Maxim Integratedは6月11日、マイクロスピーカーに向けてDSM(Dynamic Speaker Management)機能を搭載したスマートアンプ「MAX98390」を発表した。

マイクロスピーカーは、既に様々な場所で利用されている。スマートフォンやタブレットのみならず、音声応答システムを搭載したスマート○○と称されるものの大半には、スマートスピーカーが搭載されるケースが増加している。

  •  図1:スマートスピーカーを搭載するアプリケーション例

    図1:スマートスピーカーを搭載するアプリケーション例

従来のマイクロスピーカーが抱える問題とDSM

このマイクロスピーカーは、「体積に限りがある」、「音質よりコスト重視」といったケースではピエゾ素子が使用されることもあるが、「ある程度の音質が必要」というケースでは、ボイスコイルを利用したいわゆる「一般的な」スピーカーの構造を取っている(図2)。

  • 図2:マイクロスピーカーの概略図。こうした製品の外寸は1cm未満ということも珍しくない小さなものである

    図2:マイクロスピーカーの概略図。こうした製品の外寸は1cm未満ということも珍しくない小さなものである

「一般的な」といっても、やはり寸法が小さいから絶対的な音量は控えめになるし、またダイアフラムの面積が小さくなるため低音が出にくくなる。多くの場合、1KHzあたりが再生できる下限であり、もちろん本格的な音楽鑑賞向けのスピーカーではないとはいえ、やや物足りなさを感じる部分である。

こうした問題に対してのMaximの解がDSMである。マイクロスピーカー向けに低音域まで再生範囲を広げると共に、駆動電圧を引き上げる事でSPL(音圧レベル)を引き上げられる、というものだ。このDSMの効果は、耳で聞いていただくのが早いかと思う。 Maxim自身によるDSMの開発キットのビデオの10:30過ぎから、DSMのオンオフでどう再生音が変わるか、を実演している。

  •  図3:DSMの概念図。共振周波数の1/4の周波数あたりまで再生域を拡張できる

    図3:DSMの概念図。共振周波数の1/4の周波数あたりまで再生域を拡張できる

しかし、これを実現するためにはいくつかの問題もある。まずはボイスコイルの過熱防止だ。なにしろマイクロスピーカーに搭載されるボイスコイルは非常に小さいため、オーバードライブしていると発熱が酷くなり、スピーカーを損傷しかねない。温度管理を厳密に行い、過熱気味ならオーバードライブを抑える必要がある。

またDSMでは10VのClass Dアンプを搭載するが、小型電子機器でこの10Vを生成するには外付け回路が必要になる。しかし、スピーカーそのものも多数のメーカーから様々な種類が用意されており、各々の特性が微妙に異なるため、利用するスピーカーへの“最適化”の作業も必須である。さらに、携帯機器などに使われることも多いため、省電力性も要求される。

過熱防止と省電力を実現

こうした問題をまとめて解決するのがMAX98390だ。図4がMAX98390の内部ブロック図であるが、まずボイスコイルの過熱防止は、搭載されたI/V検出で常時ボイスコイルの状況を監視、温度上昇などで抵抗値が上がったらすぐさまこれを検出して負荷を下げるなどの対処を行う。直接温度を測定するわけではないが、基本銅線のボイスコイルだけに高い精度で検出できるようになっている。

  •  図4:DSM内部のDSPは、アルゴリズムそのものはMaximから提供されており、パラメータのみの設定で完了する仕組みである

    図4:DSM内部のDSPは、アルゴリズムそのものはMaximから提供されており、パラメータのみの設定で完了する仕組みである

そしてバッテリーの最小入力電圧2.65Vから0.125Vステップで6.5V~10Vの範囲まで昇圧する回路も内蔵されているので、外付けの昇圧回路も必要ない。またDSMには固定小数点DSPが内蔵されており、この動作パラメータを決めるレジスタマップを設定することで、スピーカー駆動の“最適化”も容易に行える。そしてDSM内部のDSPを固定機能とすることで消費電力を可能な限り下げており、スピーカー4Ω、IV検出、DSP、Power Gatingなどの機能がイネーブルされた状態のIDVDD自己消費電流は2.8mAまで抑えることが可能だ。

さらにピーク効率86%のD級アンプやPerceptual Power Reduction(可聴範囲外の周波数成分についてはフィルタ処理する省電力機能:図5)の搭載で、最大25%の消費電力削減が可能となり、バッテリ寿命延伸に貢献する。

  • 図5:PPRの概念図。例えば「音量が小さい時は低音をスルーする」、「音量が大きくなったら低音をカットする」といった細かな調整も可能となっている

    図5:PPRの概念図。例えば「音量が小さい時は低音をスルーする」、「音量が大きくなったら低音をカットする」といった細かな調整も可能となっている

最適化への施策期間短縮に貢献

なお上述で、スピーカーへの“最適化”と書いたが、実はこの作業が結構手間である。というのはスピーカー毎に共振周波数や特性を調べるためには、「スピーカーへの入力信号を変化させながらレーザープローブでダイアフラムの状態を確認する」という作業が必要なためだ。もちろん最終製品の設計の際にはこの作業は欠かせないが、PoCのために数十種類のスピーカーを都度評価していてはコストと期間の両方で負荷が大きい。

そこでMAX98390には簡易的ではあるが、耳を利用してこの特性を簡単に調べられる機能が搭載されており、試作期間の短縮に貢献する。

もう一つMAX98390の利点として挙げられるのは、テスト機能が搭載されていることだ(図6)。図4に記載されているI/V検出機能を利用して常時ボイスコイルの状況を確認できるので、事前のスクリーニングや出荷後のトラブルの問題点切り分けなどが簡単になるのは、製品のサポートの大きな助けとなるだろう。

  • 図6:量産過程では、MAX98390の機能を使ってボイスコイルの抵抗(Rdc)を測定することで、出荷前に不良スピーカーを検出できる。

    図6:量産過程では、MAX98390の機能を使ってボイスコイルの抵抗(Rdc)を測定することで、出荷前に不良スピーカーを検出できる。また出荷後もやはりMAX98390を利用して、不具合の詳細を特定しやすく、これはQAやRMAの手間の軽減につながる

MAX98390でマイクロスピーカーに差別化を

開発に関して言えば、MAX98390と併せて提供されるDSM Sound Studio(図7)を利用することで、DSMの設定に必要なレジスタマップの設定やその評価などを簡単に行う事が可能になっている。

  •  図7:DSM Sound Studioのトップ画面。右端の"Link to Maxim DSM Laser Characterization"が先に説明した、レーザープローブを利用しての評価を行うための手続きへのリンクと

    図7:DSM Sound Studioのトップ画面。右端の"Link to Maxim DSM Laser Characterization"が先に説明した、レーザープローブを利用しての評価を行うための手続きへのリンクとなる

既に提供開始中の開発キットであるMAX98390EVSYS(図8)には必要なものが全て用意されており、後は開発用のPCを一台準備するだけですぐに作業を開始できるという手軽さも大きなポイントである。

  • 図8:左の基板にMAX98390が搭載されている。右はスピーカー評価ボード。(左)この他にMAX98390が搭載されるAudio Interface Board IIIが付属する(右)なる
  • 図8:左の基板にMAX98390が搭載されている。右はスピーカー評価ボード。(左)この他にMAX98390が搭載されるAudio Interface Board IIIが付属する(右)なる
  • 図8:左の基板にMAX98390が搭載されている。右はスピーカー評価ボード。(左)この他にMAX98390が搭載されるAudio Interface Board IIIが付属する(右)なる

最初のスライド(図1)にも出てきたが、マイクロスピーカーが利用されるマーケットは急速に広がりつつあり、この結果としてマイクロスピーカーを利用しての差別化が求められるシーンも増えてきた。こうしたシーンに迅速に応えるために、MAX98390は有用なソリューションになりえるだろう。

[PR]提供: マキシム・インテグレーテッド