世界各地で相次ぐ自然災害を背景に「気候変動」について関心を持つようになった人も多いのではないだろうか。今後の社会で重要となる「気候変動対策」。近年では2050年カーボンニュートラルの実現のために、社会は「脱炭素革命」とも呼ぶべき大きな変革を求められている。

これを踏まえ1月26日、気候変動対策にもつながるようなキャリア形成についてZ世代の官民がともに考える座談会「気候変動対策をキャリアにするとは?」が開催された。

Z世代。それは、脱炭素革命のスタートからゴールまでを担う黄金世代だ。そもそもZ世代とは、1990年代後半から2000年代に生まれ、すでにライフスタイルのなかにデジタル技術があるなかで育ってきている世代。そのため、マスメディアの情報だけにとらわれずSNSなどからも情報を収集し、さまざまな社会問題にも関心が高い傾向にあると言われている。

  • 「Z世代に関するアンケート」
    調査時期:2020/11/04~2021/1/18
    調査対象:10~20歳の男女
    調査数:284人
    調査方法:インターネットログイン式アンケート

今回のイベントは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)のさらなる普及を目的とする小売電気事業者による業界団体、「一般社団法人再エネ推進新電力協議会(REAP)」が主催。さらに再エネの魅力をPRすることを目的にZ世代の社員が集まって発足したREAPの分科会「Z世代の会」が中心となって開催された。また、環境省の再エネPRキャンペーン「再エネスタート」の関連イベントとなっている。

再生可能エネルギーって?
パリ協定で掲げられている目標も併せて見る ▼

地域脱炭素・電力系YouTuberの棚瀬啓介さんをファシリテーターに、環境省から鎌倉真奈さん、再エネ企業としてUPDATER(旧みんな電力)から鈴木ジュリアさん、Looopから坪井友里香さん、juwi自然電力から岩崎光太朗さんがZ世代パネリストとして登場。ゲストに社会課題に取り組むエシカル企業と若者を繋げる採用プラットフォーム「エシカル就活」を営むAllesgoodの勝見仁泰さんを招いた。

(左から)鎌倉真奈さん(環境省)、岩崎光太朗さん(juwi自然電力)、坪井友里香さん(Looop)、鈴木ジュリアさん(UPDATER)、勝見仁泰さん(Allesgood)

気候変動対策に関わることのできるキャリアにはやりがいがあり、Z世代をはじめとした若い世代には強くすすめていきたい分野のひとつ。しかし、実際にどのような選択肢があるのかは分かりにくい。 対談では、実際に働いてみてどうなのか、ほかにも魅力的なキャリアがあるなかで、何を選ぶべきかなど、さまざまな疑問に対して活発な意見交換が行われた。
カーボンニュートラルがあたりまえの世代 - Z世代のキャリア選択とは?

近年、全世界的に気候現象や風水災などの気象に関する災害が増加している。これは、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量増加にともなう地球温暖化によって引き起こされていることが分かっている。日本における二酸化炭素の排出量のうち、9割以上がエネルギー起源となっており、「脱炭素を実現する」ということはエネルギーの問題を解決するということにほぼ等しい。

そのため、あらゆる分野で電化や省エネが進められているが、その大元となる「電力業界の脱炭素化」が非常に重要視されている。日本の大きな方針としても、再エネの利用拡大が進められていることから、再エネ電力への注目は大きいといえる。

電力業界はいくつかの部門に分かれており、発電、送電、小売といった各部門を経てユーザーに電気が届けられる。2016年の電力の小売全面自由化によって各地域の電力会社だけではなく「新電力」と呼ばれる新しい会社から電気を買うことが可能になった。

この日登壇したLooop、UPDATER(旧みんな電力)、juwi自然電力は、再エネへの取り組みが活発な電力会社だ。

Looopでは、再エネの最大普及を通じた「エネルギーフリー社会の実現」をビジョンに掲げている。太陽光を中心に再エネ普及に取り組むLooopは、様々なテクノロジーを通じて、用地・安定性・コストといった再エネの課題を解決しようとしている。例えばさいたま市のスマートホーム・コミュニティ街区に導入したLooopのエネルギーマネジメントシステム「エネプラザ」は屋根置き太陽光、蓄電池、EVを活用して街区内の再エネを地産地消して脱炭素を実現、さらに災害にも強い街づくりを叶えている。再エネ発電所建設から、街づくりまで一口に再エネといっても様々な事業があり、それぞれがカーボンニュートラル実現につながる重要な仕事である。

エネプラザについて詳しく知る ▼

「エシカル就活」を掲げ、社会課題から企業と学生をつなぐ採用サービスを展開している勝見さんは、「Z世代は、社会課題への関心が増加してきており、学生の2割以上が企業選びにおいてSDGsへの取り組みを重視すると答えています。コロナ禍を経て、さらにその傾向は強くなっています」とZ世代ならではのキャリア視点を分析。いわゆるネームバリューだけではなく、気候変動やジェンダーなどの問題に取り組む企業の姿勢に注目が集まっているとした。

実際に「みんな電力」で再エネに携わっている鈴木さんは、「実は、再エネだからキャリアを選んだわけではない」と話す。

「みんな電力では、今起こってしまっている社会課題の多くが”顔の見えない関係性”であるからだと考えています。生産者と消費者など、関わっている人々の顔や環境が不透明だからこそ、問題が発生してしまう。私は労働問題や人権問題にも興味があって、それでみんな電力という企業に興味を持ちました。結果的に、今は再エネに取り組んでいます」と、社会課題の解決に興味はあったが再エネありきのキャリア選択ではなかったと明かした。

岩崎さんは、「大学の専攻も物理学で、エネルギー分野にすごく興味を持っていました。ただ、本当に難しくて当時はついていけずに挫折してしまいました」と、一度はエネルギー分野を諦めかけていたという。

「でも、就活に差し掛かった時、『こんなに興味を持っていたのに諦められない』と思いました。何か携われるものはないかと探した時に、これからどんどん伸びていくであろう再エネをやってみたいと思うようになり、業界に飛び込みました」と話し、興味のある分野の中で自分に出来ることを探して再エネへ取り組むことを決めたと語っていた。

坪井さんは「幼いころから気候変動にも興味があり、再エネが好きなので選んだ仕事」と、小さい頃から興味があった分野を仕事にしたという。

「再エネの“新しい社会を作っていく”というワクワク感に惹かれました。『環境に配慮した未来の街づくり』という授業があって、アイデア次第で問題が解決できるという面白さに大きな影響を受けました」と、未来を形作る面白さが原動力になったと話した。このように同じ再エネ業界に就職した彼らでも、仕事選びの動機は三者三様だ。

Looop、UPDATERが参加するREAPとは?

また、「官」の立場から環境省の鎌倉さんは「私自身は、福島の原発事故がきっかけでしたが、同期には地域創生に興味があって、地方の脱炭素の取り組みをきっかけに今の仕事をしているという人もいます。再エネを考える時に、気候変動対策という文脈はもちろんありますが、地域を豊かにするという切り口もどんどん増えていくと思います」と、環境省職員のなかでもいろいろな視点の関心があると話した。

このほかイベントでは「実際に就活の面接でどんなことを話した?」など、具体的なエピソードを求める質問や、「現状のままで目標達成は出来るのか」といった鋭い質問も飛んだ。

面接のエピソードについて鎌倉さんは「当時はまだ日本がゼロカーボンの指針を出す前でした。その頃は今よりも追い風が少なかった印象ですが『ムーブメントを作りたい』というような話をしましたね。結局、自分が携わる前に政治が動いて、今の形になりましたが、そういう話をしました」と振り返った。坪井さんも面接では「再エネを主力電源化させたい、ということを話しました」と、大きな目標を掲げたという。

「目標達成できるのか」という質問に、岩崎さんは「私は間に合うと思っています」と、力強く回答。「今の会社に入ってたった3年ですが、携わる案件の規模は日に日に大きくなっている。新しい技術もどんどんと入ってきて、産業がどんどん大きくなっていくと実感しています」とコメントした。

続けて、鈴木さんは「今は、技術開発が本当に求められる分野。壮大な問題だと感じてしまうかもしれませんが、いろいろな技術や学問が貢献できる分野なので、そういうところから道が見えてくるのでは」と、ぜひ自分が学んできた分野が活かせる道筋を見つけてほしいと話した。

Looopが目指す未来 - 坪井さんに聞く、REAPの取り組みと必要なこと

LooopはREAPの理事監事会社の一社となっている。座談会に参加したLooopの坪井さんは「新電力は一社一社の規模が決して大きいとは言えませんし、一社だけだと世の中に声を届けるのは難しい。REAPという業界団体を通じ、再エネに対する新電力の声をまとめる。Looopがその旗振り役をして再エネ普及を推進していけたらと思います」と、REAPを通じて、Looopが積極的に再エネ普及をけん引していきたいと話す。

そして、「脱炭素化に向けて一社で出来ることは限られていますが、集まればその分出来ることも増えます。再エネ系新電力を選んで入社したZ世代には、気候変動問題に対し何かアクションしたい、再エネを普及させたいという情熱を持つ人達が沢山います。再エネに対する情熱があるからこそ、企業の壁を超えて団結し協働できるのではないかと思っています」と、REAPとして企業の壁を超えて手を取り合うことで、より大きな取り組みが行えるようになるはずだと語った。

座談会を終えた感想を尋ねると、「予想以上に反響があり、Z世代の気候変動に対する関心の高さを感じられたのがとても嬉しかったです」と、Z世代のリアルな関心度に喜びが感じられたという。また、「パネリストの皆さんもそれに応えて熱く想いを語ってくださいました。一方で、『自分に合う企業をどう選んだら良いのか分からない』などの質問も多く寄せられました。私も共感したのですが、脱炭素は新しい分野だからこそどういったキャリアがあるのかが見えづらい部分があるかと思います」と、新分野ならではの課題も見えてきた。

その上で「今回は環境省と再エネ系新電力の官民両方のパネリストがいたことで、キャリアの選択肢の幅広さを伝えられたように思います。またAllesgoodの勝見さんに就活支援者の立場からフォローいただいたのもとても良かったと思います」と、選択肢の幅広さを示せたことに確かな手ごたえを実感。「LooopはこれからもREAP各社と連携しながら、再エネ主力電源化に向けた大きなうねりを作っていきたいと思います」と、目指すべき未来のため、再エネが担うべき役割をしっかりと果たしていきたいと話した。

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[PR]提供:Looop