2020年、小学校教育課程の中でプログラミング教育が本格的にスタートするが、今回紹介する玉川学園はすでにICT教育に力を入れていることを背景に、次期指導要領への準備も進めている教育機関だ。同学園と、独自のプログラミング学習アプリ「SAS CodeSnaps」を持つSAS Institute Japanが、2018年12月20日、同学園の5、6年生を対象に「プログラミング・チャレンジ with SAS CodeSnaps」を開催する運びとなった。

  • 開催会場となった玉川学園

    開催会場となった玉川学園

玉川学園


幼稚部から高校までを一つの学校と捉える「玉川学園一貫教育」の中で、国際的に活躍することのできる次世代リーダーの育成、輩出をめざした教育活動を展開。「真に国際社会を理解するグローバルな視野」「科学的思考に基づく探究力や創造性」「高度情報化社会を生き抜くためのICTスキル」が必要不可欠であると捉え、「国際教育」・「理数教育」・「ICT教育」を3つの柱として強化し、さまざまな教育プログラムを推進している。

SAS Institute Japan


アナリティクスのリーディング・カンパニー。革新的なアナリティクス、ビジネス・インテリジェンス、ならびにデータ・マネジメントに関するソフトウェアとサービスを通じて、83,000以上の顧客サイトに、より正確で迅速な意思決定を支援。1976年の設立以来、「The Power to Know®(知る力)」を世界各地の顧客に提供し続けている。

子供たちに論理的思考を学ばせる「プログラミング・チャレンジ with SAS CodeSnaps」

SAS Institute Japan アカデミア推進室 アカデミックプログラムマネージャー 竹村 尚大氏

SAS Institute Japan アカデミア推進室 アカデミックプログラムマネージャー 竹村 尚大氏

今回、子供たちが挑戦することになった課外授業で使われる「SAS CodeSnaps」は、コード・ブロックを組み合わせることでボール型ロボットの動作手順を記述できるiPadアプリだ。

コードの知識がなくても「紙」を使ってプログラミングし、アプリに読み込ませてロボットを動作させるため、記述ミス無く手順の組み立てに集中できるのが特長だ。「設計者」「コーダー」「テスター」の役割を持ったチームで取り組む。これには以下の3つの狙いがある。

  • プログラムの役割と、ロボット・プログラミングを介したコンピューターと現実世界の関わり方について理解を深める
  • 試行錯誤の繰り返しによる課題解決を経験する
  • 他者と協働することで、リーダーシップを養成する

イベントの冒頭で、SAS Institute Japan アカデミックプログラムマネージャー アカデミア推進室 竹村 尚大氏からルールが説明された。

今回は、4つの円のうち、2つを「必ず止まる円」、もう2つを「通ってはいけない円」としてスタート地点からゴール地点へ向かうタイムを競う課題だ。1時間のカリキュラムで合計4回のタイム計測を可能とし、最短時間でゴールしたチームの優勝というゲーム要素も持たせている。冒頭から子供たちから「スタート位置は?」「ボールのスピードは?」といった質問が飛び出す。

「いきなりやみくもに道具を触り始める前に、頭の中でシミュレーションしながら計画することから始めているチームが多くみられました。日ごろの玉川学園の教育の成果が表れていると感じました」(竹村氏)

以下に、当日の様子をダイジェストでお伝えしよう。

  • スタートしてから青と緑の円に止まり、赤とオレンジの円に触れずにゴールするルールとなった
  • スタートしてから青と緑の円に止まり、赤とオレンジの円に触れずにゴールするルールとなった
  • “スタートしてから青と緑の円に止まり、赤とオレンジの円に触れずにゴールする”ルールとなった

  • ロボットに対して、前に進む、右へ(左へ)回る、右へ(左へ)向かう、その距離、という命令が書かれた紙を並べてiPadに読み込ませることでプログラミングする
  • ロボットに対して、前に進む、右へ(左へ)回る、右へ(左へ)向かう、その距離、という命令が書かれた紙を並べてiPadに読み込ませることでプログラミングする
  • ロボットに対して、前に進む、右へ(左へ)回る、右へ(左へ)向かう、その距離、という命令が書かれた紙を並べてiPadに読み込ませることでプログラミングする

  • チーム内で「設計者」「コーダー」「テスター」を決める。自分ができそうな役割を相談する子供たち

    チーム内で「設計者」「コーダー」「テスター」を決める。自分ができそうな役割を相談する子供たち

  • スタート位置は?円との距離は?様々な角度から計算しながらプログラムを組み立てていく
  • スタート位置は?円との距離は?様々な角度から計算しながらプログラムを組み立てていく
  • スタート位置は?円との距離は?様々な角度から計算しながらプログラムを組み立てていく

  • “外れた”“通り過ぎた”なかなか狙い通りとはいかない
  • “外れた”“通り過ぎた”なかなか狙い通りとはいかない
  • “外れた”“通り過ぎた”なかなか狙い通りとはいかない

  • 着実にタイムを縮めるチームもあれば、一発勝負にかけるチームもある
  • 着実にタイムを縮めるチームもあれば、一発勝負にかけるチームもある
  • 着実にタイムを縮めるチームもあれば、一発勝負にかけるチームもある

  • 最後の最後で大逆転が起きる展開に!

    最後の最後で大逆転が起きる展開に!

  • 1位の男子チームと2位の女子チーム。会場は子どもたちの熱気に包まれていた
  • 1位の男子チームと2位の女子チーム。会場は子どもたちの熱気に包まれていた
  • 1位の男子チームと2位の女子チーム。会場は子どもたちの熱気に包まれていた

プログラミングを通じて、思考することや、ものごとを探求する心を育んでいく

最後に、各担当者から話をうかがった。玉川学園の中学部長 教育部長(5-8担当) 伊部 敏之氏は、本イベントが子どもたちの可能性を考えるいい機会になったと語る。

「今回の企画は、次期指導要領へ向けて計画的にカリキュラムを作っていく流れの中にあります。何かに取り組んだ際に、振り返って修正をしたり、PDCAを回したり。それらを授業に取り入れることで、実生活の中でも論理的思考が活かせるのだと思います。しっかり考えて暮らしていける市民づくりの基盤も作れると思いますので、将来が楽しみになりますね。子どもたちの可能性を考えるうえでとても良い結果が得られました」(伊部氏)

また、玉川学園 中学部 教務主任(5-8担当) 中西 郭弘氏はプログラミング教育のこれからについて話した。

「プログラミングは、どの学年でどこまで教えればよいかを把握することが大切です。そのための教材をどのように作るのか、今回の企画はそれを考える重要なきっかけになったと考えています。私たちも今回の結果を受けて、今後はどのようなソフトを使い、どのような課題を与えるかを考えなければなりません。また、最近は大人がきっかけを与えないと、自発的に考えない子供が増えています。プログラミングを通じて、思考することや、ものごとを探求する心を育んでいく。そんな授業がこれから必要とされていくのだと思います」(中西氏)

データを活用しながらトライ&エラーができる人材を育てるために

チャレンジプログラム終了後、本イベントの企画側であるSAS Institute Japanから、SAS CodeSnapsの効果や、今回の取り組みの意義を聞いた。同社 ソリューション統括本部 ビジネス推進グループ 部長 小林 泉氏は、今回の教材であるSAS CodeSnapsについてこう語る。

「プログラミングは手段であり目的ではありません。ロボットを動かすために、計算し、言葉を作り、命令する。SAS CodeSnapsは、コーディングスキルの有無に依存せずに、その手続きのための論理的思考そのものを学ぶのに最適な教材だと思います」(小林氏)

プログラミングの面白さや、論理的思考を、楽しみながら学べるSAS CodeSnapsだが、その効果はそれだけではないという。

「プログラムでロボットに1m進めと命令しても、実際には滑ってしまったり、空回りして手前で止まったりすることもあります。これが現実世界との誤差であり、それを学ぶのも大切です。コンピューターの中の計算で終わるのではなく、機械と現実世界とのインタラクションまで学べるのがSAS CodeSnapsの良さです」(小林氏)

また、今回のイベントの司会進行を行った竹村氏は、データサイエンティストなどのアナリティクス人材について「求められているのは、単純にコードが打てたり、統計モデルを作れたりするだけの人ではない」と語る。

「大切なのは企業や社会が抱える課題に対して、どうやれば解決できるのかに対して仮説を立て、その検証のためにデータを活用しながらトライアンドエラーができることです。今回のチャレンジでは、『設計者』『コーダー』『テスター』の役割を設定し、このようなアナリティクスの実践サイクルをチームとして意識することで、将来のアナリティクス・スキルの礎となることを期待しています」(竹村氏)

これからも世界には数多くの課題があふれ、またその難易度も上がっていくだろう。今回のSAS CodeSnapsを使った取り組みは、そういった未来の課題を、データを活用しながら解決できる人材を育てることにつながる。

「もちろん、今回のプログラミング・チャレンジだけでデータ活用による課題解決ができる人材が育つわけではないですが、その一端にはなるはずです。SAS CodeSnapsは、他の授業科目と組み合わせることができるため、あらゆる教科にプログラミング的な思考を持ち込むことができます。文部科学省が公開している『小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について』では、子どもたちがどんな進路を選択するとしても、情報技術を手段として使いこなしながら、論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造する能力・資質が求められると記されています。SAS CodeSnapsを用いたチャレンジがそのような資質の養成の一助となると考え、今後も様々な小学校で実践していきたいと思います」と竹村氏は力強く語った。

SASの米国本社では多くの事例があるものの、SAS日本法人としてはは最初の試みとなった玉川学園での「プログラミング・チャレンジ with SAS CodeSnaps」。プログラミングを通じて、さまざまなことが学べることや、今回の盛り上がり、子どもたちの様子を見る限り、日本の教育シーンへの導入は、今後ますます増えていくだろう。

  • 左から玉川学園の伊部氏、中西氏、SAS Institute Japanの竹村氏、小林氏

    左から玉川学園の伊部氏、中西氏、SAS Institute Japanの竹村氏、小林氏

[PR]提供:SAS Institute Japan