308のグループ会社と合計約7万8000人のグループ従業員数を有する京セラ。情報通信、自動車、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアなど事業領域が多岐に渡ることもあり、事業領域を横断した経営データの分析が難しいという課題を抱えていた。

そこで同社は2019年11月、データ分析プラットフォーム「ThoughtSpot」を部分的に導入。現在は全社および海外グループ企業への展開を進める。京セラは、ThoughtSpotを活用してどのように課題解決を図っているのだろうか。7月14日-16日にオンライン開催された「TECH+ EXPO 2021 Summer for データ活用」で、京セラ 経営管理本部 経営情報システム部 部長 平野克幸氏が事例をもとに紹介した。また、セミナーの後半では、ソートスポット シニアソリューションエンジニア 赤栗雅史氏によるThoughtSpotのデモンストレーションも行われた。本稿では、同セミナーの様子をお届けする。

  • 左から、京セラ 経営管理本部 経営情報システム部 部長 平野克幸氏、ソートスポット シニアソリューションエンジニア 赤栗雅史氏

データ分析による「アメーバ経営」の強化を目指す

京セラは、創業者である稲盛和夫氏が提唱する管理会計手法「アメーバ経営」を実践することで知られている。アメーバ経営とは、組織を5-10名の小集団に分け、それそれが独立採算を追求する仕組み。京セラにおいてアメーバ組織は約3000ほど存在する。デジタル情報が増加する近年においては、データ分析機能を強化し、アメーバ組織を横串で比較することによる各組織の採算改善活動への利用、および経営の意思決定支援、異常値を把握することによるガバナンスの強化が急務となっていた。

こうしてデータ分析基盤導入の機運が高まるなか、京セラにおけるThoughtSpotの導入が決定した。同ツールの選定理由やメリットについて、平野氏は次のように説明する。

「1つめは、数あるBIツールのなかでも大量データからインサイトを瞬時に抽出できる点。2つめはライセンス形態が容量課金制であったこと。数万人規模の会社で人数制限がないという点は魅力だった。3つめは、操作性が高く気づき(インサイト)を得ることが容易である点。全社員によるデータ分析を可能とする“データの民主化”が実現できると考えた」(平野氏)

そして2019年11月、情報システム部門内で機能確認・環境準備・基幹システムとの連携、データガバナンスの検討を実施。ユーザー部門への導入を見据えて、操作マニュアルや説明資料、教育用動画などの作成にも力を入れた。2020年4月には経営管理本部、2020年10月には間接部門へ展開。社内閲覧サイトの構築や事例発表会の実施など啓蒙活動に取り組むことで自律的な活用を促した。さらに2021年4月からは事業部門へ順次展開を進めており、現在では全社員利用の目処がたっているという。平野氏は「地道な取り組みを実施することでユーザー数を増やし、全社展開を進めていった」とThoughtSpot導入にあたっての活動を振り返ったうえで、「今後はデータドリブン経営を実現していきたい」と展望を語る。

過去3年間の膨大な経費データを短時間で分析

セミナーでは、京セラでの経費データを用いた非定形分析を事例として、ThoughtSpot活用のデモンストレーションが行われた。

まずは、過去3年分の経費データ約3000万件を年月単位の推移グラフとして表示するというデモンストレーション。経費データをもとに、「日付」「月単位」「経費金額」と検索窓に入力するだけで、瞬時に推移グラフが表示される。

  • 年月単位の経費データ推移グラフ

続いて、本部のみの経費データ約300万件のうち、年月単位の渡航費の推移グラフを表示。「日付」「月単位」「渡航費」「経費金額」と入力すると、2020年3月からコロナ禍の影響を受けて海外渡航費がほぼ0になっていることが可視化される。

  • 年月単位の渡航費の推移グラフ

また、平野氏は、ThoughtSpotのAIによる自動分析機能「SpotIQ」を経費データ全体に対して実行した例についても紹介した。インサイト数などを設定すると10秒程度でAIによる分析が行われ、特定部門において渡航費がここ3年間で下降傾向にあることを示すグラフが表示される。ほかにも、国内旅費や会議費、接待交際費もコロナ禍を受けて減少していることが同機能によって可視化された。

  • SpotIQによる傾向分析結果

ユーザー部門自らが分析を実施

このほかにも平野氏は、ThoughtSpotを活用した分析事例について紹介した。

1つめは、協力会社からの納品状況を改善検討するという事例。協力会社の納品データが大量でばらつきがあり、かつては業務改善のための分析ができていないという課題を抱えていたが、ThoughtSpotを利用することで、定期的に納品量の推移を確認できるようになった。平野氏は「たとえば、過去3カ月間の日付別の入荷量グラフを作成して推移やその明細を確認し、取引先別の入荷量を見ていくことで、平準化に取り組んでいる」と説明する。

もう1つは、資材部門における購買業務の一部集約に伴う改善検討の取り組み。注目すべきは、ユーザー部門独自で分析から改善まで行った事例であるということだ。現状に課題を感じていた資材部門が自らThoughtSpotを利用し、開発設定をして分析を進めたという。

「資材部門は拠点ごとに業務を行っており、運用方法もバラバラ。システムも拠点ごとに運用しており、非効率な状態だった。しかし、システム改修を行うと多額の費用が必要となってしまう。そこでThoughtSpotを用いて本社でデータを集約することで、業務効率化が実現できた」(平野氏)

今後、京セラとしては、海外関連会社とも連携を進め、データドリブン経営を進めていきたいという。現在は欧州の会社からトライアルを開始している状況で、将来的には欧州、アジア、米国での連携基盤をつくり、グローバルでの統合データを構築していく考えだ。

検索とAIで、誰もが簡単に分析できる

セミナー後半では、赤栗氏がデモンストレーションを交えながらThoughtSpotの概要について解説した。

赤栗氏は、ThoughtSpotの大きな特徴として「分析レポートを見ていて気になる点があったときや詳細が知りたいときに、誰でも調査が簡単にできるような検索機能を持っていること」を挙げる。

「グラフを作成する手順を覚えなくても、折れ線グラフや棒グラフ、日本地図をもとにしたヒートマップなどが検索ワードを入力するだけで簡単に作成できる。たとえば、月ごとの推移グラフを商品カテゴリ別で見たい場合も、検索バーに言葉を追加するだけ。検索結果は誰でも保存でき、ダッシュボードを作成して他の人にシェアすることもできる」(赤栗氏)

赤栗氏が「面白い機能」として紹介したのは、ドリルダウンの機能。気になる項目をドリルダウンしていくことで、自動でクエリやグラフが作成されるため、分析結果に対して自分の好きな軸で何段階も深堀りしていくことができる。

  • ドリルダウンの結果例

さらに、京セラの事例にも登場したAIによる自動分析機能「SpotIQ」をあわせて活用することで、「これまでシステム部門や分析チームが作成したレポートを見るだけだった現場部門も、自分たちでその詳細を調べることができるようになる。また、結果を保存して報告会などでも利用できる」(赤栗氏)

  • ThoughtSpotのホーム画面例

SaaS型のサービスであるThoughtSpotは、クラウドデータウェアハウスを利用している企業であればすぐに使い始めることが可能だ。今回ご紹介した事例以外にも、業種業態問わずさまざまな利用方法がある。すぐに始められる30日間の無料トライアルもあるので、興味のある方はぜひ一度試してみていただきたい。

▽セッションを見逃した方はこちらからアーカイブ配信をご視聴できます https://go.thoughtspot.com/webinar-kyocera-jp.html

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