新型コロナウイルス流行により多くの企業がテレワークの実施に踏み切り、働き方は大きく変化しつつある。テレワークによって生まれた新しい働き方には、ビジネスチャットが用いられることも多く、コミュニケーションの在り方も変化している。それと同時にこれまでとは違う形のハラスメントが認識され始めた。

2020年6月、大企業に向けて労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の施行が始まった。中小企業への適用は2022年4月となるが、大企業での事例が広まっていくことは間違いないだろう。テレワークを続けるにあたって、企業そして従業員はどのような点に留意すべきだろうか。

そこで本記事では、企業向けビジネスチャットツール「WowTalk(ワウトーク)」を展開するワウテック マーケティング部 部長 高野 大寿氏、大手や外資、ベンチャーや独立行政法人などの産業医を担当する大室 正志氏のお二人に、テレワークにおけるハラスメントを主題に話し合ってもらった。

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    ワウテック株式会社
    マーケティング部 部長 高野 大寿氏
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    株式会社大室産業医事務所
    代表 大室 正志氏

チャットは人間関係という下地があってこそ活きる

大室氏:ビジネスチャットは、手紙やEメールと比べてカジュアルなツールです。挨拶などが必要なく、前置きなしで本題に入れるので非常にスピード感を持って仕事ができるわけですね。

しかし、カジュアルになればなるほどグローブなしの状態で言葉が飛んでくるわけですから、文章から感情がつかみにくくなります。相手の人となりがわかっていれば問題ありませんが、そうでない場合は”言葉が短い分、言葉の真意を邪推してしまう"ということが起こっています。いくら便利なツールができたとしても、人間関係という下地があってわかることがあるのです。

高野氏:今までの企業内コミュニケーションは対面・電話・Eメールの3つが軸でした。ビジネスチャットはこの3つを置き換えるわけではなく、これらを補う第4のコミュニケーション手段といえます。

よく比較されるのはEメールとチャットです。大きな違いは、Eメールはリアルタイムな返答を求めて送ることはできませんが、チャットはリアルタイム性を求められるという点です。またEメールは挨拶から始まるので知らない相手にも送れますが、チャットは知っている相手でないと送れません。突然本題に入れるため、人柄を知らない相手から送られてくると無礼だと感じてしまいがちなのです。

大室氏:チャットだから人間関係を気にしなくてよいかというとむしろ逆で、人間関係の下地がある中で活用できるツールなんですよね。

「期待値とのずれ」で変わるパワハラの基準

大室氏:パワハラとは「優位性を武器にした嫌がらせ」で、職位が上の人から行われるとは限らず、優位性があれば部下が上司に行ってもパワハラです。ただしセクハラと同じように、直接的でわかりやすい行動が問題になる時代はもう終わっていて、どちらともいえない「グレーゾーン」といわれるものも非常に増えています。もちろん人格を否定するような話はNGですが、業務の内容にだけ触れた内容であっても、「ハラスメントに感じる」といわれることがあるのです。

たとえば、ホテルで禁煙ルームを借りて少しでもタバコのにおいがすると気になりますよね。昔はタクシーの中などでタバコが吸われるのも当たり前でしたが、禁煙が当たり前になったからこそ気になるんです。ハラスメントも一緒で「期待値とのずれ」が生じることで敏感なる人が増加しているんです。もちろんそれが必ずしもハラスメントに認定されるとは限りません。

高野氏:まずはパワハラ防止法のルールを把握しつつ、会社の就業規則をしっかり理解しなければならないでしょうね。お互いの人間関係の下地ができていれば大体のことは問題にならないと思います。

大室氏:「人間関係ができていると思っていること」も怖いかもしれませんね。途中で破綻していると、突然数年前のメールの一部がパワハラの証拠としてさらされるかもしれません。産業医はいつ「こう言われた」といわれてもおかしくない職業ですから、私は面談でもチャットでも、常に記録されていると思って対応しています。

つい送ってしまう業務時間外のメッセージに注意

高野氏:チャットハラスメントの代表的なものとして、定時外に大量のメッセージを送ることや、そのメッセージに対応しないことを叱責することがあります。例えば、正社員の方とアルバイトの方とのやり取りでご説明しますと、私生活で使っているアドレスの登録を強要し、そこにメッセージを送ることなどがありますね。

大室氏:電話もEメールも同じなのですが、上司の方に気を付けていただきたいのは、一度に数多くの件数を送ってしまうことですね。しかも、そういった送り方をするのは休日だったりすることが多いものです。部下に限らず友人でも恋人でもそうですが、ものすごい数の通知が入っているとビビるんですよ。

もちろん、上司の方の気持ちもわかります。ゆっくりしているといろいろなことを思いつきますから、それをババババっと備忘録のように送ってしまうんですよね。上司が「まとめていつまでに返信しろ」と言っているわけではなくとも、受け取ったほうはすごい責められているように感じてしまうんです。

これも人間関係の下地ができていれば「そういう人なんだな」で済むのですが、今までの日本企業は下地を作りすぎていました。昭和の時代は毎日のように上司と飲みに行ったりとか。逆にそれらを完全にカットして「仕事は仕事」としてしまうと肝心なビジネスのほうが非効率になります。下地を減らすと楽になりますが、下地作りがなくなるとビジネスが動かないのです。

テレワークはジョブ型雇用に向いた働き方

大室氏:日本はもともとホウレンソウ文化で、会社にしても部活にしても部下が上司の背中を見て技・スキルを盗み、壁にぶつかれば教えを乞うという「親方制度」のような形で仕事をしていました。「メンバーシップ型雇用」といわれるもので、仕事の内容に合わせるのではなく、会社に合わせて人を雇うという考え方が日本では主流だったからです。

一方海外では、最初に仕事があってそれに合わせて人を雇う「ジョブ型雇用」が主流で、テレワークは本来、このジョブ型雇用に向いた働き方です。最近「1on1ミーティング」が増えています。リモートワークではこの1on1の時間を一週間に10分でもいいから持たないと、必ずコミュニケーションギャップが生まれてしまうでしょう。 リモートワークで「上司と顔を合わせずに済むようになった」と喜んでいる人は多いと思います。しかし従来の日本の働き方では上司のほうから歩み寄らないので、コミュニケーションはどんどんとずれていき、結果として仕事もうまく回らなくなるでしょう。コミュニケーションが減って一見楽になりましたが、その分の負債をどこかで返さなくてはならなくなります。下手したら上司がハラスメントと言われる可能性もあるかもしれません。

高野氏:新たなマナーみたいなもので、お互いがお互いを好きでなくとも向き合っていかないと崩壊するんですよね。

大室氏:そうなんです。一方で仕事内容に合わせて人を就ける「ジョブ型雇用」におけるマネジメントの考え方では、マネージャーのほうがちゃんと世話を焼きます。好きか嫌いかは別にして、これから働き方は圧倒的にマネジメント文化になっていくので、コミュニケーションギャップを感じたら「部下側から来いよ」ではなく上司のほうから歩み寄ってほしいと思います。「親方制度」は常に隣に上司がいるから成り立つものであって、リモートワークのような働き方には不向きです。

高野氏:私もベンダーとしてビジネスチャットを提供する側ですし、実践しなくちゃいけないと思います。必要に応じて1on1を行ったり、ときにはオンライン飲みもやったりして、そういう場ではビジネスよりもパーソナルな話を中心にしたりします。結局は“人間味”がないといけないと思いますね。

大室氏:やっぱり言葉が短くなった分だけ文脈が大事になります。上司も部下も“互いの人となり”をそこまで知っているわけではないので、パーソナルな部分を知ることも大事ですよね。

「WowTalk」のコミュニケーション機能

高野氏:業務時間外のメッセージに対応するために「WowTalk」に搭載した機能が送信時間を指定できる“予約投稿”です。部下は業務時間外にチャットを気にせずに済みますし、上司は書きたいときに書くことができます。部下側にも“通知をオフにする”などいろいろ対策を用意していますが、とはいえ件数は表示されるので、心理的な圧迫感はあまり変わらないと思います。

大室氏:予約投稿はいい機能ですね。部下側に「見なきゃいい」を求めるのは酷ですから。上司がどうして連続して送りがちかというと、仕事に忙殺されていて、送りたい内容を忘れるからです。労務管理的にも定時外にメッセージを送るのは避けたほうが良いですしね。それこそパワハラの証拠になりかねません。

高野氏:ほかにも“パーティション機能”という、特定の人から特定の人へメッセージを送れなくする機能も備えています。これを利用すれば、パワハラやセクハラのような個を侵害するような行為があった際にパーティションで切ることができます。ちなみに、こちらの機能は弊社が特許取得している機能になります。

大室氏:仕事の連絡用といわれて教えたプライベートなチャットアドレスに、プライベートなメッセージが来て困っているという話は男女問わずよく聞きますね。仕事の連絡のためだといわれると断りにくいですし。

高野氏:WowTalkはトークルームのログが残せますから、パーティションで切ったとしても、そこに至るまでの履歴が証拠として残ります。

大室氏:ハラスメントに関する相談では「密室に注意してください」とよく言いますが、トークルームって実は密室なんですよね。ログが取れてパーティションで切ることもできるというのは、WowTalkのメリットかもしれませんね。

高野氏:スタンプ機能なども是非がいろいろあると思うのですが、WowTalkではON/OFFを切り替えられるようにしています。やはり会社ごとに異なる社内文化があって、スタンプを使ったほうが素早くレスポンスを返せるとか、逆にフレンドリーすぎるとか考え方がいろいろありますから、管理者がON/OFFで管理できるようにしています。そういう柔軟性は今後より求められていくと思います。

ツールの更新はコミュニケーションのカタチが変わるチャンス

  • ビジネスチャット×パワハラ問題

高野氏:ビジネスチャットは1つの働き方の手段にしか過ぎなくて、多くの人がコロナ禍で「遠隔でもコミュニケーションが取れる」ということを学んだのではないかと思います。それを生かすも殺すも企業次第で、徐々にでも落とし込んでいくことができれば社会の質や仕事のスピードが変わってくるのではないでしょうか。

ビジネスチャットを活用することで在宅ワークが当たり前にできるようになりますので、妊娠中の女性や子育て中の方、介護で仕事を辞めざるを得ない方なども働けるようになるでしょう。また、遠方に住んでいる方や海外在住の方もテレワークによって働けるようになり人材投与の柔軟性が増しますので、首都圏も地方もよりWin-Winの関係になっていくかもしれません。そういったさまざまな未来を後押しできる可能性をビジネスチャットは秘めていると思います。

大室氏:Eメールに手紙のような時候の挨拶を入れた話をしましたが、今までの既存のツールの在り方を新しいツールに当てはめると大体よくない結果になります。ツールが新しくなる時はコミュニケーションのカタチが変わるチャンスといえます。

高野氏:オフィスでの当たり前は、テレワークの当たり前ではないんですよね。オフィスの再現=テレワークと思ってしまってはいけない。自分の中でバランスを取りつつ、「こういうやり方が一番気持ちいい」というものをみんなで探っていくことが大事かなと。

チャットでパワハラといわれないための四か条

大室氏は最後に、ビジネスチャットでパワハラといわれないために覚えておくべきことを4つにまとめてくれたので、ご紹介したい。

●上司の側から部下に歩み寄ろう
●正論でも繰り返せばパワハラになる
●会社の持っているコミュニケーションの下地(ルール/カルチャー)を大事に
●指摘のような疑問文を使わない(「やったよね」ではなく「やりましょう」)


ビジネスシーンでのコミュニケーション手段が対面、電話、Eメール、そしてチャットへと進化していく中で生まれるコミュニケーションギャップ、そしてそこから生まれるハラスメント。だが根底にあるものは人間関係であり、その下地の重要さはコミュニケーションツールが変わっても変わらない。ビジネスチャットの文化が今後どのような形に定まり、そして「WowTalk」などのチャットツールがどう進化していくのか。これからの動向を注視していきたい。

ビジネスチャット「WowTalk(ワウトーク)」
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