デジタルトランスフォーメーション(DX)時代、あらゆること・ものがデータ化されることで、生活もビジネスも大きく、そして急速に変化を遂げている。この急流の中を生き残っていくために、今、企業が行うべきこととは何なのだろうか。―― 先頃、その国際競争力や革新性が評価され、米Fortune誌の「世界で最も賞賛される企業」の1社に選出された、富士通のシニアエバンジェリスト、及川 洋光氏に話を聞いた。

  • 富士通 シニアエバンジェリスト 及川 洋光氏

    富士通 シニアエバンジェリスト 及川 洋光氏

「ありたい姿」を描く、デザイン思考からスタートする

及川氏はDXを「最先端ICT技術を活用して新たな価値を生み出し、ビジネスにデジタル革新を起こすこと」と定義し、各国が国策として推進するほどの大きな波だと説明する。

「ドイツではIndustrie4.0、中国では中国製造2025のように、経済大国となることを目指した国策が中心ですが、日本政府が打ち出しているDX推進策、『Society5.0』には、その他に少子高齢化や自然災害対策などの社会的問題視点も含まれているのが特徴です」(及川氏)

政府広報がWebで公開しているSociety5.0の紹介映像(*)には、「こんな風になったら便利だろう/楽だろう」という視点から、ドローン宅配・AI家電・遠隔診療・スマート農業・無人走行バスなどが現実化した日常が描かれている。企業がDXに取り組む出発点は、この映像のように、まず「ありたい姿」を描くことにあると及川氏は言う。

「すぐには実現できなくても、5年先の『ありたい姿』を描き、その実現に向けてできるところから始めることが大切なのです」

* https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/

DX最新事例-1:現実世界をデータで再現する「デジタルツイン」

及川氏は、数年前に描かれた「ありたい姿」が実現された事例を、ふたつ紹介してくれた。ひとつ目は、世界で唯一の第5世代カラーフィルター・メーカーである中国の上海儀電だ。同社では現実の工場の建屋・設備・機器をすべてデータ化して「デジタルツイン(双子)」として再現している。

スタッフは画面表示される「デジタルツイン」工場を俯瞰したり、現場を歩くような視点で各機器の電力消費量やコンディション・データを見回ったりすることができる。以前は中央制御や集中監視と言えば、グラフでデータのみを表示するのが普通だったが、「デジタルツイン」を作成することで、例えば機器に異常が発生した場合は、それが実際の工場内のどこなのかを直感的に判断でき、スピーディな対処や改善検討が可能になるという。

  • 実際の工場をすべて再現した「デジタルツイン」
  • 実際の工場をすべて再現した「デジタルツイン」
  • 実際の工場をすべて再現した「デジタルツイン」

もうひとつの例は、台湾で間もなく稼動する「スマートダム」だ。これはダムを精緻なグラフィックとして表示し、水位や、上流の河川からダムに流れ込む水量、下流の状態などをリアルタイムに見られるようにしたものだ。この画面から座標を指定してドローンを飛ばし、撮影した画像を送らせる機能も備わっており、地震や土砂崩れなどが発生した際には、作業員がダム本体まで行かなくても、施設の損害状況を確認することができる。

DX最新事例-2:xRを利用し、臨場感まで得られる「デジタルプレイス」

2019年、Amazonは「ARビュー」の提供を開始した。スマホのカメラを通じて表示させた風景に、Amazonが販売している家電・家具の3Dモデルを配置するサービスだ。実際のインテリアの中にその品物を置いたらどうなるのかを、購入前に知ることができるため、サイズやカラーの検討に役立てられる。

これまでエンターテインメントや医療など、特定の領域で注目を集めていたxR(VR、AR、MR)だが、このAmazonの例のように、今後はさまざまな分野で活用が進むことになる。富士通でもxRアプリの研究・開発が進められており、その切り口の一つが「デジタルプレイス」だ。

「例えば『デジタルツイン』によって、画面内に工場が忠実に表現されていても、現場に行って確認したいことは出てくるでしょう。だとしたら、離れた所にある現場をデジタルでリアルに再現できればいいのではないか、というのが『デジタルプレイス』の考え方です」(及川氏)

及川氏は、マイクロソフト社のヘッドマウントディスプレイ「Hololens(ホロレンズ)」を使ったデモで、「デジタルプレイス」を説明してくれた。Hololensでは、透過性のあるディスプレイにデジタル描画されたグラフィックと、現実の世界とが複合されて見える。

続けて及川氏は、現実の会議室の中にHololensで遠隔地にある工場をリアルタイムに表示させた。驚くのはその精細さで、表示を拡大したり視点を変えたりすると、工場内で動いている電子基板印刷機が印刷している回路まで、ハッキリと確認することができる。まさに現場が会議室にやってきたという印象だ。

Hololensをかけた複数メンバーでxR空間を共有すれば、その場は存在しないものを見ながら相談することも、アバターを使って遠隔地からミーティングに参加することも可能だ。

「工場にある海外製の装置について、そのメーカーの担当者と国内にいながら、不具合の状況を話し合うこともできますし、原発のように危険度の高い施設内を、あたかも現場にいるかのように見て回ることもできます」(及川氏)

さらに及川氏は、アニメに登場する「どこにでも行けるドア」を、xRで表現するデモも行ってくれた。Hololensに映し出されたドアを開けると、全く別の場所(デジタルで再現された作業現場や、工場内)が目の前にリアルサイズで拡がるというもので、臨場感すら感じられる。このどこにでも行ける不思議な「マジック・ドア」は、まさに映画やアニメの世界が現実のものになってきていることを実感する。

  • AR表示されたドアの向こうに、別の場所が拡がっているのが分かる

    AR表示されたドアの向こうに、別の場所が拡がっているのが分かる

その他にも、口頭で指示を出すことで、複数のアプリを操作したり、膨大なデータの中から必要なものを探し出したりしてくれる「デジタルアシスタント」や、画像や映像に写っているものを、リアルタイムにテキストデータ化する「AI画像認識」などを披露してくれた。

技術進化に追随するより、何を創りたいのかを考えることが重要

これらは現時点での最先端技術だが、ほんの数年あるいは数ヶ月先には、さらに新しい技術が生まれているだろう。だからこそ直近の技術を無理矢理使って、すぐに結果を引き出そうとするのではなく、5年先の「ありたい姿」を描き、それを創り上げていく意識が必要だと、及川氏は繰り返す。

「技術的な支援は、富士通にお任せください。我々はお客様と一緒に、5年先のビジネスを『共創』していきたいと考えているのです。必要なのはこれから“なに”を創っていきたいかを、デザイン思考することです」

先に挙げた上海のスマート工場や台湾のスマートダム以外にも、クラウド、AI、音響技術を組み合わせて新しいビジネスを生み出す「Sound Intelligence」(ヤマハとの共創)や、「EQ HOUSE」 (異業種4社との共創)など、富士通グループはデザイン思考で未来を共創するプロジェクトに多数参画している。

どこからDXに着手すべきか悩まれているのであれば、同社に相談してみることが、「ありたい姿」実現の近道となるかもしれない。

なお2019年7月9日に開催されるセミナー「これからのビジネスを変える デジタルトランスフォーメーション最前線」では、DX時代に向けた富士通グループのサービスが具体的に語られる他、本稿で紹介したxR技術のデモも行われる。最先端技術がどこまできているのかを実際に見てみたいという方は、参加されてみてはいかがだろう。

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