大規模・高精度・高速計算と最適設計のためのソリューションを展開する株式会社ヴァイナス(VINAS)。同社はスーパーコンピュータ「富岳」をはじめとするHPC領域や産業界における数値シミュレーション領域で確固たるポジションを築いており、昨今の「カーボンニュートラル」の取り組みに対しても、大きな存在感を放ちはじめている。

2021年10月6〜8日に開催されるユーザーカンファレンス「VINAS Online Users Conference 2021」(以下、カンファレンス)では「カーボンニュートラル・水素・超臨界流体利用・低騒音化・ハイブリッドクラウドの最前線」をテーマに、ヴァイナスのユーザーの取り組みやヴァイナスのソリューションが披露される予定だ。代表取締役社長 藤川泰彦氏に、カーボンニュートラルと数値シミュレーションとの切っても切れない関係性や、ヴァイナスやカンファレンスの取り組み状況について話を伺った。

数値シミュレーション(CFD)はCO2削減に大きく貢献する

2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル宣言などを受けて、産業界ではさまざまなシーンでCO2削減やカーボンニュートラル実現に向けた施策が実施されている。自動車製造における燃費性能の向上や省エネのための温暖化ガス削減と再生可能エネルギーの利用など、発電事業における火力発電をはじめとしたさまざまな業界で取り組みが活発化している状況だ。

そんななか、数値流体力学(CFD:Computational Fluid Dynamics)や数値シミュレーション(CAE:Computer Aided Engineering)を軸に、企業の開発設計部門におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みを支援しているのが、ヴァイナスである。

  • 株式会社ヴァイナス 代表取締役社長 藤川泰彦氏

    株式会社ヴァイナス 代表取締役社長 藤川泰彦氏

「ユーザーにとって最高のソリューションを提供する最高のパートナーをめざす(Best Partner for Best Solution)」をサービス理念に掲げる同社は、カーボンニュートラルに対するユーザーの要望を先取りするように、海外の先行技術製品の日本産業界への普及と利用促進や、日本発の基礎技術の実用化と産業利用を推進してきた。代表取締役社長の藤川泰彦氏はこう話す。

「CO2削減に貢献する技術の1つがCFDです。わかりやすい例では、燃焼機関の開発において、流体シミュレーションでCO2排出量を抑えるための技術開発を行なう取り組みがあります。燃焼に占める化石燃料を減らし、水素の量を増やせば、そのぶんCO2排出量が抑えられます。現在の日本の水素コストは高価ですが、適切な利用方法に取り組むことで対コスト効率の良い燃焼が可能になります。そうしたさまざまな要因を考慮しながら解析を行ない、製品開発を進めることになります」(藤川氏)

数値シミュレーションの分野では日本発の優れた技術が数多く存在

検討すべき設計要素が増え、機構が複雑になればそのぶん解析も難解になる。たとえば液体燃料ロケットエンジンの開発では、エンジン内部の幅広い圧力・温度条件、流速条件の元で解析を行うが、超臨界における実在流体効果、噴霧状態・燃焼状態・伝熱状態の違い、伝熱や摩擦損失の特異な特性などを考慮する必要があるのだ。

「こうした解析のためのソルバとして私共が産業界における利用を促進し支援しているのが『CRUNCH CFD』です。NASAや米国防総省の要求で開発された技術をベースにしており、NASAエイムズ研究所をはじめ航空宇宙研究機関だけでなく幅広い産業で利用されています。実在流体モデルによる熱力学効果を考慮したキャビテーションか超臨界流体解析などが可能です」(藤川氏)

「CRUNCH CFD」は、ロケットエンジンの解析だけでなく、航空機の着陸時の安定性解析や、空母周りの空気の流れの解析、酸素ポンプのキャビテーションなどさまざまなシーンで活用されている。このソリューション自体は米CRAFT Techが開発したものだが、ヴァイナスではこのような海外の優れた製品の国内展開を積極的に進めるだけでなく、日本の研究開発機関の開発した先端技術を製品化し強力なサポートと共に産業界で幅広く利用できるように展開する取り組みに力を入れている。

  • 「CRUNCH CFD」によるロケットエンジン燃焼の解析

    「CRUNCH CFD」によるロケットエンジン燃焼の解析

「解決しなければならないユーザーの課題の認識からはじめ、それを解決するためのソリューションを国内外から導入し、見つからない場合は大学や研究機関の指導のもとで自社開発を行います。基礎研究、特に流体解析、数値シミュレーションの分野では、世界に紹介すべき日本発の優れた技術が数多くあります。われわれは、それらを実用化し、産業利用できるよう日々努力しています」(藤川氏)

JAXAなどの研究技術を実用化し、産業界での普及や活用推進に尽力

ヴァイナスが日本発の技術として実用化した製品の1つが「VFBasis」だ。これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究コードである「FBasis」をベースとしており、製造業の開発部門が使いやすいように機能拡張を行ってパッケージ化した製品だ。CFD解析では直接理解できない渦の構造や周波数を解明することができる。

「大規模な非定常データから高速かつ簡単に特徴構造(空間パターン)と時間変化(周波数、増幅率)を抽出できるようになります。たとえば自動車やファンなどの騒音がどこから発生しているかを知りたくても、一般的な流体設計や流体制御では困難です。「VFBasis」を用いると、車体や部品の形状を変えたときに、どのような空気の渦が発生するのかを解析し、わかりやすく把握できます。こうした空力抵抗の改善は、車両における低燃費化につながりカーボンニュートラル化に貢献するものとなります」(藤川氏)

  • 「VFBasis」による自動車後方の空気の渦の解析

    「VFBasis」による自動車後方の空気の渦の解析

ヴァイナスが日本発の技術として実用化した製品はほかにもある。カーボンニュートラル化に貢献する製品として注目できるのが、高速・多目的最適探査エンジン「iDIOS」と、オールインワン形状最適化パッケージ「Sculptor」だ。これらはいずれもJAXAが開発した最適探査エンジン「CHEETAH」をベースにしている。

「CHEETAHは、従来困難だった4目的以上の探査を実現する最先端の最適探査アルゴリズムです。『iDIOS』は、CHEETAHと操作性に優れたGUI、ポストプロセス評価モジュールなどで構成したパッケージです。探査回数を低減し、計算コストを削減、最適設計プロセスを自動化します。また、『Sculptor』は高品質メッシュモーフィング機能と多目的最適設計機能を統合したツールです。形状の制御・変更を行いながら、簡単かつ迅速に最適化設計を実現します」(藤川氏)

「iDIOS」と「Sculptor」は、自動車やバイク、航空機、タービンの翼形状、自動車のエンジンアッセンブリの形状最適化など、数多くの適用事例がある。

  • 「iDIOS」「Sculptor」による自動車のバンパーの空力・通風性能のパレート最適解

    「iDIOS」「Sculptor」による自動車のバンパーの空力・通風性能のパレート最適解

富岳コンピュータ設備エリア内にオフィスを設置し、活用を推進

こうした製品の活用にあたっては、環境の高度化も大きなテーマになる。特にクラウド環境の活用だ。この課題に対してヴァイナスでは「CCNV(Cloud CAE Navigator)」というクラウドシステム対応ジョブ実行・高速ファイル転送システムを提供している。

「クライアントPCから利用したい計算リソースの場所を選択し、ファイルを簡単に高速に転送することができます。富岳、FOCUS(計算科学振興財団)スパコン、HPCIスパコン、AWS、Azure、NEC、Lenovoなど、各種HPCに対応しています。マウスクリックだけでHPCを切り替え、ファイル転送、ジョブ実行、料金試算が可能です」(藤川氏)

  • 「CCNV」クライアントライセンス

    「CCNV」クライアントライセンス

ヴァイナスは、神戸市の富岳コンピュータ設備エリア内FOCUSに、HPC利用支援オフィス「C-CAT」を設置する数少ないベンダーの1社だ。理化学研究所やFOCUSから指名を受け、富岳スパコンの利用推進活動も行なっており、たとえばCOVID-19の飛沫感染リスクのシミュレーションなどを手掛けている。

「カンファレンスではこうしたさまざまな取り組みを発表いただきます。カーボンニュートラルをはじめとしたエネルギーに関わる社会的テーマは、多くの企業にとっての課題となっています。ヴァイナスは『ユーザーにとって最高のソリューションを提供する最高のパートナーであり続ける』ことを目指し、今後さらに取り組みを強化していきます」(藤川氏)

数多くの分野で大規模・高精度・高速計算を目指し、優れた基礎技術を製品として実用化してきたヴァイナス。10月6〜8日に開催されるユーザーカンファレンス「VINAS Online Users Conference 2021」では、カーボンニュートラルをはじめ、水素、超臨界流体利用の燃焼やポンプ技術、輸送機器の空力抗力低減、風力発電・家電機器の低騒音化などに関する最新技術や取り組みが紹介される。ぜひこの機会に、最先端の事例に触れてみてはいかがだろうか。

講演の見どころ

・DAY1
10月6日の全体テーマは「プリ・ポストプロセッサ」。基調講演には、東京大学 生産技術研究所 教授 博士(工学) 鹿園直毅氏が登壇し、「カーボンニュートラル時代の熱交換技術」と題して講演する。

・DAY2
10月7日の全体テーマは「ソルバ」。CRUNCH CFD V3.3の新機能や最新事例が紹介される。

・DAY3
10月8日の全体テーマは「最適設計/HPCアプリケーション」。iDIOS、Sculptorの最新機能、最新事例が紹介されるほか、特別講演では東京大学 生産技術研究所 加藤千幸氏による「『富岳』の時代のHPCとものづくり」、理化学研究所 計算科学研究センター 坪倉誠氏による「富岳が拓くSociety 5.0時代のスマートデザイン」が実施される。

会期 [DAY1:プリ・ポストプロセッサの部]

2021年10月6日(水)10:00~17:10(予定)
[DAY2:ソルバの部] 
2021年10月7日(木)10:00~17:00(予定)
[DAY3:最適設計/HPCアプリケーションの部]
2021年10月8日(金)10:00~17:00(予定)
開催方法 Web経由でご参加いただきます。
アクセス方法は、ご参加者へ追ってご案内します。
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対 象 エンドユーザー様
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参加費 無料(但し、事前登録を要します。)
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主催 株式会社ヴァイナス
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