偽物はムーブメントが異なるので、ボタンの機能割り当ても本物と異なっている。ケースは明らかに本物から複製したものだが、側面にパーティングライン(金型の合わせ目)が残っていたり、インデックスのパーツにインクの飛び散りがあるなど、製造品質も低い(コピー品を作る時点で十分低いが)。

小山氏「風防にも注目してください。G-SHOCKの風防はミネラルガラス(高価格帯の製品はサファイアガラス)を採用していて十分な強度を確保しているのですが、偽物の多くはプラスチックなんです。したがって、日常使いですぐに傷が付いてしまいます。そこで、このようにビニールのフィルムを貼って、場当たり的に耐傷性を上げる工夫をしているんです。すぐに剥がれちゃうんですが」

  • カシオの時計、本物 vs 偽物

    風防にはビニールのフィルムが貼られている。CASIOロゴも適当で粗い

触ってみると、操作感もまるで別物だ。偽物のボタンの押し心地はスカスカで、押しても画面が反応しないこともしばしば。ときには、押したボタンが戻らないことも。操作音も鳴らない。一方、本物はボタンの押し込みに適度な重さがあり、確実に押した感触がある。ピッ、ピッという音とともに、小気味よく画面が切り替わる。

なお、こちらも動作で偽物とわかるパターン。この「DW-6900」は、上部の「3つ目」と呼ばれるデジタルゲージのインダイヤルが特徴。この3つのインダイヤルはそれぞれが5コマに分割されていて、左と真ん中がそれぞれ5秒の積算計、右が1分の積算計となっている。このゲージは1秒に付き1コマずつ進み、左と真ん中で10秒を数えるごとに、右のゲージが1コマ進むという演出になっている。

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    一見似ているようではあるが……

しかし、偽物はそんな面倒なことはしないので、3つのインダイヤルが1秒ごとにパターン点滅を繰り返すのだ。もちろん積算なんてしない。こんなのでいいのか? いいや、良くない!

【動画:G-SHOCK 本物 vs 偽物】偽物G-SHOCK DW-9600の秒ゲージ動作
※音声が流れます。ご注意ください。

阿部氏「バンドも見てください。このモデル『DW-6930D-1JR』は、カーボンをインサート成型して強度を向上させたバンドを採用しています。が、偽物はカーボンが入っていなく、柄だけ印刷してそれらしく見せようとしているんですね」

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    印刷によるカーボンインサート風のバンドのショボさをとくとご覧あれ!

これは……かえって逆効果なのでは? もはや、ネタとしか思えない。ちなみに、ベゼル上の文字や下部中央「Gボタン」の精度の違いにも注目だ。

小山氏「次は、かなりがんばってマネている例です。どちらが本物かわかりますか?」

正直、これはかなり難しい。どちらが本物の「GA-110」か、ぜひ見比べてみていただきたい。

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    この再現性には小山氏も驚き。あなたはこの差がわかるだろうか

阿部氏「これも一番わかりやすい点は風防のフィルムですね。右側が本物。左側は風防にフィルムが貼られているのがわかると思います。また、偽物はインデックスや針の造形、メッキの精度がやはり雑。もちろん、中を開けてみればまったくの別物です。ただ、このレベルだと、よほど詳しい人でない限り騙されちゃいますよね」

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    こちらが偽物。針やインデックスの造形やメッキ、ベゼルの文字が雑

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    本物は造形もメッキもシャープな仕上がりだ

松本氏「それでも、やはり偽物は偽物。目に見えない性能の違いもあります。たとえば、防水性能や時刻の精度。本物は、チープカシオであっても月差±30秒以内です。しかし、偽物は月差で4、5分もずれてしまう。消費電力も本物の2~3倍はあります。だから電池の寿命も短い。しかも、偽物は信頼できる電池メーカーの品を使わないので、実際の電池寿命はさらに短いでしょう」

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    番外編。どちらが本物のケース? 正解は右側。プレス文字の書体が太いことと、裏面の英数字が見分けるポイント。フタの開け閉めも、本物のほうが格段にスムーズ。ちなみに、一緒に取材していたマイナビニュース・デジタルの林編集長は、見事に引っかかり、本物と偽物を間違えた(林:面目ない……)