2022年4月1日の「成年年齢引下げ」により、当事者である18歳はもちろん、その親御さんたちにとってもさまざまなことが変化しました。

例えば、これまで20歳にならないと1人では出来なかった携帯電話の契約やクレジットカードの作成など、親の同意なく自分の意思のみで契約できる範囲がぐっと広がりました。しかし、一方で、その年代の子どもを持つ親としては不安や心配もぐっと増えたのではないでしょうか。

そこで今回、2人のお子さんを持つ元サッカー日本代表選手の中澤佑二さんとともに、成年年齢の引下げの影響や、親としてどんな心構えが必要になってくるか、といったことについて考えていきたいと思います。

■成年年齢引下げによって変わること

成人=親の同意が必要なくなるため、18 歳から下記のような契約を本人の意思のみでできるようになりました。

  • 携帯電話を契約する
  • 一人暮らしの部屋を借りる
  • クレジットカードをつくる
  • ローンを組む
  • 10年有効のパスポートを取得する
  • 公認会計士や司法書士、行政書士などの資格に基づく職業に就く
など……


中澤さんの18歳は『早くプロになりたい一心だった』

―――まずは中澤さんのお子さんの年齢を聞かせて下さい。

21歳と19歳、2人の娘がいます。2人とも大学生で海外留学中ですが、長い休みのときは帰国して一緒に過ごしています。

―――成年年齢が引き下げられたことに対して、率直な感想はいかがですか?

最初に素朴な疑問として浮かんだのは「成人式はどうなるの?」でした(笑)。式自体よりも準備が大変ですから、当人はもちろん、そこが気になった親御さんも多いのではないでしょうか。

高校を卒業して大学へ進学した場合、20歳になるまではある程度、準備期間があると思うんですよ。しかし18歳から成人となると、当然その前から準備しなければいけない。でも、学校のこともあるから、なかなか時間に余裕が持てない。ウォーミングアップがちょっと短いですよね。親としてはそこが不安です。

―――心の準備もそれだけ前倒しになるわけですからね。

僕だってアップなしでいきなり試合に出されたら「ちょっと待ってよ!」ってなりますから(笑)、子どもたちにも同じことが言えると思います。

―――わかりやすい例えですね(笑)。携帯電話やクレジットカードなど、さまざまな契約が親の同意なしで可能になることについてはいかがでしょう。

大きくなるにつれて、子どもたちだけで行動する機会も増えますし、SNSも含め、世界が広がれば広がるほど誘惑も増えるので、甘い話には安易にのらないように、と娘たちには伝えています。

―――ところで、中澤さんの18歳の頃はどんな感じでしたか。

高校を卒業して1年間、ブラジルにサッカー留学していました。あとはポケットベルの契約をする時、親にすごくお願いした記憶がありますね(笑)。

サッカー選手の場合、プロになるとクラブと契約するので、そこから先はすべて自分の責任で判断することになります。「よくやった」「頑張った」と、どれだけ言葉で褒められたとしても、年俸額がその時の自分の評価・価値になりますから、非常にシビアな世界だと思います。

―――契約に関する意識はかなり早い段階で養われていたのですね。

そう言われると恥ずかしいのですが、最初に入ったクラブとの契約では早くプロになりたい一心で、ほとんど契約書を読まずにサインしてしまいました(笑)。契約に関する知識やサッカー選手としての立ち振る舞いについては、北澤豪さんをはじめとした先輩方に話を聞いて少しずつ学んでいきましたね。

親になった今は『たとえ言いにくいことでも子どもに隠し事をしない』

―――2人の娘さんの父親として、子どもとのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

基本は「隠し事をしない」です。仕事のスケジュールから夫婦喧嘩の理由まで(笑)、聞かれたことには真正面からすべて答える。ごまかさない、はぐらかさない。

―――でも、実践するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

いや、シンプルに「自分がされたくないことは子どもにもしない」。それだけです。

親がごまかしたりはぐらかしたりすれば、おのずと子どもたちも真似してしまうと思うんですよ。子どもに裏でコソコソされたら悲しいじゃないですか。それに、子どもは親が思っている以上に親の背中や行動を見ていますから。

「パパ、あの時ああだったよね?」と記憶力もすごいですし(笑)。娘たちにどこまで伝わっているのかは分かりませんが、僕は親としてその姿勢を貫いていこうと思っています。

―――素敵なお考えですね!

最近スマホを買い替えたのですが、子どもになぜこのスマホを選んだのかしっかり伝えて、“欲しいから買った”のではなく“必要だから買った”ということを説明しました。そうじゃないと、子どもも“欲しいから買う”となってしまうと思うので。

反対に、子どもが買いたいものがあるときは、プレゼンをしてきますよ。
例えば、ラクロスの新しい道具を買い替えたいときに、「アメリカだとこれが主流で、この道具を使うとこういうことが得意になる」だったり、「今使っているのはここがボロボロで直さないといけないけど、直す部品がもう無くなるんだよね」とか。そこまで説明されると、こちらも『じゃあ仕方ないね、高いけど買うしかないね』となりましたね(笑)。

―――中澤さんの考えは、サッカーチームのあり方にも通じるものを感じます。

そうかもしれないですね。監督が1人で突き進んでいたら選手はついていきません。同じ目線に立って耳を傾け、意見を聞くということがなによりも大事なんだと思います。

―――最後に、この記事を読んでいる親御さんたちに一言お願いします。

18歳になって出来ることが増えるからこそ、親と子のコミュニケーションが今まで以上に大事になっていくと僕は思います。子どもが判断に困った時に頼りになる存在でいられるために、普段から子どもの声に耳を傾け、ちゃんと向き合う風通しの良い関係性を心がけていきたいですね。

まとめ

子どもたちの自主性も大切ですが、契約をめぐるトラブルに巻き込まれないよう、適切なアドバイスをしてあげるのは親の役目でもあります。中澤さんのように、普段から包み隠さず何事もオープンに話し合い、常に相手の話を聞く態度を忘れず、自分の背中を見せる……つまり行動で示すことが、より大切になってくるのではないでしょうか。

\成年年齢引下げで何が変わったの?/

 

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