“電気”は私たちの生活に欠かすことのできないエネルギーですが、原子力発電で電気を作り終えた後に残る「高レベル放射性廃棄物」の処分問題が、世界共通の課題となっています。
その廃棄物を安全に処分するために、日々尽力している人たちがいるのはご存じでしょうか?

今回は、高レベル放射性廃棄物の地層処分事業をおこなう組織である原子力発電環境整備機構(NUMO)の技術者を取材し、地層処分に関する話をうかがいました。

 

最先端技術で国家的プロジェクトに挑戦している日本唯一の組織であるNUMOってどういうところ?


  • 地上施設のイメージ


  • 地下施設のイメージ

みなさんは「地層処分」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
地層処分とは、原子力発電に伴って発生する高レベル放射性廃棄物を地下深くの安定した岩盤に閉じ込める処分方法です。

NUMOは、この地層処分の適地の調査から施設の建設、操業、閉鎖まで約100年を要する、大規模かつ長期にわたる事業を行う、日本で唯一の組織になります。

 

地層処分の基本を知ろう

地層処分する“モノ”って?

原子力発電で使い終わった燃料は、使用済燃料と呼ばれます。この使用済燃料は再処理することで再び燃料として使用できるのですが、その際に全体の約5%が放射能レベルの高い“廃液”として残ります。
それをガラスと融かし合わせて固めたもの(ガラス固化体)が「高レベル放射性廃棄物」で、私たちの生活環境に影響が出ないように、地表から300m以上深い安定した岩盤に「地層処分」することになっています。

なぜ“地層処分“が選ばれたの?

高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが十分に低下するまでに数万年以上かかるため、人間による管理を必要としない処分をおこなうべきであるとの考えから、原子力発電を始める以前より様々な方法が検討されました。
その結果、地層処分が現実的で安全な方法であるということが、国際的な共通認識となっています。

地層処分の仕組みについて

地層処分では、まず、放射能レベルの高い“廃液”をガラスと融かし合わせて固めたもの(ガラス固化体)を、地下水に触れないよう厚さ約20cmの金属製の容器(オーバーパック)に入れて封入します。さらにその周りを厚さ約70cmの固めた粘土(かんしょう材)で覆い、地下水と接触しにくくします。このような対策を人工バリアといいます。

この人工バリアを施したガラス固化体を地下深部の岩盤に埋設することにより、この岩盤(天然バリア)が持っている「モノが変化しにくく、モノの動きも非常に遅い」という性質を活用して、高レベル放射性廃棄物を人間の生活環境から隔離し、閉じ込めます。

NUMO 地層処分について >

 

「誰も成し遂げたことのない国家的課題に挑戦」NUMO技術者へインタビュー

 西川将吾さん 

技術部 技術開発統合グループ所属
各部署の連携のためのマネジメントなどを担当

 

――NUMOを選んだ理由を教えてください。

NUMOは、高レベル放射性廃棄物を安全に地層処分する日本唯一の組織です。地層処分は世界的にもまだ誰も成し遂げたことのない事業であり、そういった仕事にいちから携われることに魅力を感じました。

――技術者の皆さんは日々どのような業務をおこなっているのでしょうか。

地層処分を実施するためには、幅広い分野の技術と知識が必要になります。NUMOにはそれぞれの分野のプロフェッショナルが集まり、技術検討をおこなっています。

――それぞれの分野について詳しく教えてください。

地層処分を実現するには、数万年以上先を見据えて、火山活動や断層運動などの自然現象の影響を受けにくい場所を慎重に選ばなければなりません。具体的には、最新の科学や技術の知見を取り込みながら、地下環境がどのような状況なのかを確かめるため物理探査やボーリング調査(孔を掘って岩盤を採掘する調査)をおこないますが、そのためには地質学、地球化学などの専門的な技術や知識が必要となります。

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地層処分をおこなううえで避けなければならない場所

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処分施設建設地の選定方法

また、地層処分に適した場所の選定後、処分場を建設していきますので、土木工学の技術も不可欠です。そして、数万年以上にわたり人間の生活環境に影響が及ばないように放射性廃棄物を隔離し閉じ込める対策のひとつである「人工バリア」の設計も必要です。

単に放射線がどの程度遮断されるかという観点だけではなく、人工バリアが地下深くの環境で受け得る様々な影響を数万年単位で考慮して設計しなければなりません。このような人工バリアの設計には、放射線や人工バリアの材料に関する知見はもちろんのこと、ここでも地球化学の知見が必要となります。

このように、安全な地層処分の実現のために、NUMOでは幅広い分野のプロフェッショナルが集結して事業を進めています。

――その中で西川さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか。

私が所属する技術開発統合グループでは、今挙げたような分野ごとの技術開発成果を取りまとめて人工バリアと天然バリアを合わせた地層処分場全体としての安全性を確認したり、各成果を共有、連携できるよう分野間のコミュニケーションのサポートをおこなっています。

もうひとつの役割が、NUMOの国際的な活動の取りまとめです。
NUMOの各専門分野の職員は、日本を代表して各分野の国際会議に出席したり、各国との共同研究に参加して新しい技術や知識を取得したりと国際的に活動しています。また、日本の地層処分技術を世界に紹介することで国際貢献にも携わっています。

技術開発統合グループはこのような各職員の国際舞台での活動状況を把握するとともに、海外の地層処分の取り組みについて情報を整理してNUMOの中で共有することで各職員の国際的な活動をサポートしています。

――国際会議や各国との共同研究について詳しく教えてください。

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提供:OECD/NEA

日本で地層処分事業をおこなっている組織はNUMOしかありません。そのため、世界各国と連携し、知識を共有することは重要です。

現在、国際会議はオンライン開催になっていますが、私も入構して2年目から、パリで定期的に開催される経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の国際会議に参加しています。

共同研究も様々おこなっています。たとえば若手職員がスイスで調査データの管理方法について学んだり、処分場と同様の地下環境での知見を蓄えるために、他の海外の技術者たちと地下の研究施設で実証試験をおこなったりもしています。

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提供:スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社

――西川さんが現在、取り組まれているプロジェクトについて教えていただけますか。

現在は地層処分に関する情報連携の仕組みの構築をおこなう「知識マネジメント」プロジェクトに関わっています。

地層処分はプロジェクト自体がおよそ100年に及ぶ一大事業なので、情報や技術を次の世代にいかに引き継いでいくのかがとても重要なのです。将来、今よりももっと優れた技術が生まれている可能性もありますが、その技術は今の技術や考え方をベースにしたものになるはずだからです。技術の進歩を考慮して、私たちは今の情報や技術を確実に引き継いでいく必要があるのです。

また、プロジェクトの期間は100年でも、高レベル放射性廃棄物はずっと地下に残り続けるので、その間に将来の人類が掘り起こしたりしないように、処分場の存在を数万年先の未来にどう継承していくのか――そんな研究にも携わっています。

――未来の人類のために、今考えておかなければならないということですね。
西川さんの目標について教えてください。

何よりも、処分施設の近くに住む方々が不安なく日々を過ごせるような処分事業を実施することです。そのためには一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションを繰り返して懸念点を丁寧に解決していくことが必要だと思っています。

私自身、学生時代に勉強や部活に熱中できたのは“日々の生活に不安がなかったから”です。当たり前のように思えるかもしれませんが、“日々の生活に不安がない”というのは、とても大事なことですから。

――最後に、高レベル放射性廃棄物の処分問題について、私たちが考えるべきことを教えてください。

「高レベル放射性廃棄物」は普段の生活の中では目にすることのないものであり、自分ごととしてとらえづらいかもしれません。しかし、この問題を次の世代に先送りせず、私たちの世代で解決に向けて道筋をつける必要があると考えています。

たとえば生活する中でゴミは絶対に出るものです。同じように、電気などエネルギーを使ってもゴミは出るのです。そのように考えると、高レベル放射性廃棄物の処分問題が少し身近に感じられるかもしれません。

私たちの子孫が安全で安心して暮らせる世の中をつくるために、ぜひこの問題を一緒に考えていただけると嬉しいです。

 

未来のために私たちが考えていくべきこと

私たちの遠い子孫が安心して地球で生きていくために「地層処分」という方法が必要であること、そしてそのためにNUMOという組織が日々技術開発に尽力していること。そういった事実をしっかりと認識し、次の世代に負担を残さないために、今の時代を生きる私たちの世代で道筋をつける責任があるのではないでしょうか。

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