(当記事はアドビ株式会社のAdobe Blog『デジタルリテラシー教育が個人の活躍の可能性を広げる〜Adobe Education Forum 2021レポートDAY1、DAY2』掲載記事からの転載です)

アドビが教育分野でのデジタルクリエイティビティの未来を考えるイベント「Adobe Education Forum Online 2021」が、2021年8月10日(火)~12日(木)の3夜連続で開催されました。今回のテーマは「新しい価値を創造する力を育む大学・専門学校教育~ Consumer から Creator へ ~」。時代の変化を捉えたDAY 1と、様々な事例を共有してデジタルリテラシーのもつ力を確認したDAY 2の様子を紹介します。

時代の変化で価値が変わる

DAY 1はIT批評家、アフターデジタル共著者の尾原和啓氏による基調講演「新価値を創造する時代を切り拓く能力」からスタート。コロナ禍で加速したDX(デジタルトランスフォーメーション)により時代の求める価値が変化したことを様々なキーワードで捉えます。「『製品』から『体験』へ」、「『保有』から『利用』へ」、「『機能価値』から『感情価値』へ」と表現し、従来のように製品を通して「点」で価値を提供するのではなく、製品を含むサービス全体の体験という「線」で価値を提供するスタイルに変化していることが解説されました。体験価値の創造が求められています。

  • 尾原和啓氏(右)とDAY1、DAY2のモデレーター橋谷能理子氏(左)

この変化する時代に必要なのは、誰かが作ったゲームを速く正確に解ける力ではなく、ゲームやルール自体を創り出す力だと尾原氏は示し、Consumer(消費者)からCreator(クリエイター)になる必要性が共有されました。

全ての職種でクリエイティブな力が生きる

続いて、リアルなクリエイティブワークの現場を、ヤフー株式会社CEOブランドコミュニケーション本部の岡直哉氏が紹介します。

同社は半数近くの社員がエンジニアかデザイナーとしてものづくりに携わっていて、自らのスキルアップや仕事の幅を広げる制度や環境が充実しているのが特徴です。アプリ等の制作の過程では、職域を越えて全ての工程に関わるので、全員にクリエイティブな力が求められています。岡氏は、今後IT化、AI化が進めばますますクリエイティブな仕事が増え、自分の強みを生かした働き方がスタンダードになると予測しました。

  • 岡直哉氏。職域を問わず全ての開発工程に関わることなどを紹介した。コロナ禍で自由度が非常に高いリモートワークが定着している

未来の社会人のポテンシャル

さて、そんな実社会に出て行く前段階でもある大学生にとってクリエイティブスキルはどのような位置づけなのでしょうか。アドビ教育市場部高等教育担当部長の江口美菜子は、2021年6月に行った「就職活動・若手社会人に必要なクリエイティブスキルに関する調査〜学校で学びたかったスキルとは〜」の内容を報告し、デジタルツールを使いこなす学生に話を聞きました。

授業やサークル活動で動画やフライヤー制作を行う東洋大学総合情報学部3年の重野さんは、クリエイティブな活動を通じて「コミュニケーション力とリーダーシップ力」が鍛えられたといいます。また、学内で様々な動画制作を手がけ起業もしている國學院大学経済学部3年の羽賀さんは、「相手の意図をくみ取って、表現して、提案するという一連の力」がついたと感じています。単に技術を習得したのではなく、社会で役立つ様々な力を身につけている姿が浮かび上がりました。

  • クリエイティビティについて意見交換する羽賀さん(左)、重野さん(中央)、アドビ江口美菜子(右)

デジタルリテラシーは総合的な表現力〜韓国の延世大学

DAY 2は、学校現場でデジタルリテラシー教育がどのような効果をもたらしているのかが共有されました。

韓国の延世大学(Yonsei University)の金炯秀(キム・ヒョンス) 教授は、同大がアドビと提携して2018年にオープンした延世デジタルエクスペリエンスセンターのセンター長を務めています。デジタルリテラシー教育の必要性が世界的に高まる中、写真、ビデオ、グラフィックス、オーディオ、ウェブなどを総合的に活用した表現力を育成する教育課程を立ち上げました。

  • 金炯秀教授。同大の教育課程「Content Writing Skills」の考え方や事例を紹介した

デジタルツールはコンテンツがあってこそ生きるものであり、「アドビのツールが優れていてもそれ自体を学ぶことは意味をなしません。重要なのは“デジタルツール with コンテンツ”、 “デジタルツール for コンテンツ”を意識することです」と金教授。個別にビジュアルイメージを作ることが重要なのではなく、様々な要素を融合させて文脈のあるコンテンツを創る総合的な力こそが重要だと語りました。

  • 化粧品会社と連携したマーケティング企画における学生の動画作品例。教室内にとどまらず生きたプロジェクトを行っている

社会で通用するソフトスキルが身に付く〜関西大学

舞台を日本に移し、関西大学外国語学部の井上典子教授が、2019年度から堺市と連携して行っている、英語による観光パンフレットとPR動画制作のプロジェクトについて紹介しました。

堺市への取材や街頭アンケートをもとに内容やデザインの検討を繰り返し、翻訳は特に丁寧に修正作業を重ねます。1年間のプロジェクトの過程で、学生たちは高度な英語力に加えて創造性や主体性、粘り強さなど様々なソフトスキルを身につけていきます。学生時代に同プロジェクトで学んだ若手社会人の皆さんからは、当時の経験で得た力が現職で大いに生かされているという報告がありました。

  • 井上典子教授。外国人観光客が本当に求める観光パンフレットの制作をテーマにプロジェクト型のゼミを行っている

  • プロジェクトで制作したPR動画とパンフレット。右下は、井上教授のゼミ出身の小島里香氏(左)と北山尚樹氏(右)。プロジェクトを通じて身についた力が現在の仕事でも生きている

デジタルクリエイティブが当たり前の表現手段〜神奈川大学附属中・高等学校

続いて、神奈川大学附属中・高等学校の小林道夫副校長が、Society 5.0に向けた教育改革のポイントをおさえた上で、1人1台のPCの活用について報告しました。

同校がさまざまなシーンでICTを活用する中、アドビのツールもポスターや動画の制作実習、ウェブサイトに研究成果をまとめるなどの用途で使われています。2020年度にオンライン開催した学園祭では、生徒自らクリエイティビティを発揮して、プロジェクションマッピングや動画などを制作して発表が行われました。何かを伝えるための表現手段のひとつとして、生徒たちにクリエイティブツールの活用が定着していることが伝わってきます。

  • 小林道夫副校長。学園祭で生徒が制作した作品などを紹介した。プロジェクションマッピングは、体育館で10台のプロジェクターを使って実現した

「デジタルクリエイティブ講義」のオンライン版をリリース

アドビからは、2018年から大学の一般教養向けに提供しているカリキュラム「デジタルクリエイティブ講義」のオンライン版を、2020年にリリースしたことを紹介。対面のオリジナルカリキュラムと同様に、講義と演習のセットでオンデマンドコンテンツとして学習できます。

すでに「デジタルクリエイティブ講義」を採用している大学の関係者からは、デジタルリテラシーを身につけることが、学部を問わずそれぞれの専門性の強化につながっていることが報告されました。

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「Adobe Education Forum Online 2021」のDAY 1、DAY 2は、世の中で必要とされる力の変化を改めて確認し、クリエイティブスキルを身につけた生徒、学生が豊かな表現手段で社会とつながる姿を共有する時間となりました。デジタルリテラシーを身につけることが個人の活躍の場を広げる時代、分野に関わらず全ての人にConsumer(消費者)からCreator(クリエイター)になれるチャンスがあるというメッセージが伝わってきました。

参考リンク

Adobe Education Forum Online 2021 DAY3レポート
Adobe Education Forum Online 2021 アーカイブ配信
参考資料:これからの社会で新しい価値を創造する力を育む大学・専門学校教育

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