省が実施している表彰。テレワークの導入・活用を進めるとともに、優れた取組を行っている企業・団体を選定、公表しています。 2024年度は「テレワークの活用による経営効果の発揮」「テレワークの導入が馴染まないと思われている業態の企業におけるテレワーク活用・業務改革」等の観点を踏まえ、審査が行われました。
経験からの思いを軸に。システムで生産性をアップ

――創業当時から「リモートワークを当たり前にする」をミッションとし、テレワーカーが働きやすい環境づくりをしたいと考えたきっかけを教えてください。

勝見さん  当社代表の前職での経験がきっかけになっています。クラウドソーシングを利用する、フリーランスをはじめとするリモートワーカーの方々と仕事をする機会があったのですが、雇用者とは契約形態も発注の仕方も違う中で、金額水準が非常に低いと気づいたそうです。正社員なら月給30万円くらいもらえるようなレベルの仕事でも、リモートワーカーになるとなぜか時給換算で100円を切ってしまうことがある。そんな状況を目の当たりにして、「優秀な方でも働き方の違いだけでこんなに差が出るのはなぜか」と疑問や憤りを感じ、当社を創業しました。

この経験をふまえて、創業した時から『リモートワークで組織を作る』ということと、『東京水準の賃金』という2つを軸にしてスタートしています。

――コロナ禍に入るずっと前からテレワークを実施されてきましたが、テレワークにおいて苦労したことはありましたか?

勝見さん  創業してから早いタイミングで、生産管理の部分に課題が出てきました。当社はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供しています。そのため、企業から仕事を請け負って、それを当社で雇用しているアシスタントが別の作業者に割り振るという構図でサービス提供をしています。

当時は、お客様からいただいた仕事をスプレッドシートで管理しており、業務内容やタスクをスプレッドシートに記載し、誰が対応して、いつ終わったのかなど、すべて手動でチェックをしなくてはならずとても大変でした。

そのため、生産管理のシステムを自社開発した、ということが1つの大きな変化でした。そのシステムを開発できたことによって、タスクに対応できる作業者をアサインしやすくなるだけでなく、進捗管理がしやすくなったり、成果が明確になったりと、非常に効率が良くなったと実感しています。

――その後はコロナ禍においても大きな課題もなく、順調にテレワークでの組織作りができたのでしょうか?

勝見さん  そうですね。もちろん、創業してから10年に至るまで大変なことはありましたが、それは成長過程のベンチャー企業であればどの企業であっても当然発生するような課題だと思います。

そもそも一般的なBPOは、企業がまるっと業務を受託するものが多く、大企業向けのものでした。それが当社では、業務をオンラインで請け負い、リモートで提供できるようになってから、小ロットで中小企業でも使いやすいような形でサービスを提供できるようになりました。幅広い企業で、採用に変わる新しい人材リソース獲得の手段として利用いただけるようになったのは、テレワーク雇用の影響が大きいです。

――フルリモートワークで、東京水準の賃金という雇用のために、どのような仕組みづくりをされていますか?

勝見さん  フルリモートワークではあるのですが、1%の社員は出社し、郵便物の受け取りやデータのスキャン、パソコンの支給管理といった、物理的な業務を担当しています。しっかり分業することで、他のメンバーがフルリモートワークできる状況を実現できています。

また、東京水準の賃金については、高い生産性を実現することが何よりも重要だと考えています。前述した生産管理システムによって、請け負った企業のタスクに短い時間やリソースで効率よく対応して、収益を従業員に還元するという仕組みを作っています。

――テレワークが進まない要因のひとつとして、従業員の勤務姿勢や教育、コミュニケーションの課題が挙げられますが、その点についてはどのようにお考えですか?

勝見さん  従業員の勤務姿勢については、リモートでも出社でも、仕事に取り組む姿勢に違いはほとんどないと考えています。むしろ、リモートであまり休憩を取らずに働きすぎてしまう方々のほうが気にかかるので、労務管理はきちんと徹底しています。

また、教育についてはオンライン研修の実施や、動画などのコンテンツを共有して行うこともあります。コミュニケーションに関しても、オンライン上で会話できるラウンジや同期会のような場を設けています。従業員同士も普段からチャットで密に連絡を取っており、雑談などもしやすい環境なので、自然と信頼関係が形成されていっていると思います。

また、当社はオンラインミーティングの時に顔を出さなくてもいい、というルールがあるので、顔を一度も見たことのない社員もいます。でも、実際仕事を進める上では何も問題ないですね(笑)

よりシンプルな働き方に。多くの方にテレワークでの就業機会の提供を推進したい

――テレワークを推進することで、企業にとってどのようなメリットが期待できるでしょうか?

勝見さん  テレワークを推進していると、他社で知見を持った人材を取り込みやすいと考えています。新しい分野に進出したいが社内に知見がない時は、外部の方に来ていただくことが重要になります。リモートであれば、日本全国、むしろ世界中から探して、ほしい人材に参画いただけます。

『この人がいい』という方と仕事ができることで、新しい分野への進出も容易に、しかも効率良く叶えることができます。実際、海外にいる業務委託の方とお仕事をご一緒することもよくあります。

――女性の管理職が7割以上ということですが、性別や家庭環境問わずに活躍できるよう、取り組んでいることはありますか?

勝見さん  当社は全従業員の約90%が女性ですので、結果的に管理職の7割以上が女性、という数字になっており、特別女性管理職を増やすような取り組みはしていません。そうしたこともあり、評価に性別は関係ないということは共通認識になっています。

また、産育休の従業員がいても『お互い様』という意識が大前提です。テレワークという特性もあり、業務に関するマニュアルが全てクラウド上に上がっており、引き継ぎがしやすい環境になっています。

――これからより従業員が働きやすくなるよう、今後取り組んでいきたいことはありますか?

勝見さん  『リモートワークを当たり前にする』というミッションを掲げていますので、それを実現する上で、やはり多くの方にテレワークでの就業機会を提供することをさらに推進していきたいと思っています。

もちろん、出社することを否定するわけではありませんが、完全出社かフルリモートか、どちらにするか経営として意思決定する必要があるのではないか、と考えています。出社とリモートのハイブリッドが一番大変で、スポットでいる人と毎日いる人との間で情報の格差が起きやすくなってしまう。また、コントロールも難しくなってしまうので、どちらかに決めた方がシンプルだと思っています。

さらに、当社は他社との合弁事業を作るなど、キャスターグループとしての成長もしてきていますので、グループ全体として、さらにテレワーカーの就業機会を作っていけるような組織でありたいですね。

「テレワークに向かって突き進むだけ」自分らしい働き方を見つめ直そう

コロナ禍よりもずっと前からテレワークでの業務を徹底し、仕組みを整えてきた株式会社キャスター。「私たちはテレワーク以外の選択肢を全く考えていない。テレワークに向かって突き進むだけ」と勝見さんは言います。実は、毎月2,000名以上もの応募があるそう。それだけ、自分らしい働き方を求めている人が増えているのかもしれません。

テレワークを始めとして、自分にとって働きやすい形を叶える企業との出会いは、今後のQOLを劇的に変える可能性もあります。この機会に、自分らしい働き方について見つめ直してみてはいかがでしょうか。

勝見彩乃さん
株式会社キャスター コーポレート本部パートナー 勝見彩乃さん
スタートアップの人材会社やベンチャーでの人事や広報を経て、2017年に株式会社キャスターに入社。現在は、労務・総務・法務・経理・IR・広報を担うコーポレート本部にてパートナー(本部長)としてマネジメントに従事。

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他にもテレワークに尽力しているテレワークトップランナー選定団体を紹介!
01

株式会社キッチハイク

【企業情報】
「保育園留学」「こどもと地域の未来総研」等の地域創生事業を営む。所在地は東京、従業員約35人。


【トップランナーに選出された取組例】
社員のプライベートを尊重し、業務パフォーマンスを最大化する環境づくりとして、フルリモート制度の導入と社員の地域活動・個人やチームでのワーケーションを推奨。実際に地方で暮らし、働くことでより深く地域課題解決に向き合いやすい環境を整えることができた。また、住居地不問のフルリモート勤務によって、自治体との対話がスムーズ化。1~2週間家族で地域に滞在し子どもを主役とした暮らし体験である「保育園留学」などの開発をはじめとする地域課題のソリューションの共同開発に発展。多様な形での地方活性化に貢献するとともに企業成長を実現している。

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02

株式会社パソナグループ

【企業情報】
「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、多様な価値観やライフスタイルに対応する働き方を提案し、雇用創造に取り組む。所在地は東京、従業員数約25,000人。


【トップランナーに選出された取組例】
東京一極集中の是正や自然災害のリスク対応を目的として本社・本部機能の一部を淡路島へ移転。淡路島の雇用創造のために住居や食事、交通インフラなどの環境を整備。さらにオンラインツールやAIを活用して業務を効率化させ、地域の働き手不足解消やインフラ整備、デジタル人材の育成を行う。移転先の淡路市の人口は、市政発足以降初めて転入が転出を上回る社会増を達成。また、テレワークや複業等を通じた都市部人材と地域企業マッチングを行い、地域企業の課題解決にも取り組んでいる。

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03

マルゴト株式会社

【企業情報】
採用代行「まるごと人事」、労務代行「まるごと労務」を中心に、企業の採用・バックオフィス支援事業を展開。2022年に拠点を北海道に移転、現在の従業員数は195人。


【トップランナーに選出された取組例】
創業時よりフルリモートワークを実施。オフィスを構えずバーチャルオフィスを導入することで、年間6,000万円以上の経費を削減。テレワークを希望する応募者を中心に年間12,000人以上の求人応募が集まり、従業員数は3年で約3倍に。優秀な人材を確保でき、サービス品質が向上することで、売上も約330%上昇。 また、テレワークでのマネジメントを円滑にするため、4~6名のユニットで働く「チーム体制」を構築。チャットツールに加えてメタバースオフィスを用意し、チームごとの交流会を実施するなど、コミュニケーションの機会を増やしている。 さらにクレドと表彰制度を結びつけるなど、完全テレワークでもノウハウ共有が進む仕組み作りを行っている。

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