2019年7月9日、マンダリン オリエンタル 東京にて「Kyriba Live Tokyo 2019 デジタル化時代の財務管理 ~真のトレジャリーマネジメントとは~」が開催された。これはクラウド型財務管理ソリューションを展開するキリバがアメリカ・フランス・イギリスで毎年行っているグローバルイベントで、東京での開催は今回が初となる。

2015年度時点で日本企業の海外売上高比率は58.3%を超えており、グローバル企業の財務部門は世界で発生するさまざまなリスクに対して、戦略的な「トレジャリーマネジメント」が求められるようになっている。

キリバ・ジャパン社長の小松新太郎氏は開会の挨拶で、経理会計と財務におけるIT市場の割合が100対1である現状に、財務部門へのIT投資はまだ小さいもののデジタル化によって「即効性のあるBS/PLの改善」が可能になることを伝えた。

  • Kyriba Live Tokyo 2019 デジタル化時代の財務管理 ~真のトレジャリーマネジメントとは~

財務のグローバルトレンドは「戦略的なリスク管理」と「不正防止」

「働き方改革なんかぶっ飛ばせ! 生命線は生産性向上だ」と題した基調講演では、経営学者の米倉誠一郎氏が「ポイントは高賃金・高生産の働き方『ワークスマート』と、『ワークダイバーシティ』です。マーケットがものすごく多様化しているのに、経営幹部が全員男・全員日本人といったダイバーシティのなさでは、ニーズをつかむことはできません」と強調した。

Kyriba Corporation VP Product Marketing Bob Stark氏

Kyriba Corporation VP Product Marketing Bob Stark氏

キリバのVPであるBob Stark氏からは、コンサルタント会社のハケット・グループとの合同調査「CFOが財務に求めるもの」が示された。そのアンケート結果によると「不正の監視・軽減」が43%で1位、「業績リスク管理」と「戦略的リスク管理/オペレーショナルリスク管理」がそれぞれ32%で2位となっている。財務部門には、キャッシュを不正から守る「ガバナンスの強化」と、流動性リスクなどあらゆるリスクに備える「戦略的なリスク管理」が強く求められていることが確認された。

こうした財務への新たなニーズに対して、デジタル化はどのように寄与するのだろうか? Stark氏は「資金繰り予測」を例に挙げて説明した。

「多くの企業が正確な資金繰り予測に苦労しています。重要なことは、必要な指標を測定し、予測した数値と実績の乖離を見極め、そしてさらなる改善のために分析をより深めるというサイクルを回していくことです。精緻な資金繰り予測ができれば、資金の可動性が高まります。その資金はいつ中国に置くべきか、それともアメリカに動かした方がよいのか、どこにキャッシュ需要があるのかを、見極められるようになります」

精緻な資金繰り予測には、余剰資金の圧縮と利回りの高い投資による「収益性の向上」や、外貨建てキャッシュフローをヘッジしたり、ミスや不正取引をより早期に発見することによる「資金の保護」の効果がある。

また、不正取引の発見は大きな意義を持つ。Stark氏は2018年に「全世界の財務チームの99%が不正の発生またはサイバー攻撃を受けた」「52%の財務担当者が支払不正で資金を失った」「支払不正による損失の平均額は3,200万円」という背筋が寒くなる事実を明らかにした。

「こうした恐るべきリスクに対して、紙ベースの処理や手入力をなくす『支払のデジタル化』によるコントロール強化が最も有効です。すべてがデジタル化され、例外適用をなくすことで、不正を防ぐことができるのです」

  • 「支払のデジタル化」が不正を防ぐ有効な手段となる

    「支払のデジタル化」が不正を防ぐ有効な手段となる

財務データそれ自身を「サービス化」していく

アビームコンサルティング プロセス&テクノロジービジネスユニット FMCセクター マネージャーの樋口明氏は「TMS活用術」というテーマの講演を行った。TMS(統合財務システム)を導入したものの、なかなか効果を上げることができない現場の「症状」に対して、有効なアプローチの実例が紹介された。

Kyriba Corporation Chief Evangelist Wolfgang Koester氏

Kyriba Corporation Chief Evangelist Wolfgang Koester氏

キリバのChief EvangelistであるWolfgang Koester氏からは、同社の今後のビジョンが示された。Koester氏は為替リスク管理に特化したクラウドサービスのトップベンダー「FiREapps」の共同創業者だ。そのFiREappsは2019年にキリバに統合された。

「戦略的財務のためのデータは膨大なだけでなく、貯蔵庫に閉じ込められています。財務部門の10%しか必要な情報にアクセスできていません」とKoester氏は警鐘を鳴らす。

キリバは2002年にSaaSプラットフォームとしてローンチしたが、当初は財務をクラウドで扱うことに対する拒否反応がほとんどだった。それがいまや65,000ユーザーのクライアントを持つ企業に成長し、年率成長率は30%を超えている。

「SAPの本場であるドイツで『なぜキリバはこれだけ急成長できたのか?』という質問を受けました。キリバが提供するサービスは課題ごとにモジュール化されており、一式まるまる導入せずともよいのです。『支払だけ扱いたい』『BS上の為替管理だけ行いたい』『サプライチェーンファイナンスの買い掛け債権を見たい』といったニーズに合わせて、クラウドで素早く開始することができます」

最後に、キリバのサービス体系の中核にある4つの段階「見る」「守る」「減らす」「増やす」についての解説があった。まずはデータをタイムリーに見ること。それによって、データの裏側にあるキャッシュを守ること。そしてキャッシュの無駄を減らし、投資効率を高めることでキャッシュを増やしていくこと。こうした段階をサポートしていくために、キリバは「TMS(統合財務システム)の会社」から「DaaS(Data As A Service)の提供者」となることが宣言された。

Kyriba Corporation Product Owner Corey Edens氏

Kyriba Corporation Product Owner Corey Edens氏

続いてキリバ製品の進化についてプレゼンテーションを行ったのは、Product OwnerのCorey Edens氏だ。

Edens氏が真っ先に取り上げたのは「UIの向上」である。ユーザーが画面のどこをクリックしているのか。どこで迷っているのか。逐一検証しながら「データにたどり着く」ではなく「データを活用する」ための効率化が進められている。BI機能の強化もそのひとつで、支払用・コンプライアンス用・リスク管理用のBIツールが来年度に提供される予定だ。

「わたしの大好きな言葉に"One picture is worth a thousand words"、日本語にすれば『百聞は一見にしかず』があります。データそれ自身が自らを語れるようにすることが、私の役目です」

  • 新たなユーザーエクスペリエンス

    新たなユーザーエクスペリエンス

もうひとつ強調されたのが「キリバのモバイル化」だ。モバイル端末による操作はインタラクションの中でも大きな割合を占めるようになっている。CEOや財務担当者が飛行機に搭乗する直前でも、承認プロセスをより円滑かつセキュアにできるように「どこでも使えるキリバ」を実現するための研究開発費が投じられているという。

さらにテクノロジーの活用事例として、オープンバンキングAPIによる銀行とのコネクティビティ強化やBOTによる自動化の推進、AIによる不正の検知や資金繰り予測の精度向上などが紹介された。

グローバルな財務システムの導入により、保有キャッシュを半分に圧縮した事例

イベントの目玉として行われたのが、キリバ導入企業によるパネルディスカッションだ。サントリー食品インターナショナル、ヤンマーホールディングス、コニカミノルタの財務担当者が登壇した。

  • キリバ導入企業によるパネルディスカッション

    左から、キリバ・ジャパン株式会社 代表取締役 社長 小松新太郎氏、サントリー食品インターナショナル株式会社 経営企画本部 財務経理部 課長 大久保穣氏、コニカミノルタ株式会社 財務部 グローバル財務管理担当 部長 大森弘之様、ヤンマーホールディングス株式会社 財務部 財務グループ 課長 矢野芳和様、アビームコンサルティング株式会社 P&T Digitalビジネスユニット FMCセクター 執行役員 プリンシパル 下村雄吾氏

・サントリー食品インターナショナルの導入経緯

サントリー食品インターナショナルは、清涼飲料水をグローバルに展開している。 同社の大久保穣氏は「(M&Aや提携によって海外プレゼンスを高めてきた結果)現地の会社が独立した財務機能を持っていて、レポーティングや財務の統合ができませんでした」と当初の課題を打ち明ける。預金残高をタイムリーに把握し、ガバナンス強化やコスト最適化を図るために財務管理システムの導入が検討されたが、そこでキリバを選んだのは3つの理由があるという。

「一番大きな理由は、グローバルで業務プロセスを標準化できることです。また、既に導入しているグループ会社があったこともアドバンテージになりました。さらに、銀行のネットバンキングシステムとも比較したのですが、ひとつの銀行に情報を集約するよりも、独立系のサービスを選ぶことを決断しました」

同社はキャッシュマネジメントモジュールの導入を2016年から開始し、現在は為替管理と貸借管理のモジュール導入を進めているとこのとだ。

・コニカミノルタの導入経緯

コニカミノルタは、2014年度からの中期経営計画で「エクセレント・カンパニーにふさわしい財務管理基盤の構築」を目標に掲げた。同社の大森弘之氏は「資金の可視化」「グローバル化」「関係会社間の決裁キャッシュレス化」を3つの柱とし、これに基づいてキリバの導入を決めたという。「関係会社間での決裁条件の統一には苦労しました」と大森氏は当時を振り返る。

「導入当初は毎週キリバの担当者に来ていただいて、進捗管理をしていました。その甲斐あって、2015年からTMSを稼働できています。10年前のBSと比べると、現在はキャッシュが約半分になっており、それだけ効率的に資金運用ができていると考えています」

・ヤンマーホールディングスの導入経緯

「売上げ1兆円」を目指すヤンマーホールディングスは、海外での販売を強化しており、海外子会社が急速に増えている。収益を圧迫する借り入れコストの削減や、資金の活用、現預金の圧縮などに加えて、海外資金にガバナンスを効かせることが財務部の抱える課題だった。

同社はTMSの導入によって、海外子会社の見える化が可能となった。週次で3カ月先までの資金繰りを予測し、また、借入規模の推移を追えるようになっている。同社の矢野芳和氏は、キリバ導入による業務の変化をこう語った。

「それまでは『お金がありません』『今月ショートします』と世界のあちこちから言われて対応に追われる日々でした。それがいまでは、予見性を持って、より前向きな仕事をすることができています」

・キリバ導入企業によるユーザー会が発足

このパネルディスカッションでは、日本国内のキリバ導入企業によるユーザー会発足が発表された。ユーザー会ではデジタル活用やガバナンス強化をより高度にしていくための情報共有と、ユーザー会を通じたキリバへのフィードバックが行われていく。

最後は、アビームコンサルティングの下村氏が「クラウドサービスの登場によってIT投資のハードルは低くなっています。『小さくまとまらず、小さくはじめる』ことによって、成果を挙げながら高いところに登っていきましょう」と総括した。

本イベントでは定員200名に対し、300名を超える参加登録があり、財務管理に対する関心の高さが伺えた。財務担当者に求められる「ガバナンスの強化」「戦略的なリスク管理」を実現するためにも、キリバのようなクラウド型財務管理ソリューションの導入は欠かせないといえる。

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