デジタル化が進展したことで、企業は、いつでもどこからでも顧客との接点を構築することが可能になった。そこでの体験価値(カスタマーエクスペリエンス)を向上させ、顧客のニーズに合った商品やサービスを提供していくことは、今日の事業活動において欠かせない取り組みといっていい。

ただ、「カスタマーエクスペリエンスの向上」は言うは易し行うは難しで、本質的に取り組む場合には自社だけでなく取引先や顧客などあらゆるステークホルダーを包括した仕組みづくりが必要となる。どのようなアプローチでこれを進めていけばよいか。デジタルワークフローソリューションで顧客のカスタマーエクスペリエンス向上を支援するServiceNowに、話を聞いた。

ServiceNow

ServiceNowは企業全体の働き方を改革するという考えのもと、シンプルなタスクから、部門を横断する複雑な業務に至るまで、従業員の生産性を高めるデジタルワークフローを提供する企業。IT部門向け、従業員向け、顧客向けのワークフローにより業務プロセスの最適化・自動化を実現し、従業員と顧客に新しいエクスペリエンスを提供することで、企業全体が創造性を発揮するための基盤(プラットフォーム)整備を支援している。

エクスペリエンスとは何か

DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進展するなかで、顧客だけでなく、従業員や取引先に対してよりよい体験価値を提供することの重要性が指摘されるようになっている。従業員や取引先に対して顧客と同じく高い体験価値を提供することは、結果的に商品やサービスの品質が向上、ビジネス拡大に寄与するからだ。

ServiceNow Japan合同会社
ソリューションコンサルティング事業統括
第一ソリューションコンサルティング統括本部
統括本部長 佐々木 俊行 氏

では、体験価値などと訳される「エクスペリエンス」とはそもそも何なのか。ServiceNow Japan 合同会社 ソリューションコンサルティング事業統括の佐々木 俊行 氏は、エクスペリエンスについてこのように説明する。

「エクスペリエンスは時間や場所の制約なく、やりたいことがシンプルにあっという間にできる優れた体験のことです。言い方を変えると、これまで何日も何週間もかかっていたものがスマホの簡単な操作だけで完結してしまうような体験のことです。」(佐々木 氏)

優れたデジタルサービスが内包する、4つの要素

佐々木 氏は優れたカスタマーエクスペリエンスを提供しているモデルケースとして、AmazonやUber Eatsといった、デジタル時代の旗手と目されるサービスを挙げる。

なぜ私たちがAmazonやUber Eatsを利用するのか考えたとき、それは決して「安いから」などではない。多くの人はきっと、これらのサービスを、「便利だから」利用しているはずだ。この「便利だから」という体験はいったい何に起因して生まれるのか。同氏はこの体験を構成する要素として、「シンプル」「スピード」「完結性」「透明性」、以上4つを挙げる

「優れたデジタルサービスに共通するのは、Webブラウザー、スマホ問わずに直感的に操作できるということ、そして、目的が1つのサービスだけで達成できるということです。Amazonで言えば、利用者は欲しい商品を探し、商品を注文し、支払いや配送手配を行うという一連の流れを、途中で迷うことなくAmazonだけで完了することできます。さらに、購入ボタンを押してから翌日には手元に届き、到着までの間も、いま自分宛の商品がどこにあるのかが把握できます。実はこうした体験の裏側ではAmazonだけでなく出展ショップや配送業者など数多くの企業がサービス提供に関わっているのですが、そのことを利用者が感じることは全くありません。ここまで述べた『シンプル』『スピード』『完結性』『透明性』を備えるサービスづくりによって、利用者は、最初から最後まで "Amazonからサービスを受けている" と感じてこれを利用するのです。」(佐々木 氏)

カスタマーエクスペリエンスが向上しないわけ

4つの構成要素がわかったとして、これらを実装しようとしたときに期待したような成果が出ないケースは少なくない。佐々木 氏は、カスタマーエクスペリエンスの向上にあたって企業が見落としがちなボトルネックとして、「ユーザーインターフェース(UI)」「業務の流れ」「俊敏性(アジリティ)」を挙げる。

1つ目の「UI」だが、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するうえでは、直感的にやりたいことがすぐに実現できるインターフェースが欠かせない。しかし、佐々木 氏は、企業でカスタマーエクスペリエンスについて議論される場合、そのほとんどがビジネスモデルの話に終始していると言及。UIにまで目が行き届いているのは稀だとし、この結果、特別な技能を必要とする、あるいは操作説明書を見ないと使えないようなサービスが多く生まれていると述べる。

続けて同氏は、「業務の流れ」についてもこう説明する。

「Amazonの例でもお話したように、裏側の業務プロセスがスムーズに流れていく仕組みが必要です。しかし企業にはそれを妨げる問題が山積しているのが普通です。業務プロセスが複数部門にまたがっていて意思疎通やアクションが遅くなりがちだったり、情報が散在していて今どこで何が起きているかが特定しにくかったりなどは、多くの企業が抱える問題でしょう。1つの会社だけでもそうなのですから、複数企業が連なってサービスを提供する場合、問題はもっと複雑になります。サービスの裏側にある業務の整流化は、カスタマーエクスペリエンス向上に際して徹底的に議論しなくてはなりません。」(佐々木 氏)

「UI」や「業務の流れ」を適正化して優れたサービスを提供したとして、顧客を長期間つなぎとめるためには、常にユーザーニーズを追いかけてサービスにアップデートをかけていかなくてはならない。しかし、IT人材不足は深刻化している、エンジニアが確保できず今述べたアジリティを維持できないというのはよく耳にする話だ。

「人材難にの中にあっては、エンジニアを増やすのではなく、ハイスキルエンジニアとライトスキルエンジニア、ノンエンジニアで構成された "いまある人的リソース" でアジリティを確保するというアプローチが必要です。そのためにはLow Code/No Codeの仕組みをサービス基盤に盛り込むことが重要となります。当社の提供するNow Platformでは、『UI』や『業務の流れ』にある課題を解決しながら、今述べた基盤づくりを進めることが可能です。」(佐々木 氏)

エクスペリエンス向上を支援する「Now Platform」

ServiceNowでは、エンドツーエンド型のサービス提供モデルを支援するプラットフォーム「Now Platform」を提供。このNow Platformを活用すると、社内外に存在する人・組織が行う業務およびタスクを統合することできる。

「サービス提供に関わる人、業務、情報をNow Platformに集めた上で、『情報を調べる』『何かをお願いする』『状況を把握する』『督促する』『承認する』という業務の流れをデジタルワークフロー化し整流化させます。Now Platformはモバイルに最適化されたフロントインターフェースを備えるため、対顧客に対しても、モバイルネイティブな体験を提供する入り口を用意することができます。入り口で顧客が行った操作を起点として、後段の業務をつなぐ。これにより、エンドツーエンドのサービスを回すための仕組みをおのずと形成することができます。」(佐々木 氏)。

  • Now Platformでは、サービス提供に必要な人、業務、情報をつなぎタスクを整流化することが可能。Now Platformが包括していない業務領域についてもAPI連携でワークフロー化することができる。

Low Code/No Codeの仕組みを備える点も大きなポイントで、サービス開発のハードルを下げて裾野を広げながら、ビジネスニーズの変化に俊敏に対応していくことができる。

「コーディング経験のない市民開発者でも共同作業やアプリケーション構築が可能ですので、市況に即したCI/CD(継続的イテレーション/継続的デリバリー)のサイクルをまわすことができます。」(佐々木 氏)

新型コロナウイルス対策などにおいてエクスペリエンス向上を実現した事例も

実際にServiceNowのソリューションを活用してエクスペリエンス向上で成果を上げた事例もある。1つは、新型コロナウイルス対策において、住民が安心して生活を送ることができるように、新しい生活様式のサポートに取り組んだある都道府県庁だ。

この都道府県庁では、旅行者と市民、都道府県庁で働く人、この3つに対する感染リスクの通知に、Now Platformを役立てている。

「新型コロナウイルス対策では、トリアージから入院、回復までの過程のなかで様々なステークホルダーが関わります。この都道府県庁様では、組織や部門をまたぐタスク、業務をいかに整流化できるかが最大の課題でした。感染リスクがある方に対して保健所でトリアージして、病院で検査しPCR検査結果に基づく入院要否を判定する。そして回復・退院などの情報を然るべき組織と連携、共有する。通常これらの業務は電話を中心としたオペレーションになりますが、その場合、手続きが煩雑になったり、組織間の情報連携が遅れたりします。」(佐々木 氏)

同都道府県庁がNow Platformで実現したのは、業務の整流化と、利用者とコミュニケーションを行うインターフェースの整備である。この都道府県庁では、住民が使い慣れたLINEをインターフェースに採用し、後段のプロセスをServiceNowのデジタルワークフローで回すという仕組みを構築。これにより情報伝達が速やかに各組織に行われるようになり、感染者の情報やその後のケア情報を含めてオペレーション全体が効率化されたという。下の図はトリアージから退院までの一連の流れをまとめたものだが、利用者にとってLINE上ですべての体験がワンストップで提供されていることがわかる

  • ワンストップでのサービス提供を実現した某都道府県庁の取り組み。「シンプル」「スピード」「完結性」「透明性」以上の要素を備えていることがわかる。

地方自治体でいうと、「開かれた行政」の文脈で成果を上げた東広島市の事例もある。東広島市は地域DXの推進に注力しており、保育所と保護者をつなぐコミュニケーションツールの導入や、電子母子手帳、道路や公園の設備の不具合を市民がスマホアプリから通報するサービス「のんレポ」などをこれまで提供してきたが、市民に寄り添うサービスを提供していくための接点は対面や電話でのコミュニケーションに限られていたという。

そこで東広島市では、ほとんどの市民が所持するスマホに最適化したポータルサイト「東広島市 市民ポータルサイト」をServiceNowで構築。Low Code/No Codeのサービス基盤を活用することにより、「市民開発」という方針のもとほとんどインハウスでサイトを構築したほか、市民の声に即した機能追加にも取り組んでいる

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自社、取引先、そして顧客、あらゆるステークホルダーを包括した仕組みを構築する――カスタマーエクスペリエンス向上に不可欠なこの仕組みづくりは、一見すると困難なように思う。しかし、いま紹介した事例のとおり、Now Platformを利用すれば、そのハードルは決して高くはない。

「企業が陥りがちな3つのボトルネックを解消しながら、『シンプル』『スピード』『完結性』『透明性』という4つの要素をサービスに実装していく。そうすれば、より付加価値の高いデジタルサービスが提供できるはずです。Now Platformを介して、より多くのお客様のカスタマーエクスペリエンス向上をサポートしてまいります。」(佐々木 氏)

[PR]提供:ServiceNow Japan