琉球銀行では、顧客本位の商品、サービスを提供するためにさまざまな活動を行っている。その活動を支えているのはITであり、今や、顧客のために新たな商品やサービスを提供するには、ITは欠かすことができない。銀行にとってより重要となっているITを最大限に活用するために、琉球銀行では新たにAmazon Web Services(以下:AWS)を採用。琉球銀行でのIT、クラウド活用の方針、さらにはどのようにしてAWSの活用に取り組んでいるのかについて、琉球銀行 頭取である川上 康氏に、サーバーワークス 代表取締役の大石 良氏が伺った。

  • 琉球銀行 頭取 川上 康氏(右)、サーバーワークス 代表取締役 大石 良氏(左)

    琉球銀行 頭取 川上 康氏(右)、サーバーワークス 代表取締役 大石 良氏(左)

琉球銀行のビジョンとITが果たす役割

大石氏: 基本的な考え方として我々は、クラウドやITは道具であり目的ではないと考えています。そこで頭取にお伺いしたいのですが、まずは御社のビジョンを教えていただき、クラウドやITがその中でどういう役割を果たしているかについてお話しいただけますか。

川上頭取: 昨年(2017年)私は頭取に就任しましたが、その際に中期経営企画を策定しました。それが「Customer Centric 2017」になります。「カスタマー・セントリック」と言うくらいですから、テーマはお客様本位です。お客様本位とは何か。それは我々の提供しているすべてのサービス、商品が、お客様にとって価値あるものになっているかどうかです。その視点であらゆることを見直すのが、テーマです。

たとえば、お客様が琉球銀行にいらして定期預金を作るとします。その際に銀行では、お客様にさまざまな書類に記入してもらいます。それを検証し処理して、最後に定期預金証書を作り渡します。この間、お客様には10分くらいは待ってもらいます。とはいえお客様が欲しいのは、定期預金証書だけです。待っている5分、10分の時間は無価値なのです。無価値なものに我々は時間をかけていますが、ここをいかに短くしてお客様に価値のあるものだけを残すのか。これが我々のコンセプトになります。そのコンセプトに沿って、琉球銀行の経営戦略を見直しています。

大石氏: 経営からオペレーションサービスに至るまで、すべてを見直しているのですか。

川上頭取: 一連の動きとして、すべてを見直しています。お客様にとって価値のないものはなるべく減らす。そうすると余った時間が生まれます。それを使ってお客様の話をよく聞き、お客様が求めているもの、中にはお客様本人が意識していないものもあるかもしれませんが、そういうものにアプローチしていきます。

大石氏: そうすると頭取がご就任されてから、無駄を省くために提供を辞めたサービスもあるのですか。

川上頭取: 基本的に我々は、地域で金融サービスを提供しています。そのため、今まであったサービスを止めるのは難しいものがあります。商品を減らすことはありませんが、新しいサービスを開拓し、既存のサービスについてはスピードを上げ無駄を減らします。

大石氏: なるほど、素晴らしいですね。それらを実現するには、ITは欠かせないものですか。

川上頭取: 現在、基本的に銀行の仕事はすべてITで成り立っています。そういう意味で銀行は、じつは装置産業なのです。事務処理を変えるにも、新しいサービスを提供するにも、すべてにITが必要です。そういう意味では、お客様に金融サービスを提供している銀行も、IT産業に含まれると思っています。

大石氏: 今、FinTechで異業種から金融の世界に飛び込んでくるところがあります。そういうところに対しては、頭取はどのように見ていますか。

川上頭取: FinTechと言うと異業種から金融業に入ってくると定義をされることが多いのですが、私は違うと考えています。技術のハードルが下がったことで、アイデア次第で小が大を飲み込めるようになった。それがFinTechの定義だと、私は考えています。既存の金融機関は、異業種から攻められると考えるのではなく、新しい商品を考え出せば自分たちがFinTech企業になれると考えると良いでしょう。

大石氏: なるほど。ところでFinTechと言うとAPIの公開など、外にシステムを開いていく動きが欠かせません。琉球銀行では、そういった取り組みも始めているのですか。

川上頭取: はい、始めています。今、参照系や更新系などのAPI化に取り組んでいます。我々はAPIの公開については技術としてやらなければいけない、また政府からの要請もありオープンにやらなければいけないと考えています。とはいえ、我々自身の収益につながらないと意味がありません。単にインフラを提供するだけでは、システム投資コストも回収できませんから。我々自身がAPIをうまく使い、どういったサービスを提供していくのか。お客様に価値を提供できるかを常に頭に置きながら、APIの公開に取り組んでいます。すでにAPIの準備は始めていますが、ビジネスの関わりの深いところから進めています。

琉球銀行がクラウドを選んだ理由

大石氏: ITと一口で言ってもクラウドもオンプレミスもあります。その中で今回クラウドを選んだ理由はどのようなところですか。

川上頭取: クラウドを選んだ一番の理由はスピードです。さまざまな技術が開発されていく時に、オンプレミスでやると提案を受け検討し、導入を決定してもそこから場所を確保し機器を発注して、やっとそれが届いた時にはすでに半年が経っているということになりかねません。そこから作り始めるとなると、1年があっという間に過ぎてしまうのです。これでは遅すぎます。

クラウドを選んだ理由はもう1つあります。我々はこれから新しい価値を提供すると話をしました。新しい価値は、まだ誰もやっていないから新しいのです。そのため、当たるかどうかも分かりません。そんな時にオンプレミスで多額な投資をして作っても、失敗して止める可能性もあります。それでも買ったものの償却は続くわけです。これでは厳しいのです。

クラウドであれば短い時間で導入できますし、課金も使った分だけで済みます。そのため仮に失敗しても、被害は最小限に収まります。新しい事業分野にチャレンジするには、クラウドは活用しがいがあるものなのです。

大石氏: これはトライ・アンド・エラーのサイクルを短縮することであり、それが琉球銀行にとっては大切だったと言うことですね。

川上頭取: メインフレームについては極めて高い堅牢性などが必要となり、すぐにクラウドにするというのは私も躊躇するところです。しかし新しい事業分野については、クラウドがとてもマッチしていると考えています。

  •  川上 康氏

大石氏: 製造業や流通業のトップの方からも、なかなかトライ・アンド・エラーのサイクルを速めようという話が出てきません。このお話は、是非多くの方に聞いていただきたいものですね。スピードを速めるためにクラウドを使うとなった際に、さまざまな選択肢があったかと思います。その中で、AWSを選んだ理由はどのようなところだったのでしょうか。

川上頭取: AWSが最も使われていてシェアが高いというのが1つの理由です。それから、サービスの幅が広いのもよかったですね。また、シェアが高ければ、技術者も多い。それも重要です。我々が新しいサービスを展開しようとしても、技術者がいなければ実現できません。

もう1つ、AWSはコストの面で料金体系が順次下がっていきます。これは非常に良心的で、安価に導入できます。

大石氏: 今回の導入に当たっては、地場のIT企業であり友好会社であるリウコム社とサーバーワークスがタッグを組む形になりました。こういった体制を採用するきっかけは何だったのでしょうか。

川上頭取: 琉球銀行では、じつは昔からAWSに関心を持っていました。最近になって初めて提案を受けたわけではなく、数年前から自社ホームページをAWSにすべきだと検討していたのです。経営資源のことを考えれば、今後はAWSのほうがいいと考えていました。また私自身、JAWS-UG(以下:JAWS ※)のメンバーに何人か知り合いがいて、一緒に食事などをしてコミュニケーションをとっていました。それもあり、AWSには違和感がありませんでした。

※JAWS-UG:AWSが提供するクラウドコンピューティングを利用する非営利目的のコミュニティ。日本全国に「支部」の形でグループを持ち、それぞれのテーマに基づいて活動を行っている。

さらに、そのような中でシステム部門の中途採用も行っていたのですが、偶然メガバンクでAWSを使いシステム構築を経験したメンバーが2人入ってくれました。それをきっかけに、AWSの導入が加速度的に進みました。

実際にAWSを導入するに当たっては、大手のSIに頼む、あるいはサーバーワークスのようなAWS専業のクラウドインテグレーターに頼む方法がありました。一方で、リウコムでも仮想化基盤を提供していたので、クラウドの運用、構築のある程度の技術力はありました。しかしながら、AWSの経験はなかったのです。その状況でフルのSIにお願いしてしまうと、リウコムが関わるところがなくなります。それでは沖縄に技術は残らず、今後の発展に繋がらないと感じました。そこで、できる部分をリウコムに、足りないところをサーバーワークスのようなAWS専業ベンダーにお願いする、その組み合わせが最適だと思ったのです。

いろいろとサーバーワークスに相談していた際に、この体制でもしっかりとサポートしてもらえることも確認でき、リウコムとサーバーワークスのタッグという体制になったのです。

大石氏: 頭取は、フルのSI企業に全部「お任せ」というニーズは、今後増えるとお考えですか。

川上頭取: 需要者側、つまりは我々のスキルやノウハウ、姿勢にもよるでしょう。我々はリウコムをFinTech企業として沖縄経済の中で新たなサービスを提供する基盤としたいと考えていました。そうすると、フルSIにお願いする選択肢はありませんでした。

大石氏: 逆に、サーバーワークスのようにAWSのスキルトランスファーも厭わない会社との体制は組みやすかったと。

川上頭取: そうですね、これはお互いにとって好ましい関係だと思っています。

AWSプロジェクトに対する評価

大石氏: 実際にAWSの導入プロジェクトを進めてきて、ここまでをどのように評価していますか。

川上頭取: 今のところは、75点くらいでしょうか。AWS自体は高く評価しています。納期も非常に短く完成し、コストも大分抑えられました。ただし銀行全体の仕組みと言うのか、そのことを考えるとまだ100点ではありません。これは自分たちの問題かもしれません。どの会社にもシステム部門があり、その多くがまだまだ保守的です。今回のAWSの導入をきっかけに我々のシステム部門も変わろうとしていますが、まだ変わり切れていません。もうちょっと新しい技術を勉強し、今までやってきたオンプレミスの技術やベンダーから受けてきた提案だけでなく、クラウドに載せたらどうなるのかを考え能動的に動いてもらいたい。そこまでできたら、及第点です。それが、これからの課題でもあります。

大石氏: 社内の方々のマインドセットも変えていかなければならないのですね。

川上頭取: 今回のAWSの導入は、変わるための1つのきっかけになっています。

大石氏: クラウドは、基本的にはアウトソースの一種だと思っています。銀行のようにきっちりとしたシステムを構築しなければならないと、アウトソーシングには抵抗感があるのではないでしょうか。

川上頭取: その点は、当初かなり議論しました。しかし調べれば調べるほど、AWSのほうがよっぽど信頼性が高いとわかったのです。我々のホストのシステムも他社に依頼しエラー発生率などは確認しています。AWSは、それに見劣りがまったくしない。監査への対応などもすでに用意されており、そういったところは心配する必要がありません。

大石氏: そうすると、クラウドに対するセキュリティ面での不安などはないということですか。

川上頭取: そうなりますね。その上で、御社がしっかりとサポートしてくれる。それがまた重要です。ハードウェア的なセキュリティはAWSで問題ないでしょう、それをサポートするソフトウェア的な面についてはサーバーワークスにしっかりとした実績があったので、安心してお任せできると思っています。

大石氏: クラウドのセキュリティ面の不安については、社内ではどのように解決していったのでしょうか。

川上頭取: それについては、さまざまな資料などを見て決断しましたが、その前段階でJAWSなどでも議論をしていて、むしろクラウドを使わない日本企業は遅れているとの話もありました。そのため、社内で喧々諤々することはありませんでした。

大石氏: 他のメガバンクなどで、すでにAWSを利用しているのも影響しましたか。

川上頭取: それももちろん、重要でした。

大石氏: ところで、頭取からJAWSという名前が出てきたのには、じつはかなり衝撃を受けました。JAWSのようなユーザーコミュニティの存在が、製品やサービス選定の際に組織のトップの方から出てくることはほとんどないのですが。

川上頭取: 当初、ホームページをAWSに持っていったほうが良いと考えていたメンバーから、この人は面白いから会ってくれとの話があり、それでJAWSのメンバーの何名かと知り合いになりました。結果的に、JAWSの存在が製品選定の安心材料の1つになりました。

今後の展望と他の企業の方々へのメッセージ

大石氏: ここまでは75点とのことですが、これから100点にしていくにはどうしたら良いでしょうか。そのためには、サーバーワークスにもリクエストがあるかと思いますが。

  • 琉球銀行 頭取 川上 康氏(右)、サーバーワークス 代表取締役 大石 良氏(左)

川上頭取: まずは、今回のことをきっかけに社内メンバーのマインドセットを変えていきます。当然、オンプレミスの良いところもあるので、適切な選択ができるチームを作りたいと思っています。そこをサーバーワークスには手伝ってもらいたいと思っています。それとリウコムをFinTech企業にしたいと言いました。沖縄の企業にとっても、今後のデジタル化が極めて重要となります。それに対し今までは、リウコムの知見でサービスなりを提供してきました。

これからはサーバーワークスとタッグを組んで、さらに安価で品質の高いものを提供できるようにしたい。それができると、銀行の地域貢献を別の面からも果たせると考えています。そこまでいけば、評価は120点くらいになるでしょう。サーバーワークスにはぜひ沖縄支社を作っていただいて、一緒に協業しさまざまなサービスを提供できるようにしたいですね。

大石氏: 分かりました。それは是非一緒にできればと思います。最後に、今回AWSに取り組んでみてどうだったかを、改めて他の企業の方々に対するメッセージとしていただけませんか。

川上頭取: クラウドは、やってみないと分からないところがあります。なので、小さなところでいいのでまずは試していただきたいと。その中で、こんなことができると気付くことが大事です。たとえば、個人でもAWSのS3を使うとかは簡単です。まずはやってみる。失敗しても従量制ですからそんなに痛手は被りません。小さいことで成功体験を積んでいくのです。もう1つは、我々のような企業が先に進んで成功体験を示すことだと思っています。それが沖縄でAWSを広げていく良い材料になるはずです。

大石氏: なるほど、よく分かりました。今日は本当にありがとうございました。

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