スマートフォンやタブレットといったスマートデバイスの普及は、コミュニケーションインフラとしてのネットの重要性を大きく高めた。この変化は、企業のコミュニケーション戦略にも影響を与えている。消費者は、実店舗やコールセンター、ダイレクトメールなどに加え、企業のWebサイトや電子メール、「LINE」「Twitter」「Facebook」といった多様なSNSサービスなどのチャネルを、用途やライフスタイルに応じて自由に使い分けるようになった。企業には、これらから得られる情報を含めた顧客にまつわるすべての情報を統合し、それぞれの顧客に最もふさわしいチャネルで、それぞれのニーズに合致する情報やサービスを提供する「オムニチャネル化」が求められている。

日本最大の衛星多チャンネル放送サービス「スカパー!」のカスタマーセンターを運営する、株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ(以下、SPCC)は、こうした変化に対応した「スマートコンタクトセンター」の実現を目指し、システム刷新を実施。その中心となるオムニチャネル対応の情報基盤として、Salesforceのカスタマーサポートサービス「Service Cloud」を導入すると共に、構築支援パートナーとして株式会社テラスカイを選定した。スマートコンタクトセンターの目指す姿や、Service Cloudの役割、構築パートナーとしてテラスカイを選定した理由などについて話を聞いた。

業務効率化と顧客満足度の向上を両立するための条件

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ 情報システム部 開発チーム チーム長 原田賢太郎氏

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ 情報システム部 開発チーム チーム長 原田賢太郎氏

SPCCの「スマートコンタクトセンタープロジェクト」は、コールセンター業務のデジタルシフトによって、オペレーター業務の改善と、サービス品質の向上を同時に実現するプロジェクトとして2017年度にスタートした。このプロジェクトにおいて、技術面で重要となった取り組みのひとつは、音声に加え、それ以外の多様なチャネルから得られる情報を統合管理できる「オムニチャネル対応基盤」の構築だった。

SPCCでは、300万人以上におよぶ「スカパー!」の顧客情報を管理する「ALICE」と呼ばれる基幹業務システムを、2014年より運用している。これは、コールセンター向けの業務システムとして、オンプレミスで独自に構築したものだったが、基幹データベースとフロント業務システムとが密接に結びついた構造となっており、オムニチャネル対応や、スピーディーな機能の改善・追加などが難しいといった課題を抱えていた。

「迅速なオムニチャネル対応、今後の継続的な改善を実現していくにあたっては、これまで業務全体を単独で担っていたALICEから、まずフロントエンド部分を切り出し、別のシステムとして再構築することが必要だと考えました。また次期基幹システムは、契約情報のような業務の核となるデータのみを扱う、小規模かつシンプルなものにして、フロントを含む他のシステムと必要に応じて連携できるものにしたいという構想があります。そのための仕組みを確立しておくことも必要でした」と、SPCC 情報システム部 開発チーム チーム長の原田賢太郎氏は言う。

Service Cloudによるオムニチャネル基盤の構築実績が決め手

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ 情報システム部 部長 池田英男氏

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ 情報システム部 部長 池田英男氏

新たな情報基盤に求められた要件は、上述の2点、「オムニチャネル対応であること」「現基幹システムであるALICEとのデータ連携が可能であること」に加え、「クラウド化された音声基盤と連携して業務が可能であること」など、多岐にわたった。また導入や開発、将来的な運用管理コストの削減を考え、有力な選択肢として浮上したのがService Cloudだった。

「今回のシステム刷新にあたって、6社ほどのベンダーに要求仕様を見てもらったのですが、そのほとんどで、Service Cloudと某大手ITベンダーのクラウドサービスが提案されました。実質的な二者択一になったのですが、オムニチャネルに対応していた点や、カスタマイズ可能なSaaSであり、開発工数の大幅な削減が見込めるという点で、Service Cloudを選択しました」と、同部 部長の池田英男氏は言う。

また、Service Cloudの採用にあたっては、構築パートナーに選定したテラスカイの存在も大きかったという。

「われわれのRFPには、Service Cloudとオンプレミスの基幹システムとの連携についても含まれていたのですが、他社がその部分をあいまいに提案してきたのに比べて、テラスカイの提案内容は非常に具体的で好感が持てました。テラスカイは、Service Cloudによるオムニチャネル基盤の構築に実績がありましたので、そのノウハウを活用してもらえることも期待し、基盤部分のパートナーとして選定しました」(池田氏)

SaaSのメリットを活かし開発工数とコストを削減

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ 情報システム部 開発チーム 望月丈充氏

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ 情報システム部 開発チーム 望月丈充氏

コンタクトセンタープロジェクトは、テラスカイのみならず、音声基盤やAI技術など、さまざまな得意分野を持つベンダーと共同で進められており、現在も進行中だ。その基礎となる、Service Cloudによるオムニチャネル基盤の構築は、2017年5月にスタートし、段階を分けて進めていった。

第1フェーズである「ステップ1.0」では、Service Cloudの導入と業務に合ったフロントエンドのシステム開発、「ステップ2.0」では、音声基盤の統合に加え、顧客への応対履歴データの一元管理、LINEを利用したアンケート機能の実装などを順次行い、2018年末にカットオーバーした。

「開発にあたって、スピード感とコスト管理はかなり強く意識していました」と語るのは、同部 開発チームに所属する望月丈充氏だ。

「これまでのフロントエンドをそのままクラウドに移行するのではなく、SaaSであるService Cloudの標準機能をできる限り活かすことで、スピードとコストの両面で最大限のメリットが得られるよう心がけました。ただ、それをやろうとすると、基本設計書と実装された機能との乖離をどのように埋めていくかについて、多くの決断が必要になります。われわれの要望に近づけるための機能修正や追加開発をいかに進めるかについては、テラスカイとも話し合いながら、優先順位を付けて作業していきました」(望月氏)

開発中には、Service Cloud独自の技術的な課題にもいくつか直面した。例えば、SPCCでは、コールセンターで問い合わせを受け付けた顧客に対し、別途、LINEによるNPS(顧客ロイヤルティ分析)アンケートを送信している。このアンケートの送信対象者をデータベースから抽出する機能が、当初非常に重く、要求を満たせなかったという。

「テラスカイに相談したところ、Service Cloud内での処理状況を分析し、特に負荷の高い部分を分割して実装することで、実用的なパフォーマンスを得ることができました」(望月氏)

顧客のチャネル活用に変化、業務効率の向上にも期待

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ サービス設計部 SCC推進チーム チーム長 前田護氏

株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ サービス設計部 SCC推進チーム チーム長 前田護氏

Service Cloudによる新情報基盤の「ステップ2.0」は、2019年2月20日にリリースされた。コールセンターシステムのフロントエンドは、現場のコミュニケーターにとっては、日々利用する業務システムである。使い勝手が変わることによる業務効率の一時的な低下が懸念されたが、結果的に「想定の範囲内にとどまった」という。

同社 サービス設計部 SCC推進チーム チーム長の前田護氏は、「想定していたことですが、新システムへの切り替え直後は、AHT(Average Handling Time、コミュニケーターが顧客からの問い合わせを処理する時間の平均値)が以前に比べて、若干上昇しました。しかし、数日で導入以前と同じ水準に戻ったことが数値的に確認できました。機能としては、オムニチャネルでの対応履歴を以前よりも容易に追跡できるようになっていますので、今後コミュニケーターが新しいUIに慣れ、操作に関わる機能を改善していくことによって、業務効率の向上にもつながっていくと考えています」と言う。

新システムの稼働により、顧客のチャネル活用の動向には明らかな変化が出てきているという。SPCCでは、オムニチャネル対応に合わせて、番組表やFAQのような定型的な顧客からの問い合わせを、「電話」から「LINE」や「Webサイト」上の情報へと誘導する施策(Call To SMS)などを展開している。その結果、SPCC LINEアカウントの「お友達」登録者数は、1年前の3.9万IDから、9.1万IDへと2倍以上に増加。スカパー!のユーザーページである「Myスカパー!」と「LINE ID」との連携機能も、2万ユーザーが利用するなど、急速な勢いで伸びている。

「結果的に、LINEなどのノンボイスチャネルが問い合わせに利用される比率は、1年前の2.6%から、4.7%にまで拡大しました。電話だけでなく、Webサイト、LINEなど、多数のチャネルが活用されるようになっており、お客様とのオムニチャネルでのコミュニケーションと、それに伴うコールセンター業務の効率化が進んでいます」(原田氏)

情報システム部の視点で見ると、運用開始時のトラブルが少なかったことも、Service Cloudを採用したメリットのひとつと捉えている。

「独自開発のシステムをオンプレミスでリリースする際には、リリース直後の不具合対応にかなりの工数と神経を使っていました。不具合が発生すると、システム担当者が真夜中に電話で起こされるようなことも度々あったのですが、今回、Service Cloudに切り替えた際には、致命的な不具合も出ず、スムーズに移行ができたと実感しています」(池田氏)

新たな情報基盤で顧客コミュニケーションの「最適解」を模索

スマートコンタクトセンタープロジェクトは、現在も進行中だ。続く「ステップ3.0」では、2.0で構築したフロントシステムの改善と合わせて、ALICEに変わる次期基幹システムを見据えた、サービスの構造改革と顧客コミュニケーションのあり方を模索していきたいとしている。

「フロントシステムの改善」においては、顧客がいつ、どのチャネルを使って、どんなアクションを起こしたかを客観的に把握し、顧客との関係をより向上させる企業側のアクションへとつなげていく施策を検討していく。

また、「サービスの構造改革」では、企業が顧客と向き合う上で適正なサービスとはどのようなものなのか、それを実現するために必要なシステムはどのようなものかを再検討することで、よりシンプルな基幹システムと、効果的なフロントシステムの連携のあり方を、効果を測定しつつ探っていく予定だ。

スマートコンタクトセンターの実現に向け、SPCCでは今後もテラスカイのService Cloudに関する技術力とノウハウに強く期待をしているという。

「SPCCとテラスカイで構築した新たな情報基盤について、今後は少しずつ社内の担当者にも技術転移をしながら、よりスピーディーな機能改善、改修などを行える体制を作っていこうと考えています。ただ、一枚岩として作られた基幹業務システムのフロント部分を、今回のような形で徐々にクラウドに移していくというのは、あまり前例のないチャレンジでもあります。テラスカイには、そうした事例の紹介や、技術ノウハウの共有、蓄積という観点でも、引き続きパートナーとして協力してほしいと考えています」(池田氏)

  • スマートコンタクトセンターの構成

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