声優としてアニメ「ドラえもん」でジャイアンの声を務めているほか、ナレーションや舞台など幅広く活躍している木村昴さん。そんな彼のこれまでの人生についてお話を伺った本記事。

前編では彼の軸となっている家族や“ラップの存在”について紹介したが、それに続きここでは、14歳のジャイアンが誕生するまでとそこからの葛藤。そして、話題のヒプノシスマイク・山田一郎としての活動についてのお話を聞いた。

また、最後にはSpotifyで木村さんオリジナルプレイリストの楽しみ方についても紹介しているので、ぜひそちらもチェックしてみてほしい。

“14歳のジャイアン”が誕生した瞬間

※前編の続きからお話を紹介してまいります
前編の内容はこちらよりご確認ください→→→[前編の記事をチェックする]

――木村さんの人生を大きく左右することになった、「ジャイアン」の存在。ジャイアン役に抜擢されたのは、自分でも思いがけないような展開でしたか?

はい。僕としては友達に自慢したいだけだから、自宅でMDに自分の声を吹き込んで、ポストに投函。それだけでミッションコンプリートでした。そしたら、まさかの一次合格を頂いて、「次は実際に審査員の前でやっていただきます」と連絡が来て。もうアッチョンブリケですよ。

まず、声優のやり方がわからない。アニメを見たことがありませんからね。何をどう準備すればいいかもわからないんです。当時のマネージャーも児童劇団の人でしたから、声優のオーディションはよくわからなくて、とにかく行ってみよう!と。

――そんなところからのスタートだったんですね! 驚きです。

ただ、それまで子役のオーディションしか受けたことがなかったので、その先入観で競う相手は同じ子どもだと思っていたんです。

しかし、いざ審査が始まる頃に集まった人たちをみて、やっと子どもは自分ひとりということを知り……。「えっ、この会場にいた大人たちもみんなジャイアン?」って驚くわけです(笑)。

その瞬間はやっぱり、「大人との競い方なんてわからない!」って怖くなりました。こういったタイプのグループオーディションも初めてだったので、“自分なりのジャイアン”を考えてはいましたが、他の人のをいろいろ聞いているうちに、「それもいい~!」「そうきたか~!」ってなってきて、事前に考えてきたプランもブレブレになって……。

ただ、その一方で、だんだんと「この状況、凄くね?」って燃えてきた自分もいて。書類を事務所に送るだけで、ミッションコンプリートだったはずが、「この人たちに勝ちたい」という思いが湧いてきたんです。

――緊張感の中で、闘志に火がついたんですね。

審査員の方は、声だけで判断をしていたそうで、その会場に来るまで年齢や経歴を伏せられていたんですね。だから、僕の順番が来て「木村昴、14歳です」って言った途端、それこそアニメのように「えー!」ってリアクションがありました(笑)。

ここで悔いを残しちゃいけない、やるだけやってダメならしょうがない、と無我夢中で……「待てー、のび太~!」って言いながら、走り回ったんですよ、僕(笑)。そしたら「あっ木村くん、マイクの前で動かないでやるんだよ」って教えてくれて「勉強になります!」なんて答えて。

後で聞いたら「あんな人初めて見た(笑)。でも、ジャイアンに見えたんだよね」っていってくれました。ジャイアンから、僕の声優としての人生が始まったんです。

――審査員の方も驚いたでしょうね。ジャイアン役を実際に演じてみてからはどうでしたか? 人気なアニメなだけに、その重圧も大きかったんじゃないかと思うのですが……。

そうですね。声優としてデビューしドラえもんという作品に携わる中で、作品を傷つけるようなことはあってはならないと思いました。友人からもジャイアンと呼ばれ、後輩からもジャイアン先輩と呼ばれ、ジャイアンと二人三脚というか、ジャイアンとして生きていく覚悟もできたんです。

なので、とにかく未成年のうちは、お酒とたばことは無縁の生活で。自分がやらないことは当然ですが、横に置いてあってもダメ。それは成人してからも、ジャイアンとして生きる以上、イメージを壊さないためにダメなことはたくさんありました。

ただ、ずっとラップは好きでしたし、自分でリリックを書いたりもしていて。ジャイアンとして生きる中で、いい塩梅のところがなく……みんなにずっと内緒にしていました。それこそ、ライブハウスに聞きに行くのもコソコソしてましたね(笑)

こんな巧い話があっていいのか、と思いました

――最近では、ラップソングプロジェクト「ヒプノシスマイク」の山田一郎のCVなど、声優としての活動の幅を広げていらっしゃいます。ラップ好きの木村さんにとっては願ったりかなったりのお仕事ですね。

はい。ラップが世間的に盛り上がってきて、フリースタイルダンジョンが話題になっている時も「ラップはずーっとカッコいいし、ずーっとスゲーのにいまさら何を言ってんだ!」なんて思ってましたね。自分が表立って楽しめない、悔しまぎれに(笑)。

だから、ヒプノシスマイクのお話をいただいたときに、耳を疑いました。「マジ、いいんですか?」って。「声優×ラップ」、自分のやりたい両方を仕事としてできる。こんな巧い話があっていいのか、と。

――ラップ好きを公言できるようになりますし、リリックも書いていいと言われるし。

そうなんですよ! 僕がCVをやっている山田一郎のソロ曲、書いてみませんか?って言われたときにも「嘘でしょ?」ってなりました。ラップ好きではありましたけど、プロを前にしてそんなそんな、って。

でも、僕の作ったものを見たことがあるわけでもないプロデューサーさんがそう言ってくれているのは、根拠はないのかもしれないけど、信頼してくれている感じがしたんですよ。軽いノリとかじゃなく、その熱や温度が嬉しくて。

なのでそれに、応えたくなりました。小さい時からずっと好きでやっていたものが、どこまで通用するのか試してみたい、という気持ちもあったと思います。本当に、感謝してもしきれないです。

――4月にはフルアルバムがリリースされますし、ヒプノシスマイクで大きなムーブメントが起こっていますね。

ありがたいですね。声優としてラップミュージックに本気で乗り込む、そういう熱を持ったプロジェクトは初めてだったので。ラップを初めてやる声優にとってはプロに劣るところはあるかもしれないし、ラップはフェイクを嫌うカルチャーで、自らをリアルに表現するもの。

僕ら声優には自分を表現するほどのメッセージは持ち合わせていないかもしれないけれど、僕らにはキャラクターがいるんです。そのキャラクターに魂を込めるプロなんです。ラッパーは自分のストーリーに魂を込めるのと同様に、キャラクターの魂を表現する。そこはある種平等なんじゃないかとも思えてきます。

そして、リリックの持つ説得性を“表現する力”については、声優はラッパーさんたちにも負ける気がしない。そこが唯一太刀打ちできるところですね。CDリリースやゲーム化など決まっていることはいっぱいありますが、ヒプノシスマイクとしてゴールを決めずに行けるところまで行きたいですね。

――本当に、ヒプノシスマイクは、木村さんの声優としてのキャリアと、木村昴個人としての好きなものが合わさったプロジェクトのように感じます。

今回もそうですけど、声優になったときも、ミュージカルに出会ったときも、日本に来たときも、本当に、「マジ人生何があるかわからない」って思いますね。

やってきて、無駄だったことはなくて。小さい頃から好きだったもの、見てきたものがこういう形でひとつになった気がして、自分のライフスタイルに充実感を覚えているところです。

――そこには、いろいろなミッションを与えてくれて来たお母さまの教えが生きてるのかもしれませんね。

確かに「できますか?」って聞かれて、「できません」って答えるのは、僕にはなくて。試されているというか、チャンスがあった時に、やってやろうっていう気持ちは何事にもあるんですよね。

最近だと、僕の声優の師匠である関智一さんが落語をやるんですが、その関さんの落語のお師匠さんが僕にもやってみない?と声をかけてくださって。それも、やってみよう!という気持ちになってます。

木村昴さん選曲のオリジナルプレイリストを紹介

――そちらも楽しみです! さて、そんなラップ好きの木村さんに「散歩するときに聞く曲」として、Spotifyのプレイリストを作っていただきました。セレクトの理由などもお聞かせください。

僕は、歩いてるときにだいたい音楽を聴いていて、むしろ音楽を聴くために歩くこともあるくらいなんですよ。だから選んだのはすべて、僕が歩いているときのテンポにちょうどいい曲。

「Changes feat.JJJ - STUTS」は、午前中から昼くらいに聞きながら歩くと気持ちいいんですよ。「チャレンジャー feat.J-REXX-GADORO」は新しい曲なんですが、「久々にヤバいの来た!」と思っていて。サビのところのビートに合わせて歩くのが非常に気持ちいいんです。リリックに合わせて動いたりね(笑)。

「On and on - OZROSAURUS」は日本ではレジェンダリー・ラッパーで、この曲も歩幅に合うんですよ。8ビートの一番気持ちいい速度だと思います。リリックも進んでいこうっていうニュアンスなので、気持ちがポジティブになっていきますね。

「チャレンジャー」は仕事に行く前のやってやるぜ、な感じ。「On and on」は仕事終わりに聞くのが気持ちいいですね。ここからさらにどうする俺? みたいな。そういう意味では「Changes~」はオールマイティですね。

――歩いているときのシチュエーションごとに合う曲があるんですね。

やっぱりありますね。次の「All Night - BIG BOI」も、数年前のCMで話題になった曲で、サウンドがゴキゲンですし、ちょっとテンポもゆったり目なので、日差しがある時間帯でちょっと余裕がある時にピッタリだと思います。

逆にちょっと急いでるときには「Friday Night - YOUNG GUNZ」。多分今まで選んだ曲の中で一番BPMが早いんですけど、自分が気持ちいい速度よりもちょっと上なので、急かされている感じになるんです。

それでいてビートがシンプルなので、うまい具合に自分のテンションがあげられます。今回のプレイリストには入れてないんですが、究極に時間がヤバい時は「B.O.B.- OutKast」ですね。めっちゃ早いんですよ(笑)

――それもまたチェックしておきます(笑)

続いて「Good Life feat.T-Pain - Kanye West」ですが、Kanye Westって僕の中ですごくカラフルなイメージなんですよ。この曲を聴いていると、頭の中にそういうカラフルな色が浮かんできて、ゴキゲンになれるんですよね。

「Loyal feat. Lil wayn, Tyga - Chris Brown」は夜に歩いているとき。ちょいワルい感じで、街のネオンとか、新しい服来て街に繰り出すとか、そういうワクワク感ですね。基本的にどの曲もスネアのキックが歩くスピードに気持ちいいんですけど、この曲は特にですね。

「Finesse(Rimix) - Bruno Mars」は、オリジナルもあるんですけど、このリミックスが好きで。Bruno Marsも電飾ビカビカのゴキゲンサウンドのイメージがあると思うんですけど、この曲はこれから街に繰り出す、ちょっとスターな気分ですね。

なんていうんだろう、みんなでワイワイしたりパーティしたいな、って気分になりますね。

――このプレイリストで、木村さんの一日の流れが見えてきそうです(笑)

自分のライフスタイルの中のプレイリストっていっぱいあるんですよ。この8曲は迷いましたね。300曲は出せますから! ラップだけじゃなく、いろいろなジャンルで、ってなれば無限に出せますよ! 落ち込んだ時、失恋、今から告白に行くとき……なんでもOKですから。

――そんなに! そちらにも興味はありますが、次の機会を楽しみに、まずはこの8曲を楽しみたいと思います(笑)。本日はありがとうございました!

※木村昴さんチョイス曲をシーン別にチェック!
・お昼間くらいのゆったりとした時間帯には……「Changes feat.JJJ - STUTS」
・仕事に行く前には……「チャレンジャー feat.J-REXX-GADORO」
・仕事終わりには……「On and on - OZROSAURUS」
・明るい時間帯にちょっとゆっくりとしたい時には……「All Night - BIG BOI」
・急いでるときには……「Friday Night - YOUNG GUNZ」
・めちゃくちゃ急いでいるときには……「B.O.B.- OutKast」
・気分をあげたいときには……「Good Life feat.T-Pain - Kanye West」
・夜、街なかを歩いているときには……「Loyal feat. Lil wayn, Tyga - Chris Brown」
・仕事終わりのこれから遊びに行くぞというときには……「Finesse(Rimix) - Bruno Mars」

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