カシオの人気電子ピアノ「CELVIANO Grand Hybrid」から、待望の後継機「GP-510BP」「GP-310BK / WE」が登場した。「CELVIANO Grand Hybrid」は、グランドピアノに迫る表現力に定評のある電子ピアノ。演奏性のさらなる向上がはかられたほか、音源と音響も強化されている。

発売に先駆け、新製品発表会および体験会、そしてピアニストの近藤嘉宏氏を招いたコンサートが開催された。今回は、新製品の特長と発表会の模様をお届けする。

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    カシオは8月6日、「CELVIANO Grand Hybrid」新製品発表コンサート&体験会を開催した

■新モデル、その進化点は?

2015年にC.ベヒシュタイン社と共同開発した初代モデル「CELVIANO Grand Hybrid GP-500BP / GP-300BK」。電子ピアノながらも、音色、鍵盤の感触、弾き心地はすべてにおいてグランドピアノに近付いているとされ、注目を集めた。

  • 創業160年以上の伝統あるC.ベヒシュタイン社と共同開発した音色を搭載

  • 3つのグランドピアノの音(ベルリン・グランド / ハンブルク・グランド / ウィーン・グランド)が楽しめる

また「AiR Grand音源」が可能にした、繊細なピアニッシッシモから力強いフォルテッシッシモまで余すところなく演奏できる広い表現幅は、当時電子ピアノの更なる可能性を見出した。このほか木製鍵盤にはC.ベヒシュタイン社製のグランドピアノの鍵盤にも用いられているスプルース材を使用。グランドピアノのハンマーの動きを追求したアクション機構による「ナチュラルグランドハンマーアクション鍵盤」により、ピアニストの繊細なタッチを音に表現できるのも魅力の一つになっている。

  • 鍵、黒鍵、鍵盤の土台(筬)のすべてに良質なスプルース材を使用。鍵盤の表面にもグランドピアノと同じ仕上げを施しており、自然で滑らかな弾き心地が実現されている

すでに初代モデルから完成されていた「CELVIANO Grand Hybrid」。後継機では、どのあたりが進化したのだろうか。

カシオ計算機 常務執行役員の樫尾隆司氏は「GP-510BP」と「GP-310BK / WE」について次のように話した。「ひとつひとつの音の完成度をさらに高め、鍵盤タッチによる音の響き方にも妥協のない開発を繰り返しました。C.ベヒシュタイン社の持つ伝統と、カシオのもつ革新の技術が融合した製品になっています」。

また、コンシューマ開発統轄部の伊藤直明氏は「今回の開発では、現状に甘んじることなく演奏表現の幅を広げることに取り組みました」と説明。具体的には、音の伸び、弱打の表現力にさらなる磨きをかけたとしている。

  • (左から)カシオ計算機の樫尾氏、ピアニストの近藤氏、カシオ計算機の伊藤氏。なおカシオは来年、電子楽器事業40周年を迎える

■ピアニストの感想は?

では実際に、第一線で活躍しているピアニストは新製品をどのように捉えているのだろうか。

ピアニストの近藤氏は、コンサートにおけるトークセッションで「『CELVIANO Grand Hybrid』では、指先の細かい力加減が、ちゃんと音の差になって出ます。これは、自分の思う音が出せるということ。新製品では、その精度が格段に上がっているのを感じます。ペダルを踏んだときの音の伸び方、ハーモニーの重なり方も、より生のピアノに近づいたと言えるのではないでしょうか。本当に本当に微妙な感覚の違いですが、私の印象では、劇的に進化しているのを感じます」と分析した。

  • 曲と曲の合間に、トークセッションの時間がもうけられた。「CELVIANO Grand Hybrid」について熱く語る近藤氏

実は「CELVIANO Grand Hybrid」の開発における最終段階で、カシオの羽村技術センターで試弾したという近藤氏。「すでに、かなり完成された状態でした。感覚の誤差をさらに狭めるため、ピアニストの感触を開発者の方に伝えました」と製作秘話を明かした。

カシオの電子楽器に対する開発姿勢については「ユニークな角度で楽器を見ていらっしゃるのが伝わってくる。楽器を精密に科学しているんですね。それも重要なアプローチ。僕は音楽家も、そうあるべきなんじゃないかと思うんです。その姿勢に共感しています」と笑顔で話した。

  • ホールは、ほぼ満席の大盛況に。紀尾井町にある「赤坂プリンス クラシックハウス」で、ショパンの名曲を中心に組み立てたプログラムが披露された

筆者も仕事を忘れて、近藤氏が奏でる「CELVIANO Grand Hybrid」の音に聞き入ってしまった。おそらく大半の来場者が、音が出始めてものの数秒で、ピアニストが弾いているピアノが電子楽器であるという事実を忘れたことだろう。

テクニックが求められる「子犬のワルツ」では、素早いパッセージ(楽節)にも関わらず打鍵の強さに合わせた音をリアルに表現。鍵盤が、まるで指に吸い付くように俊敏に反応していた。「革命エチュード」のようなダイナミクスレンジが大きく激しい曲では、指先のタッチがそのまま音になる「CELVIANO Grand Hybrid」ならではの力強いサウンドで聴衆を魅了。「英雄ポロネーズ」では、左手が奏でる力強い低音の伸びに支えられて、右手の高音が軽やかに跳躍していた。

  • 難曲も披露。ピアニストが目の前のピアノに全幅の信頼を置いて弾いているのが伝わる

「ワルツ第7番」では一転して、テンポの緩急を大胆につけた演奏。フレーズの変わり目には消え入ってしまうほどの最弱音で表現し、聞き手をハッとさせた。近藤氏は、曲の移ろいや力強さを「CELVIANO Grand Hybrid」で存分に表現し、自分の思うままに音が出るという製品の魅力を、各演奏で見せつけた。

  • コンサートの終了後にはサイン会も

近藤氏も太鼓判を押す「GP-510BP」「GP-310BK / WE」。市場想定価格は、「GP-510BP」が税抜き39万8,000円前後、「GP-310BK / WE」が税抜き29万8,000円前後になる見込みだ。アコースティックに近いタッチ感を実現したという待望の後継機。ぜひ弾いて、タッチのリアルさや音の表現力を感じてみてほしい。

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