昨年、デビューから20年を迎え、自身初となる原画展の開催や同業である鳥飼茜氏との結婚など、公私ともに注目が集まっている漫画家・浅野いにお氏

  • 浅野いにお(あさの・いにお)
    1980年生まれ、茨城県出身。代表作に『ソラニン』(週刊ヤングサンデー/小学館)、『おやすみプンプン』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)など。現在は『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(週刊ビッグコミックスピリッツ/小学館)を連載中

「画業20周年記念企画 浅野いにおの世界展〜Ctrl+T2〜」(2018年12月21日~2019年1月14日)で行われたトークショーでは浅野氏自らが登壇し、普段から愛用しているマウスコンピューターのクリエイター向けPC「DAIV」を操作しながら、デジタルを用いた作画手法について解説した。会場にはクリエイターや漫画家を志す人も多く集まり、熱のこもった質問が次々と飛び出していたのが印象的だった。

そこで今回は、トークショーでは聞けなかった「浅野いにお氏に聞きたい漫画制作のいろは」をTwitterで募集。集まった質問への回答を、インタビューとともにお伝えしよう。
また、直近で「DAIV」の新しいモデルを購入したという浅野氏に、買い替えを決意したきっかけや、以前と比較して変わった点・良くなった点についても聞いてみた。

  • インタビューの様子は、浅野氏の愛猫・うなぎちゃんもじっと見守っていた


その1:ストーリーの構成について

はじめに、作品の根幹を担うといっても過言ではない、ストーリーへの質問から。

作品を作る際、最初にストーリーを考えますか? それともキャラクターや街の設定ですか? 描いている最中にストーリーを変えることはありますか?(PN:デデデデ大好き)


浅野氏:漫画をつくるとき、僕が一番大切にしているのは「作品のコンセプト」です。ストーリーやキャラ設定というのはあくまでその次で、ターゲットとなる読者層はどこなのか、描こうとしているジャンルはラブコメなのか、それともサスペンスなのか。長い連載になればなるほど、そういう“骨になる部分”にブレがないことが大切かなと。

漫画には、“王道”というものがあります。たとえば、「転校初日に道でヒロインとぶつかって恋に落ちる」とか「平穏な日常を脅かす敵が突然現れる」とか、大筋の展開は昔から変わっていない。そこで、“王道”を自分らしくアレンジしたらどういった表現になるのか、と考えて取り込むことが、独自性だと思っています。

ちなみに『おやすみプンプン』は、「主人公が20歳を迎えるまでの成長を描く」というのがコンセプトでした。話を進めるなかで、細かい変更などはありましたが、大枠は変わっていません。2巻あたりでは、ヒロインの愛子が死ぬことも既に決まっていましたね。

  • 『おやすみプンプン』(C)浅野いにお/小学館

――浅野先生ならではの「作品の魅せ方」、ひいては「俯瞰的な売り出し方」というのは、意識されたうえなのでしょうか?

浅野氏:そういった考えがないといえば嘘になりますね。「その作品のイメージとなるようなキーアイテムは必ず入れておけ」と、新人のときに言われていました。なので、いままでの作品にはいやらしくない程度ですが、マスコットキャラクターが登場しています。

  • 浅野氏「『ソラニン』にはバンド「ROTTI」のウサギ、『デデデデ』にはイソベやん、『おやすみプンプン』は本人がそのままマスコットです」
    (左)『ソラニン』(C)浅野いにお/小学館 (中央)『おやすみプンプン』(C)浅野いにお/小学館 (右)『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

あとは、「パッケージを意識しろ」というのもこれまた言われてきたことです。自分の作品をどうやって出版社に売り込んでいくか、どのようにプレゼンテーションしていくか、というのも、これからの漫画家には必要なファクトとなると思います。


短編のネーム作りを進める際のコツや気をつけていること、長編との差があれば教えて頂きたいです。(PN:TACORICE88)
オチのつけ方がよくないと言われます。オチのつけ方のコツがあれば教えていただきたいです。(PN:ひめここさん)


浅野氏:一番大きく違うのは、連載(長編)は一度世に出してしまうと取り返せないということ。それに対して読み切り(短編)は、いくらでもやり直したり、完成度を高めたりできるわけです。

オチのつけ方がわからない、というのも絶妙に関係していて。「オチ」とはいうものの、ギャグ漫画のような「はい、チャンチャン♪」といった上手な終わり方を求めているわけではないんです。

物語のカタルシスはあくまで「主人公の成長」であり、何をもって落としどころにするかは、簡単にいえば冒頭に貼った伏線を回収すること。起承転結でいうところの「起」と「結」が決まれば、あとはその過程を面白く、ドラマティックに描くことで、最終的には伏線へと戻る“円環構造”になる。それを意識するだけで、短編、長編問わず「オチのある話」になると思います。もちろんその根底にあるのは、「作品のコンセプトは何か」ということになりますね。


その2:キャラクターについて

個性的なキャラクターが多く登場する浅野先生の作品。そのキャラクターメイキングに興味を持つ人も少なくないようだ。

先生のキャラクターはどれも魅力的ですが、実在するモデルなどがいたりするのでしょうか?(PN:シュウカツセイさん)
キャラ設定を考える際にどのようなことを行ってらっしゃいますか?(PN:ももひきさん)


浅野氏:昔は実在の人物をモデルにしていたのですが、最近はありませんね。そんなに交友範囲が広いわけでもないので(笑)。『デデデデ』の登場人物は、「インターネットによくいる感じのキャラ」とカテゴライズして、それぞれをキャラクターに落とし込みました。

キャラクターをつくる際は、「それぞれが重複してないか」というのが自分のなかで一定のルールになっています。たとえば『デデデデ』のメイン5人は、目や鼻だけ抜き出しても誰だかわかるように描きわけています。

  • 『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館

あと、全体のバランスは意識していますね。登場人物は日本人とはいえ、全員がベタ髪だとおかしいので、誰を白にして誰をトーンにするのか、とか。また、制服の着方にもそれぞれの性格が現れていると思います。わざわざ説明するほどのことではありませんが、視覚的に入ることで“そのキャラクターらしさ”がしっくりくるといいなと。

  • 『デデデデ』の5人では、おんたんのみ胸元にリボンがついていない
    『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(C)浅野いにお/小学館