日本初の大型人工サーフィン施設が登場

日本有数のサーフスポットとして知られる静波海岸からわずか60mの場所に、新しいスポットが誕生しようとしている。それが大型人工サーフィン施設「静波サーフスタジアム(Perfect Swell Shizunami)」だ。世界でもっとも有名な3つの造波メーカーのうちの1社、米国American Wave Machines (以下AWM)の造波装置「PerfectSwell®」を日本で初めて採用しており、日本の新たなサーフスポットとしての静波海岸の魅力がさらに増すことが期待されている

この静波サーフスタジアムの予約・来場受付・精算などの基幹システムは「Claris FileMaker」で開発され、リストバンド1つですべてを管理しながら完全キャッシュレスの環境を実現している。今回は、なぜサーフスポットに隣接する場所に人工サーフスポットを設立したのか、静波サーフスタジアムの特長と魅力、そしてFileMakerでどのような効率運営を目指しているのか、運営会社であるサーフスタジアムジャパン株式会社の安達 俊彦 氏、企画立案を担当した株式会社ジャックオーシャンスポーツの井部 憲良 氏、システム開発を手掛けたネビュラ株式会社の松本 健吾 氏にお話を伺った。

登場人物紹介


  サーフスタジアムジャパン株式会社
代表取締役 安達 俊彦 氏

  株式会社ジャックオーシャンスポーツ
取締役 井部 憲良 氏

  ネビュラ株式会社
代表取締役 松本 健吾 氏



造波装置「PerfectSwell®」が作る波の魅力

──静波海岸の魅力をお聞かせください。

安達氏: 静波海岸は温暖な気候かつ遠浅で波が静か、そして景観の良い白い砂浜という特徴から、夏期には県内外から多くの海水浴客が訪れる人気の観光スポットです。サーファーからの知名度も高く、年間およそ60万人のサーファーがこの地を訪れています。内海の駿河湾から御前崎までの間には多くのサーフスポットが点在していますが、中でも静波海岸は水深が浅めで岩も少なく、初心者でも安心して経験を積める海岸として知られています。

井部氏: 勝間田川河口から御前崎に続く海岸線に位置しており、東名高速道路の吉田ICから車で15分、そして富士山静岡空港からも車で20分と、県外や国外からアクセスしやすい点も人気の理由の1つです。さらに車700台を収容できる大型駐車場を備えているので、サーフボードを持っていくために移動手段として車を選択せざるを得ないサーファーにとっては最も好都合なサーフポイントといえます。

──静波海岸というサーフスポットがある中、サーフィンスタジアムを作ったのはなぜですか。

安達氏: 静波サーフスタジアムは、最高のサーフィンをいつでも体験できる、世界レベルのサーフィンスタジアムです。先述したとおり、静波海岸は県外そして国外からもサーファーが訪れるサーフスポットとして知られています。サーファーが集まるこの地で、さらにサーフィン人口を増やしていきたいという想いがありました。

静波海岸は非常にサーフィンに適していますが、サーフィンを楽しむためには "波" を待たなくてはなりません。初心者の方はまずは小さい波で練習したいでしょうし、上級者は高い波を楽しみたいはずです。しかし、望んだ波が常にくるとは限らず、波の状況が優れなければサーフィンは楽しめません。しかし、造波装置があれば常に一定の波を発生させることができるため、日中に海岸の波が穏やかになっているときに、自分のレベルにあった波でサーフィンを楽しめますし、静波海岸のコンディションが悪いときの代わりの選択肢にもなり得るでしょう。

──造波装置を用いたサーフィンにはどのような特長があるのでしょうか。

安達氏: 静波サーフスタジアムでは、「PerfectSwell®」という造波装置を採用しました。これは AWM社が持つ最先端技術を駆使した装置であり、多種多様な波を創造することが可能で、世界の名だたる海岸のブレイクを再現できます。「PerfectSwell®」はAWMが誇るナショナルブランドとなっており、他では実現できない素晴らしい波を再現してくれる設備です。

オープン当初は4段階の波の高さを提供する予定で、1時間あたり12人程度のサーファーが10本ほどの波に乗ることができます。プール端にはさざ波エリアもあり、こちらは子供も利用可能ですので、親子連れでも楽しめます。

──それは楽しみですね!! オープンはいつ頃を予定しているのでしょうか。

安達氏: 当初は2020年6月25日を予定していましたが、新型コロナウイルス流行の影響によってAWM本社の技術者の入国が遅れたため、現在最終調整中です。さざ波プールの滑り止めの追加工事なども実施して安全対策を万全にして開業したいと思います。よって現段階でオープン時期は明言できない状況にあります。お待ちいただいている皆様に対しては、大変心苦しく思っています。

財布を持たずにサーフィンを楽しめるシステム

──静波サーフスタジアムの予約システムについてお聞かせください。

井部氏: 静波サーフスタジアムでは、Web予約システムを採用しています。会員情報とクレジットカードを登録すれば、希望の日付や波のレベル、コーチの有無を選んで予約し、クレジットカードで事前決済できる仕様になっています。

──入場から買い物まで財布を持たずに水着のまま利用可能とのことですが、どのような仕組みでしょうか。

井部氏: 予約をするとQRコードが発行され、当日は受付で印刷もしくはスマートフォンに表示したQRコードをiPod Touchで読み込ませます。受付自体はこれで完了してしまうので、水着を着用し、サーフボードを持ってそのまま来場いただいて大丈夫です。

井部氏: 入場時は防水紙で作られたリストバンドをお渡しします。このリストバンドには予約時のクレジットカード情報が紐付けられており、これが入場ドアを開けるキーになると同時に、場内の決済に利用できます。また、受付時に預けた荷物の写真とリストバンドのQRを紐付けて、顧客の荷物を管理することが可能です。当初はファッション性から、リストウォッチやブレスレットのような形も考えていましたが、コストや回収の手間がかかってしまいます。そこでQRコード情報と会員情報を一時的に紐付けて、チェックアウトすればQRコードを無効にするリストバンド使い捨て方式を採用しました。

──QRコードによって予約から退場までキャッシュレスで行えるのですね!

井部氏: はい。本格的に話が動き出す前から「水着のまま、手ぶらで場内を歩き、そしてビールを楽しめる世界にしたい」という想いがありました。すべてのサーファーの方が、サーフィンを心から楽しめる空間にしたかったのです。

このコンセプトが決まり、2019年の11月ごろから計画をブラッシュアップするとともに、システム開発会社の検討を進めました。ICタグを得意とする大手をはじめ5社ほど検討し、2020年1月ごろにネビュラさんに開発をお願いすることになりました。

──最終的に開発をネビュラに依頼した理由を教えて下さい。

井部氏: その理由は3つあります。1つ目にネビュラさんは開発工数を抑えつつシステムを作ることに長けている点、2つ目は本拠地が浜松にあるためアクセスが良く、メンテナンスの観点でメリットを感じた点です。3つ目に、なによりも松本社長ご自身がサーファーで、あらためてサーフィンについて教える必要がなく、意思疎通が非常にしやすかった点です。サーフィンの楽しさや不便さを共有できることは工程の短縮にも繋がりました。

──静波サーフスタジアムのシステムにFileMakerを採用された理由についてお聞かせください。

井部氏: 我々ユーザ視点で申し上げますと、生産性とカスタマイズ性の高さに特長があると感じています。新設の施設ですので、松本社長の知見からシステムと現場を上手に融合してもらい、現場の要件を満たしていただけました。

松本氏: 当社は、28年前の会社設立当初からFileMakerプラットフォームを採用し、業務システム開発をおこなっています。直感的にレイアウトを作成してお客様に共有できるため、開発工程での手戻りもなく、少ない工数で良いものが作れる、システムによってはローコード開発もできる点等が優れていると思います。

今回のシステムには基本的にすべてFileMakerプラットフォームを中心に開発されており、お客様とアジャイル開発を進めることができました。例えば、予約サイトを連動させることで、予約時に取得した波の嗜好や来店頻度、レギュラー・グーフィーなどのスタンスなどを蓄積し、これらのデータ分析を運営に活かすことができます。また、開発側からするとFileMakerでは 検索クエリを作る必要がなく自由に検索ができるため、ユーザ・開発双方に大きなメリットがあると感じています。

静波サーフスタジアムが目指す新しいサーフィンの楽しみ方

──現在、開業に向けてどのような取り組みを進めていますか?

安達氏: いまはまさに開業直前の状態まで進んでおり、もう間もなくローンチというレベル感です。システムの仕組みそのものはほぼ完成段階にあり、現在は2名の専任スタッフがコンテンツの中身やテキスト、ユーザービリティなどの最終チェックを行っています。

井部氏: 新しい施設ですから、システムに100%完成という形はなかなかないと思います。「これならいけるね」という感触が得られたところで開業し、運用しながら改良を重ね、より良いものにしていくというのが今後の流れになると思います。

安達氏: この地で開業させていただく以上、地域住民の皆様のご理解を得ることが第一と考えています。本来であればオープンセレモニーを始めとしたポジティブなイベントとともにローンチを迎えたいのですが、新型コロナウイルス感染症の流行との兼ね合いもあり、なかなか決断できないというのが私の心境です。

サーフィンに関連したメディアやSNSなどを通じてまずはサーファーの方に知っていただき、コロナ禍が落ち着いたころに一般の方にも周知していく流れを作っていければと思います。

──静波サーフスタジアムの可能性についてお聞かせください。

松本氏: 静波サーフスタジアムは、サーフィンに親しんだ中・上級者の方だけでなく、初級者の方も楽しめることが魅力であり、すばらしいと私は思います。

安達氏: 定期的に同じ大きさの波がやってくる環境は、初心者の方にとっては安心して練習できるため、加速度的な上達が期待できると思います。サーフィンを始めてみたいという方はぜひここで練習を積んでほしいと思います。

井部氏: 私は社会福祉の仕事もしているのですが、実は障がい者の方々に向けた「アダプティブサーフィン」というものがあり、世界選手権も開催されています。静波サーフスタジアムであれば、安全かつ監視員がいる中でチャレンジできるので、そういった方々の練習にも利用していただきたいと思いますね。

安達氏: 本格的な造波装置を使った大型サーフィンスタジアムは、日本で初の試みとなります。まだまだ解決しなければならない点は多々あると思いますが、日本を代表するアスリートやサーフィンを日常的に楽しんでいる方はもちろん、一度サーフィンを中断した方、そして小さいお子様などにもぜひサーフィンの楽しさを実感していただきたいと思います。

「水着のまま財布を持たずにサーフィンを楽しめる世界にしたい」という想いのもと、予約から退場まですべてキャッシュレスで行える環境を創り出し、静波サーフスタジアムの開業を支えるFileMaker。日本初上陸の造波装置「PerfectSwell®」とサーファーならではの視点をふまえて構築された管理システムを兼ね備えた同施設は、サーフィンの可能性を広げる起爆剤的な存在になり得るだろう。

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注釈:PerfectSwell®、SurfStream®およびそのロゴは、American Wave Machines社の登録商標です。PerfectSwell®, SurfStream® and their logos are registered trademarks of American Wave Machines.

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