アナリティクス企業のSAS Institute Japan(以下、SAS)が小学生を対象に開催する恒例イベント「なつやすみ 親子でデータサイエンス」。本記事の前編では、小学生がデータサイエンスに触れることの大切さを解説するとともに、一組の参加親子とSASサポーターが調査、集計、分析をもとにポスターを作成していく過程を追っていきました。後編は、そもそもなぜSASが本イベントを開催し続けるのか、その思いに加えて、表彰式の様子までをレポートしましょう。

  • なつやすみ 親子でデータサイエンス 2020

熱い思いで取り組んでくれたポスター制作

SAS Institute Japan株式会社 ソリューション統括本部 金融デジタルソリューションユニット 担当部長 小野准示氏

SAS Institute Japan株式会社 ソリューション統括本部 金融デジタルソリューションユニット 担当部長 小野准示氏

サポーターを務めた小野准示さんは、担当した小学4年、とわさん(神奈川県)の取り組む姿勢について話してくれました。

「キックオフイベントの際は、カメラ越しでちょっともじもじした印象を受けていたので、とわさん自身がどれくらいの思いを持って取り組もうとしているのか見えないところもありました。ところが、毎日調査ポイントに出かけて自動車ナンバーのデータを一生懸命取っている話をお父さんから伺い、ポスター制作の締め切り前日にはオンラインビデオ会議でとわさん本人の熱い思いを知ることができました。完成したポスターは大量の文字に埋め尽くされ、しっかり作られていましたし、アピール動画でも3分を超えて熱く語っていたので、興味を持って取り組んでくれたことが十分に伝わり、うれしかったですね」

ポスターにまとめたのは最後の日曜日。熱い思いから、文字で埋め尽くされている

ポスターにまとめたのは最後の日曜日。文字で埋め尽くされている

とわさんは地域外から鎌倉を訪れた自動車ナンバーの調査に加え、その結果をもとに自発的に考案したオリジナルの新型コロナウイルス対策グッズ「ウイルス察知ソックス」もポスターに記載していました。

とわさんのお父さんはイベント後、「いままでは見過ごしていたものも多角的に、深く観察するようになり、そこから何かを見つけ出して『こういうものがあったらいいよね』といった発言も多くなった気がします」と、とわさんの成長を感じています。

SASが育成にかける思いとは? なぜ手書きにこだわるのか

次に、子どもの頃からデータサイエンスに触れる意義とはどのようなものなのでしょうか? SASの堀田徹哉社長は次のように話します。

SAS Institute Japan株式会社 代表取締役社長 堀田徹哉氏

SAS Institute Japan株式会社 代表取締役社長 堀田徹哉氏

「データを活用することの重要性は日本でも広く認識されていますし、そこから価値を生み出すデータサイエンスも企業、教育・アカデミズム、行政などあらゆる分野でニーズが高まっています。その中で、私たちはデータ分析に携わる企業として、データサイエンティスト育成に貢献することが大切だと考えています」

データサイエンティストの育成には多様なフェーズがありますが、SASは今回のような小学生対象のイベントから、大学生、社会人を対象とするプログラムまで、それぞれのフェーズで育成を支援しているといいます。

「実は日本では、データサイエンスの重要性は理解されているものの、データサイエンティストのキャリアの重要性についてはあまり理解されていないと感じています。だからこそ、当社のような企業がことあるごとに『データサイエンス』『データサイエンティスト』といったキーワードを発信していくことに意義があると考えています。とりわけ次代を担う子どもたちに、データサイエンスやデータサイエンティストへの興味を広く喚起できれば、将来に向け大きな貢献につながると思っています」

本イベントは「親子が一緒になって取り組むこと」「ポスターを手書きで制作すること」にこだわっている点が特徴です。堀田社長はその理由を次のように話してくれました。

「親子一緒にこだわる理由は大きく二つあります。一つは、小学生はまだデータに慣れていませんから、調べたり、考えたり、ポスターを作ったりする中で保護者のサポートが重要になるということ。そしてもう一つは、家庭の夏休みのイベントとして楽しんでいただきたいということです」

一方、手書きにこだわるのは、データを見える形にするとき、グラフはやはり手書きが基本だと考えるからだといいます。

「Excelなどのツールを使うとグラフを簡単に作成してくれますが、データに現れるさまざまな数字の相関関係は、実際に自分の手で線を描き、それを目にすることで理解も興味も深まります。しかも、Excelではグラフが一気に描かれてしまいますが、手書きは一つ一つ時間がかかります。その体験こそが、子どもたちの中に強烈に残ります。実は私自身もそういう体験があったので、手書きにはこだわりたいと考えていました」

  • 手書きの体験こそが、子どもたちの中に強烈に残るという

    手書きの体験こそが、子どもたちの中に強烈に残るという

コロナ影響下のオンライン開催は、全国の子どもたちが参加

そもそもこのイベントは過去4年、六本木の本社オフィスを開放し、お子さんと保護者を招いて、みんなでテーブルを囲んでポスターを作るというフォーマットを前提としていました。5回目の今回は、コロナ禍の影響で初めてオンライン開催を余儀なくされましたが、このような状況でイベントを開催する思いを、堀田社長は次のように語ります。

「新型コロナの感染拡大防止の観点から、これまでのスタイルでは開催できない。とはいえこういう時期だからこそ、むしろ開催する意義があるのだという思いを強く持っていました。そこでオンラインならではのメリットを追求していったところ、昨年までと異なり全国各地の子どもたちが参加してくれたというわけです。これは思いも寄らなかったことで、大きな気づきとなりましたね」

また、これまではイベント当日に集まって数時間でポスターを制作していましたが、今回は2週間超という長期間にわたったため、子どもたちもじっくり取り組むことができました。その結果、ポスターのクオリティはさらに高くなったそうで、これもうれしい誤算であり、驚きでもあったとのことです。

「また来年も参加したい」という声が聞かれた表彰式

8月22日、六本木のSAS本社オフィス内で表彰式が開催され、参加した親子にはその模様がオンラインで配信されました。特別審査員の一人、玉川学園・アカデミックサポートセンター長の伊部敏之先生による講評では、小学生にしてデータサイエンスに触れた体験について次のようにまとめました。

玉川学園・アカデミックサポートセンター長 伊部敏之先生

玉川学園・アカデミックサポートセンター長 伊部敏之先生

「完成したポスターと説明動画を見て、みなさんがしっかり研究し、真剣に、なおかつ楽しみながらポスターを作ったことがわかりました。今回のポスター制作で、テーマを設定する、仮説を立てる、データを集めて結果を分析する、そして最後に考察するというデータサイエンスの流れと、それによっていろんな物事がわかっていくことを、みなさんも理解できたと思います。自分で課題を発見し、研究テーマを決め、課題を解決していくというこの方法は、実は中学や高校で初めて経験するものですが、みなさんはすでに小学校で経験したことになります。この体験を活かし、これからもデータサイエンスを意識した課題研究をたくさん続けてください」

今回の審査では、伊部先生、慶應義塾大学教授で統計グラフコンクール審査委員長を務める渡辺美智子先生、実践女子大学教授で日本統計学会統計教育委員長の竹内光悦先生を特別審査員に迎え、サポーターと参加者による得点も加えて、「ビジュアル賞」「アイディア賞」「データサイエンス賞」の3賞が決定されました。

ビジュアル賞は鹿児島県の小学6年、まっさんの「箱根駅伝出場大学で一番選手をのばしている大学はどこか」です。アイディア賞は京都府の小学2年、たっくんの「家の前でなぜクラクションがなるの???」でした。そしてデータサイエンス賞には千葉県の小学3年、けいけいさんの「私も女医になれるかな?」が選ばれました。

  • ビジュアル賞(まっさん)
  • アイディア賞(たっくん)
  • データサイエンス賞(けいけいさん)
  • 左から、ビジュアル賞(まっさん)、アイディア賞(たっくん)、データサイエンス賞(けいけいさん)のポスター作品

データサイエンス賞の「私も女医になれるかな?」は「分析に信頼性の高いデータを活用し、女医の割合は年度別から地域別・専門別・国別へとスケールを広げながらまとめ、ストーリー性のある素晴らしいポスターを作り上げた」ことが高く評価されています。

担当したサポーターからも「夢を持って前に進むことが大事なので、将来、女医になって、沢山の人を助けられるようにがんばっていきましょう」というメッセージが届けられました。制作したけいけんさんは「とっても楽しかったです。また来年も参加したいと思いました」と話し、今回のイベントが夏休みのいい思い出になったことが伺えます。

最後に、堀田社長から「興味を持ったこと、知りたいと思うことがあったら、自分でデータを集めて分析する取り組みをこれからも継続してほしいと思います」というコメントが寄せられ、表彰式は終了。来年以降、実際に集まれる環境がまた戻ってきた際には、フェイス・トゥ・フェイスの良さと今回のオンラインの良さを合わせた形でイベントを継続していきたいと、今後に向けた意欲を語りました。

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