手形の廃止によって掛取引はどう変わるか

一般的に、手形は“資格や権利を称するもの”を指します。
関所を通るための「通行手形」、取引の決済手段として用いられてきた「約束手形」、現在で言うところの切手のような役割を果たした「切符手形」など、様々なシーンで活用されてきました。
日本では鎌倉時代ころから既に商取引で利用されていたと言われている手形取引ですが、近代ビジネスに於いてどのような役割を果たしているのでしょうか。
当ページでは、手形取引の現状・問題点・ファクタリングとの違い・今後の展望などにフォーカスを当て、解説してまいります。

約束手形とは

約束手形とは、文字通り「令和○年○月○日までに○○円を支払う」といったように、決められた期日までに決められた金額を支払う旨を約束する証書のことです。
「特定の要件を満たせば自由に発行(振出)できる」「他社から受け取った約束手形を別会社への支払いとして使用できる」など、高い流動性と資産性を有しており、多くのビジネスシーンで重宝されてきました。
しかしながら、1990年の手形交換高4,797兆2,906億円をピークに陰りが見えはじめ、2019年には手形交換高が183兆9,808億円(前年比▲29.5%)にまで減少しています。

手形取引の問題点

前述したとおり、受け取った約束手形は他の支払いに充てること(別企業への譲渡)が可能です。(例:A社は、B社から額面100万円の約束手形を受け取った。A社はC社に対する未払金100万円を当該約束手形で支払った。)
ただし、譲渡するにあたって一点注意せねばならないポイントがあります。
それは、手形を譲渡した企業(譲渡人)は、譲渡された企業(譲受人)に対し、手形を発行した企業(振出人)と連帯して責任を負うという点です。
つまり、振出人が万が一倒産してしまった場合、譲渡人は譲受人に対し、振出人に代わって代金を支払わねばならなくなります。
これには「一企業の倒産が他の企業の倒産をも招く危険性」があり、実際にバブル崩壊直後は約束手形が履行されないケースが相次いで発生し、市場は大混乱に陥りました。
さらに、手形で商品を購入できるだけ購入し、現金に換えた上でわざと倒産するといった手口(いわゆる取り込み詐欺)も横行し、多くの企業が倒産に追い込まれる事態となったのです。
一部の業界では今もなお手形での取引が行われておりますが、詐欺リスクや連鎖倒産の危険性に鑑み、現在ではほとんど利用されなくなりました。

ファクタリングとの違い

手形は、銀行や専門の貸金業者に買い取ってもらうことも可能です。
これを「手形割引」といい、所定の手数料は掛かるもののキャッシュフローの改善を図れる・手形決済ができない支払いに充てることができるといったメリットがあります。 売掛金を売買するというスキームはファクタリングと似ていますが、両者には以下の点で大きく異なります。

まず、訴求権とは前述した「連帯責任」のことを指します。
満期日前に振出人が破綻してしまった場合又は支払拒絶があった場合、手形を売却した企業は当該金銭を支払わなければなりません。(手形法77条)
一方、ファクタリングにはこのような義務が無く、取引先(売掛先)が万が一破綻してしまったとしても責任を負うことはありません。
買戻請求権とは、簡単に言うと手形を買戻すよう請求できる権利のことです。
買戻し事由は金融機関によって異なるものの、一般的には「振出人」「割引依頼人」のどちらかが信頼性を欠く状況となってしまったときなどに、権利を行使できるようになります。
なお、当該請求は金融機関側の一方的な意思表示のみで行使でき、発生した債務は割引依頼人の当座預金から相殺する形で回収されます。
したがって、どう転んでも金融機関側は損をしない仕組みと言えます。
一般的なファクタリング契約には買戻請求権が付されていませんが、当該権利は特約によって付け加えることが可能ですので、念の為利用するファクタリング会社にご確認ください。

手形取引が廃止される?

令和3年2月19日、中小企業庁において「約束手形をはじめとする支払条件の改善にむけた討論会(第6回)」を開催し、第5回までの議論内容の取りまとめ及び報告が行われました。
中には「約束手形の廃止」という驚くべき内容が含まれており、明治より続いてきた手形での支払いという商習慣が今後無くなる可能性があります。
どのような討論がなされたのか、要点を確認してまいりたいと思います。

廃止に向けた自主行動計画を策定

当記事でもお伝えしてきたとおり、手形には多数のメリットが存在する反面で、経営を不安定にしやすい・連鎖倒産を招く可能性がある等のデメリットがあります。
そこで、経済産業省(中小企業庁)では手形廃止に向けた取り組みをスタートさせており、同日までの議論に於いて「約束手形の運用改善」「約束手形の利用廃止」を軸に、自主規制計画を策定しています。

また、経済産業省では金融界に以下の働きかけをすべき、との見解も発表しています。

決済関連手数料の見直し

これまでお伝えしてきた通り、約束手形は振出人側にメリットが大きい決済方法です。
さらに、手形割引に要する手数料は手形を受け取った企業(受取人)が負担する形ですので、手数料面でも振出人側が有利な仕組みになっていると言え、有識者の間では約束手形に関連する手数料の見直しもすべきとの声が多く聞かれたようです。
具体的には、手形帳発行手数料や割引料等の適正化に加え、インターネットバンキングやで電子記録債権(でんさい)・電子決済サービス等の手数料の低減等を金融業界に働きかけていきたいとのことでした。

電子決済サービスの普及促進策

「電子化」の波は手形にも押し寄せています。
具体的な案として、約束手形と同等以上の商品性の確保しつつ、誰でも簡単に利用が出来るようなサービスの確立、制限の緩和、取引証明書の発行、電子記録債権の互換性を確保、中小企業が新規導入する際のサポートを充実させること等を目指すとの発表がなされています。
同時に、約束手形を廃止する事業者に対する資金調達支援や、制度融資や振興事業計画を積極活用すること、フィンテック企業との提携等についても推進していくとのことです。

ファクタリングに対する見解

手形に変わる資金調達方法を議論する中で、同庁ではファクタリングの利用状況や課題等についても発表しています。
令和2年度に行われたアンケート調査によると、建設業577社中43.2%・製造業1059社中55.2%・卸売業675社中51.6%・運輸業118社中41.5%が「ファクタリングサービスを利用している」と回答したそうです。
そのため、ファクタリングは中小企業の資金調達において高いニーズがあり、安全性の確保やサービス向上に努めるべき、との認識を示しています。
なお、ファクタリングサービスに対する不満点として最も多くみられたのが「手数料が高い」というものです。
審査に要する費用は債権額にかかわらず一定に設定されているケースが多いため、特に少額取引の場合は手数料の割合が高くなる傾向にあります。
如何に悪質なファクタリング会社を排除していくのか、どのように手数料を低減していくのか等が、業界全体の当面の課題となりそうです。

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【参考サイト】
中小企業庁 「第6回約束手形をはじめとする支払条件」

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