依然、好調が続く半導体業界。これまでは主にモバイル分野の成長が後押ししていたが、近年はIoTやAI、そして自動車業界からの需要が、好調に拍車を掛けている。

本記事では、世界最大級の半導体製造装置・材料の国際展示会「SEMICON JAPAN」を主催するSEMIジャパン代表の浜島 雅彦氏と、市場調査会社であるIHSグローバル株式会社で主席アナリストを務める南川 明氏に、2018年の半導体業界のトレンドと、未来について語っていただいた。

  • 対談風景

利用分野の広がりが半導体の成長を支える

IHSグローバル株式会社 主席アナリスト 南川 明氏

IHSグローバル株式会社 主席アナリスト 南川 明氏

南川氏:2017年はメモリの市場が大きく成長しましたが、2018年に入ってからは需要と供給のバランスが崩れ、メモリは全体的に値崩れを起こしています。とは言うものの、それ以外の分野は依然として堅調で、全体的には好調と言えるでしょう。ただ、米中の貿易摩擦は懸念材料の一つです。これは、みなさんかなり気にしているようですね。

浜島氏:確かにメモリについては去年までと比べると、かなり落ち着いてきた感じはあります。ただ、IoTの普及もあって、古い技術だった200mm(8インチ)ウエハが大きな注目を集めているなど、これまでとは違う分野からの需要は広がってきているように感じています。

南川氏:半導体業界が堅調な理由は、まさにそこです。メモリが不調であっても、これまで半導体があまり使われてこなかった、自動車とか製造機器とかにも半導体がたくさん使われるようになっている。それが、半導体業界の成長を支えているわけです。また、扱うデータ量が急激に増加している点も見過ごせません。私たちもデータを用いた分析を行っていますが、この10年で扱うデータ量は40倍以上になりました。中でも、画像や動画のデータが急速に伸びています。今、通信でやり取りされているデータの60%強が画像や動画のデータとのことです。これは「Netflix」のようなコンテンツプロバイダが伸びていることも、大きな要因の一つです。そして、この傾向はしばらく続くと予想しています。

浜島氏:「TikTok」なんかもいい例ですね。私も、チェックはしています。わりとおもしろいんですよね(笑)。あのように、いろいろな人が発信していく流れが続く限り、画像や映像データのニーズはとまらないでしょう。

南川氏:それに加えて、IoTが発展していけば工場の製造機器はもちろん、農業や漁業、防災、さらには人の健康状態などの情報もセンサーで集めて、AIなどを用いて解析をしていくようになるでしょう。つまり、今まで使ってきたデータの上に、これまで使われてこなかった新しいデータが加わることになります。そのデータを集めるためにも、そして活用するためにも、半導体は不可欠です。

浜島氏:そうなると、私たちの生活に関わることすべてに半導体が関わることになりますね。たとえば、一昨年くらい前からウェアラブル用に伸びたり曲がったりするプリント基板の分野が成長してきています。バイオとかヒューマンセンサーとか、そのあたりの応用が広がってくれば、たとえば医療の分野でも、これまでできなかったことが次々と可能になってくるかもしれません。

南川氏:医療は半導体業界にとって大きな市場になるのは間違いありません。今までの医療は「治療」が主な目的でしたが、IoTの活用が進めば「予防」へ目的がシフトしていきます。大きな病気になって治療するよりも、病気にならないように予防をする方が、コストが下がるわけですから、これは間違いなく進んでいきます。予防によって医療費が3割近く下がるという試算もあります。実際、Apple社も健康保険会社と具体的な話を進めているとも聞いています。

最先端の自動運転技術がレガシーな半導体技術の需要を高める?

SEMIジャパン 代表 浜島雅彦氏

SEMIジャパン 代表 浜島雅彦氏

浜島氏:最近、特に大きな変化が生じているのが自動車の分野だと考えています。電気自動車は自動運転など、自動車における半導体のニーズが大きく変わってきていると思うのですが、そのあたりはいかがでしょう?

南川氏:すごく変わりましたね。たとえば、自動車1台あたりに使う半導体のコストですが、ここ10年で倍になっています。10年前も、エンジンやブレーキの制御、ライトやカーオーディオ、それにカーナビなど、半導体は結構使われてはいました。現在はモータアシストの無い普通自動車1台あたり200ドルくらいですが、今の電気自動車やハイブリッド自動車では一台あたり400ドルを超えてきています。

浜島氏:自動運転の影響はどうでしょう?

南川氏:レベル3の自動運転を実現したと言われるアウディの新型車では、800ドルくらいかかっているそうです。これがLV4やLV5にまでいくと、1,400〜1,500ドルくらいになるでしょう。日本は少子高齢化が進むから、車の台数そのものは減っていくかもしれません。ですが、逆に自動運転の需要は高まるので、台数が減った以上に半導体の需要は伸びるはずです。

浜島氏:ライトもLEDになり、ドライブレコーダーの需要も高まっているので、自動運転以外の部分にも半導体のニーズは高まっています。

南川氏:その通りです。しかも、それらの技術は、必ずしも最先端のものである必要はありません。一般の人が使っているスマートフォンやパソコンレベルのものがせいぜいです。これから10年〜20年経って、完全な自動運転が始まれば、GPUやAI用の高性能なチップが必要になるのかもしれません。ですが、少なくとも数年先の段階では最先端ではなく、たとえば200mmウエハを用いた半導体製造ラインへの需要が高まることでしょう。

浜島氏:南川さんには、12月12日から14日に開催される「SEMICON JAPAN」の「SMART Transportation サミット」でモデレーターもお願いしています。こちらは各種交通機関の将来がテーマとなっていますが、どのような内容になるのかを、簡単にお教えいただけますでしょうか?

南川氏:今回のサミットは、自動車だけがテーマではありません。自動車を含むモビリティー全体から、未来を展望するサミットになると思います。たとえば、電気自動車とエネルギ-マネージメントの関係から見えてくるものがあります。また、カーエレクトロニクスの発展を担う半導体が、今後、どのように成長していくかという、SEMICONならではの視点からも、登壇者のビジョンを参加者と共有する場となるでしょう。

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  • 昨年のSEMICON JAPANの様子

日本には半導体の進化に最適な環境が整っている

南川氏:これから半導体業界は、まだまだ進化していきます。微細化については、やや進化の速度が鈍化していますが、微細化以外にも進化する余地がたくさんあります。たとえば省電力化とか、もしくは今までバラバラになっていたものを一つにまとめて、全体で小さくするとか。半導体業界だけではできないことも、電子部品やモーターなどのアクチュエータ企業と一緒にできれば、新しい意味での微細化が実現できるかもしれません。特に日本は、それができる環境が整っています。

浜島氏:おっしゃる通りだと思います。半導体装置の分野では世界の30%以上が日本の企業で占められています。材料の分野でも、日本企業のシェアは50%を超えています。日本の企業がいないと、世界の半導体業界は立ち行きません。自動車の分野でも、医療の分野でも、日本には世界を代表する企業がたくさんあります。他の分野とのコラボレーションが進めば、半導体業界に限らず、日本の企業全体が元気になるはずです。そして、業界団体として、私たちSEMIも、力を入れていかなくてはならないと考えています。

南川氏:今後の、日本の半導体業界のためには、世界中からお金が集まるような仕組みが必要です。今、様々な国がAIやIoTに予算をかけて先行しようとしています。それは膨大な額で、数千億というレベルで注ぎ込まれています。これに日本の企業が対抗するには、国からの援助だけでは追いつきません。もっと世界から、お金があつまるファンドのようなものに取り組んでいかないといけません。

浜島氏:お金のことはもちろんですが、もう一つ重大な問題として人材があります。これは、日本に限らず全世界的な問題で、ITや半導体業界の分野は人が足りていない。日本の半導体業界の未来を考えるなら、やはりここをどうにかしなければなりません。私たちのような業界団体も、もっと若い人たちが半導体業界に興味を持ってもらえるような取り組みが必要だと考えています。そのために、12月(12〜14日)に開催されるSEMICON JAPANでは、未来の半導体業界を担う学生さんたちを招いた「MIRAI GAKKO」や、企業に所属する若手の技術者さん同士が交流を持てるハッカソンプログラム「TECH CAMP」等の開催を予定しています。

それと、今回初めての試みとして、オープニングキーノートにプロジェクションマッピングの世界で活躍する「ライゾマティクス」さんにお越しいただき、パフォーマンスをしていただく予定となっています。いろいろな意見はあると思いますが、若い人たちに「半導体業界はクールだ」というイメージを持ってもらいたいので、そのための試みは続けていきたいと考えています。

南川氏:それはいいことですね。業界の発展には、やはりお金と人が必要です。日本の半導体業界は世界の最先端を走っています。そこにいる人たちをクールと思えないようでは、日本の将来は暗くなります。ぜひ、SEMIさんには頑張っていただいて、そこを啓蒙し続けていただきたいですね。

  • 対談風景

正解最大級の、世界最大級の半導体製造装置・材料の国際展示会「SEMICON JAPAN 2018」2018年12月12日(火)〜14日(木) 東京ビッグサイト

注目セッション①

「オープニングパフォーマンス by Rhizomatiks」:リオデジャネイロオリンピック閉会式や、紅白歌合戦のドローンによる演出を技術サポートしたメディアアートのトップランナーであるライゾマティクスによるメディアアートがSEMICON Japanの開催を告げます。ご期待ください。

注目セッション②

SMART Transportation サミット:各種交通機関、とりわけ、自動車技術のイノベーションが止まらない。そして、それらの技術革新は、都市空間や生活にもドラスティックな変化を確実に引き起こす。本サミットでは、第1部において、自動車メーカー各社が自動運転、電気自動車、コネクテッドカーの未来とビジネス展望を語る。

注目イベント

MIRAI GAKKO:学生、スタートアップ、幅広い業種の若手が集まり、企業という組織の中では得られない異業種の仲間との交流が可能な次世代人材育成プロジェクト

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