製品を調査し、構造を分析して再製造を可能にする「リバースエンジニアリング」が、3DスキャナーとCADソフトの発展によって大きく進化しようとしている。設計・製造ソリューション展(DMS)2019において、シーメンスとCREAFORMは3次元CADソフト「Solid Edge」(ソリッドエッジ)とハンディ3Dスキャナーを用いた3Dスキャンデータからのリバースエンジニアリングを紹介。新しいリバースエンジニアリングとはどのようなものなのか、その特徴を追っていきたい。

  • スキャンしたデータを「Solid Edge」でリバースエンジニアリング

    スキャンしたデータを「Solid Edge」でリバースエンジニアリング

DMS2019で喝采を浴びたシーメンスとCREAFORMのデモ

2019年2月6~8日にかけて行われたDMS2019において、シーメンスは「Solid Edge」を用いた3Dスキャンデータからのリバースエンジニアリングを紹介した。同イベントには、高度なポータブル3D測定装置の開発・製造・販売を行うCREAFORMも出展。互いのブースで連動したリバースエンジニアリングのデモを行ったシーメンスとCREAFORMは、来場者から大きな注目を集めた。

  • 2月6~8日に行われたDMS2019のシーメンスブース

    2月6~8日に行われたDMS2019のシーメンスブース

実物しか残っていないような昔の部品や、図面が存在しない製品。これらのリバースエンジニアリングには、いまだにノギスで測るようなアナログな手法が行われていることが多い。これを自動化し、かつどこでも行えるようにしたのが、CREAFORMのハンディ3Dスキャナーだ。PCと接続し、製品にレーザーを当てるだけでどこでもメッシュ(スキャン)データを作ることができる。

  • CREAFORMのハンディ3Dスキャナー「HandySCAN 3D」

    CREAFORMのハンディ3Dスキャナー「HandySCAN 3D」

だが、ハンディ3Dスキャナーで取り込まれたメッシュデータは、あくまで物体を外側からスキャンしているだけなので、表面の情報を持っているに過ぎない。3Dスキャンの代表的な需要である品質検査を目的とするなら、この段階で十分に役割を果たせるものになる。しかし、設計データとして取り扱い、有効な再利用をするには、このメッシュデータの中身を定義し、ソリッド(CAD)データにしなくてはならない。そのために、最終的にはこのメッシュデータを手作業でなぞるのがこれまでのやり方だった。

  • スキャンして取り込まれたメッシュデータをいかに使えるソリッドデータに変えるかがポイント

    スキャンして取り込まれたメッシュデータをいかに使えるソリッドデータに変えるかがポイント

メッシュデータからソリッドデータへの変換の部分が、ハンディ3DスキャナーとSolid Edgeを連携したときのポイントだ。円筒形の穴がいくつかあいた金属パーツのリバースエンジニアリング手順をもとに、詳しく説明していこう。

メッシュデータからソリッドデータへ仕上げていくプロセス

始めに行うことは、製品のスキャンだ。CREAFORMのハンディ3Dスキャナーを使って、さまざまな方向からレーザーを当てていくと、専用ソフト「VXelements」上に製品のメッシュデータができ上がっていく。人の目には面や円に見えるが、これらはあくまでポリゴンが集まったメッシュデータに過ぎず、基本的にCADソフトでは扱えない。このメッシュデータをSolid Edgeで編集し、ソリッドデータへと仕上げていこう。

  • ハンディ3Dスキャナーのレーザーを当て、メッシュデータ化していく様子

    ハンディ3Dスキャナーのレーザーを当て、メッシュデータ化していく様子

Solid Edgeで行う最初の作業は、メッシュデータの面を認識させること。まずSolid Edgeのスムージング機能を利用して表面を滑らかに加工する。その後、面の自動認識機能を使うと、メッシュの表面が色分けされる。今回のデータでは、黄色は平面、水色は円筒、青が円錐面、ピンクが自由曲面だ。

  • 表面を滑らかに加工したのち面を自動認識させると、メッシュの表面が色分けされる

    表面を滑らかに加工したのち面を自動認識させると、メッシュの表面が色分けされる

まず、色分けされた平面をCADで取り扱えるようにサーフェス化しよう。さまざまなやり方があるが、今回は平面を貼り付けていく方法をとった。Solid Edge上で色分けされた黄色の領域を選択すると、平面のサーフェスを自動で貼り付けてくれる。外周面をすべて指定すると、内部に閉空間が作成される。Solid Edgeではこの閉空間(サーフェスで囲まれた何もない空間)を自動的にソリッド化できる。これでベースとなる形状が生成される。

次に、ソリッド化されたベースモデルに対し穴あけを行う。やり方は一般的なCADソフトと同じで、スケッチを描いて押し出すという手順だ。ただし、Solid Edgeの機能である「抽出」を行うと、メッシュ領域からカンタンに曲面が抽出できるので、いちいちなぞって描く必要はない。

  • 平面として色分けされた部分にあわせ、サーフェスを貼り付けて全体像を作る

    平面として色分けされた部分にあわせ、サーフェスを貼り付けて全体像を作る

  • 「抽出」機能で曲面を自動抽出し、必要な穴あけを行う

    「抽出」機能で曲面を自動抽出し、必要な穴あけを行う

あとは仕上げ。同じ手順で面などを抽出して、くぼみや円錐面などを作ってしまえばソリッドデータの完成だ。Solid Edgeではここまでの手順を15~20分ほどで完了させることができる。

ここまでの作業は、一般的な3D CADでも(手間はかかるかもしれないが)可能である。しかし、Solid Edgeを使用した際の特徴的な機能は、最後の修正部分にある。スキャンしてソリッドデータに変換した製品に3次元的な寸法をつけ、しかもその寸法を使ってパラメトリックな形状編集ができるのだ。たとえば、穴あけした円筒部分の直径を指定し、そのあとで寸法の数値を変えれば、穴径を変更できる。さらに、側面を選んでドラッグするだけで、全体の形状を左右対称に伸縮させたり、片側だけ伸ばしたりすることも可能。これによって、寸法も何も入っていないただの塊のモデルに対し、設計者の思うがままにしっかりとした編集が行える。

  • ソリッドデータに寸法をつけることができ、数値を変えて形状を自動変更させることも可能

    ソリッドデータに寸法をつけることができ、数値を変えて形状を自動変更させることも可能

このようにSolid Edgeでは、スキャンによって作られたメッシュデータを活かして、実際の設計に使えるソリッドモデルを手間をかけずに生成できる。また、形状編集も自在に行えるので、スキャンデータを真に活かしたリバースエンジニアリングが実現できる。

美術品の復元や医療器具の制作などこれまでにない使い方も

これまで、こういった3Dスキャンを利用したリバースエンジニアリングは、メッシュデータの段階で終わってしまっていたケースが多い。だが、Solid Edgeを組み合わせることで、ソリッドデータに対して加工が行えるようになる。もちろん、メッシュデータとソリッドデータが混在した状態で編集可能という点も、Solid Edgeの魅力。これこそがリバースエンジニアリングにSolid Edgeを利用するメリットのひとつといえるだろう。

現在はまだこういった使われ方の例は少ないが、リバースエンジニアリングを必要とする業界にとっては非常に興味深い話だ。関心を持った方は、ぜひSolid EdgeとCREAFORMのWebページで、その詳細を確認してほしい。また、シーメンスではリバースエンジニアリングをテーマにしたウェビナーを企画しているので、参考にしてはいかがだろうか。

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