2019年9月6日、富士通マーケティング主催で「なぜ今、働き方改革が必要なのか?本当の働き方改革実現セミナー ~働き方改革の実現は「意識改革」ではなく「行動改革」と「見える化」から~」が開催された。労働力人口の減少による人手不足や少子高齢化が進み多くの課題が山積みする昨今、企業は働き方を大きく変えることが求められている。本セミナーでは、その改革に取り組む人事・総務・情報システム部門の担当者向けに、「働き方改革」の本質を踏まえながら、改革実現のポイントが紹介された。

「意識改革」の前に「行動改革」をすることが重要

最初に登壇したのは、富士通でシニアエバンジェリストを務める松本国一氏だ。「富士通の働き方改革実践事例と今後の取り組み方~改革法施行にとらわれない『本当の働き方改革』とは~」をテーマに約1時間の講演を行った。

  • 富士通 シニアエバンジェリスト 松本国一氏

    富士通 シニアエバンジェリスト 松本国一氏

「なぜ今、働き方改革なのか。長時間労働対策でしょうか。賃金削減のためでしょうか。ワークライフバランスのためでしょうか。これらは、今やらなければならない理由になっていません」(松本氏)

会場にこう問いかけた後、松本氏は「超・少子高齢化」「労働力人口の減少」にこそ理由があると語った。政府の統計では、労働人口が2060年には4割減少するとされ、深刻な人材不足が予想されている。あわせて、5年後、10年後に顕在化する介護離職のリスクも強調した。

「親の介護と仕事の両立ができないことで、働き盛りの世代が離職してしまうリスクが目前に迫っています。このまま対策をしなければ、介護離職で現場から多くの社員がいなくなり、『一人あたり今の5倍の仕事をしてください』という状況になることもあり得るのです」(松本氏)

今年4月に働き方改革関連法が施行され、社員1人ひとりの労働時間が減る一方で、求められるのが生産性の向上だ。働き方改革に取り組み始めて9年目になる富士通では、さまざまな働き方改革に取り組んでいる。「子育て・介護支援」という視点では、2017年4月からテレワーク勤務制度を設け、利用している社員は3万5,000人にものぼる。

「テレワークは育児中や介護中の人だけではなく、全社員が同じコミュニケーションのインフラを使うことが重要です。富士通では、モバイルPC・スマートフォンを統一し、固定の内線電話機を廃止しました。その代わりに内線電話用のハンドセット(USB受話器)とWeb会議用のヘッドセットを全員に配布しました」(松本氏)

ハンドセットとヘッドセット両方を配布することで、固定電話を撤廃するハードルを下げるという施策があったからこそ、コミュニケーションインフラのスムーズな移行に成功したと松本氏は語る。

「働き方改革を進めるには、『意識改革』『制度・ルール』『ICT』三位一体での取り組みが必要です。人の意識は簡単には変わりませんので、まずは効率化のためのICTツールと社内ルールを整え、行動しやすい環境をつくることが重要となります。コストだけを見ればハンドセットは不要でしたが、私はこれを無駄だったと思っていません。行動改革への投資という視点で結果的に大いに役立ちました」(松本氏)

現在では、全社員の98%がWEB会議を利用しており、1年間の全社の利用回数は200万回を超える。セキュリティを確保した軽量なモバイルPCの活用により、どこにいても作業や通話ができることを背景にテレワークの利活用は格段に広がっている。

「働き方改革を進める中で大切なのは現場の声を聞き、“働かせ方”改革ではなく、“働き方”改革を行うことです。そのためには、まず全社員の共通認識として、理想の働き方である『ビジョンを作ること』が重要です。そうして、行動を改革できるようなルールやツールを整えていくことで行動が変わり、意識改革にもつながっていくのです」と、松本氏は講演を締めくくった。

働き方改革を成功に導く「ビジョン策定」

続いて、富士通デジタル・トランスフォーメーション・センター(DTC)の飯塚由里氏が登壇。松本氏の「働き方改革成功のためにはビジョンの策定が不可欠」という話を受け、同センターが実施する「ビジョン策定ワークショップ」を紹介した。

  • 富士通デジタル・トランスフォーメーション・センター(DTC) 飯塚由里氏

    富士通デジタル・トランスフォーメーション・センター(DTC) 飯塚由里氏

働き方改革に取り組む企業が直面する課題として、「何からはじめたらよいのかわからない」「改革の効果が見えないと経営層を説得しにくい」「新しいツールを導入したけれど、社内で活用されていない」といったケースは多いものだ。企業が抱える悩みに対して、飯塚氏は「働き方改革を成功に導くためには、ビジョンを定めることが重要です」と話す。

「働き方改革におけるビジョンとは『全員が目指す働き方のありたい姿』です。全社共通のビジョンを策定するためには現場の一部門ではなく、さまざまな部門の意見を引き出していき、集約することが必要です。そうして集まった意見やアイデアを絵にすることで、理想の働き方の共通のイメージを持っていただくことを推奨しています」(飯塚氏)

飯塚氏が所属する共創ワークショップ空間であるDTCは、国内では東京(浜松町)と大阪に設置され、自社の働き方改革で得た知見を活かした、「ビジョン策定」のワークショップを展開している。

ワークショップのプログラムは120分を基本としており、富士通からの情報提供(プレゼン)と参加者主体のワークショップの2つを通じて未来の働き方を整理・発見していく。「インスピレーションカード」を用いて、5~15名で理想の働き方や想いを参加者全員で共有し、最後にありたい働き方のビジョンスケッチを作成する。

飯塚氏はDTCにて実際にワークショップを行ったある海運業の事例を紹介した。同企業では「Office 365を導入したが社員に利用が広がらない」という課題があり、120分のワークショップを実施。

「ワークショップには経営管理部門、人事総務部門、情報システム部門、営業部門等、複数部門の社員に参加いただきました。インスピレーションカードをベースに、『オフィスでの働き方』、『外での働き方』、『ナレッジの共有』をテーマとして設定し、ビジョンスケッチを作成しました。ワークショップの最後に、働き方改革のビジョンを一言で表すと何か?という問いかけから『グローバルコミュニケーション』というキーワードが生まれました」と、飯塚氏は当時の内容を説明した。

ワークショップの結果、参加者から「コンセプトをまとめるためのビジョンを形にしてメンバーで共有することが大事であり、それがないと前に進めないということがよく分かりました」とのコメントがあったという。

「働き方改革のビジョン策定は、未来志向が大切なポイントです。現在の課題から考えるだけでは革新的なアイデアは生まれないからです。働き方の理想図であるビジョンを描き、そこから実現に向けた施策を考えるというアプローチが重要になります。今回、ご紹介した体験型DTCワークショップは無償で提供していますので、ぜひお役立てください」(飯塚氏)

会社を俯瞰して課題を発見するための情報管理が必要

最後に、富士通マーケティング ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部の武田幸恵氏が登壇。飯塚氏の「働き方改革にはビジョンを定めることが不可欠」という講演を受けて武田氏は、働き方改革のためのビジョンを定めるためには、適切に情報管理を行い、そのデータから会社を俯瞰する重要性を強調した。

  • 富士通マーケティング ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部 武田幸恵氏

    富士通マーケティング ソリューション事業本部 GLOVIA会計・人事給与事業部 武田幸恵氏

「例えば、社員数をはじめ、年齢構成や男女比、離職率、業務に必要な資格を持っている社員が何割いるかなど、リアルタイムのデータを把握できなければ、会社がどうあるべきかの最適なビジョンを描くことは難しいでしょう。現状の分析をした上で、将来に向けた働き方改革のビジョンを描くことが大切です」(武田氏)

働き方改革に限らず、企業が持つ課題は一社一社異なるもの。会社を俯瞰して全体を把握し、課題を発見することがビジョンや施策の策定を進める第一歩となる。そのために重要な役割を果たすのが人材情報管理システムだ。

「人材情報管理システムを活用すれば、先ほど挙げたような企業全体の状況はもちろん、女性の活用状況、社員の勤続年数などもダッシュボードで見える化することが可能です。例えば、年代別人員構成をグラフ化した場合、『若い社員が少ない』『この職種の人員が足りない』といったことがひと目で分かるようになります」(武田氏)

世代や男女の偏り、離職率などを把握し、5年後、10年後に定年退職者が何名出るのかをシミュレーションすることで、現在の働き方改革だけでなく、将来を見据えた採用計画を立てることも可能となる。

また、現在多くの企業で「人材の獲得・強化」が課題として掲げられる一方、副業解禁などを背景に従業員満足度(ES)、従業員エンゲージメントの向上も欠かせない視点となってきていると武田氏は語る。

「労働生産性を働き方改革成功の指標として捉えてみると、『付加価値額(会社の利益)÷労働投入量(従業員数×労働時間数)』と考えられるかと思います。付加価値額を上げることで、労働生産性を上げることが理論上できるのです。その上で、自社のビジネスを強くして利益構造を改善すること、社員が意欲を持って働くこと。この両輪で進めなければ、これからのビジネスは成功しないと言えるでしょう」(武田氏)

働き方改革と同時にビジネスを成長させていくためには、人材情報と経営状況をリアルタイムに把握でき、自社事業の強みや問題の分析ができるシステムを持つことは欠かせないだろう。

「富士通マーケティングの統合業務ソリューション『GLOVIA iZ(グロービア アイズ)』は、基幹系の情報をベースに、売り上げ、収益、生産性などをリアルタイムに分析しながら、グラフを用いて見える化し、分析することが可能です。富士通の知見とさまざまなソリューションを活用させていただきながら、働き方改革と同時に労働生産性を上げていく情報管理のお手伝いをさせていただければと願っております」と武田氏はセミナーを締めくくった。

GLOVIA iZの詳細はこちら
https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/services/application-services/enterprise-applications/glovia/glovia-iz/

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