3D-CADデータを正式な「図面データ」とする動き

近年の3D-CADデータは「ただ形がわかるだけのデータ」から「使える3次元データ」へと使われ方が変わってきた。従来、設計から他者へ情報を伝えるには2次元の「図面」が欠かせなかったが、これを正式に3Dへと移行する流れ、いわゆる“3D図面”に向けた動きが活発化しているのだ。

  • 3D図面

    3D図面

しかしその際は「3D図面の作成」と「流通」(データのやり取り)という2つの課題をクリアする必要がある。

同じ「図面」と言い表されていても、3D図面(”3D正”とも呼ばれる)は従来の図面とは意味合いが異なる。ただ単に立体視できるだけではなく、その部品なりユニットを製造や組付けするための情報が、すべて網羅されていなくてはならないのだ。そうした意味合いを明確にするために最近ではMBD(Model Based Definition:モデルベース定義)と呼ばれることも多くなってきたが、これが設計者にとってはなかなかの難題といえよう。加工方法や検査方法に関する情報なども3Dの設計データに持たせることになり、3D図面を作り上げるにはより高度なスキルが求められるようになる。

最近の3D-CADシステムでは、2D図面と同じ感覚で3Dモデルに寸法や幾何公差を追記する機能が用意されており、ユーザーフレンドリーな使い勝手が高まる3D図面へのニーズに応えている。また、米国で先行していたMBDに関する規格化についても、2015年にはJIS B 0060(デジタル製品技術文書情報)が制定されており、日本国内でも環境が整備されつつある。

一方で「流通」の課題はどうだろうか。設計者が精魂込めたMBDモデルも他部門へきちんと伝えられなければ「図面」としての意味がなくなってしまう。その観点から、シーメンスは「Solid Edge」という3D-CADソフトを通じて、3D図面の普及に向けたさまざまな取り組みを進めている。

  • Solid Edge

    Solid Edge

手軽に3D PDFを作成できる「Solid Edge MBD」

一般的に3D-CADのデータを確認するためには、そのデータを作成したソフトウェアが必要になる。「中間データ」に変換すれば少なくとも形状はさまざまな3D-CADソフトで閲覧できるが、寸法値や穴のデータは伝わらないことが多い。また、場合によっては文字化けしたりする恐れもあるのだ。

そこで3D-CADデータを簡単に閲覧したりビューを操作したりできる「3D PDF」が脚光を浴びている。これは、一般の人に使われている2次元のPDFファイルと同様、Adobe Acrobat Readerがあればレイアウトを崩すことなくデータを確認できる仕組みだ。このフォーマット自体は2007年から存在しており、国内の大手製造業の一部でも利用が進んでいた。

シーメンスはMBDを含む3D-CADデータを簡単に3D PDF化してくれる「Solid Edge MBD」機能を用意。「Solid Edge」で作成した3D-CADデータは、「3D Adobe Acrobat文書」を選択することで、簡単にMBDを持った3D PDFを作成できるのだ。

  • 3D PDF

    3D PDF

この3D PDF化にはさまざまなメリットがある。1つ目は、前述したとおり3D-CADソフトがなくても無償のAdobe Acrobat Readerで閲覧できること。

2つ目は、データが非常に軽くなることだ。3D-CADのネイティブデータはサイズが大きくなりがちだが、3D PDF化することで軽量化され、ネットワーク上でも扱いやすくなる。

3つ目は、セキュリティの高さだ。3D-CADデータ自体は対応ソフトがあれば誰もが編集できるが、3D PDFであれば権限によって編集をロックできるため、変更や改ざんが不可のデータとして流通させられる。

さまざまな2D/3Dデータをやり取りできる「Solid Edge Portal」

シーメンスは、3D-CADデータ自体のやり取りを円滑にするソリューションも提供している。「Solid Edge Portal」は、クラウド上に3D-CADデータを保管して共有できるサービスだ。「Solid Edge」以外の3D-CADデータも利用できるのが最大の特徴で、一般的に流通しているCADの生データをそのまま閲覧できる。ユーザー権限を設定するアクセスコントロールをプロジェクト単位で行える、セキュリティにも配慮したつくりにもなっている。

  • Solid Edge Portal

    Solid Edge Portal

3D-CADデータ以外にもさまざまな2D/3Dファイルをそのまま閲覧できるため、3D CGを取り扱う場面や、3DクリエイターとCADエンジニアのコラボレーションなどでも活躍するだろう。ブラウザベースで動作し、無償で5GBまでのデータ保管領域を利用できる。幅広いユーザーに使ってほしいサービスだ。

3D-CADモデルを取扱説明書に利用できる「Solid Edge Technical Publication」

さらに3D-CADデータの利用の幅を広げ、ドキュメンテーションを容易にするのが「Solid Edge Technical Publication」である。3Dモデルをそのまま取扱説明書に使うことで、360度ビューや部品の分解など、ユーザーが自由に視点を変えながら確認できる。一見すると従来の取扱説明書とあまり変わらない体裁でも、分解の様子を3Dアニメーションで表示するなど、利用範囲は大きく広がるだろう。「Solid Edge」で作成した設計のパーツリストもそのまま反映可能で、リストからパーツを選択することで3Dモデル上の該当部品がクローズアップされる。

  • Solid Edge Technical Publication

    Solid Edge Technical Publication

大きなメリットとして、取扱説明書の内容のアップデートが容易になるという点が挙げられる。従来は設計が完全に終わってからドキュメント化を進めていたが、「Solid Edge Technical Publication」であれば設計を行いながら取扱説明書の作成を進めることが可能。設計変更があった場合の対応も簡単だ。

データは3D PDFやHTML5などで出力でき、HTML5であればオンラインでリアルタイム更新も可能。工場での組み立て工程はもちろんのこと、現場で部品交換を行う際のサービスマニュアル、カスタマイズ向けインストールマニュアルなどで非常に有用だろう。

AR表示ができる「Solid Edge Mobile Viewer」

最後に、スマートフォンで3Dモデルを表示できる「Solid Edge Mobile Viewer」も紹介しておきたい。

大きな利点は「Solid Edge」から出力したデータをスマートフォンに保存しておくことで、オフラインでも表示が行えること。オンラインの場合は「Solid Edge Portal」で事足りるかもしれないが、営業で急に3Dモデルを見せるような場面に備え、インストールしておくとよいだろう。

なお、Andorid版の「Solid Edge Mobile Viewer」には、AR(拡張現実)機能も搭載されている。実在の風景に3Dモデルを重ね合わせて表示できるため、製品の設置イメージやリアルな大きさを確認したいときに使えるだろう。

  • Solid Edge Mobile Viewer

    Solid Edge Mobile Viewer

「Solid Edge 2021」ではさらなる機能拡充を予定

今回は来たる3D図面の時代に向けたシーメンスの取り組みを紹介した。特に「Solid Edge Portal」は5GBまで無償なうえ、数多くの2D/3Dデータに対応。「Solid Edge」ユーザーでなくともさまざまなコラボレーションに利用できるため、設計者のみならず、クリエイターや医療関係者、学生の方にぜひ活用してほしい。

また、この「Solid Edge Portal」をきっかけに、3D-CADソフト「Solid Edge」を試してみてはいかがだろうか。30日間無料で使えるトライアル版が用意されているほか、スタートアップ企業であれば最上位グレード「Premium」を1年間無償で利用できるプログラムも実施されている。

2020年夏ごろリリースされる「Solid Edge 2021」では、さらにさまざまな機能が追加される予定。こちらの動向にもぜひ注目したいところだ。

「Solid Edge」のフル機能を無償で体験するには?

>> Solid Edge無償評価版のダウンロードはこちら!

[PR]提供:シーメンス