「モノ売りからコト売りへ」の重要性が広まりつつある今、製造業も、いわゆる“売りっぱなし営業”を改めるときがきている。そこで重要になるのが、アフターサービスの領域だ。

9月7日にオンラインで行われたTECH+フォーラム「製造業DX Day 2021 Sept. 事例で学ぶDX推進 ~課題と成功の勘所~」では、セールスフォース・ドットコム ソリューション営業本部 ストラテジックアカウントマネージャー 林勇造氏が登壇。「循環型ビジネスを実現する製造業のサービス化戦略とは」と題し、今、製造業に必要な「循環型ビジネス」の概念と、それを実現するために必要な取り組みについて解説を繰り広げた。

  • セールスフォース・ドットコム ソリューション営業本部 ストラテジックアカウントマネージャー 林勇造氏

    セールスフォース・ドットコム ソリューション営業本部 ストラテジックアカウントマネージャー 林勇造氏

コロナ禍が促すDXの加速

創業以来、セールスフォース・ドットコムはフロントエンドのアプリケーションからバックエンドとの連携製品に至るまで、さまざまなソリューションを提供してきた。導入企業の規模/業種は多岐にわたっており、なかでもグローバル製造業からはDXを前提とした相談が相次いでいるという。

「世界がコロナ禍に見舞われる前から先進企業は取り組みを急いでいたが、ここに来て多くの企業がその取り組みを加速させなくてはならないことに気付いたのではないか」と林氏は提起し、同社が実施したある調査結果を示した。

それによると、8割以上の製造業が「DXは最重要事項である」と回答しており、「新しいサービスの提供を通じて、お客様とのより良い繋がりを得ることを重視する」とした製造業も8割を超える結果になったという。

残念ながら今の仕組みではリアルな顧客接点を活用しにくい。しかし、リアルタイムに更新されないデータを使っているようでは、質の高いデジタル体験を提供することは難しい。「個々の働く人やお客さまに合った情報を提供しながら、インテリジェントな体験を提供すること」が理想だとすると、誰もがどこからでも必要なデータやコンテンツにアクセスできるようにしたいところだ。

「自社の社員を中心に考えるのではなく、お客さまやパートナーを含めた全てのステークホルダーに対して、快適な体験を提供することが重要になってきています」(林氏)

既に、海外の先進的な製造業は製品ではなく、顧客体験が差別化の源泉であることに気付き、対応を急いでいる。日本でも数年叫ばれている「モノ売りからコト売りへ」という言葉には、「商品をできるだけ多く売るビジネス」から、「商品を通じて提供する価値を高めるビジネス」への転換が重要であるという意味が込められている。

生産プロセスの効率化も重要だが、製品がもたらす顧客体験をより高めるという意味では、顧客の製品ライフサイクル全般で顧客とつながり続けること、そしてそれを実現する仕組みが必要になる。

「循環型ビジネス」を実現するには?

そのためには、顧客の課題や目的を正確に理解しなくてはならない。林氏はそのヒントになる考え方として「ジョブ理論(Jobs to be Done)」を紹介した。これは、Harvard Business Schoolの教授であったクレイトン・クリステン氏が提唱したもので、「顧客が片付けたい用事『ジョブ』こそが、その製品購入を決定付ける」とする考え方である。

つまり、製品の購入は顧客の目的ではなく、購入した製品を使うことで「今抱えている課題を解決すること」「今より状況が良くなること」を期待してその製品を購入するわけだ。ただし、製品が提供する価値は、購入後の時間の経過と共に低減する。そのため、製造業には、製品が生み出す価値を永続的に高める努力が求められている。

林氏が講演タイトルにも掲げた「循環型ビジネス」とは、同じ製品の利用を維持しつつ、新たな製品を購入してもらったりする、顧客が製品を購入した後の関係維持を前提としたビジネスモデルのことだ。

この循環型ビジネスを実現する上で、意外に見落としやすいのが、販売後の「活用」や「保守」のフェーズである。特に、顧客が購入した製品が何の問題もなく稼働していると、それ以降、顧客とのやり取りが途絶えてしまうことも少なくない。何か問題が発生したときに速やかに解決するのが「保守」だとすると、その手前の「活用」のフェーズから日常的に顧客の動向を把握できていれば、より良く問題を理解するパートナーとして自社を選んでもらいやすいだろう。つまり、カスタマーサポートをデジタルで強化することで、顧客の課題を的確に捉えることができ、巡り巡ってクロスセルやアップセルのチャンス到来につながるわけだ。

カスタマーサポートに注力した2つの先進事例

海外に目を転じると、購入後のプロセスに投資する企業は増えつつある。林氏は、カスタマーサービス・ソリューション「Salesforce Service Cloud」やフィールドサービス業務支援ソリューション「Salesforce Field Service」などを活用し、先進的な取り組みを進めている製造業の事例を2つ紹介した。

KUKA

KUKAは、ドイツに本拠地を構え、ロボットアームを主力製品とする産業機器メーカーである。同社の製品活用シーンを裏側で支えるのが、自分が利用している製品の稼働状況を確認できる「KUKA Connect」だ。そのデータはKUKA側で管理しているが、顧客も同じデータにアクセスし、いつ、どのデバイスからでも正しく動作をしているかどうかを把握できる。

もう1つ、KUKAが提供する顧客ポータル「My KUKA」でもSalesforce製品が活用されているという。同ポータルでは、情報提供のほか、ロボットのデザインから新しいロボット/スペアパーツの発注、修理・点検サービスの手配などをオンラインで行うことが可能となっている。

  • 顧客ポータル「My KUKA」でできること/出典:セールスフォース・ドットコム

    顧客ポータル「My KUKA」でできること/出典:セールスフォース・ドットコム

Koenig & Bauer(K&B)

1817年に創業したKoenig & Bauer(K&B)は、ドイツに本社を置く業務用印刷機のグローバルメーカーである。以前からIoTプラットフォームを整備し、機械の予防保守を行っていたのだが、想定外の事態が起きた。コロナ禍によって医療用ラベル印刷機の稼働率が上昇したことに伴い、トラブルが急増したのだ。

通常であれば、現地にフィールドエンジニアを派遣するところだが、ハードロックダウンの影響で訪問修理がままならなくなった。そこで新しく導入したのが、動画サポートを利用し、顧客自身に修理をしてもらう「リモートメンテナンス」の仕組みである。このほかにも、顧客と設備の両方に関するデータを包括的に可視化し、顧客をサポートする新しいビジネスを創出している。

  • データ活用で実現した新しいサービス/出典:セールスフォース・ドットコム

    データ活用で実現した新しいサービス/出典:セールスフォース・ドットコム

紹介された2つの事例から日本の製造業が学ぶべきは、顧客データや製品データを得て先回りをすることで、収益への貢献とプロセスの効率化を実現できるということだ。

これまでは、個々のエンジニアが持つ過去の経験を基に顧客をサポートしてきたかもしれない。しかし、カスタマーサポートをデジタルで強化することで、顧客課題をより深く理解する“トラステッドアドバイザー”に進化することが可能となる。

今こそ、永続的にビジネスが続く「循環型ビジネス」の実現に向けて、デジタルテクノロジーを活用する時期が到来しているのだ。

[PR]提供:セールスフォース・ドットコム