グループ企業など、それぞれ異なる顧客チャネルでおこなうデジタルマーケティングは、個々の企業における分析環境の最適化はもちろん、グループシナジーを高めるための相互データ運用を見据えたデータ統合と、分析基盤の構築が必要となる。日本でも有数の総合デベロッパーである三井不動産グループも同じ課題に向かい、アドビ システムズが提供する「Adobe Experience Cloud」によってこれを解決。今後はさらなる事業間のデータ連携により、新たな顧客理解とサービス向上を目指している。

今回、三井不動産株式会社 ITイノベーション部 開発グループ 専門役の中島誠氏に、どのような経緯でこの難しい課題を解決していったのか、話を伺ったので紹介していこう。

  • 三井不動産株式会社 ITイノベーション部 開発グループ 専門役 中島誠氏

    三井不動産株式会社 ITイノベーション部 開発グループ 専門役 中島誠氏

顧客とのコミュニケーションに変革を

三井不動産グループは、オフィスビルや商業施設、ホテル、リゾート、物流施設など幅広い事業を展開している。「東京ミッドタウン」「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」「三井ガーデンホテルズ」など、認知度、人気ともに全国的に高い施設を手掛けていることでも知られる同社は、グループ内の企業数で313社、運用中のWebサイトの主要なものだけでも80サイトを数える大規模なグループだ。

「各事業を行っている企業はそれぞれにデータ収集やデータ活用を行い、実際に様々な施策も展開しています。そのため、顧客とのコミュニケーションを変革するためにも、事業やセグメントをまたいだデータ活用が必要だったのです」と中島氏は語る。

例えば、住宅を買うという行為は一生に一度というケースがほとんどだ。そのため、住宅事業では顧客の接点が限られてしまうことになる。一方で、商業施設では様々なタイミングで顧客との接点を持つ機会がある。子供用品を扱うテナントで頻繁に買うようになったら、「その顧客には新しい家族が誕生した可能性が高い」といった情報がくみ取れる。仮にこの情報を住宅購入ニーズとして抽出できれば、顧客に対して新しい提案をすることが可能になるのだ。

このような考えのもと、事業間のデータ統合を目指して分析環境システムを構築するプロジェクトが発足し、2014年に始動することになった。

分析ソリューションのパフォーマンスが導入のカギに

中島氏が、グループのデータ統合、および分析基盤としてまず着目したのが「Adobe Analytics」だったという。

「当時圧倒的に性能が良かったのはAdobe Analyticsでした。このツールを使えばサイト流入後に、コンバージョンに至るまでにどこを回遊したかといったことをはじめ、様々な角度から精密に分析がおこなえます。フォールアウトドリルダウン分析やレポーティング機能も充実していますから、統合分析基盤としてはとても優秀だと感じました」(中島氏)

さらに、コンテンツの出し分けやレコメンド機能を実装するための「Adobe Target」も性能が群を抜いていたという理由から採用が決定。このほか、プライベートDMP(Data Management Platform)としての「Adobe Audience Manager」なども導入することになり、データ統合・分析基盤が構築されていった。

「このシステムから導き出された結果をアクションにつなげていくには、セグメンテーションやコンテンツの最適化が必要です。今回のシステムではアドビ システムズのソリューションで統一できたので、データ連携もスムーズに行えますし、親和性の高いシステムになったと考えています」(中島氏)

実際のシステム構築は、ITイノベーション部が中心となって作業を担当。グループ全体で可視化したい指標を得るため、標準データ項目の策定と、分析結果をグループで統一した指標にするための、データ定義やルール化を進めた。

「項目が同じでも、データの中身は違うケースがあります。例えば、同じコンバージョンでも商業施設はリアル店舗への来館や、ファッションECモールでの購入となり、住宅販売なら資料請求といったものになります。そのための定義とルールが必要だったのです」(中島氏)

これらのデータ項目は、大枠での分析ニーズを網羅しているが、独自のデータ取得を希望する事業もあったという。「そうした事業ではKPIを定義して個別に実装しています。しかし、できるだけ標準化したいので、追加する取得データ項目をメニュー化するなどしています」と中島氏は言う。

また、アドビ システムズのソリューションには「Dynamic Tag Management」が装備されている。これによりタグ管理はユーザー自ら行うことができるため、効率のよい作業ができたのだという。

  • 三井不動産株式会社 ITイノベーション部 開発グループ 専門役 中島誠氏

Adobe Experience Cloudの多岐にわたる導入メリット

アドビ システムズでは、これまで紹介してきた各ソリューションを包括的な顧客体験管理(CXM)「Adobe Experience Cloud」として提供している。では、実際にAdobe Experience Cloudを導入したことでどのようなメリットが生まれたのか、いくつかの事例を紹介しよう。

―複数サイト間の顧客回遊を可視化

これまで、顧客の回遊についての調査はそれぞれの企業単位によるデータ収集がメインだったが、現在では複数事業間の統合分析が可能になっている。

「例えば新築マンションを買おうと検討しているお客様は、それだけを目的にWebで調べ物をすることはなく、ほとんどの場合は戸建てや賃貸も一緒に見ています。同様に違うエリアについてもよく見ているものです」(中島氏)

三井不動産グループの住宅事業としては「三井のすまい」「三井のリハウス」「三井ホーム」「三井の賃貸」といったサイトがある。これらのサイト間をまたいで統合分析をおこなったところ、物件やエリアごとの顧客の検討範囲や推移の傾向に差が出てきたのだという。

「お客様の行動特性への理解が深まれば、プロモーションや適切な提案に役立てることができます。今後も幅広い範囲で気づきがないか、チャレンジを続けます」(中島氏)

―外国人観光客向けの施策に応用

現在日本には多くの外国人観光客が訪れており、彼らの消費行動に合わせた施策も重要なポイントとなっている。そこでららぽーと、三井アウトレットパークなどでは、インバウンドの顧客がどこから来たかを把握するために、旅行代理店やキャンペーンにQRコードを割り当てて、持参した人にはノベルティをプレゼントするといった取り組みをしている。

「これにより、利用状況と来館測定で得られたデータをAdobe Analyticsで分析することができます。これをレポート化することでキャンペーンなど、今後の施策に役立てることができます」(中島氏)

―コンテンツの改善・立案に活用

入居テナント数約3,000社以上になるオフィス事業では、会員向けのサイトとして「COMMONS PAGE」を運営している。

「イベントの企画やコミュニティの運営、情報提供などをするサイトですが、ここではGeolocation Technology社の『どこどこJP』へのAPIを活用して、来訪者のIPアドレスから情報を取得、可視化しています。これによってどんな企業に何が人気になっているかが分かるので、イベント企画の立案などに活用しています」(中島氏)

―A/Bテストの結果に合わせた施策でコンバージョン率が向上

三井ガーデンホテルズでは、トップページ内でのコンテンツ配置を決めるため、Adobe Targetを活用したA/Bテストを実施している。その結果、コンバージョン率が4~7%改善している。同様に三井の住まいでは常時レコメンドを実現すべくAdobe Targetと Adobe Experience Managerを組み合わせている。これにより、これまでに見た物件データに基づいた、おすすめ物件情報を動的に出し分けている。

―広告効果のインプレッションに大きな効果

三井不動産グループの商業施設では「MSP Free Wi-Fi」を設置、これを来館計測に活用している。このデータと広告データをAdobe Audience Managerで統合、Adobe Analyticsで分析し、広告効果のインプレッションに役立てている。これによって、広告における来館への貢献度が正確に把握できるようになったのだという。

「もともと正確な効果測定が必要だと感じていましたが、これによって広告配信のあった来館者のほうが、広告配信のなかった来館者よりも多かったことが分かりました。同時に広告をクリックした人よりもクリックしなかった人のほうが多かったことが判明したのです。つまりこうした広告は、クリックされなくともインプレッションだけでも効果があることが確認できました」(中島氏)

―パブリックDMPと連携し顧客との接点を浮き彫りに

Web上の膨大なレコードデータを解析、知りたい外部データを生成してくれるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社のパブリックDMP「Audience One」をサードパーティーとして、同社のファーストパーティーデータと付け合わせ、性別、年齢、年収によって顧客と三井不動産グループとの接点にどのよう変化があるのかを可視化していく予定もある。

―分析レポートをグループ内で幅広く共有

様々な角度から行われているデータ分析の結果は、レポートという形で各事業者の担当者に共有されている。

「多くのサイトが必要としている項目を収集して、三井不動産標準のレポートを送るようにしています。『もっとちがうレポートがほしい』というユーザーには手続きを踏んでいただいた上で、システムにログインすることもできるようにしていますが、まずはAdobe Experience Cloudによってできることを知ってもらうのが目的です。Analysis WorkspaceのGUIが素晴らしく、定期的にユーザーにレポートを送る作業を自動化できるので、とても助かっています」(中島氏)

  • 三井不動産グループの各事業が持つデータ規模

    三井不動産グループの各事業が持つデータ規模

三井不動産グループは、長期経営方針「VISION 2025」の中で、「テクノロジーを活用し不動産業をイノベーションする」という目標を掲げている。Adobe Experience Cloudの導入によって得られたデータ活用への道筋もこのイノベーションに貢献する要素の一つだ。

「それを加速させていくためにも複数チャネルのデータをシステムに投入し、それによって得られる情報から何が汲み取れるのか、今より詳細な情報を導き出すのが直近の目標です。なるべく大きなシナジーが生まれるようなデータがたくさん出てくるとうれしいですね」と中島氏は最後に語ってくれた。今後も三井不動産グループの活躍に注目していきたい。

[PR]提供: アドビシステムズ