11月29日、「無線LANからはじめよう AIネットワーク時代への対応力養成セミナー」が開催された。AIがさまざまな分野に浸透しつつあるなか、企業ネットワークでもAIを活用する動きが進んでいる。なかでも注目されているのが無線LANでのAI活用だ。本稿ではセミナー当日の模様をレポートする。

社会に急速に広がりはじめた「AIネットワーク」

特別基調講演には、大阪大学大学院法学研究科教授 同研究科附属法政実務連携センター長の福田雅樹氏が登壇。「AIネットワーク化の展望と課題」と題して、AIネットワーク化のインパクトとリスク、法・政策上の課題、国内外の議論の動向を解説した。

大阪大学大学院法学研究科教授 同研究科附属法政実務連携センター長 福田雅樹氏

大阪大学大学院法学研究科教授 同研究科附属法政実務連携センター長 福田雅樹氏

AIネットワークとは、AIシステムが情報通信ネットワークと接続され、そのネットワークを介して他のシステムと相互に連携して機能するよう形成されるシステムのこと。このAIネットワークの形成が進展し、社会のさまざまな場面で広くAIネットワークが利活用されるようになる事象が「AIネットワーク化」だ。

福田氏はまず、これまでのAI研究の歴史を振り返りながら、機械学習や深層学習(ディープラーニング)のポイント、AIの定義や通有性、特化型AIや汎用人工知能といったAIの種類を解説した。そのうえで、AIネットワーク化の構成要素について次のように説明した。

「AIネットワーク化の構成要素は大きく3つあります。1つめは、AIシステムとAIを実装しない他のシステムとの連携の進展。2つめは複数のAIシステム相互間の連携/複数のAIネットワーク相互間の連携の進展。3つめはAIネットワークと人体との連携の進展です。これら三要素の進展を通じて、ヒト・AI・モノ・コトがAIネットワークを介して連携するようになるものと展望されております」(福田氏)

AIネットワークのメリットは、AIシステムと他のシステムを連携させること、データをシステム相互間で共有すること等により、AIシステムを単独で利活用する場合には得られない便益が享受できることである。このメリットは、利用者が増えることで増え得る(ネットワーク効果)。利用者の増加に伴い入力が増えるにつれて性能が向上する結果、利用者が更に増加するという循環が形成されやすい(データ駆動ネットワーク効果)。また、このメリットは、実空間とサイバー空間の境界や国境を越えて即座に波及させることが可能である。

メリットとリスクは表裏、求められる法・政策の対応

また、AIネットワーク化が進展すると、新しいビジネスモデルの開発や、業務・事業の垣根を超えた融合、産業構造の変革などにつながっていくことになる。こうしたインパクトがある一方で、リスクもある。

例えば、学習等を通じた出力やプログラムの変化、システム間の相互作用等に伴う人間に予見、理解、制御などができない事象の発生(不透明化、制御喪失)、AIネットワーク上のデータ等に含まれる誤り・偏り等の出力への反映、利用者が提供するデータ等の管理困難化や想定外の使用などだ。これらが起こることで、個人や社会に不利益を被るおそれが出てくる。

「こうしたリスクは、AIネットワークのメリットと同様に、AIシステムが連携する相手となるシステムや、利用者が増えるにつれて増大する可能性があります。つまり、負のネットワーク効果、負のデータネットワーク効果が生じ得ます。また、実空間とサイバー空間の境界や国境を越えて即座に波及する可能性もあります」(福田氏)

こうしたなか、法や政策についてもAIネットワーク化の進展に対応していく動きが進みつつある。法・政策は、AIネットワーク化の進展の予測に基づいて形成され、AIネットワーク化の実際の進展に影響を及ぼし得るものであるとともに、その影響等を受けた実際の進展に対応させていく必要があるため、AIネットワーク化のシナリオ分析と法・政策の取り組みを相互にフィードバックし、不断の見直しと改訂が重要だ。そのうえで次のように提言し講演を締めくくった。

「AIネットワーク時代に向けた法・政策のあり方は、情報動物としての人間の人格的自律と人間的生存のあり方そのものを左右する、根源的かつ総合的な課題として検討されるべきものです。拙速を避けつつも、手遅れとならないよう、多角的、継続的な検討を行っていくことが重要です」(福田氏)

AI × 無線LANで注目されるミストシステムズが登壇

続いて、ミストシステムズのシニアシステムエンジニア古場健太郎氏が登壇。「AI × 無線LAN 人工知能で無線LANの"つながらない"・"遅い"問題を解決」と題して、無線LANが抱える問題をAIで解決する仕組みとソリューションを紹介した。

ミストシステムズ シニアシステムエンジニア 古場健太郎氏

ミストシステムズ シニアシステムエンジニア 古場健太郎氏

ミストシステムズは、米Mist Systemsの日本法人だ。米Mist Systemsは2014年に設立され、2016年から製品出荷を開始した新興企業だが、著名ベンチャーキャピタルからの資本調達や調査会社から高い評価、メディアからの各種アワード受賞などを受け、現在急速に導入数を伸ばしている。

古場氏は、業界やユーザー企業から注目を集める背景として、成熟したと思われている無線LAN技術でイノベーションを起こしたこと、経験豊富な無線LANの専門家で経営陣が構成されていることを挙げた。

「2007年にクラウド管理型のWi-Fi第二世代の製品が登場して以来、無線LANのアーキテクチャはずっと変わっていませんでした。Mist Systems製品はそれを変えた新時代の無線LANです。経営陣には米Cisco Systemsで無線LAN技術と製品をリードしてきた人材が集結しています」(古場氏)

Mist製品の大きな特徴は、無線LANのアクセスポイントで取得できるさまざまなデータを、AIを活用して分析、クライアントエクスペリエンスを可視化し、これを電波調整にフィードバックして適切なパフォーマンス改善を行う点にある。また、アクセスポイントにBLE(Bluetooth Low Energy)機器を内蔵し、接続するデバイス位置情報を取得しデータとして活用できることも大きな特徴だ。

つながりやすさを可視化し、電波環境を自動調整

Mist製品が旧来の無線LANのどのような課題を解消するのか。古場氏はそれに対して2つのゴールがあると説明する。1つは「可視化できないWi-Fiからの脱却」。もう1つは「屋内位置情報をより簡易に高精度に実現すること」だ。

「アクセスポイントが稼働していてもユーザーが快適とは限りません。ネットワークが突然つながらなくなったり、遅くなったりする現象に遭遇した方は多いはず。AIとBLE技術を使ってWi-Fiを可視化し、この課題を解消します」(古場氏)

MistはアクセスポイントやBLEなどデータをクラウド基盤に蓄積し、AIエンジン「Marvis」を使って分析。その結果をもとにアクセスポイントを自動的に制御する。これによりユーザーは、クライアント体感の可視化や、クライアント指向の電波の自動調整、アノマリー(異常)検知、ダイナミックパケットキャプチャなどを実行できる。

例えば、クライアント体感の可視化では、ユーザーがWi-Fiを快適につかえているかを「つながるまでの時間」「スループット」「電波のカバレッジ」など7つの指標で可視化し、問題があった端末をユーザーが気づく前にトラブルシューティングできる。また、電波の自動調整は、ユーザーの電波と使用状況をAIが学習し、最適な通信環境ができるように電波を調整する。

国内でもMistに注目し導入する企業が増加中

古場氏は、国内のユーザー事例として、介護・医療・ヘルスケアなどのサービスを展開する情報インフラサービスを提供する会社を紹介した。同社では、既存のWi-Fiがつながりにくい事象が頻発し、機器の再起動で対応していた。また、管理画面のUIにも使いにくさを感じていた。

そんな中、管理画面のわかりやすさ、直感的に使えることからMistに注目。試行のなかで、接続数やスループットなどのクライアント状況をすぐに把握でき、トラブル時のキャプチャを事後的に取得できることも評価し、導入を決めた。

「東京の本社で約60台、札幌事業所で6台のアクセスポイントが稼働中で、大阪事業への展開も予定されています。動画ストリーミングの影響でネットワーク帯域が不足するといったトラブルも迅速に見つけ出し、対処できるようになったそうです」(古場氏)

ミストシステムズでは「AI for IT」というパートナーとの協業施策でネットワーク運用管理を自動化する取り組みも推進している。古場氏は「セキュリティベンダーやネットワーク機器ベンダー、SD-WANプロバイダーなどと協業して、フルスタックの自動化を推進していきます」と今後の展望を紹介した。

無線LAN連携によるインシデント対応の自動化

セミナーの最後にはパロアルトネットワークスの技術本部 SEマネージャー、寺前滋人氏が登壇。寺前氏は2018年上半期のサイバー攻撃の状況を振り返りながら、不正送金マルウェアや仮想通貨マイニングなど「ばらまき型攻撃」が高度化・巧妙化していること、ビジネスメール詐欺のような「準標的型攻撃」が増えていること、誰でも簡単に悪用できる商用マルウェアが広がっていることなどを解説。

パロアルトネットワークス 技術本部 SEマネージャー 寺前滋人氏

パロアルトネットワークス 技術本部 SEマネージャー 寺前滋人氏

また、パロアルトが提唱する新しい防御アプローチとして「自動防御」を紹介した。自動防御では、エンドポイントのデータ統合やデータ駆動型の分析、セキュリティ自動実行、拡張性のあるエコシステムが必要になる。これを実現するうえで重要な仕組みが「Application Framework」で、ミストシステムズの「AI for IT」パートナーシップを活用しながら、顧客環境を保護していくことを紹介した。

今後、AIネットワーク化が進展すると、企業のネットワークのあり方は大きく変わる可能性が高い。なかでも無線LANのAIは取り組みがしやすく、効果を出しやすい領域だ。Mist 製品などを活用しながら、AIネットワーク時代に対処していきたいところだ。

なお本稿では、セミナーでも紹介した新しいワイヤレスネットワークMist製品の概要をまとめたホワイトペーパー「スマートデバイス時代のためのスマートワイヤレス」のPDFを提供している。興味を持った方は、ぜひダウンロードして、その内容を確認していただきたい。

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[PR]提供: ミストシステムズ