デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現してイノベーションを創出するには、最新技術を採用したITインフラの活用が不可欠です。2021年6月15~18日に開催されたオンラインイベント「Lenovo Tech Week Spring 2021」では、企業のITプロフェッショナル/ITリーダーに向け、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(以下、レノボ)が展開する最先端のテクノロジーやソリューションの魅力が紹介されました。本稿では、レノボのサーバーとニュータニックスのソフトウェアを統合したHCI(ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ)製品「Lenovo ThinkAgile HX」を解説した2つのセッションの内容をレポートします。

DXの実現にはITインフラのモダナイズが不可欠、HCIによるハイブリッドクラウド環境が最適解

ThinkAgile HXの初級セッションとなる「ThinkAgile HX/新たな挑戦! ~Edge~DCモダナイゼーションを加速する新製品のご紹介~」では、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 ソリューション推進本部の内田 修氏が登壇。ITインフラの市場動向からHCIの必要性、レノボのHCI製品ラインナップ、ThinkAgile HXの特徴までが解説されました。

DXの推進には、「従業員満足度(EX)」「働き方改革」「セキュリティ対策」「創造的・破壊的なテクノロジー」といった要素が欠かせないとする内田氏は、経済産業省が2018年9月に公開した「DXレポート」に言及。IT人材の不足やITインフラリプレースの必要性といった喫緊の課題を解説し、2025年までにシステム刷新を集中的に推進しなければ最大12兆円の経済的損失が発生する可能性があると解説します。

さらに内田氏は、2020年12月に公開された「DXレポート2(中間取りまとめ)」を取りあげ、「日本企業の9割以上がDX未着手、またはDX途上企業です」と、DXが進んでいない現状に警鐘を鳴らしました。

IoT、AI、ロボット、5G、スマートシティ、脱酸素といった分野のビジネスは数十兆円規模に膨らんでおり、これらのビジネスを成功させるには新しい仮想基盤が必要になると内田氏。レノボのHCIによるハイブリッドクラウド環境が、こうしたビジネスの成功を支援していくと力を込めます。

「DXを推進するには、運用負荷の高い従来の3層構造のインフラ基盤から、ソフトウェア定義型ストレージと総合管理性を備えたHCIへの移行が効果的です。レノボでは、Nutanixベースの『ThinkAgile HX』、VMware vSANベースの『ThinkAgile VX』、Azure Stack(Microsoft S2D+Hyper-V)ベースの『ThinkAgile MX』という3つのラインナップを用意し、さまざまな企業のDXを支援していきます」(内田氏)

本セッションでは、Nutanixベースのアプライアンス製品、または認定ノード製品であるThinkAgile HXシリーズについて詳細が解説されました。「大規模DB/ブロックチェーン」「3D VDI/AI」「VDI/ビジネスアプリ」「ファイルサーバー/ビッグデータ」など、さまざまなワークロードに即した幅広いポートフォリオが提示され、最新モデルである「リアルタイム解析/SAP HANA向けモデル」「AMD/EPYCモデル」「IoT Edge専用モデル」についても語られます。

  • ThinkAgile HXシリーズは、ワークロードに即した幅広いポートフォリオを展開。新製品としてAMD/EPYCモデルの提供も開始した

    ThinkAgile HXシリーズは、ワークロードに即した幅広いポートフォリオを展開。新製品としてAMD/EPYCモデルの提供も開始した

「AMD/EPYCモデルの『ThinkAgile HX3375/HX3376』は、高度な計算処理のワークロードを加速するもっとも信頼性の高いHCI製品です。データベース、VDI、一般的な仮想化のワークロードで高いパフォーマンスを発揮します。本製品が採用しているCPU『AMD EPIC 7002』は、1ノードあたり64コア/128スレッドまでをサポート。85%のアプリ展開のスピードアップを実現するほか、複数コアによりサーバーコストを最大50%削減できます」(内田氏)

内田氏は、ThinkAgile HXシリーズの特徴として「ハードウェアの信頼性」「運用管理」「サポート体制」「拡張性/TCO削減」を挙げ、将来的な対応として「Edge/HCI対応」「マルチクラウド対応」「SAP HANA対応」も大きなメリットになると語ります。

ThinkAgile HXはすでに多くの企業に導入されており、業務課題の解決やDXの推進を支援しています。本セッションでは導入事例の一部をピックアップ。SAP ERPをThinkAgile HXに移行させ、パフォーマンス問題を解決した赤城乳業株式会社、GPUを搭載したThinkAgile HXで3D CADソフトウェアが利用可能なVDI環境を構築したトヨタ自動車株式会社、6ラック/21システム分のサーバー群を2ラックのHCI(ThinkAgile HX)に集約した都立松沢病院の成功事例が紹介されました。

  • トヨタ自動車株式会社のCAD on VDI事例でもThinkAgile HXが採用されている

    トヨタ自動車株式会社のCAD on VDI事例でもThinkAgile HXが採用されている

レノボでは、データ保護サービス「Nutanix Mine」、ITインフラ管理ソリューション「Prism Pro」、アプリケーションライフサイクル管理とクラウドオーケストレーションツール「Nutanix Calm」、ハイパーバイザー「Nutanix AHV」といったNutanixソフトウェアをVLS製品として提供していく予定と内田氏。HCIを活用したハイブリッドクラウド環境の構築を支援していくと語り、講演を締めくくりました。

ThinkAgile HXを軸に提供するレノボのワンストップ型VDIソリューション、その実力は

続いて開演したのは、ThinkAgile HXの上級セッション「ThinkAgile HX/VDIインフラ整備に向けたベストプラクティス」です。セッション前半では、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 ソリューション推進本部の柴田 明彦氏が登壇。「VDIソリューションをLenovo ThinkAgile HXで実現する」をテーマに話を進めます。

「昨今の企業では、経営層、ユーザー、管理者それぞれの視点で多様なIT関連の課題が顕在化しています。経営者視点からの課題としては『災害時の業務停止やパンデミックによる出社困難などによるビジネス損失』や、『機密データの情報漏えい』が大きな課題となっており、業務の継続・迅速な復旧が可能な仕組みや、強固な情報漏えい防止策が必要となってきています」(柴田氏)

レノボでは、業務継続性やセキュリティ対策を強化するアプローチとして「VDIソリューション」の導入を推奨。柴田氏は、VDIソリューションの導入メリットとして「生産性向上と競争力強化」「セキュリティリスクの軽減」「事業継続/災害対策」「運用コストの低減」を紹介し、レノボの強みを「エンドポイントからソフトウェア、インフラ、サービスを含むエンドツーエンドの幅広いVDIソリューションをワンストップで提供できること」と語ります。

セッションでは、テレワーク/リモートワーク環境を実現するリモート接続システムとして「リモートデスクトップ(RDS)」「VDI(オンプレミス型)」「クラウド型(DaaS)」「VPN接続」の4つを挙げ、それぞれのメリット・デメリットについて解説。柴田氏は、システム基盤にHCIの採用によってデメリットを解消したVDI方式が有効な選択肢であると説明します。

  • HCIを採用することで、リモートデスクトップやVDI方式におけるリモートワーク環境の課題が解消される

    HCIを採用することで、リモートデスクトップやVDI方式におけるリモートワーク環境の課題が解消される

柴田氏は、VDIに好適なHCIソリューションとしてThinkAgile HXシリーズをピックアップし、VDIに対応するモデルとしてVDI向けの「HX3320」「HX3720」や小規模VDI向けの「HX2320」、3D VDI向けの「HX 3520-G」、さらに最新モデルのAMD/EPYCモデルとなる「HX3375」などを紹介。

「ThinkAgile HXシリーズは、DXワークロードにも対応した業界最大の25モデルを用意しました。エンタープライズから小規模まで、あらゆる企業のVDIインフラ整備に最適なHCIソリューションといえます」(柴田氏)

レノボでは、VDIサービスとして提案から設計・構築、パイロット、展開、サポートまでをトータルで提供していると柴田氏。セッションでは金融期間/監査法人、製造業のVDI基盤にThinkAgile HXが採用された事例を紹介し、従来の3層構造のインフラ基盤からHCIに移行することで実現する運用・保守、コスト面のメリットが語られました。

効果的なVDIソリューションを実現するNutanixの最新テクノロジーとは

続いて登壇したのは、ニュータニックス・ジャパン合同会社 シニアシステムズエンジニアの川田 智史氏。VDI環境に最適なNutanixテクノロジーについて解説しました。

川田氏は、VDI導入を成功させるためのポイントとして「短期間での導入」「スモールスタート」「柔軟かつ迅速な拡張」「システム性能」「運用・管理のしやすさ」の5つを挙げ、それぞれに対応するNutanixのテクノロジーを紹介。まずは「短期間の導入」についてこう語ります。

「昨今では緊急措置としてテレワークの導入を検討する企業も多く、短期間でVDI環境を構築できるかが重要なポイントとなります。ニュータニックスのHCI製品では、Nutanix Sizerというサイジングツールをパートナー各社に提供し、設計時の工数削減を支援しています。環境構築時も、ハードウェアプラットフォームベンダーからNutanix環境がプレインストールされた状態で出荷されるため、Foundation(Nutanixセットアップツール)を使って短時間でインフラ構築が可能です。メインの作業となるVDI部分の設計・構築準備に、より多くの時間が使えるようになります」(川田氏)

続けて「スモールスタート」「柔軟かつ迅速な拡張」においては、異世代HWの混在、異機種の混在、GPU搭載機の混在など柔軟性の高いNutanixのシステム拡張が効果を発揮すると川田氏。ITインフラ管理ソリューション「Prism」を使えば、数ステップでノード増設が行えると力を込めます。

  • ニュータニックスのHCI製品では、性能を低下させることなく大規模なスケールアウトが可能

    ニュータニックスのHCI製品では、性能を低下させることなく大規模なスケールアウトが可能

「システム性能」に関しては、I/O性能を確保するため「データローカリティ」というアーキテクチャを採用。VDIに特化した性能最適化も図っており、複数VMから参照されるデータを検知して各ノードにキャッシュすることで、リンククローン使用時のマスターイメージに対するI/Oの集中、いわゆるブートストームを回避します。

また、「運用・管理のしやすさ」においても、前述したPrismによって実現できると川田氏は語ります。

「ニュータニックスではPrismというWebブラウザベースの管理インタフェースを提供しており、HW層から仮想環境層までを一元的に管理できます。直感的なUIを採用し、過去の利用状況や傾向を分析・可視化することも可能です。さらに、管理者の定型業務を自動化するための機能となる『X-Play』機能も備えています」(川田氏)

さらに、IT管理者にとって大きな課題といえるアップグレード運用についても、「LCM(Lifecycle Manager)」で対応。必要最低限の操作で各種ソフトウェア/ファームウェアをアップグレードできるほか、ローリングアップグレードを採用してシステム全体を止めることなく最小限の部分停止で実行できるといいます。

このほかにも、VDIのユーザーファイル領域に利用可能なNAS機能を提供する「Nutanix Files」や、仮想マシン間のネットワークセキュリティをポリシーベースで強化できる「Nutanix Flow」、サードパーティバックアップ製品を最適な環境で稼働させる「Nutanix Mine」などを紹介。これらのNutanixテクノロジーを組み合わせることで、VDI環境をより便利・効率的に管理・運用できることが語られ、セッションは締めくくられました。

2つのセッションでは、DX、働き方改革に対してHCIが大きな役割を担うこと、そして、スモールスタートから性能劣化なく柔軟な拡張性を提供するNutanixソフトウェアが利用可能なThinkAgile HXでこそ、効果的なVDIソリューションが構成できることが語られました。

さまざまな業務に対応するため、ラインナップの拡充を続けるThinkAgile HXシリーズ。今後の展開からも目が離せません。

▼Tech Weekオンデマンド配信はこちらからご視聴いただけます。
https://www.lenovo-techweek.jp/

[PR]提供:レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ