パルシステムで取り扱う「お米」は、産直協定を結んだ産地で、できる限り化学合成農薬や化学肥料に頼らず栽培された環境保全米です。
なかでも、最も厳しい栽培基準で作られているのが「有機米」です。パルシステムでは多くの有機米を取り扱っていますが、今回は、有機米生産者の次世代をけん引している庄内協同ファームの生産者、小野寺紀允(おのでらのりまさ)さんにインタビュー。有機米栽培を始めるきっかけや、食や農業への想いを伺いました。
有機農業を始めたきっかけ
工業高等専門学校を卒業後、20歳で横浜の研究所に就職した小野寺さん。しかし都会の暮らしが合わず、次第に地元で過ごしたいという思いが強くなったそうです。当時の会社はグローバルな人財育成を行っており、昇進するためには転勤が必要だったことも理由となり、27歳で退職。小野寺さんは実家に戻り、両親の有機農業とレストランを手伝い始めます。
地元でなんとなく両親の手伝いをしていた小野寺さんはある日、両親にこう問われました。「なんのために帰ってきたのか、なぜ農業をしたいのか?」小野寺さんは当初、この問いにうまく答えられませんでした。そして、悩みに悩んだ末に「人に喜んでもらいたい」という答えにたどり着きます。
「人に喜んでもらうこと、それが自分の喜びである気がしました。有機農業だとお客さまが近く、ただ生産するだけではなくて販売から交流につながる環境もあったので、これが自分の中でベストな選択なのかなと。それから有機農業とレストランに真剣に取り組むようになったんです」
こうして小野寺さんは農業に邁進。「庄内協同ファーム」の会員となり、おいしい有機米を作り続けています。その源泉は、実家のご飯にあったそうです。
「自分の中でお米作りは絶対に外せませんでした。私が子供のころから好きな食べ物は、実家の炊き立てご飯とおばあちゃんの作った梅干しです。父親からお米を、おばあちゃんから梅干しを引き継いで作ることができれば、ずっとその好きな食べ物を食べ続けることができますから」
有機米作りは“土づくり”
では、米作りのこだわりはどのような点にあるのでしょうか。小野寺さんは「土づくり」と答えます。その下地は、高専時代に学んだ発酵工学や化学、父親が貫いてきた有機栽培にありました。
「結果として環境保全型農業ですが、土づくりでおいしいお米ができるのが面白いです。“有機栽培の醍醐味は土づくり”と思っています。土の中で有効な微生物がうま味となるアミノ酸を作り、それを作物が吸うからおいしくなる。だから、いい微生物が住みやすい環境をつくりたいので、農薬や化学肥料を使わない。理論と経験則が活きるので、前職との共通点も感じます」
庄内協同ファームでは、会員それぞれが独自の工夫を凝らした土づくりを行っています。小野寺さんの父親はその第一世代でした。
「父親がやってきたことを継ぎたいというよりは、その土を使って農業をやりたかった。だから、すべてのきっかけは両親の有機農業です。そこは貫きたかった。有機栽培は人間の身体と一緒だと思っています。健康な身体づくりは常日頃からのバランスの良い“食”が必要です。田畑も同じで、微生物が多い“肥えた土づくり”は最低でも5~10年の年月がかかり、そこで育った作物は健康的で、病気などにも強い傾向があると思います」
小野寺さんは「おいしいお米の定義」に対し、こう返答してくれました。
「“おいしい”は“笑顔”です。食べたときの表情が物語ってくれます。おいしければいっぱい食べてくれるし、お米をおいしく食べてもらうためのプロセスも大事だと思っています」
庄内協同ファームの有機農業への取り組み
少子高齢化の進行により、農家の平均年齢は年々上昇傾向にあります。近年は離農も増加し、それによって農業従事者一人あたりが担当する面積も増えています。小野寺さんもまた、そんな農業の課題に危機感を覚えています。
「個人としては、数少ない有機農家として、できるかぎり栽培面積を増やしていきたいと思っています。興味がある人や次世代に背中を見せてあげたい、それが自分にとっての地域課題に対する貢献です」
そんな小野寺さんの強い味方が、「庄内協同ファーム」です。しかし、県内の生協とともに大きくなってきた組織であるため地元流通も多くなく、地域的な知名度もそこまで高くありません。「現在は20代の組合員もいないため、受け身のままではなく、これからは地元でのアクションを増やし、仲間を増やしたい」と小野寺さんは話します。
「ずっと有機農業をやってきましたが、パルシステムの『地域づくり基金』によって水田用除草機を導入させてもらって、それを共同利用しています。大規模な農業をしている方も『これなら有機を増やせる』と言っていました。有機農業はこの20年で相当レベルが上がっていて、もう『しんどいから(有機は)できない』という時代じゃないと思うんです。技術も追いついてくると思うので、諦めずにがんばっていきたいですね」
環境保全型農業のうるち米を使った新商品は県知事賞を受賞
食の多様化と人口減少により、お米の消費量は年々減少を続けています。いまやお米は必ずしも毎日食べるものではなくなりました。こういった時代背景に合わせ、庄内協同ファームとパルシステムはさまざまなお米の食べ方を提案しています。そのひとつが、主に庄内平野で栽培され、ほとんど市場に流通していないもち米「でわのもち」を使った製品です。
「でわのもちは、天候に敏感で栽培しにくく収量も少ない品種なのですが、きめが細かく、絹のような質感で味がものすごく良いんです。昔は”ハレの日”によく食べられていましたが、最近は地元でも年末年始くらいしか消費しません。これを日常でも食べてほしい」
でわのもちを使った製品としては、杵つきによる製法で、丸もちや切り餅、独自の技術を用いた玄米もち、よもぎ餅や黒豆餅があります。しかし餅や団子は季節ごとにしか消費されません。そこで庄内協同ファームで開発されたのが、玄米100%のお米ニョッキ「gnocco(にょっこ)」です。
「和・洋・中いずれにも合わせやすいよう、ニョッキにしました。おいしいものを作るだけでは売れないので、デザインも外注しています。おかげさまで、今年開催された、第4回山形のうまいもの『ファインフードコンテスト』において『山形県知事賞』もいただけました。これは組織でなくてはできないことであり、庄内協同ファームの強みだと思います」
地元の食材を美味しく味わってもらいたい。 農家レストラン「菜ぁ」
ここで小野寺さんは、やさいの荘の家庭料理「菜ぁ(なぁ)」に案内してくれました。「菜ぁ」は小野寺さんの母親が20年ほど前に始めたお店で、小野寺さんのひいおじいさんが建てた古民家の1階を店舗にしています。
「もともとは野菜の宅配から始まったのですが、生協さん関連の交流で泊まりに来る方に向けて民宿がスタートしました。のちに子どもたちが独り立ちしていなくなり、母親の料理のモチベーションをレストランにすることになりました。ひいおじいちゃんが作ってくれた家で商売ができるなんて、幸せでありがたいことだと思います」
Uターンして地元に帰ってきた小野寺さんはその手伝いを始め、次第に料理にものめり込み、調理師免許を取得します。そんな折に母親が入院することになり、それから小野寺さんがメインで経営を担当しているそうです。
「子どものころから母親の味が指標でした。今思えば、小さい頃から庄内でおいしいものを食べてきたからこそ、食の大事さに気づけたのでしょう。かといって、母親の味を守ることは目的ではありません。庄内の食材をおいしく味わってもらうことこそ、このレストランの役割かなと思っています」
現在、「菜ぁ」の顧客は約6割が観光客。地元産の食材が確実に食べられる空間は希少であり、連日多くの人で賑わっています。観光にとって食は大きなピースであり、「菜ぁ」はその役割を担っているお店のひとつでしょう。
季節ごとに庄内豚や地元で採れた魚、旬の野菜などさまざまな料理が提供されますが、イチオシはやはり「お米」。有機米のご飯は「白米」「玄米」「合い盛」が選べるところ、半数の方が玄米を注文するそうです。また、味噌汁に使う味噌なども多くは自家製で、お米にあわせたものを小野寺さんが自ら作っています。
「おいしい食材で作ったおいしい料理で、食に興味を持ってもらえたらうれしいです。なぜ食材が、料理がおいしいのか。その疑問が農業への興味につながると思っています。このレストランもまた、農家の一環だと思って続けています」
いまの日本では手間が嫌われがちですが、「お米の炊き方にちょっと一手間加えることで、お米はもっとおいしく炊ける」と小野寺さんは言います。
「お米は鮮度品です。冷蔵庫に保存して、炊飯に入れる水も低い温度で一晩浸漬すれば、炊飯器でもよりおいしく炊き上がると思います。玄米も、圧力鍋と塩麹を使えば家庭でもおいしく炊けます。もちろん無洗米もおいしくなっていますし、みなさんお忙しくて手間を省きたいのもわかります。でも、そのわずかな一手間がおいしさを失わないコツだったりするんです」
「おいしく食べる」を繋げていきたい。小野寺さんが目指す米作りと農業の未来
少子高齢化は、農業従事者の減少はもちろん、地方の衰退にもつながっています。そのような中で産地のものを食することは、地方を活かすことにもつながるでしょう。そういったアクションが、おいしく安全な食を守ることに最終的につながっていくのかもしれません。
「昨今は有機米や有機野菜が希少なものになってしまっています。私は有機米をもっと日常的に食べられるものにしたいと思っています。だからレストラン『菜ぁ』では、ご飯を有機米とは言っていません。自分の口にするものが何なのか、どうしておいしいのかという興味を多くの方に持っていただければなと思っています。食べる事で満たされるのはお腹だけではないのですから」
おいしさと安全を追求したお米作りと料理を続ける小野寺さん。その思いは、消費者においしいと喜んでもらえる、その一点にあるのかもしれません。同氏は最後に、これからの展望について語ってくれました。
「子どもがいま8歳と5歳ですが、もっと小さかったころは『パパと働きたい』なんて言ってくれました。『農業はきびしいので、継がない方がいい』と言う人もいますが、私は農業を『継ぎたい』と思えるような仕事にしたいと思っています」
国産・産直にこだわり、おいしさと安全を届けるパルシステム
おいしい食材が届く「産直」ですが、パルシステムの「産直」は単なる食材調達の手段ではありません。「つくる人」と「食べる人」がともに支え合う関係を目指して活動すること、そして、環境保全や資源循環を基本に”農”と“食”を繋いで、豊かな地域社会をつくること。それがパルシステムの「産直」です。
今回ご紹介したお米は日本人にとって毎日の主食であるとともに、食料安全保障の要です。環境保全型農業を続ける小野寺さんのようなパートナーと共に、おいしさと安全を届けるのがパルシステムのこだわりといえるでしょう。
初めての方は、手数料(配送料)が3週間無料となる「おためし宅配」がオススメです。全商品注文可能なのはもちろん、人気商品が割引価格で購入できたり、値引きクーポンがプレゼントされたりと特典が盛りだくさん。
お米のおいしさを、ぜひパルシステムで味わってみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
■農事組合法人 庄内協同ファーム
https://shonaifarm.com/
住所:山形県鶴岡市八色木字西野338
■やさいの荘の家庭料理 菜ぁ
https://www.e-naa.com/eigyo/
住所:山形県鶴岡市福田甲41
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前にHPでご確認ください。
[PR]提供:パルシステム生活協同組合連合会