• 八芳園の庭園

    江戸時代より400年以上続く約1万坪の広さを誇る八芳園の日本庭園

ここ数年、あの“八芳園”に大きな注目が集まっているのをご存知だろうか。

白金台という東京都心に美しく広大な日本庭園を抱える八芳園。現在はブライダル企業として広く知られているが、もともとは1943年に料亭として創業したのが始まりだった。

最盛期は年間3000組以上、婚姻数や挙式件数が減少している現在でも年間2000組前後の婚礼を受託。この数字は業界全体を見てもかなりの高水準を誇るが、近年では「総合プロデュース企業」としてブライダルの枠に留まらない経営戦略を展開している。

八芳園はなぜ、ここにきてビジネスモデルの強化と転換を図っているのか。その背景を紐解いた。

取締役 経営管理部 部長
薮嵜正道さん
ホテルにてホスピタリティの深さ、ゲストハウスにて事業推進の視点を学び、株式会社八芳園に入社。新規事業の立ち上げ、主軸の婚礼事業、企画広報などを経て、2016年改革を起こすべく経営管理部門へ。総務、労務にDX改革を起こすべく社内のデジタルリテラシーの底上げを図る。「ホスピタリティ業界の社会的地位向上」を目指し、DX部門の立ち上げや「ホスピタリティ業界×DX」のイノベーションを起こしつつさらに新たなコンテンツを導入し続けている。

ブライダルだけじゃない!
「総合プロデュース企業」に進化した八芳園

  • 八芳園の結婚式場

    八芳園といえばイメージする「結婚式場」

薮嵜「ブライダルは商品を納品するのではなく、記憶のいちページを作り上げる仕事です。難易度は高く、プレッシャーも相当にかかりますが、そこで培った企画力やプロデュース力は、ブライダルという枠を超えても、世のため人のため、活かすことができる だろうと我々は考えました」

そう話すのは、取締役 経営管理部 部長の薮嵜正道さんだ。

一般的に、コンサートなどの大型イベントが行われる際は、広告代理店が間に入り、イベント会社を手配し、ハコとなる会場を押さえ、カメラマンなどの当日スタッフを集めるというプロセスが踏まれる。関係者の数も増え、そのぶん手間も経費も膨らむが、八芳園ならこの一連の流れをワンストッププロデュースすることができるという。

薮嵜「企画力がある企業はハコを持っていなかったり、逆にハコを持っている企業は企画力やプロモーション力に悩まれているケースが多いんです。しかし、我々は変わらないこの白金の地で、歴史・土地・建物を持ちながら結婚式をプロデュースしてきたので、大きなイベントでも企画から運営までワンストップ で請け負えます。その強みを活かしながら、企業や地方自治体向けのプロデュースを始めました」

八芳園はブライダルで培ったノウハウを活かし、4〜5年前から企業のインセンティブパーティーや商品発表会などのプロデュースも手掛け始めた。クライアントは国内外の大企業から世界的トップメゾンまで多岐にわたり、歴史と伝統を活かしたユニークべニューとしてMICE(※)事業の推進・プロデュースにも取り組んでいる。

※MICEとは、Meeting、Incentive、Convention、Exhibition/Eventの略で、これらのビジネスイベントの総称です。

さらに、4年に一度開催される世界的な大会では内閣官房から要請を受け、全国の自治体と相手国の取り組みを支援するホストタウン事業も担っています。

  • 八芳園

薮嵜「今回のような世界的な メガスポーツイベントでは、開催国の自治体と参加国が友好関係を築くためのイベントが開かれるんです。でも、いきなり外国の主賓を迎えようとしても、自治体からすればおもてなしの仕方がわかりません。そこで、料亭にルーツを持ち、国内外の様々なイベントを手掛ける中であらゆる“食“の多様化に対応するノウハウを培ってきた 八芳園が、各自治体の“食”のプロデュースを手掛けたんです」

ここで得たネットワークはその後、八芳園が立ち上げたポップアップショールーム「MuSuBu」という店舗を中心に、自治体と連携して行う ポップアップイベント事業へと繋がっていく。

八芳園に関する詳細はコチラ

ポップアップイベント事業「MuSuBu」の詳細はコチラ

推進するデジタルシフト。
八芳園だからこそ開発できた
オンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」とは?

「総合プロデュース企業」としてシフトチェンジした八芳園は、現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも力を入れている。

  • 八芳園がハブリッド型イベントを開催 配膳・運搬ロボットとの共存により密集・密接を避けた非接触での食事提供を実現

    八芳園がハブリッド型イベントを開催。配膳・運搬ロボットとの共存により密集・密接を避けた非接触での食事提供を実現している様子

薮嵜「ここまで話してきたように、八芳園はブライダルの枠を越えてイベントプロデュースの幅や可能性を広げてきましたが、コロナ禍によって、これまで対面で行ってきた接客ビジネスがシャットダウンされてしまいました。そこで、オンラインを利用して何かできないかと考えたときに、日本はまだゲーム以外のオンラインビジネスがほとんど発展していないことがわかったんです」

八芳園は、コロナ禍で結婚式のキャンセルが相次いだ時期に、オンライン通話を可能とするツール を使ったオンライン披露宴なども試みた。しかし、「従来のオンライン通話ツールではイベントには向いていない」と痛感し、自らツールの開発に乗り出す。そうしてローンチしたのがオンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」 である。

  • 八芳園

薮嵜「従来のオンライン通話ツールはあくまで会話に特化したツールですから、ウェビナーや複数人のコミュニケーションには向いていないんです。一方、我々のWE ROOMはイベントの様子を視聴するウェビナー機能と、グループごとのコミュニケーションを可能とするテーブル分け機能が両立しています。まさに実際の披露宴会場と同じで、みんなが正面の新郎新婦のほうを向きながら、テーブルごとに会話も楽しめるというイメージです」

  • オンラインイベントプラットフォーム「WE ROOM」

    オンライン空間でのコミュニケーションを楽しむことができる「WE ROOM」

最近では擬似旅行が楽しめるオンライン体験ツアーなども流行りつつあるが、これまでの既存のツールでは、参加者が同じ画面をただ眺めるだけになりがちで、なかなか“参加している感”が得られにくいという難点がある。

しかし、WE ROOMは参加者をグループ分けし、それぞれテーブルを割り振ることで、少人数での会話を楽しみながら、ウェビナーにも参加できる。披露宴やパーティ同様、テーブル間の移動も可能だ。このありそうでなかった新ツール「WE ROOM」は、すでにいくつもの企業がオンラインイベントなどで導入しているという。

八芳園が手掛ける新オンラインサービス「WE ROOM」

共創から繋がる未来へ。
2022年のコーポレートスローガン「ともに、あり続ける未来を創ろう。」に込めた想い

コロナ禍でブライダル業界が深刻な打撃を受けるなか、逆境をチャンスに変え、ますます事業を拡大させる八芳園。飽くなき挑戦の背景には、ビジネス的戦略以外にも深い理由があった。

薮嵜「八芳園は、創業から『日本のお客様には心のふるさとを、海外のお客様には日本の文化を』という企業理念を掲げています。創業時はまだ戦時中で、だからこそ日本人にとってただの飲食店ではなく、大切なふるさとのような存在でありたいと思っていました。そして、ふるさとである以上、八芳園という場所を未来に残し続けなければいけません」

  • 八芳園

八芳園は、「SDGs」という言葉が存在する以前から社会貢献を意識した経営を続けてきた。自然栽培で作られたオーガニック野菜を料理に採用したり、「農福連携」を謳って障がい者の方々が作った農作物を取り入れるなど、持続可能な社会づくりに企業を上げて取り組んでいるのである。

薮嵜「八芳園を心のふるさととして持続させている我々にとって、社会貢献に取り組むのは自然な流れでした。そしてこれからは、デジタルイノベーションにも取り組まなければ企業存続もできません。これは決してエゴで言っているわけではありません」

要するに、一人勝ちでは意味がない。ブライダル業界はもちろん、社会そのものが豊かでなければ八芳園も存続できないからだ。

  • 八芳園

薮嵜「我々は、2022年のスローガンとして『ともに、あり続ける未来を創ろう。』という言葉を掲げています。八芳園だけで生き残るのではなく、オープンイノベーションで、同じ方向へ歩める企業とソリューションを共有することで、“ともに”未来を創っていきたいと思っているんです」

八芳園が求める共創プロジェクトパートナー

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こうした幅広い取り組みを知れば、八芳園がブライダル事業者の枠に収まらない、まさに「総合プロデュース企業」に進化していることがよくわかる。次回は自治体と連携して行うポップアップイベント事業の「MuSuBu」について、さらに詳しく深堀りしていく。

[PR]提供:八芳園