料理の材料として、あるいはお酒のつまみとして、チーズは私たちの食卓に欠かせない存在です。チーズの生産地というと、海外、特にヨーロッパのイメージが強いかもしれませんが、実は今、「日本のチーズ」が世界で注目を集めているのです

今回、そんな日本のチーズの魅力について、NPO法人チーズプロフェッショナル協会の専務理事・事務局長の桝田規夫さんにお話を伺いました。これを読んだらあなたも日本のチーズが食べたくなるかも!?

お話を伺った方

NPO法人チーズプロフェッショナル協会 専務理事事務局長
桝田規夫さん




NPO法人チーズプロフェッショナル協会は、日本の食卓や様々な生活シーンでチーズを楽しんでもらうための非営利団体。「チーズプロフェショナル資格認定試験」「チーズ検定」の実施や、チーズに関するセミナーやイベントの運営、またチーズを生産する方の応援活動を行っている。

世界も注目! 日本のチーズ「ココがすごい!」

――チーズと言っても様々な種類がありますが、日本で作られるチーズの魅力とはどのようなものでしょうか?

日本のチーズの魅力は「日本人にとって食べやすく、繊細な味」というところにあります。

その前に、最初にチーズの種類を説明しますね。チーズは大きく”ナチュラルチーズ“と”プロセスチーズ”に分かれます。ブルーチーズや白カビチーズと行った”ナチュラルチーズ”はチーズらしい風味や香りが楽しめ、熟成によって変化します。一方、”プロセスチーズ”はナチュラルチーズを溶かして固めたもの。チーズとしての風味や香りは弱くなりますが、加熱するため保存がきくというメリットがあります。

ナチュラルチーズは海外産の製品が多いですが、食文化の違いもあるせいか、日本人にとって風味や香りが強すぎる場合もあるようです。その点、日本のナチュラルチーズは国産牛乳が原料で、風味や香りも親しみやすく食べやすいという特徴があります。

また、日本のチーズは作り手の技術が高く、丁寧で卓越した技が繊細な味を生み出しています。日本の風土に合った発酵や熟成が施されているため味わいはまろやかで、私たちの普段の食生活にも違和感なく溶け込むことができるのです。

――日本だけでなく、世界でも高い評価を受けたそうですね。

2019年に、海外の著名なチーズコンテストである「World Cheese Awards(WCA)」と「Word Championship Cheese Contest(WCCC)」に日本として初めて出品し、見事受賞を果たしました。


2019年、イタリアで行われたWCAファイナル審査の様子

「WCA」はヨーロッパ最大のチーズコンテストで、販売の現場目線で評価されます。2019年は42カ国から3,804点ものチーズがエントリーされ、その中から栃木のチーズ工房・那須の森「森のチーズ」がベスト10に入賞、また北海道・長野・千葉・佐賀・熊本から合計13のチーズが入選しました。


WCAでベスト10に選出された、チーズ工房・那須の森「森のチーズ」

「WCCC」はアメリカ最大の国際チーズコンテストで、チーズ製造のプロが厳しい目でテクニカルな点を評価する賞です。ふたつの国際的なコンテストで日本のチーズが認められたことを、大変誇りに思っています。

――これまで出品していなかった海外のチーズコンテストに出品された理由は?

私たちチーズプロフェッショナル協会では、2014年から日本で作られるチーズのコンテスト「ジャパンチーズアワード」を行っています。日本産チーズの品質向上のためのアワードですが、この上位に入賞したチーズの品質が、世界のプロたちにどう評価されるかを確かめたかったからです。

――日本のチーズは、コンテストでどのような点が評価されたのでしょうか。

日本のモノづくりと同じく、職人の丁寧な仕事が高く評価されました。チーズの形状、製法による生地の繊細さ、味わいの広がり方、どれもが高い評価を得ています。特に「見た目が美しい」という表現はチーズコンテストで最高の褒め言葉です。


ファイナル審査に選出される様子(スーパーゴールドジャッジング)

また日本のチーズならではの特徴として「旨味」があります。「旨味」は自然環境とチーズ職人の技が作り出すもので、欧米では日本ほど「旨味」が凝縮したチーズを食べません。欧米では風味を作るために塩を使いますが、日本のチーズは少量の塩と旨味で風味をコントロールしており、塩の使い方が上手ですね。塩が前に出すぎない味わいは日本の食文化にもマッチしています。

――高い評価や注目を受けている日本のチーズですが、今後どのように発展していくのでしょうか。

これからはヨーロッパのAOP(チーズの原産地呼称制度) のような考え方が取り入れられ、地元の産業とより密接に結びつくと思います。たとえば地元の名産品が味噌なら、味噌と合わせた“おらが村のチーズ”が生まれていくという流れです。

もう一つ、原料となる牛乳も多様化していくでしょう。これまで日本で作られるチーズの多くは、飲料用の牛乳の余りを活用して作られていました。しかし、今後は“チーズを作るための牛乳”へシフトしていき、ブラウンスイス種やジャージー種といった希少な乳牛のチーズも増えると思います。

――海外のチーズに対して、日本ならではの強みをあらためて教えてください。

日本はチーズの伝統国ではありませんが、それが逆に強みになると考えています。 伝統国であるヨーロッパなどの産地では製法や原料が定められていて、消費者もそうした産地には伝統的なチーズを求めます。しかし、日本はまだそういった伝統がないからこそ、生産者が新しい挑戦をすることができます。全国のチーズ工房では若手の生産者も活躍してきており、今回受賞したチーズの多くも次世代の職人が生み出しました。今後、彼らが日本のチーズを発展させてくれると期待しています。

今知りたい、世界も注目する絶品チーズ6選

ここからは世界のコンテストで高い評価や注目を集めた日本のチーズを6つご紹介します。どれも特徴があるものばかり。あなたならどのチーズを選びますか?





毎日食べたい度:★★★
お酒に合う度:★★☆
見つけたら買い度:★★★

4〜5ヶ月熟成させて、ベストな時期に出荷しているセミハードタイプのチーズ。日本では数少ないブラウンスイスという乳牛の生乳だけを使用しています。

食べ方POINT
旨味が強いので、食べるときはなるべく薄くスライスして。華やかな香りが口に広がります。飲み物は、日本酒を冷やで合わせたいですね。辛口の白ワインとの相性も抜群です。


チーズに合わせて切り方も工夫したい。
「森のチーズ」は薄くスライスするのがオススメ





毎日食べたい度:★☆☆
お酒に合う度:★★★
友人にオススメしたい度:★★★

このチーズはヨーロッパに負けない本格的なブルーチーズを目指して作られました。ブルーチーズらしい強い刺激と香りはしっかりありながらも、舌触りがなめらかでとても食べやすいです。

食べ方POINT
ブルーチーズには、 はちみつが鉄板の組み合わせなので、かけたり、はちみつの風味がある甘口のワインと合わせたいですね。細かく刻んでサラダにトッピングするのもおいしいですよ。

「ブルーチーズはクセがあって少し苦手……という方にも
ぜひチャレンジしてほしい」と桝田さん





毎日食べたい度:★★★
お酒に合う度:★★☆
ひとりじめしたい度:★★★

クリーミーで濃厚なチーズに、特製のドライフルーツをまぶした、まるで宝石のような外見のデザートチーズ。甘さがあるのでお茶うけにぴったり。

食べ方POINT
チーズらしい塩気もあるのでお酒とも合います。その場合はスパークリングワインが最適。クリーム分の高いチーズは炭酸の飲み物と相性が良いのです。

桝田さんいわく、「個人的に一番好きなチーズ」とのこと





毎日食べたい度:★★☆
お酒に合う度:★☆☆
お土産にしたい度:★★★

100%沖縄県産の生乳から作られた、やわらかなフレッシュチーズ。スパイスと一緒にギリシャ産のオリーブオイルとキャノーラオイルに漬けています。

食べ方POINT
これ自体が一つの料理として完成しているので、そのまま食べてもいいですし、サラダにしたりトーストしたパンにのせたりしてもおいしいです。少しはちみつを追加するなど、アレンジしても面白いですよ。

瓶に入ったパッケージもおしゃれでかわいらしい





毎日食べたい度:★★☆
お酒に合う度:★★☆
みんなでシェアしたい度:★★★

佐渡産の生乳から手作りされるカマンベールを、新潟産のコシヒカリと大豆で作ったたまり味噌「雪の花みそ」に漬けたチーズ。ほのかな味噌と白カビの香りが楽しめます。

食べ方POINT
大ぶりに切ってぜひその香りや風味を楽しんでください。温かい飲み物と一緒に食べると、ミルク感や味噌の風味がより出やすくなります。日本酒なら燗で合わせたいですね。

佐渡の生乳と新潟の味噌がコラボ。地元のおいしさが詰まったチーズだ





毎日食べたい度:★★☆
お酒に合う度:★★★
知ってたら自慢したい度:★★★

新鮮で良質な牛乳を原料として、4ヶ月以上熟成したチーズ。熟成期間中、毎日職人の手で丁寧に磨かれています。濃厚なコクがあり、ナッツのような香りも。余韻が長く、満足感が高い一品です。 WCCC2020の試食でも好評だったそう。

食べ方POINT
そのままでももちろんおいしいです、削ってグラタンなどにかけると料理の完成度がグッと高まりますよ。お酒ともすばらしい相性です。ワインと合わせたいですね。

スライスではなく、固まりになるよう大きく削ってみても

今回、紹介した日本のチーズはどれも海外のチーズに負けないクオリティで、さらに日本ならではの風土と職人の卓越した技術を感じられる逸品ぞろい。

皆さんもぜひ、世界が認める日本のナチュラルチーズを楽しんでみてください。

令和元年度国産乳製品等競争力強化対策事業(国産チーズ競争力強化支援対策事業)
後援:独立行政法人農畜産業振興機構

[PR]提供:チーズプロフェッショナル協会