救急・急性期医療から回復期のリハビリまで“垣根のない医療”を提供できる機能を備え、「断らない医療」の実現を目指す病院が、全国の医療関係者から注目を集めています。それが、愛知県一宮市にある社会医療法人杏嶺会(以下、杏嶺会) 一宮西病院です。
同院は、2023年7月に地上11階・延べ床面積約3.6万平方メートルの新棟を建築し、ベッド数を497床から801床に拡大するなど、地域医療を支える体制づくりにまい進しています。
今回は、杏嶺会 理事長で同院の病院長を務める上林弘和(かみばやしひろかず)先生にインタビューを実施。医療への想いを伺いました。
理事長/一宮西病院 病院長
上林弘和 先生
地域医療を支える一宮西病院とは?
一宮西病院の歴史は、1955年にまでさかのぼります。先代の上林弘之先生が、上林医院を開院したのが始まりです。杏嶺会が設立されたのは、上林弘和先生が理事長に就任した1988年のこと。以降、老人保健施設、精神科デイケアセンター、一宮市在宅介護支援センター、介護保険相談センター、訪問看護ステーションなどを次々と開設していきました。
そんな中、急性期医療の強化を目的に2001年に開設されたのが、一宮西病院です。2005年に一宮市、尾西市、木曽川町の3市町村が合併すると、一宮・尾張西部地域の総合病院として存在感を発揮。2009年11月には一宮市開明に新築・移転し、一般急性期病棟に加え、ICUや手術室、専門診療科外来や救急外来などの機能を強化して、幅広い医療を展開するようになりました。
2020年からは尾張西部医療圏で唯一となるSCU(脳卒中集中治療室)を有する脳卒中センターが始動し、2023年7月には新棟が完成。医療法人としては県下でも有数の規模を誇る病院となり、地域医療への貢献を加速させています。
一宮西病院が目指す病院像と、実現するための取り組み
――まず、一宮西病院が目指す病院像について教えてください。
上林先生:地域になくてはならない病院であり続けたいと考えています。「24時間365日、いつでもどんな怪我や病気も断らない」「最新の設備と高度な医療技術の提供」「患者さま中心のきめ細かい医療サービスの実践」という基本方針を掲げていますが、地域の患者さまを助けたい一心に他なりません。患者さまが求めている医療がどういうものなのかを追求し、提供していくのが私たちの使命です。
――現在、国内では地域医療構想が推進されていますが、課題も少なくないと思われます。一宮・尾張西部地域の課題についてはどう感じていますか?
上林先生:一宮・尾張西部地域に限らないと思いますが、いわゆる社会的入院(医学的には入院の必要がなく在宅で治療が可能だが入院していること)を減らさなければならないでしょう。急性期の治療を終えた患者さまに回復期や慢性期の病院に移っていただこうとしても、受け入れ先のベッドが空いていないケースが多々あります。そうなると、どうしても社会的入院が発生してしまいます。ベッドコントロールがうまくいかなければ、急性期医療を受けなければならない患者さまにご迷惑をおかけしてしまいかねません。
――この課題解消に向けて、何か対策は打っているのでしょうか?
上林先生:当院の都合で他の病院のベッドを空けていただくことはなかなか難しいので、当グループ内の回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟、介護老人保健施設などを活用するようにしています。病院と各施設が綿密に連携し、801床のベッドを効率良くコントロールしながら社会的入院を解消することで、断らない医療を実現していきたいと考えています。デイケアやデイサービスの展開も視野に入れていますが、高齢化が深刻化する地域を支えていくには、地域医療構想を自分たちで実践していくのが近道なのかもしれません。
――患者さまファーストの姿勢がひしひしと伝わってきますが、医師や看護師など現場の医療従事者にはどのような言葉をかけていますか?
上林先生:「迷ったら患者さまの立場になりなさい」と常々伝えています。特に医師については、自らの医療技術で患者さまを救いたいと熱意ある人材ばかりです。これは当院が医局人事だけに頼らず、自前採用を積み重ねてきたことが大きいのではないかと自負しています。どんな医師がいれば、患者さまが助かるのか。その視点で、地域のニーズに合った医師を独自に採用し続けていますから。
―――現場の医療従事者が患者さま目線の医療を実践していくうえで、病院としてはどのようなサポートをしていますか?
上林先生:例えば、患者さまを救うために医師が必要であると判断した医療機器は積極的に導入するなど、現場に対するサポートは惜しみません。当院には最先端設備が 揃っていますが、患者さま目線に立った医師からの要望に応えてきた結果です。
―――現場の意見が採用される環境なんですね。
上林先生:意欲的な提案は大歓迎です。医療において当然エラーは許されませんが、まずはやってみることが大切でしょう。医師や看護師、職員たちの向上心を尊重し、意思疎通しやすい病院でないといけないと考えています。働く人たちのモチベーションを削ぐことは絶対にしたくないですね。
――現場で働く人のモチベーションを維持するため、どのような取り組みをしているのでしょうか?
上林先生:医師に関していえば、事務スタッフが専任で医師のマネジメントを担当し、要望を吸い上げられる環境を整えています。これにより、医師は患者さまに対する治療に専念できます。あと、個人的な取り組みとしては、医師の奥様の誕生日には手書きのメッセージを添えてプレゼントを贈っています*。日頃、医師を支えてくださっている感謝の気持ちを込めて。ただ医師数も200名を超えており、ほぼ毎日書いている状況でいつも締め切りに追われています(笑)
*他にも女性医師ご本人や副師長以上の役職を持つ女性看護師ご本人、男性看護師の奥様を対象に実施。
――看護師に対してはいかがでしょうか?
上林先生:ジョブローテーション研修の期間が終われば、どの診療科で働きたいか、できるだけ希望を叶えるようにしていますし、そのうえでスキルを極められる当院独自の教育プログラムを組み立てています。医師にせよ看護師にせよ、キャリアアップを見据えて自己実現欲求を満たしながら患者さまのために働くには、それぞれの専門性や意向を重んじた配置をしなければなりません。
――ゼネラリストではなく、スペシャリスト育成に注力されているんですね。
上林先生:そのほうが、患者さまにとって良いのではないかと思うからです。やりたい仕事であれば、積極的に技術を磨いていくでしょうから。脳卒中の患者さまを担当する理学療法士を例に挙げると、今は急性期と回復期で担当するチームが分かれているのですが、同じスタッフがひとりの患者さまを一貫して担当できる仕組みに変更する予定です。そうしてスタッフ1人ひとりが脳卒中のスペシャリストとして知見を蓄積していくことができれば、それをまた患者さまに還元できるようになるでしょう。
すべては患者さまのため。医療の本質に迫るチャレンジは続いていく
――今後、新たにチャレンジしたいことはありますか?
上林先生:患者さまのニーズに応える病院として完璧かどうかといえば、まだまだ物足りません。例えば、75歳以上を対象に在宅医療を始めましたが、検証と改善に着手している段階です。また、ウォークインの患者さま(救急外来を直接徒歩や自家用車で受診する患者を指す)にも手厚く対応できるよう、さらに救急体制を充実させたいですね。救急科専門医が24時間365日常駐している状態ができれば、医療の安全性はますます高まり、患者さまや地域の方々の安心感にもつながります。
すべては患者さまのため。医療の本質に迫る上林先生は、さらなる体制強化に向けて力を込めました。これからも「断らない医療の実現」を徹底し、愛知県の地域医療を支え続けたい。そんな想いに触発された医師や看護師たちが集まっているからこそ、一宮西病院は地域に必要とされ、発展を遂げているのでしょう。
一宮西病院では、医師、看護師をはじめスタッフを募集中。関心のある方は、一度チェックしてみてはいかがでしょう?
[PR]提供:社会医療法人杏嶺会