個人向け不動産賃貸・売買の仲介事業「三井のリハウス」、駐車場事業「三井のリパーク」などを展開する、三井不動産リアルティ株式会社では、2018年より法人や資産家向けに不動産仲介を行う、ソリューション事業用Webサイトのプラットフォームをパブリッククラウドへ移行して、大幅なリニューアルを図った。同社のクラウド利用はこれが初めての試みとなる。直接的な目的はWebサイトの利便性向上とそれにともなう顧客との接点拡大だが、将来的にマルチクラウド基盤で、システムを最適化していくための布石でもある。

このWebサイトリニューアルプロジェクトの詳細と経緯について、同社 ソリューション事業本部 事業推進部長の吉田 裕氏と、ITマネジメント部 システムインフラグループ グループ長の齊藤 宜史氏、デジタルイノベーショングループ グループ長の石﨑 義忠氏に話を聞いた。

法人向けサイトの活性化を目指して

三井不動産リアルティ株式会社 ソリューション事業本部 事業推進部長 吉田 裕氏

三井不動産リアルティ株式会社 ソリューション事業本部 事業推進部長 吉田 裕氏

リニューアルの目的は三井不動産リアルティが主に個人投資家や法人向けに展開する収益・事業用不動産仲介事業の営業活性化にあった。全国No.1の売買仲介取扱件数を誇る同社だが、収益・事業用不動産仲介事業を展開しているソリューション事業は、「個人顧客向けに展開しているリテール事業と比較すると知名度・営業力共に課題がある」と吉田氏は言う。

リテールとソリューション、両事業の規模の差はサイトの構成にもあらわれており、収益・事業用不動産の取扱ページは長期間、リテール用サイトの陰に隠れる形になっていたという。

「Webサイト全体の管理を担当する我々ITマネジメント部でも、取扱件数やキャンペーン展開が多いリテール事業用のWebサイトに、リソースを集中せざるを得なくなっていたのです」(齊藤氏)

また、ダイレクトメールだけでは新規顧客の開拓が難しくなっており、Webサイトの充実は優先課題であったという背景もあり、2017年にソリューション事業本部内に事業推進部を発足し、吉田氏がこの状況を打開すべく積極的に動き始めたのだ。

求めていたのは、AWS利用の道案内役

事業推進部による社内調整は結実し、同年9月、Webサイトリニューアルのパートナー企業を決めるコンペが実施された。コンペに参加したのは3社だったが、全社ともAWS(Amazon Web Services)を利用したWebサイト構築案を提案してきたという。コンペの要件として指定はしなかったものの、オンプレミスでのWebサイト運用に限界を感じていたITマネジメント部では、パブリッククラウド、特にAWSの採用に強い関心を持っていた。

その3社の中で採用されたのが、テラスカイ株式会社による提案だ。同社は、クラウドとシステム連携をキーワードに、各種ソリューションの開発から運用サポートまでを手がけており、AWSをはじめとするパブリッククラウドの活用支援でも豊富な実績を持つ国内企業である。同社を選定した理由を齊藤氏は次のように語る。

三井不動産リアルティ株式会社 ITマネジメント部 システムインフラグループ グループ長 齊藤 宜史氏

三井不動産リアルティ株式会社 ITマネジメント部 システムインフラグループ グループ長 齊藤 宜史氏

「テラスカイさんの提案はAWSの機能を当社向けにうまくコーディネートしてくれているだけでなく、運用開始後のMSP(運用代行・保守対応)および技術サポートも請け負う子会社『スカイ365』も含めた提案になっていました。以前から『オンプレミスでの経験しか持っていない我々がAWSを使う場合は、適切な指導をいただける道案内役が必要だ』と思っていたのですが、提案内容の説明を受け、さらに我々のクラウドに対する疑問やシステム移行について不安を解消してくれる対応により、テラスカイさんになら任せられると確信しました」

またテラスカイの提案が、CMSやWebアプリケーションなどを含むフロント構築とインフラ(AWS)構築を、明確に分離させて進められるようになっていたことも、選定の大きなポイントになった。これなら、現状オンプレミスで稼働させているサイトを切り分けたり、新規サイトを起ち上げたりする際、インフラはテラスカイに任せたまま、フロント制作のパートナーだけを自由に選べる。技術力やコストなどを比較し、その折々に最適なパートナーを選択できれば、常に時代に合ったサイトをつくり出していけると考えたのだ。

協働作業の中で、AWSのノウハウを学ぶ

三井不動産リアルティ株式会社 ITマネジメント部 デジタルイノベーショングループ グループ長 石﨑 義忠氏

三井不動産リアルティ株式会社 ITマネジメント部 デジタルイノベーショングループ グループ長 石﨑 義忠氏

Webサイト構築の実務は2018年2月に始まった。テラスカイとのミーティングには、ITマネジメント部のメンバーも積極的に参加し、「AWSにインフラプラットフォームをつくるとはどういうことか」という概念的なところから、AWSアカウントの取得方法や機能のコーディネート方法、社内ネットワークとの接続方法などを一から学べたという。

また、構築中にはテラスカイがインフラ構築の視点から、アプリケーション制作側への提案をすることもあったという。

「インフラ構築だけではないテラスカイさんの知見の豊富さなど、個人のスキルの高さだけではなく、会社としてクラウドビジネスをやっている点に心強さを感じました」(石﨑氏)

  • 三井不動産リアルティのAWSを用いたシステム構成図

    三井不動産リアルティのシステム概要図

営業面・インフラ管理面での新サイトの効果と、今後の展望

インフラ構築は円滑に進められ、同年9月、ついにリニューアルしたソリューション事業用Webサイトが公開した。顧客の利便性を重視して、見やすく分かりやすい構成になっただけでなく、AWSを採用したことにより、機能追加などのインフラ整備も柔軟に行えるようになっている。また、営業面でも徐々にその効果があらわれ始めていると吉田氏は言う。

「以前のWebサイトは、リテールサイト経由でのアクセスや、一括査定依頼ができるポータルサイトからのアクセスばかりだったのですが、今は検索エンジンから直接のアクセスも増えてきています。今後、こうしたアクセスが増えていけば、どんなお客様が当社に関心を寄せてくださっているかといった分析もできるようになり、営業戦略の助けになると思います」

また石﨑氏は、AWSをプラットフォームにしたリニューアルサイトの公開に対し、「クラウド化への着実な一歩が踏み出せました。運用開始後は、スカイ365が提供するサポートがあるので、安心です。先日も緊急連絡をうけましたが、通常ならアラートメールだけで済ましがちな内容も電話で確認をしてくださいました。対人対応を臨機応変におこなっていることがわかり、安心感が湧きました」と、テラスカイの対応を評価する。

ITマネジメント部では今回のプロジェクトを「パブリッククラウド活用の第一歩」として位置づけ、さらなる展開を目指しているという。

「Webサイトのプラットフォームに続き、その他のインフラについても利用を拡大していけば、ハードウェア、ソフトウェアのライフサイクルを気にかけなくてすむようになるというメリットが大きいですね。5年に1度、保守・サポート期間が切れるのに合わせてやってくる入れ替え作業がなくなることで、我々の業務は大幅に効率化します。資本や業務を、ビジネスを成長させていくために集中投資できるようになります。今回のようなチャレンジを積み重ねて、オンプレミス、クラウドと一概に決めずに、どれにどんなシステムをのせればコストや労力を最適化できるのかを明確化し、自社なりのレギュレーションをつくっていきたいと考えています」(齊藤氏)

これらが実現できれば、三井不動産リアルティ内のICT利用をさらに活性化させることができ、ひいては「不動産テック(不動産×テクノロジー)」の推進にも役立つものとなるだろう。

  • 集合写真

[PR]提供:テラスカイ