人々が健康に暮らしていくために欠かせない医薬品。

現在、日本全国に流通している医療用医薬品(医師の処方箋に基づく医薬品)は、一万数千種。これらを「必要な時に、必要な場所へ、必要な量を届ける」存在が医薬品卸企業である。なお日本国内において、医薬品が届けられる医療機関(病院、診療所、薬局など)の数は約25万カ所。これは、英国の約9倍、ドイツの約7.6倍にも及ぶ。ある面で、日本の健康と長寿を支えているのは、医薬品卸業界であると言っても過言ではないだろう。

しかし、日本の医薬品卸は他国とは異なり、薬を届けるだけではなく、医療機関にとって必要となる様々な役割も担っている。その一つが情報の提供と収集である。しかし、情報は全て揃ってはじめて社会に有意義なデータとなる。そのデータとなる前の情報を医薬品卸とは異なる第三者がこれまで集めていた。

この状況はどう考えても効率が悪い。医薬品卸自らが取扱い、データとして提供することが正しいと考えた。

このような考えを実現するために、国内医薬品卸企業19社が中心となり2012年に設立されたのが、医薬品に関する様々な情報を取り扱う「エンサイス株式会社」である。今回、日本の医薬品業界に革命をもたらす存在として大きな注目を集めているエンサイスの立ち上げから未来について、同社代表取締役社長兼CEO 木村仁氏、取締役COO 岩瀬滋彦氏にお話を聞いた。

エンサイス株式会社・木村氏、岩瀬氏に聞く
医薬品卸業界の「これまで」

「医療機関に医薬品を届ける存在、それが医薬品卸企業に所属するMS(マーケティング・スペシャリスト)たちです。全国各地に存在する医療機関へのMSの訪問活動を介して、”必要な時に、必要な場所へ、必要な量”の医薬品が人々へ届いています

エンサイス株式会社 代表取締役社長兼CEO 木村仁氏

MSによる訪問活動からは、大量の「医薬品に関する流通情報」が生まれる。どの医薬品が今どこにあり、どの医薬品が今どこで不足しているのか――この情報は「人の健康や命に関わる重要な情報」であり、社会にとって大変貴重なデータである。

「医療や医薬品にかかる原資は国民の方々から集められた社会保障費です。少子高齢化により、その財源はどんどん厳しくなっています。つまり、その原資をいかにフェアに分配し、効率的に活用するかが日本の大きな課題です。そのためには医薬品卸の持つ情報が大きな力を発揮します。そして、その情報はMSの絶え間ない日々の活動そのものです」

「ですので、医薬品卸が集う、社会のための情報会社が必要だと思っていました。そうすれば、コストも抑えられるし、その情報を活用して医薬品卸業界自身が新しいチャレンジに挑めるかもしれない。何より、医薬品業界を支えているMSに報いることができるはずだと。そう思っていた矢先、2011年3月、あの"東日本大震災"が発生したのです」