アナリティクス企業のSAS Institute Japan(以下、SAS)が、2016年から毎年夏に継続開催している小学生向けイベント「なつやすみ 親子でデータサイエンス」を、今年も開催しました。例年、東京・六本木ヒルズの本社オフィス内スペースにおいてリアルイベントの形で開催してきましたが、今年は新型コロナウイルスの影響でスタイルを大きく変えることになり、5回目にして初めてオンラインイベントに切り替えられました。

  • なつやすみ 親子でデータサイエンス 2020

コロナの影響で初のオンライン開催。全国の小学生が参加できた

「なつやすみ 親子でデータサイエンス」は、データサイエンスの楽しさを体験できる小学生対象のイベントです。子どもたちは「線香花火の種類によって点火している時間は変わるのか」「ハムスターはどんなときによく走るのか」といった身近な興味から、「店でレジ袋を使う人は減ったか」「輸入大国・日本の輸出はどうなっているのか」といった大きな時事の話題まで、自ら設定したテーマについて仮説を立て、関連するデータを収集・分析し、結果をグラフなどで視覚化してB2判サイズのポスターで発表します。

その過程で、データ分析のプロフェッショナルであるSASの社員が各親子に1人ずつサポーターとして付き、アドバイスやヒントを提供。今年はオンラインで開催されたため、運営側スタッフと子どもたち及び保護者が直接顔を合わせる機会はなくなりました。しかし一方で、前年まではどうしても六本木のオフィスに直接来られる親子に参加が限られていたところ、今回は北は宮城、南は鹿児島まで全国から参加できるようになりました。

今年は8月1日にキックオフイベントが開かれ、翌日からの約2週間がポスター制作期間となります。この期間に子どもたちは保護者と協力しながらデータの収集と集計・分析を行い、最終日の16日までにポスターを完成させます。

そのポスターの写真と「テーマを選んだ理由」「データ分析でわかったこと」「工夫/苦労した点」をアピールする2分程度の動画を提出し、22日にオンラインで表彰式が開催される運びです。

  • オンラインで行われたキックオフイベント。昨年まではサポーターとの顔合わせからポスター制作までを1日で済ませる形式だった

    オンラインで行われたキックオフイベント。昨年まではサポーターとの顔合わせからポスター制作までを1日で済ませる形式だった

堀田社長が語る、子どもの頃からデータに触れる意義とは

それではまず初めに、子どもの頃からデータサイエンスに触れる意義とはどのようなものなのでしょうか? SASの堀田徹哉社長は次のように話します。

SAS Institute Japan株式会社 代表取締役社長 堀田徹哉氏

SAS Institute Japan株式会社 代表取締役社長 堀田徹哉氏

「データやその分析に興味を持つようになれば、自分から進んで暮らしの身近なところにさまざまな課題を見つけ、データを使って解決してみようという思いが生まれます。いま日本では、昨今の新型コロナウイルスに関連するニュースや、気候変動の話題など、日常生活でデータサイエンスに触れる機会が増えています。今後の時代を担う子どもたちが小学生の頃からデータサイエンス的な思考でモノを見つめ、調べ、考える経験をすることは、とても重要だと思います」

堀田徹哉社長は、あくまで感覚値としつつも、最近は能力が発揮される年齢がどんどんと早くなっている印象があるといいます。

「音楽、芸術、スポーツ、それこそ藤井聡太さんに代表される将棋の世界もそうですね。これは現代の子どもが能力を開花・発展させるツールが整備され、簡単にアクセスできるようになったからだと考えています。データサイエンスの世界でも、高度なAIのアルゴリズムを駆使し、世の中の多様な問題を読み解いていく小学生がいますぐ現れても不思議ではないでしょう。そのきっかけづくりの一つとして、小学校時代にデータをもとにポスターを作る経験をすることで、今後もっと高度なところへ向かう気づきが生まれれば、データをビジネスとする当社としてもうれしいですね」

キックオフイベントが開催! データサイエンスに興味を持ってもらう

8月1日、全国20組の小学校2~6年の子どもたちとその保護者がオンラインビデオ会議に集まり、キックオフイベントがスタート。「データサイエンスってなに?」と題したコーナーでは、イベント運営側からデータサイエンスの役割について子供たちに解説していました。

「データサイエンスとは、データを使って世の中のことを理解し、問題を解決することです。たとえばクラスでリレー選手を決める際、“速い”という言葉をタイムという数字=データの形に置き換えることで、誰が“速い”かを理解でき、リレー選手を選ぶという問題解決ができるようになるのです」

  • 「データサイエンスってなに?」と題したコーナー

    「データサイエンスってなに?」と題したコーナー

今回のイベントは子どもたちと保護者が一緒になって、データを使ったポスターを制作することで「統計やデータについて知る」「データサイエンスに興味を持つ」ようになることが目的です。参加した20組の親子は、このキックオフイベントのあと、各組を担当するSASのサポーターたちとオンラインで初めて顔合わせし、テーマの決定や進め方の確認などを行いました。

具体的には、サポーターとオンラインで話しながら
1. 自分が興味のあるテーマを決める
2. テーマに沿った仮説を立てる
3. 仮説を確かめるためにデータを集める
4. データをグラフにしてポスターを完成させる
5. 2分間の動画で作品をアピール
といった流れで進められます。

とわさん親子がデータを調べ、分析し、ポスターを作るまで

とはいえ小学生が独自にデータを収集、集計、分析するというのは、やはり大変な作業といえます。小学生でもデータサイエンスに興味を持ってもらい、実際に取り組んでもらうには、サポーターの役割が重要になります。今回で3回目のサポーター参加となる小野准示さんは、神奈川県から参加した小学4年、とわさん親子の担当となりました。

SAS Institute Japan株式会社 ソリューション統括本部 金融デジタルソリューションユニット 担当部長 小野准示氏

SAS Institute Japan株式会社 ソリューション統括本部 金融デジタルソリューションユニット 担当部長 小野准示氏

とわさんのテーマは「かまくらのかんせん者数をへらすためには?」。とわさんは新型コロナウイルスとの関連で、鎌倉を訪れる人と鎌倉市の感染者数の関連に興味を持ったといいます。小野さんは、とわさん親子との取り組みをこう振り返ります。

「キックオフイベント後の最初の顔合わせで、とわさんが考えているテーマを初めて聞きました。当初は『コロナがいつ終息するか』というテーマで考えていたようですが、さすがに壮大すぎるところがあり、データ分析というよりは予測になってしまうと考えたため、現実的にデータを調べられるテーマに変えようと提案しました」

とわさんはもともと、鎌倉のある地点を走る自動車のナンバーを調べ、そこからコロナの終息に至るヒントを見出そうと考えていたようです。そこで小野さんは、テーマをそこまで広げず、地域外から来た台数と鎌倉市内の感染者増減との関連性に絞ることを提案したところ、とわさんもお父さんも違和感なく受け入れたとのことです。

キックオフイベントの翌日から1週間、とわさんは鎌倉の道路で自動車ナンバーをチェックし、データ集めを行いました。

  • 毎日決まった時間に、ナンバーごとの自動車の数を計測
  • 毎日決まった時間に、ナンバーごとの自動車の数を計測
  • 毎日決まった時間に、ナンバーごとの自動車の数を計測

このデータをもとに、翌週から小野さんとお父さんがオンラインでやり取りを重ねながら、データをどう考えていくか話し合いました。特に今回は従来と異なりオンラインでの対応になったことで、企画の段階から関わる形になったことがよかったといいます。

「ポスターの見せ方だけでなくテーマの決め方やまとめるときの考え方からアドバイスすることができました。このイベントはデータ分析の結果をExcelやPowerPointなどのツールで見せるのではなく、あくまで手書きでポスターを作り上げることにこだわっています。ですからアドバイスでも、プレゼンテーション的な見せ方より、データの中身からどのような解釈を導き出すかに重点を置きましたね」

とわさんのお父さんは、今回参加したきっかけやお子さんの取り組みについて次のように振り返ります。

「毎年夏休みの体験型プログラムや勉強会に参加していたのですが、今年はこのような状況下ですので、多くのプログラムが中止になっており、何かないか探していたところ、知人の紹介で本プログラムを知りました。子どもは普段何かを掘り下げて考える機会が少ないせいか、調査・統計・分析から得られる気づきやアイデアをポスターに仕上げていくプロセスをとても楽しんでいました」

また、サポーターの小野さんからは、思考が短絡的になりがちなポイントで視点を変えてみる、他の考えにスイッチしてみるなど、たくさんのアイデアやアドバイスをもらい、助けられたとのことでした。

  • とわさんのポスター制作の様子

    とわさんのポスター制作の様子

こうして16日までに提出された各参加者のポスターと動画について、審査員が審査を行い、22日に表彰式が実施されました。この模様は後編でお伝えしましょう。

「次代を担うデータサイエンティストが登場!? SASが小学生向けイベントを開催」
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[PR]提供:SAS Institute Japan