新型コロナウイルスの影響により、金融機関では顧客との第一の接点である店舗窓口の営業が制限される事態が起きました。そのなかで重要な役割を果たしているのがコールセンターです。株式会社ゆうちょ銀行は、将来に向けて顧客接点の改革を目指し、コールセンターを進化させるためのデジタル化に取り組んでいます。常務執行役の田中 隆幸氏も、「お客さまの声の窓口として、親切かつ丁寧、そして便利で使い勝手が良いコールセンターをつくるために、AIシステムなどさまざまな仕組みを積極的に活用していきたい」と期待を寄せます。 ゆうちょ銀行でコールセンター部部長を務める山浦 実氏と、デジタルの力で金融機関のお客さまを支えるNTTデータの青柳 雄一氏に、その取り組みについて話を伺いました。

キーポイントは「人」

――まずは、ゆうちょ銀行におけるコールセンターの位置づけと役割を教えてください。

山浦 氏:当行の顧客接点は大きく「対面チャネル」と「非対面チャネル」に分かれていますが、主要な顧客接点は店舗での対面です。コールセンターは非対面チャネルの中で、最もヒューマンタッチな顧客接点と位置づけられるでしょう。今回のコロナ禍で対面が難しくなったとき、非対面チャネルの一翼を担うコールセンターが存在感を発揮しました。4・5月はコールセンター入電数が通常の約2倍に達しました。対面チャネルが中心のこれまでのサービス提供体制は、今後見直しが必要になると考えています。 コールセンターの役割は2つあります。1つはお客さまからの「電話照会対応」をしっかり行う役割、もう1つはお客さまの声を「社内に情報連携」する役割です。 前者では、当行の商品サービスがデジタル化(ゆうちょPay、ゆうちょ認証アプリ、ゆうちょ通帳アプリ等)する中で、ご高齢のお客さまを含む、インターネット環境やスマートフォンに慣れていない方に対し、いかにわかりやすく説明できるかが、コールセンターの腕の見せ所となります。 後者では、電話を通じて、お客さまの声を社内に情報連携し、当行の商品・サービス・事務手続の「改善PDCAサイクル」を回し、いかにお客さま本位の業務運営の実現を支援できるかが重要となります。

  • 図:ゆうちょ銀行におけるコールセンターの位置づけと役割

――2017年から3年間、札幌コールセンター長を務められたとのことですが、そこで実際に体験した困りごとや課題に感じていたことは何ですか。

山浦 氏:コールセンター長の仕事の9割は「人」に関わるものです。人をいかに採用し、成長させ、そして長く働いてもらうか。コールセンターでは、お客さま対応の最前線にいるオペレーター(以下OP)が主役です。OPの皆さんに気持ちよく仕事をしてもらうため、アシスタントスーパーバイザー(以下ASV)がサポートし、さらにOP・ASVをスーパーバイザー(以下SV)がサポートする「サポートの逆ピラミッド」をいかに作り込み、維持し続けるかが重要です。これこそがコールセンターのオペレーショナル・エクセレンス(競争優位性)となります。
 札幌コールセンター長時代、苦労は少なくありませんでした。札幌は“コールセンター銀座”と呼ばれるほどコールセンターが集中する都市。OPの皆さんに「当行のコールセンターを選んでもらうこと」「長く働き続けてもらうこと」「気持ちよく働いてもらうこと」の3つの点で知恵を絞りましたね。採用では希望者に現場を見学してもらう。研修は詰め込み型ではなく、座学と受電の研修を交互に繰り返し自然と身につけられるように工夫する。評価では、頑張った人が頑張っただけ報われる仕組みづくりに努めました。

  • 図:「サポートの逆ピラミッド」とコールセンターの業務概要

デジタルが業務負担軽減と応対品質向上をもたらす

――そうした中、今回、コールセンターにAIシステムを導入するわけですが、AIの活用によりどのような効果があると期待していますか。

山浦 氏:OPに求められるスキルを構造化すると、「意識」「スキル」「知識」の3つに分けられます。このうち「意識」、すなわちお客さまを大切に思う気持ちやホスピタリティは人にしかできない部分で、AIでは解決できません。また「スキル」の中でも、お客さま対応に必要な論理力・想像力といった思考力の部分は人間の力で頑張らなければならないところです。一方、「スキル」のうちインプット力(見る)とアウトプット力(書く)、そして「知識」についてはAIが力を発揮します。

  • 図:OPに求められるスキルと「AIがサポートできる部分」

 その前提で、私は今回のAIシステム導入に5つの効果を期待しています。1つ目は、OPの応対履歴作成負担の軽減です。OPはお客さまとのやり取りを履歴に残しますが、AIにより音声をテキスト化し、自動要約することで、履歴作成負担を軽減できます。2つ目は、OPの資料検索負担の軽減です。AIが質問の中身を咀嚼し、OPに役立つ資料を自動的にリストアップ表示することで、OPが電話応対している途中にどの資料が必要かを考え、探しにいく時間と手間を減らせます。特に、経験の浅いOPにとっては心強い限りです。現在、手厚い新人OP研修を行っていますが、OPの資料検索負担が軽減されれば、研修期間を短縮できるかもしれません。
 3つ目は、誤回答率の低減です。AIが必要な資料を自動表示することで、お客さまに回答する際に必ず資料を確認するようになり、誤った回答をしてしまうケースも減ることが期待されます。金融の知識は法律やシステムが変わることが多く、OPも知識をアップデートしていかなければなりません。AIの資料の自動表示により、常に最新情報に更新された資料の確認が徹底できます。4つ目は、SVのモニタリング業務の負担軽減です。SVは応対品質チェックのため、お客さまとOPのやり取りを音声でモニタリングするのですが、音声がテキスト化されればパッと見るだけでやり取りを的確に把握し、適切なタイミングでサポートできます。そして5つ目が、採用促進と離職防止です。AIの導入により様々な業務の負担が軽減され、気持ちよく働いてもらえる職場環境を実現できると考えています。

  • 図:コールセンターへのAIシステム導入の全体像と期待する効果

確信を掴んだ実証実験

――今回のAIシステム導入の経緯と過程について教えてください。

山浦 氏:NTTデータさんに相談したのは、事務企画部の担当部長としてBPRに取り組んでいた2015年のことです。当初は、パートナーセンターという郵便局からの電話照会対応を行うJPグループ内向けコールセンターへの導入を考えていました。

青柳 氏:当社としてもその頃から、デジタルレイバーという観点で、AIがゆうちょ銀行様業務の効率化に寄与することが出来るのではと考えており、ゆうちょ銀行様の業務内容に適したAIソリューションをご提案していました。

山浦 氏:その後も、システム統括部(兼 経営企画部・FinTech対応PT)の担当部長としてFinTechビジョンを作る際、AIの重要性に着目し、お客さま向けコールセンターに導入すれば、応対品質向上と業務効率化で大きな効果が得られるだろうという認識は持ち続けていました。最終的には私が札幌コールセンター長を務めていた2018年、NTTデータのAIシステムを導入する意思決定が行われ、同年10〜12月に実証実験を実施しました。

青柳 氏:NTTグループは「corevo」というAI技術を有しています。「corevo」はNTT研究所で磨きあげられた日本語音声認識能力の高さが特長のひとつです。「corevo」を用いたAIシステムであるNTTテクノクロス社の「ForeSight Voice Mining®」を活用することで、NTTグループの総合力でゆうちょ銀行様が抱える課題を解決できるとご提案し、選定いただきました。「ForeSight Voice Mining®」は、NTTグループのAI技術「corevo®」の音声認識技術や日本人特有の感情の分析技術、日本語解析技術を活用し、お客さまとの通話音声をリアルタイムにテキスト化します。そのテキストから関連するFAQを自動検索することや、自動的に要約文を作成すること等により、オペレーター業務を支援することが可能です。今回、ゆうちょ銀行様に導入いただくうえで重視した点は、日本語音声認識の技術をブラッシュアップする、適切な回答候補や資料を提示できるようにチューニングするなど、AIがより正確に人のサポートができる様に精度を向上させることでした。

――実証実験を経て苦労した点や、工夫した点はありましたか。

山浦 氏:AIシステムのFAQ正答率向上を図るため、お客さまからの照会・回答やOPのフィードバック結果を分析し、よくある問い合わせを中心にFAQを作成したほか、類似・重複FAQを極力統合するなどの工夫によって改善を図りました。その結果、最終的には正答率を8割程度に向上させることができました。

青柳 氏:この実証実験の経験を踏まえ、2020年10月から始まる本格導入に向け、準備を進めているところです。コールセンターはさまざまなシステムの組み合わせで出来上がっています。AIシステム導入にあたっても、既存のシステム(CTI、CRM等)との間でデータを連携させる必要があり、そこが難しいポイントです。その点は、ゆうちょ銀行様に対してNTTデータが長きにわたり、高い信頼性が求められる金融ITサービスを安定して提供し続けてきた実績が強みとなります。システム間の連携をはじめ、調整力とシステムインテグレーション力をうまく発揮し、最適な状態でシステムをご提供できるよう日々取り組んでいます。

<実際にPoCを体験された福岡コールセンター・主任 大串 哲朗氏のコメント>

参加者には経験が浅い新人OPもいましたが、お客さまとの会話をもとにAIシステムが回答候補を提示することにより、資料検索を迅速に行うことができ、対応がスムーズに進んで、コールセンター業務に早く慣れることができたと実証実験を経験したスタッフから聞いています。定量的な部分では、とくにデビューから間もないOPで処理時間短縮の効果が高く、AIを使用しない場合と比べて30%近い短縮率となりました。また、SVもお客さまとの対応内容を的確に把握でき、サポート面が充実しました。


  • AI導入プロジェクトを担当された本社コールセンター部のみなさま
    (写真中央)常務執行役 田中 隆幸氏
    (写真右1番目)コールセンター部・部長 山浦 実氏
    (写真右2番目)コールセンター部・グループリーダー 大石 和輝氏
    (写真左1番目)コールセンター部・マネジャー 熊谷 広平氏
    (写真左2番目)コールセンター部・主任 川野 友実絵氏

コンタクトセンター化を目指して

――最後に、ゆうちょ銀行様のコールセンターの将来展望をお聞かせください。

山浦 氏:AIによる FAQの検索エンジン「AI-FAQ」は、お客さまからよくいただく質問とそれに対する回答を集めたものですから、当行の「組織知」と言えます。今後も継続的にアップデートを続けていくものです。
 この組織知を応用し、一足飛びにはいきませんが、最終ゴールとして、原則、当行の商品サービスに係るお客さまからの照会対応は「チャットボット(ロボット)」で24時間365日対応できるようにしたいと考えています。チャットボットで解決できないものは「有人チャット対応」し、チャットボットのプレゼンスを高めます。チャットボットでどうしても対応できないものは「電話」と「店舗」で対応します。 これまでの電話対応のみのコールセンターから、「コンタクトセンター(チャットボット+有人チャット+電話)」に変革するのが将来構想です。
また、BCP対応として、「在宅コールセンター化」の一部導入も検討します。 今回のコロナ禍(2020年4~5月)では、コールセンターの営業時間を入電件数の多いコアタイム(9~17時)に短縮し、必要最小限の人員でスプリットオペレーションを実施しました。これにより、OPの席間距離を確保し、感染予防対応を行っています。 コロナの第2波・第3波に備えた感染予防策として、OPの席間(前方と側方)にアクリル板のパーティションを設置していますが、さらに相応の席間距離を確保するためも、一部のOPが在宅勤務で受電対応できる仕組みを整備したいと考えています。在宅コールセンター化はOP・ASV・SVの働き方改革・ES向上にも繋げていけると思います。 コンタクトセンター化の将来構想を実現するため、今後もNTTデータのデジタルイノベーションの提案力・実行力に期待しています。

  • 図:将来のコンタクトセンター化構想(イメージ)

株式会社ゆうちょ銀行
営業部門 コールセンター部 部長 山浦 実氏

■略歴
【1992年】早稲田大学大学院・理工学研究科・機械工学専攻(経営工学) 修了
同年、三菱総合研究所に入社
自動車・精密機器メーカー、電力・ガス会社、JPグループ各社を中心として、
コンサルティング業務に従事
【2008年】ゆうちょ銀行・事務企画部に担当部長として出向し、その後転籍
【2016年】システム統括部(兼 経営企画部・FinTech対応PT) 担当部長
【2017年】営業第三部 札幌コールセンター長
【2020年】コールセンター部 部長

株式会社NTTデータ
第一金融事業本部 郵政・政策金融事業部 企画開発統括部
デジタルビジネス推進担当 部長 青柳 雄一氏

■略歴
【2000年】九州大学・文学部・人間科学科 修了
同年、NTTデータに入社
銀行勘定系システム開発、銀行向け新規サービス企画に従事
【2015年】金融事業推進部 グループ事業戦略担当 兼 オープンイノベーション事業創発室
金融分野事業戦略策定、及び、金融機関向けのオープンイノベーション活動に従事
【2018年】第一金融事業本部 郵政ビジネス事業部 デジタルビジネス推進担当 部長
日本郵政グループ様向けの新規提案活動に従事

●ゆうちょ銀行
郵政民営化に伴い、2006年9月1日に株式会社ゆうちょ(準備会社)として設立。 2007年10月1日に日本郵政グループが発足し、株式会社ゆうちょ銀行へ商号変更し開業。2015年11月4日に東京証券取引所市場第一部に上場。 「お客さまの声を明日への羅針盤とする “最も身近で信頼される銀行”を目指します」を経営理念に掲げ、ゆうちょ銀行の強み・営業基盤にデジタル化を融合し、お客さまへ「新しいべんり」「安心」を提供していきます。
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●お問い合わせ
株式会社NTTデータ
第一金融事業本部 郵政・政策金融事業部 デジタルビジネス推進担当
aiccsales@kits.nttdata.co.jp
※サービス自体に関するお問い合わせは、直接各サービス担当者へお願いいたします。

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